埋もれる安倍首相のレガシー…十余年磨き上げた硬い結晶

無為無策だった反日陣営は薄っぺらい宰相論で毒づくが、二度目の退場宣言に敗北のイメージはなかった。安倍政権にはメディアが決して触れない「大きな遺産」がある。
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大変お疲れ様でした、と先ずは率直に労いの言葉を捧げたい。相反する情報が入り乱れる中、予想を裏切る形での辞意表明だったが、前回に比べ、悲壮感も絶望感もない。

「国民の皆さま、8年近くに渡りまして本当に有り難うございました」
▽辞意表明会見の安倍首相8月28日(ロイター)
ロイター828安倍首相会見1.jpeg

安倍首相は会見の冒頭発言をそう結んだ。「志半ば」との表現があった通り、決して晴々とした表情ではなかったが、敗将の無念を顔に刻んだ13年前とは大きく異なる。

珍しく生中継を視聴しつつ、思い起こしたのは平成19年9月の正に電撃的な内閣総辞職会見だ。激しいバッシングの末、既存メディアに押し潰された印象が強かった。
▽平成19年の内閣総辞職会見(時事)
時事07年9月12日総辞職を発表する安倍首相.jpg

敗北感ではなく、実際に参院選で大敗を喫していた。直後から党内で“安倍降ろし”の風が吹き荒れ、内閣改造もままならず、当時の安倍首相は支えを失い、孤独に「地獄の夏」を過ごした…

恨めしかったのは、退陣で勝鬨をあげる反日メディアだけではなかった。総辞職会見で持病悪化に触れなかった経緯もあり、一般保守層からも「政権放り投げ」といった批判が高まった。
▽決断までの経緯を語る安倍首相8月28日(産経)
産経会見で辞任の意向を表明する安倍晋三首相=28日.jpg

惨劇のような13年前と違い、今回は一定の理解もあり、余力を残す去り際となった。総裁任期のリミットまで約1年、歴代最長の総理在任期間をマークしてのリタイアには、幾らかの達成感もある。

「拉致問題をこの手で解決できなかったことは痛恨の極みです。ロシアとの平和条約、また憲法改正、志半ばで職を去ることは断腸の思いであります」
▽自民党本部に入る安倍首相8月28日(産経)
産経自民党本部に入る安倍首相=28日午後2時.jpg

実績については各論総論とも様々だが、安倍首相は再登板の日から始まった一つの長い戦いに勝利した。それは反日メディアとの戦いだ。

【反日メディアの不戦敗で決着】

「多くの成果を残した一方、森友学園問題や加計学園問題、桜を見る会の問題など国民から厳しい批判に…」

辞意表明会見の質疑も終盤に差し掛かった頃、何とも間抜けな“意見”が官邸記者から飛び出た。これらが「権力の私物化」に関連する重大な問題だという。
▽会見で挙手する官邸番記者ら8月28日(産経)
産経会見で辞任の意向を表明、記者団の質問に答える安倍晋三首相=28日午後.jpg

新総裁選出までの期間、論壇では安倍政権8年の総括が、花盛りとなる。だが、メディアが本当に総括すべき問題は、徒花・毒花の類いでしかなかった「モリカケ桜ザル報道」だ。

辞意表明会見を受け、籠池夫妻にコメントを求めた報道機関があっただろうか…元理事長は8億円をプレゼントされた親友から反安倍の急先鋒へと設定が目まぐるしく変わった後、使い捨てられた。
▽メディア露出が激減した籠池夫妻2月(時事)
時事2月19日大阪地裁に向かう夫妻.jpg

岡山理科大新学部ではなく、加計学園新学部。いわゆる加計問題も、メディアが大学について報道する際、学校法人名を優先するという謎のルールを生み出した。今後もその新基準を徹底して頂きたい。

桜関連では、公文書廃棄の規定に関して菅直人の参考人招致案にまで国会議論が進んだ所でストップした。何もかも中途半端だが、官邸記者は、問題が今も存在するかのように印象操作に励む。
▽会見中継を映す大型ビジョン8月28日(産経)
産経安倍晋三首相の会見を映す大型ビジョン。通行人は立ち止まって会見を見入った=28日午後、東京都新宿区(.jpg

反日メディアは敗北したのだ。過去の成功体験にしがみ付いた悪のメディアスクラムは力を失った。世論への影響力ではなく、印象操作能力の喪失である。

この夏、安倍政権に痛烈な打撃を与える情報が、意外な所から出てきた。米国の有力シンクタンクであるCSIS(戦略国際問題研究所)だ。7月に公表された深層リポートは政権の急所を抉る。
▽江沢民派で共青団系の二階俊博’19年4月(ロイター)
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「自民党の二階俊博幹事長の名から二階派と呼ばれる自民党のこのパワフルな派閥は親中派である。同派閥は『二階・今井派』と呼ばれることもある」

支那・清華大学名誉教授の二階俊博に加え、首相補佐官兼政務秘書官の今井尚哉を名指する。今井はAIIBへの融和姿勢など安倍政権内で媚中シフトを勧めたキーマンだという。
▽独自ラインを築いたとされる今井補佐官H31年(毎日)
毎日自民党役員会に向かう安倍晋三首相(右)と経済産業省出身の今井尚哉首相秘書官=国会内で2019年2月.png

そして二階派の若手議員・秋元司被告のIR汚職事件にも斬り込む。現職代議士の小遣い稼ぎ程度の矮小化される汚職を中共の対日工作に書き換える衝撃のリポートだ。

「秋元被告の野心的な動きが招いた事件のように報じる日本メディアとは逆の方向の視点である点が興味深い」

リポートを解説する古森義久さんは解っていながら、我が国の報道姿勢に疑問を投げ掛ける。背景は単純で、矮小化する本邦のメディア自身が中共の工作機関に他ならない。
▽中共党宣伝機関が入る都内のビル(file)
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安倍首相の体調悪化と前後する為、このリポートが引き金になったとは思えない。それでも、捏造紙を始めとする「疑惑は深まった」連呼の“モリカケ報道”とは大きく次元が異なる。

【白眉はガンガー聖地の祝福】

「安倍総理は在任中において台日関係に多大なる貢献をされ、今後どんな立場においても台湾にとって最も大事な友人であります」

辞意表明を受け、台湾国の蔡英文総統はコメントを発表した。我が国もメディアが台湾の反応を取り扱うことは異例だが、蔡総統の日本語版ツイートがネット上に拡散した事情が関係している。
▽日米首脳ゴルフ対決inフロリダ'18年4月(時事)
時事18年04月18日米フロリダ州パームビーチ.jpg

「私の大の親友であり、素晴らしい男だ。最大の敬意を表する」

記者団に語ったトランプ大統領の言葉は、およそ全ての報道機関が伝えた。筆頭格に据えることは無難である。ただし、安倍首相と最も近しい海外首脳といった位置付けは、いかにも杓子定規だ。

安倍首相にとって最も交流が深い相手は、トランプでもメルケルでもなく、インドのモディ首相だ。2人の親交は第1次安倍政権時代の2007年に遡る。
▽別荘に招かれたモディ印首相H30年10月(代表撮影)
内閣府安倍晋三首相は18年10月28日、インドのモディ首相を山梨県鳴沢村の自身の別荘に招待し、夕食会を開いた.jpg

「あなたの賢明なリーダーシップと献身により、日印関係はかつてないほど深化し、強力なものとなった」

モディ首相も逸早く、コメントを発表している。米外交専門誌によれば、8年前の総選挙圧勝で第2次安倍政権発足が決まった際、最初に祝意を伝えた要人が当時グジャラート州首相のモディ氏だった。

その1年半後、BJP(インド人民党)の大勝で18代首相に就任。平成26年夏、2人は日印首脳として再会する。安倍首相の案内でモディ首相が京都を巡ったのは、この時だ。
▽東寺境内を散策する日印首脳H26年(代表)
世界遺産の東寺を訪れ、境内を散策するインドのモディ首相(手前左)と安倍首相=31日午前、京都市(代表撮影).jpeg

異例となる山梨の別荘招待など、その後も両首脳は交流を重ねるが、最も印象深いのは’15年12月の安倍首相バラナシ訪問である。数多い安倍首相外遊の中でも、ハイライトと呼べるシーンがそこにあった。



バラナシ(旧ベナレス)は、ヒンドゥー教徒にとって聖地の中の聖地だ。ガンジス河中流、三日月形を描いて湾曲する河畔の古都。寺院や住居が蝟集する一方、対岸には無人の荒野が広がる。

此岸と彼岸が具現化された聖地で、安倍首相はモディ首相に伴われ、祈りの儀式ガンガー・アールティーに参列した。額にティカ(祝福の辰砂)を印した2人を懐かしく思い出す。
▽ガートで儀式に参加する両首脳'15年12月(共同)
携帯電話で撮影したガンジス川での儀式の写真を見る安倍首相(左)とインドのモディ首相 =12日、インド北部のバラナシ(共同).jpg

訪問当時、関連情報の不足から詳細を伝えられなかったことが悔やまれる。インド側との温度差は甚だしく、我が国では外遊の余興程度にしか報じられなかったのだ。

そして、このベナレス訪問の頃、日印首脳の緊密な関係が、後に米国のアジア戦略に大転換をもたらすとは、誰も予想していなかった。

【第1次政権から磨き上げた結晶】

平成27年秋、舞鶴から護衛艦「ふゆづき」がインド方面に向けて出港した。米印海軍が主催する海上共同訓練「マラバール2015」に参加する為だ。これが新時代を切り拓く歴史的な航海の始まりだった。
▽舞鶴を出港する「ふゆづき」H27年9月(産経)
産経15年9月舞鶴出る「ふゆづき」.jpg

過去、海自は「マラバール」に断続的に参加していたが、ゲストに過ぎなかった。ベンガル湾などでの訓練に対して中共が反発し、インド側が慎重な姿勢を示していたのだ。 

それを突っ撥ねて日米印3カ国に格上げしたのが、モディ首相である。米国主導ではなく、日印が先行した珍しいケースだ。当時、オバマは政権末期に差し掛かり、回顧録の下書きで忙しい頃だった。
▽ベンガル湾上の日米印艦艇’15年10月(米海軍)
マラバール15年10月(米海軍).jpg

アジア地域に軸足を移すと豪語したオバマ政権の「ピボット政策」とは何だったのか…対中包囲網と解説されたものの、後継のリバランス政策も中身が乏しく、実現したのはTPP協定だけという有様だ。

この間、中共はパラセルを越えてスプラトリーを武力制圧し、尖閣には海上民兵を派兵した。包囲網どころかザル、悪く言えば水先案内である。そこにトランプ政権が登場する。
▽画期的だった初の日米印首脳会談’18年(代表)
代表ブエノスアイレスで18年11月30日に行われた初の日米印首脳会談.jpg

空母打撃群の口跡を辿るまでもなく、トランプ政権のアジア戦略は明白だ。南シナ海を舞台にした「航行の自由作戦」は、FOIP(自由で開かれたインド太平洋)構想に発展する。

FOIP構想は日米が提唱するもので、外務省は’16年夏にナイロビで安倍首相が行ったTICAD演説がベースだと解説する。しかし、これでは「マラバール2015」への参加が説明しきれない。
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FOIP構想の“出典元”は、第2次政権の発足直後に安倍首相が発表した「セキュリティ・ダイヤモンド構想」である。日米印豪が菱形の重要な力点で、マダガスカル方面は余り関係がない。

更に、このダイヤモンド構想のベースになったのが「自由で繁栄するインド太平洋」を謳った印デリー国会での安倍首相演説だ。平成19年の地獄の夏、“安倍降ろし”の暴風が吹き荒れる最中だった。
▽チャンドラ・ボース記念館を訪問’07年8月(AFP)
07年8月記念館を訪れた安倍首相(AFP).jpg

その頃、メディアも有識者も平河町に熱い視線を注ぎ、デリーに目を向ける者は皆無。また再登板後のダイヤモンド構想に着目し、解説する政治・外交評論家も殆ど居なかった。

前述した通り、安倍政権に関する論評は百出する。だが、実績としてデリー演説からFOIP構想への進化を評価するメディアは、多く見積もっても零だろう。起点の演説から報道していないのだ。
▽バラナシで儀式に参加した両首脳’15年(ロイター)
ロイター15年バラナシ1.jpg

安倍首相が産み出した「自由で開かれたインド太平洋」構想が中共の野望を打ち砕くのか、予断を許さない。それでも歴史に刻まれることは確実だ。米国が我が国の提唱するアジア戦略に追従したのである。

極東の島国が掲げた地域戦略に欧米の軍事大国が相乗りする現象は、かつての強固な日英同盟下でもなかった。そして遠い将来においても、金輪際、起こり得ないと断言する。




最後まで読んで頂き有り難うございます
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関連エントリ:
□平成26 年9月5日『安倍首相にダイヤの贈物…インドが開く新時代の扉』

参照:
□外務省HP平成19年8月22日『インド国会における安倍総理大臣演説「「二つの海の交わり」』
□外務省HP令和2年8月7日『自由で開かれたインド太平洋』
□Project Syndicate2012年12月27日『Asia’s Democratic Security Diamond』

参考記事:
□ニューズウィーク’14年4月18日『インドと日本を結ぶ意外な友情』
□JB Press8月26日『IR汚職事件の背後にちらつく中国共産党の影(古森義久)』
□産経新聞7月27日『米有力研究所が安倍首相側近を「対中融和派」と名指し 古森義久』
□ニューズウィーク7月30日『アメリカが遂に日本政界の媚中派を名指し批判──二階氏や今井氏など』
□時事通信8月28日『日印関係深化に貢献 安倍首相辞任でインド首相』
□産経新聞8月28日『台湾経済・外交の「守り神」 安倍首相に高い評価』
□読売新聞8月28日『トランプ氏、安倍首相の辞任表明「本当に残念に思う」「つらい決断だっただろう」』

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この記事へのコメント

大嶋昌治
2020年09月04日 08:23
はじめまして。福井市在住の大嶋昌治(おおしままさはる)と言います。聖書預言を伝える活動をしています。

間もなく、エゼキエル書38章に書かれている通り、ロシア・トルコ・イラン・スーダン・リビアが、イスラエルを攻撃します。そして、マタイの福音書24章に書かれている通り、世界中からクリスチャンが消えます。その前に、キリストに悔い改めて下さい。2020年を悔い改めの年にしてください。携挙に取り残された後のセカンドチャンスは、黙示録14章に書かれています。