切込み隊長になった安倍首相…国防論を包むアベノミクス

各国の政策担当者に影響力を持つ米の外交専門誌。安倍首相はインタビューで自ら切込み隊長になった。それは悲劇でもある…反日メディア連合が歴史認識で揺さぶる中、総理は孤独な戦いを続けている。
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「安倍首相は、地政学的な日本ブランドの再生と憲法の改正という構想を描いている。その意図するところは、日本を世界の大国として、本来あるべき立場に戻すことだ」

英国の有力誌「エコノミスト」最新号の表紙を安倍首相が飾った。アメコミ風のレトロなデザインは及第点以下だが、日本人が同誌の表紙になったのは、小泉元首相以来だろう。

空飛ぶ総理の胸には、¥マーク。就任前から続く円高是正の動きや株高騰から論じる日本特集のように見えるが、さすがに「エコノミスト」だ。単純ではない。表紙には小さく、こう記されている。

「アベノミクス、ナショナリズムと支那への挑戦」
▼英エコノミスト5月18日号表紙
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特集記事の内容は既に翻訳され、ネット上でも公開済みだ。特集のタイトルは「安倍首相のマスタープラン」。そこでは、経済政策と国防を不可分としている事がストレートに書かれている。

「財政的刺激策と金融緩和策を掲げるアベノミクスは、経済政策のように見える。だが実のところ、経済と同程度かそれ以上に、国家安全保障に重きを置いているのだ」

コインの表と裏だ。我が国の大手メディアでは、議論すらされない。わざとボカしているのか、本当に気付かないのか…元になったレーガノミクスが冷戦構造と直結していたことなど、欧米では常識だ。
▼演説するレーガン大統領(file)
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さしずめ、レーガン大統領が言い放った「ソ連=悪の帝国」をアベノミクスに置き替えると「中共・上下朝鮮=悪の帝国」になるのだが、まさか安倍首相が所信表明演説で、そう言い切ることはない。

「1947年に米国の主導で施行されて以来、一度も修正されたことのない日本国憲法のリベラルな部分の見直しを検討しているのだ」

「エコノミスト」の特集は、尖閣の緊迫化を踏まえ、中共の“沖縄領有権主張”にも触れる一方、憲法改正や靖国参拝を何故か警戒する。中共のプロパガンダが欧米の知識層に届いていることは、やはり要注意だ。

【「Japan is Back」】

5月11日、安倍首相は日比谷・野音で開かれていたコンサートにサプライズ出演。ステージでデュエットを披露した。報道では、それに先立って映画「リンカーン」を鑑賞したという。優雅な一日である。
▼唄う安倍首相 in 野音5月11日(時事)
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ところが野音に出向く前、とある米国人男性が首相公邸を訪ねていた。ジョナサン・テッパーマン。米国の外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」の副編集長だった。

公邸での1時間に及ぶロング・インタビュー。それが来月発売の同誌の巻頭を飾ることが決定。先駆けて、安倍首相との一問一答が5月16日にHPで公開された。タイトルは「Japan is Back」だ。

「尖閣諸島問題を棚上げすることに、我々が合意することはあり得ません。過去に尖閣を中国が領有していたとする中国の議論は、全くでたらめです」
▼フォーリン・アフェアーズ日本版前号表紙
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テッパーマン副編集長は、中共の新しい駐米大使・崔天凱が“尖閣棚上げ論”を吹聴していると指摘。それに対する安倍首相の答えは、明快だった。

「中国の主張を受け入れれば、そこに解決すべき領有権問題が存在すると日本が認めることになります。そうした議論に同調して、問題を既成事実化させることはあり得ません。
 
 中国側は、南シナ海の諸島の管理権を手に入れようと、同様の議論をベトナムやフィリピンに対しても試みています。5月8日にも、中国の『人民日報』は、沖縄が日本の一部であることさえ疑問視する主張を掲載しているのです」
▼沖縄侵略を謳う官製デモ2010年10月
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東シナ海と南シナ海は、コインの表と裏だ。どの国が緊迫した状況を作り出しているか、ハッキリと判る。同時に、中共の“沖縄領有権主張”を逆宣伝。それは中共の異常性を際立たせるのに、有効だ。

「自国防衛の組織を軍と呼んでいない世界で唯一の国だ。自衛隊を国防軍と規定すべきだ」

安倍首相は占領憲法9条の改正についても、ハッキリと持論を述べている。質問が「エコノミスト」の焦点と重なるのが気になる。案の定、ジョナサンは、靖国参拝にもツッコミを入れて来た…

【外交専門誌幹部の不見識】

「日本の指導者として、国のために命を犠牲にした人々を追悼するのは、自然なことだと思うし、世界各国の指導者も同じ考えだと思う」

安倍首相は、そう答えている。テッパーマン副編集長は、中・南鮮が“A級戦犯”合祀を理由に反対していると認識し、参拝しないことが「合理的ではないか?」と訊く。そこで安倍首相は、こう答えた。

「靖国神社がA級戦犯を合祀して以降、中国と韓国はしばらくの間、参拝についていかなる主張もしなかった。だが、突然、靖国参拝に反対するようになった。私は靖国を参拝するとも、参拝を自粛するとも明言するつもりはない」
▼靖国神社参拝する安倍総裁10月(産経)
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安倍首相はまた、しつこいテッパーマンに巧みな比喩を用いて切り返す。中共・南鮮の絶叫リピートで欧米の一部からも靖国参拝が“問題化”しかけている最中…いきなり速球をインコースに投げた。

「靖国神社については、どうぞ、アーリントン国立墓地での戦没者への追悼を考えてみてください。米国の歴代大統領はみなこの墓地にお参りをします。日本の首相として私も訪れ、弔意を表しました。
▼アーリントン墓地を訪問2月22日(官邸)
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 しかしジョージタウン大学のケビン・ドーク教授によれば、アーリントン国立墓地には南北戦争で戦死した南軍将兵の霊も納められているそうです。その墓地にお参りをすることは、それら南軍将兵の霊に弔意を表し、(彼らが守ろうとして戦った)奴隷制を認めることを意味はしないでしょう。

 私は靖国についても同じことが言えると思います。靖国には自国に奉仕して、命を失った人たちの霊が祀られているのです」
(古森義久特派員訳)

安倍首相が自ら、アーリントンと比較したことの衝撃は余りにも大きい。

【反日“逆発信力”は国際レベル】

小泉時代に靖国参拝をめぐる論議が過熱した際、誰かが米アーリントン墓地と比較して論破したことがあっただろうか…残念ながら、記憶にない。

もっとも当時の米国は「内政問題」と捉え、歴史認識をミックスして批判することはなかった。ところが今は様子が異なる。レクリエーション施設の問題と共に中・鮮の靖国妄言も幅をきかせ始めた。
▼日米首脳会談2月22日(AFP)
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由々しき事態である。そうした反日プロパガンダに対して、我が国は効果的なカウンターを繰り出せず、手をこまねくばかりだ。ロビー活動以前に、駐米大使は抗議すらしない。いつも外務省は寝たふりだ。

問題は、発信力にあると言われるが、民間のシンクタンクが頑張っても規模的に限界がある。反日勢力のボリュームに劣るのだ。その中で今回、安倍首相本人が、いきなり直球を投じたのである…
▼米CSISで講演する安倍首相2月(時事)
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正に切り込み隊長。最前線で突撃した。果敢な発言だが、それは我々日本人にとって満足な状況ではない。大将自ら突入するのは、戦いの最終局面、劣勢に置かれた中での最後の手段だ。策とも言えない。

さらに不幸なのは、総理の熱弁が国民に広く届かないことである。安倍首相のアーリントン比較発言は、南鮮メディアの批判を報じるかたちで初めて、日本国民にもたらされた。

参照:共同通信5月21日『安倍首相の靖国発言、詭弁と批判 韓国紙、米国立墓地比較で』
▼アーリントン墓地の表敬訪問2月(共同)
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6月発売の誌面掲載を前に「フォーリン・アフェアーズ」は、登録制会員専用サイトで、一部を公開した。南鮮メディアは、そこから発言内容を確認して、的外れなクレームを付けてきたのだ。

対して我が国のメディアは怠慢だった。「フォーリン・アフェアーズ」の重要性を知る外信部も、専用サイトにアクセスして記事化することはなかった。実際に伝えたのは古森特派員ただ一人だ。

一方で、朝鮮ちり紙の飛ばし記事を引用した米議会調査局の書類は、速攻で翻訳。反日メディアは、参院選を前に“歴史認識”で安倍政権を揺さぶるキャンペーンに乗り出した。
▼NHKが詳しく報道する米議会報告書
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我が国を貶める「逆発信力」にかけては実に長けているのだ。

しかも連中は、短期決戦に続き、夏以降は持久戦に挑むだろう。“靖国問題”も軍のR&R問題も、日米同盟にクサビを打ち込むことが真の目的なのだ。


  〆
最後まで読んで頂き有り難うございます
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参考記事:
■日経JBプレス『英エコノミスト誌2013年5月18日号『安倍首相のマスタープラン』
■The Economist5月18日『Abe’s master plan』
■NHK5月18日『安倍首相“スーパーマン”に』(魚拓)

■米フォーリン・エフェアーズ誌日本語版HP『Japan is Back ジャパン・イズ・バック-安倍晋三首相との対話』
■古森義久特派員ブログ5月19日『安倍首相が靖国参拝で米側に反論』

■時事通信5月18日『9条改正「慎重に提起」=安倍首相、米誌に表明』
■読売新聞5月17日『首相、9条改正に意欲…米誌インタビュー』
■日経新聞5月17日『「侵略」の定義は歴史家に委ねる 首相、米誌に強調』(魚拓)

■産経新聞5月20日『「安倍首相、大宰相の可能性」右傾化批判一転、米国で高評価の兆し』
■CSIS(戦略国際問題研究所)HP5月15日ジョージタウン大学ケビン・ドーク教授(東アジア文化論)論文『Japan Chair Platform: Shinzo Abe's Civic Nationalism』

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