ベトナム反中共デモの苦渋…青島暴動を忘れた二枚舌

ベトナムで沸騰する反支那の動きに、中共は情報戦で対抗。2年前の青島暴動を棚に上げて喚く北京にハノイ政権が揺らぐ。そして、日本が南シナ海を見捨てた時、東シナ海の雌雄も決する。
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特別警察などで編成された弾圧部隊は、手当たり次第に村人を捕らえ、暴行を加えた。追い詰めれて川に飛び込んだ者も多く、後日、川から多数の遺体が引き揚げられた…

近年で最大規模の華僑虐殺事件は2009年5月に起きた。惨劇の舞台となったのは、広東省英徳市の英紅鎮という貧しい村。シナ国内で元華僑が弾圧の対象になったのである。
▼治安部隊に包囲された華僑’09年5月(大紀元)
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中共当局による証拠隠滅と情報封鎖で、正確な犠牲者数は未だに判明していないが、400人を越える死傷者が出たと見られている。殺傷された者の殆どがベトナムから移住してきた華僑とその家族であった。

1970年代後半、中共当局は茶畑での就労を条件にベトナムの華僑を招き入れた。しかし、過酷な労働環境に加え、土地使用税が天引きされるなど謳い文句と現実は異なっていた。
▼抗議に集まった移住華僑’09年5月(大紀元)
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積年の不満が募る中、村の役人の汚職が発覚。市当局に陳情に向かおうとした4人が拘束されたことを切っ掛けに、約1000人の元ベトナム華僑が村の公安詰め所を取り囲む騒ぎに発展した。

それに対し、中共当局は2,000人規模の治安部隊を出動させ、血の弾圧を行った。虐殺された移住華僑の多くは、ベトナムでも弾圧を受けていた。どこにも安住の地はなかったのだ。
▼ 広東省・英紅鎮の華僑弾圧’09年5月(大紀元)
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南北の戦争に勝利してサイゴンを制圧したベトナム共産党は、華僑の排除に乗り出す。都市部で商業・流通を牛耳っていた華僑は財産を没収され、敵対階層の烙印を捺された。

80年代、ボートピープルとなって祖国を脱出したベトナム難民の中には、多くの華僑が含まれていた。資本家追放のイデオロギーとは別に、背景に民族対立があったとも指摘される。

【6000人大乱闘に軍出動】

中共艦船による攻撃をベトナム当局が発表してから一週間、突然のように各地で反中共デモが発生。一部が暴徒化する事態となった。予想外の混乱と規模だ。

大規模デモが確認されたのは、ベトナム南部のサイゴン近郊と中部だ。海外メディアは単純化して伝えるが、場所はかなり離れている。その中で、死傷者が出たのは、北部に近いハティン省だった。
▼ハティン省の反中共デモ5月14日(ロイター)
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5月14日夜、ハティン省ブンアン工業団地に建設中だった台湾国系の製鉄所にデモ隊が乱入。公安省によるとシナ人従業員2人が死亡、140人が負傷したという。

ロイター通信は、病院関係者への電話取材を元に20人以上が死亡したと伝えた。記事では「未確認」と断わっているのだが、他のメディアは断定的に「21人死亡」と報道。誤解が広がった。
▼病院に収容された負傷者(解放日報)
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ただし、大規模な騒乱が発生したことに間違いはなかった。ベトナム紙『サイゴン解放日報』は、集まったベトナム人5,000人と1,000人のシナ人労働者が衝突したと伝えている。

合計6,000人の乱闘劇…軍部隊の介入が遅ければ、破滅的な事態に至っていただろう。そして、このハティンの衝突劇は、過去にシナ人不法就労問題があった事などから、他の反中共デモと性質が異なる模様だ。
▼大規模衝突が起きた製鉄所(解放日報)
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反中共デモ“解禁”を受け、ベトナム人労働者が日頃からの反感を爆発させたように見える。そもそもブンアン工業団地のデモは治安当局が脇を固める中、昼間に行われた。衝突起きたのは、日没後だった。

当局のコントロールが及ばない所で不測の事態が発生したのであれば、それはベトナムにとって第三の南シナ海敗戦を予感させるものだ。

【2012年青島反日暴動との接点】

今回の中共海軍ベトナム沖侵攻で、最初に反中共デモが確認されたのは、5月9日だった。首都ハノイの中共大使館前で小規模の抗議が行われた。当局がセットした官製デモだ。
▼ハノイ中共大使館前の抗議5月9日(ロイター)
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共産党の一党独裁が続くベトナムでは、抗議デモや政治集会は厳しく禁じられている。街頭で行われるのは、党が許可し、党員らが市民を演じる官製デモ以外あり得ない。

つづく5月11日にハノイで繰り広げられたデモ行進も、わかり安い官製デモだった。整然とし、不測の事態が発生する余地は少しもない。主に国際社会に向けたアピールだ。
▼ハノイの官製デモ行進5月11日(ロイター)
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こうした静かな官製デモに対し、13日から相次いだビンズオン省など南部の抗議行動は異様で異質だった。明らかにイレギュラーな因子が紛れ込んでいる。抗議というレベルではなく、焼き討ちだった。
▼炎上するビンズオン省の工場5月14日(ロイター)
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中共は官製デモに飽き足らず、ついに官製暴動まで仕掛けた。2012年9月、ジャスコを襲い、パナソニックの工場を破壊した青島反日暴動。ベトナム当局は、これに着想を得た節がある。
▼シナ人に焼き討ちされた青島パナ工場’12年9月
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官製暴動を真似たのではなく、郊外の工場エリアに限定して抗議デモを解禁するという手法だ。現地からの報道によると13日から14日にかけて襲撃を受けたのは、すべて工業団地内の企業だった。

東南アジアの工業団地は、外資系企業の誘致を狙って郊外に新設されたものが多い。陸の孤島とまでは言えないが、工場とテネメントが隣接し、従業員はやや隔絶した環境に置かれている。
▼工場前に集まったバイク隊5月13日(ロイター)
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他に飛び火する恐れが少ない一定エリア内で、当局は従業員オンリーの抗議デモを試験的に解禁した。しかし、集団化した若者のエネルギーは想像以上で、第三国の企業にまで損害を与えてしまった…

ベトナム共産党の計算ミスだ。狡猾で野蛮な中共は、必ず隙を衝いて攻勢を仕掛けてくる。

【戸惑いの中の官製デモ終演】

「重大な暴力事件だ」

5月16日のAPEC貿易相会合で、中共の商務部長はベトナムの暴動を強く非難した。鬼の首取ったようなという表現がピッタリだが、皮肉にも会合が開かれた場所は、反日官製暴動が起きた青島だった。
▼恫喝発言した中共商務部長5月17日(ロイター)
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中共側は、ベトナム政府に一切の責任があると断言し、厳重な処罰と補償を要求した。恥を知らずの二枚舌だ。青島反日暴動で中共は「原因は日本側」と主張し、暴徒の処罰は公表していない。

「今現在、中国側が補償を行ったという事実は確認されていません」

岸田外相は4月15日の衆院予算委で、そう答弁していた。日本企業の賠償請求を中共側は無視し続けているのだ。自らの非を一毛も認めず、いつもながらの逆ギレ恫喝。正真正銘の無法国家である。
▼会見するベトナム当局者5月17日(時事)
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対してベトナム政府は5月17日、記者会見で外国企業の安全保証を約束し、損害賠償に応じる姿勢を見せた。迅速に補償を行えば、傷口が広がらない上に、中共との決定的な違いを鮮明にできる。

一方、習近平指導部は「デモ暴徒化」に直面したベトナムの困惑を見逃さない。抗議活動のコントロールに統制国家が苦慮することを誰よりも中共が良く知っている。
▼ 規制されたサイゴンの抗議活動5月18日(ロイター)
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SNSなどで告知されていた5月18日の大規模抗議は、当局が許可しなかった。サイゴン中心部では約100人がデモ行進したが、僅か10分で強制解散。参加者は一時拘束された。

反中共デモの自粛措置が続けば、一般市民の間には不満が鬱積し、怒りの矛先は確実に共産党政権に向く。そして、中共はベトナム民衆を煽る目的で、海上での挑発レベルを引き上げるだろう。
▼巡視船被害は操舵室にも(13日公開映像)
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パラセル諸島の周辺海域に展開する中共艦船は130隻に増加。軍艦は4隻と見られるが、ラムアタックや高圧放水銃発射に加え、艦載機が威嚇飛行を繰り返すなど事態は悪化している。

ベトナム側は、同時に中共が国際情報戦を仕掛けてくることを最大限に警戒しなければならない。

【吹き荒れる反越プロパガンダ】

反中共デモが各国で報道された直後、一部の海外メディアは「ベトナムから逃げるシナ人」をクローズアップ。鞄を抱えてカンボジア国境を越える一団が紹介された。これが、どうも怪しい。
▼カンボジア入国した在越シナ人5月16日(ロイター)
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命からがら出国したという悲壮感は微塵もない。カンボジア国境は祝祭日週末を問わず、泊まりがけでカジノに向うベトナム華僑で溢れる。オヤジ集団は、生粋のギャンブラーである疑いも濃い。

サイゴンには、東南アジア有数のシナ人街・チョロンがある。外国人観光客に人気のエリアだ。戦後の弾圧でシナ人は一時激減したが、ドイモイ政策を受けて復帰した華僑も多く、人口は増傾向だという。
▼市中心部のチョロン地区(file年代不詳)
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シナ人排斥の動きが先鋭化すれば、最初に狙われるのはチョロンだ。だが、工業団地が荒れた2日間、シナ人が密集して暮らす街は、無風だった。また18日も特別な厳戒態勢が敷かれることはなかった。

ベトナム政府は国際社会に対し、チョロンの安全確保を強くアピールする必要がある。2年前の反日官製暴動では、蘇州のミニ日本街がシナ人暴徒に襲われ、破壊の限りが尽くされたのだ。
▼蘇州“日本街”襲撃するシナ人'12年9月(共同)
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そんな最近の悪事をスルーして、中共は「自国民の緊急避難」を政治宣伝に使い始めた。労働者ら3,000人の帰国を大袈裟に伝え、待避用の客船をベトナムに向けたと騒ぐ。救出劇を演出する気満々である。

反越プロパガンダ全開の様相だ。日本メディアは言わずもがな、欧米の通信社が中共の宣伝工作に流され、このままでは次第にベトナム側が形勢不利になる恐れが高い。
▼新たに公開された海警の攻撃映像(越当局)
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「映像を公開することは、実は日本の海上保安庁が指導してきたことなんです」

海洋政策のエキスパート山田吉彦教授が、驚きの背景を明かした。事態発生で具体的な指導をしたのではなく、モデルケースとして推奨していたのだろうが、あの映像の背後には尖閣の経験があったのだ。
▼中共船撮影する越沿岸警備隊5月15日(AP)
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映像を公開して国際社会に訴えるというベトナム当局の判断は正しかった。そして今後過熱する情報戦で、ベトナムが劣勢に転じないよう我が国は官・民・腐れ財界を挙げて大胆な支援を行う必要がある。

ベトナムと中共の“対立”は、もはや共産国同士の内ゲバではない。そこには南シナ海の自由と安全が懸かっている。我が国が国家の威信を賭けて臨む大きな外交テーマだ。見殺しにすることなど出来ない。
▼不法石油リグ周辺の中共艦船5月14日(ロイター)
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南シナ海の未来は、東シナ海の未来と完全に同期している。



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参考動画:
□チャンネル桜5月13日『緊迫する南シナ海の行方と尖閣』

参考記事:
□VIETJO5月15日『工業団地の反中デモが暴徒化、放火や略奪も、逮捕者600人』
□VIETJO5月14日『南部の工業団地で反中デモが多発、日系企業も巻き添えに』
□ロイター5月15日『ベトナムの反中デモで初の死者、中国人とみられる16人含む21人死亡』
□サイゴン解放日報5月16日『Ha Tinh violence: anatomy of a riot』
□WSJ5月18日『中国人3000人超がベトナムから退避』

□大紀元2009年5月28日『中国広東省:大規模な流血弾圧事件発生、死傷者400人』

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