自由香港“23歳の夭逝”…砦が陥落した反共最前線

弾圧法布告から半日も待たずに民主派の不当拘束が相次ぐ。香港の街から「天滅中共」の幟が消え、五星紅旗の群れが出現。最前線の砦は陥落し、“反共のバトン”は我々に託された。
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南西部の感染再拡大に伴い、米メディアのパンデミック関連報道が復活した。この1ヵ月、武漢ウイルス禍など存在しないかのように、各地の暴動騒ぎに傾注。結論なき論評でニュース枠を埋めていた。

数年前からある政治スローガンだったとしても「MLB=ブラック・ライブズ・マター」の連呼は異様だった。なぜ、定番の人種差別や偏見ではなかったのか…
▽南支・広州市内の通称リトルアフリカ’18年(AFP)
AFP18年3月広州のリトルアフリカ地区.jpg

ジョージ・フロイド事件の前月、大規模な“アフリカ人狩り”が発生した。舞台は支那南部の広州市。しかも感染症キャリア疑惑が絡んだもので、人種差別としては最悪の部類に入る。

発端は4月初めに起きた隔離施設からの脱走劇と飲食店従業員のクラスター発生で、いずれもナイジェリア人だった。市民の間でデマが広がると共に“感染輸入”を誇張する中共宣伝機関も火に油を注ぐ。

「黒人の入店を禁止します」
▽ファストフード店の貼り紙4月(SNS)
マック貼り紙事件.png

そんな貼り紙を掲げた店もあった。家主はアフリカ系住民を追い出し、街に大量のホームレスが出現。公安当局は一斉拘束と強制隔離に乗り出す。偏見に満ちた野蛮な“アフリカ人狩り”である。

「恥ずべき排外主義だ」

米国務省が強く非難すると、中共外交部は「米国にその資格はない」と言い返す。アフリカ諸国が共同で公式抗議するなど外交問題への発展は不可避と見られたが、続報もなく、時間が過ぎた。
▽路上で拘束されるアフリカ系住民4月9日(SNS)
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そして起こったのがMLB暴動だ。広州のアフリカ人狩りに沈黙していた欧米の左派プロ市民が瞬間的に沸騰し、喚き散らす…中共指導部にとって余りにも都合の良い展開だった。

シアトルの無政府主義者が、北京に操られていたとは思わない。欧州のパヨクも同様だ。しかし、約1ヵ月の世界同時抗議活動は、香港弾圧法の草案発表から布告のタイミングと完全に一致していた。
▽国安法導入に抗議する香港市民5月22日(時事)
時事5月22日、香港で国家安全法導入に反対するデモ隊.jpg

本当に偶然だったのだろうか。そして、先進国のリベラリストは香港の自由を守る為に雄叫びを上げ、足掻くべきだったのではないか。

【再びやってきた香港“最後の夜”】

総督府のユニオン・ジャックが降ろされ、英国側に引き渡される。そして深夜には盛大なセレモニーが行われた。静かに見守るパッテン総督は、ずぶ濡れだった。

警官隊と儀仗兵の交替。唐突に響き渡る「蛍の光」について、元はスコットランド民謡だとの解説が付く。1997年6月30日、英の委任統治領・香港のラストナイトは、蕭々と雨が降っていた。



「生きてさえいれば、希望がある」

周庭さんは、そう日本語でSNSに綴り、民主派団体「デモシスト(香港衆志)」からの脱退を宣言。更に同じ日、団体側も正式に解散を表明するに至った。

返還から23年後の6月30日、もう一つの香港最後の夜が巡ってきた。香港独立を主張する学生組織や政治団体も相次いで活動の停止を表明。民主派の支柱は砕けて形を失った。
▽取材に応じる周庭さん6月上旬(産経)
産経6月取材に応じる周庭さん.jpg

「当局は昨年のデモを通じてブラックリスト入りした全ての人を捕まえるだろう」

六四天安門の学生リーダーだった王丹氏は、強い警告を発していた。情報源は明らかにしなかったが、国安法の施行と同時に蘋果日報の創業者らが逮捕される恐れがあると話す。
▽7月1日付けの蘋果日報1面(Bloomberg)
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「独立連盟」代表の陳家駒氏は6月28日までに香港を離れ、欧州に到着したことを表明。米英が「脱出計画」を示した場合には、直ちに香港を出るよう呼び掛けた。

「口を封じられ、この地から排除されるまで、私は自分の故郷である香港を守り続ける」
▽雨傘運動も牽引した黄之鋒さん6月19日(Bloomberg)
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即日逮捕の可能性が高いと指摘された黄之鋒さんは、香港残留の決意を語る。この判断が正しいのか誤りなのか、現時点では分からない。しかし、中共に対する希望的な観測は禁物だ。

独自の香港=都市国家論を唱えた知識人は6月になって寝返り、国安法支持を訴え始めた。脅しか、洗脳か…チベットでも憂国の志が一転して中共の代弁者に成り下がるケースがあった。
▽結成会見するデモシスト'16年4月(AFP)
AFP結成会見のデモシスト16年4月.jpg

取り分けメディア露出の多かった民主派の幹部クラスは、共産党に包摂される事態も想定すべきだろう。20数年先だった香港完全併呑までのモラトリアムは、いきなりゼロになったのだ。

【外交文書を「遺物」と破り捨てる】

「全人代常務委員会は6月30日、『香港国家安全維持法』を可決・成立させ、香港政府は即日、同法を施行した」

第2の香港ラストナイト、内外のメディアは一斉にそう速報した。捏造とまでは言わないが、中共が法治国家であるかのような印象を与える記述で、親中プロパガンダの一種だ。

法案の審議もなく、可決・成立の時点ですら中身が明らかになっていない。何が罪に該当するか不明のまま深夜0時前に布告。そして運用も解釈も中共指導部の一存で決まる。
▽警告の横断幕掲げる私服警官ら7月1日(共同)
共同香港警察が1日、フェイスブックに掲載した国安法違反を警告する旗の写真.jpg

国家分裂や政権転覆の政治思想も犯罪と見做されて禁固刑。テロ行為の判定も海外反共勢力との連携も、北京の裁量で監獄に押し込まれる。収監中に“急病で死亡”という秘密裏の死刑も日常的だ。

更に「国安法」が香港刑事法に優先すると位置付けたことで、香港の司法機関は、共産党の一部門と化した。基本法にあった三権分立は行政・司法が失われ、残る議会も9月には実質消滅する。
▽即日連行された立法会のウォン議員7月1日(HKFP)
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中共当局者は、同法での摘発者は本土で裁かれるケースも有り得ると威嚇。昨年来、多くの香港市民が反対した「逃亡犯条例」は、より凶悪な弾圧法となって実現してしまった…

「高度な自治を認めた『一国二制度』を完全に形骸化させるとして懸念が広がっています」(NHK)
▽プー不在の返還23周年式典7月1日(AP)
香港は1日、中国返還から23年を迎えた=A.jpg

こうした定型句の表現も気に入らない。形骸化が進んでいた「一国二制度」は6月30日をもって終わったのだ。また’84年に首脳が署名した「英中共同声明(中英連合宣言)」の解説も的を射ていない。

「歴史的文書であり現実的な意義はない」

中共外交部は’17年6月、そう明言した。共同声明は’85年に両国が批准・発効した正式な外交文書だが、中共側は何の効力も持たない「歴史の遺物」と切って捨てたのだ。
▽林鄭月娥に指導するプー’19年11月(新華社)
林鄭月娥に指導するプー新華社19年11月.jpg

外交合意を後継政権が反故にする南鮮とも似ている。国際慣習・外交ルールの無視は罰則こそないが、国家の信用を著しく毀損する自殺行為だ。だが3年前、中共が国際的な非難を浴びることはなかった。

欧米も我が国も、中共を甘やし続けた。そのツケが巡り巡って、自由な香港を愛する人々の口と手足を縛り上げる結果となった。

【託された“反共のバトン”】

「チャイナは香港市民との約束を破り、国際社会への義務に反した。英国は香港市民に果たしてきた責任に背を向けない」

英ラーブ外相の緊急声明は、引き続きの関与に触れたものの、お説教の域を出なかった。優遇措置の撤廃など制裁に踏み切った米国も同様で、ポンペオ国務長官の声明も煮え切らない。

「CCP(中共)は香港人に自由な50年間を約束したが、23年間しか与えなかった。米国は香港が権威主義に飲み込まれるのを傍観することはない」
▽香港市内で新聞配る親中派7月1日(AFP)
AFP国旗の前で新聞を配る中国政府支持者。香港にて(2020年7月1日撮影.jpg

英米は国際金融ハブという香港の独自機能を麻痺させ、破壊するパワーを持つが、本丸には斬り込まない。ボルトン告発本にあった「巻き込まれたくない」というトランプ発言は、残念だが本音だろう。

中共との対立を避ける我が国やEUは言わずもがなだ。欧州諸国の中には大使召還で抗議する国があると夢想したが、期待は外れた。武漢ウイルス禍の世界的混乱に乗じて賭けに出た習近平の勝利ではないか。
▽逮捕された民主派の男性7月1日(公安SNS)
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弾圧法の布告から半日も経たずに逮捕者1号が公表された。香港独立の旗を持っていた男性だ。街頭で旗を掲げていたのではなく、職質でバッグの中にあったのが見付かり、摘発されたという。

この日、繁華街には抵抗を決意した約1万人が集結し、声を上げた。警官隊の対処は予想通り強硬で、夜半までに国安法違反容疑などで300人以上が逮捕された。
▽抗議には英領時代の香港旗が登場7月1日(AP)
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海外特派員のリポートは旧時代と大きく変わらないが、香港の中立系メディアは、どう報じているのか。一部の民主派はSNSへの投稿を控え、過去の写真の削除を始めているという。

今後、香港市内で「天滅中共」の幟や「香港独立」のプラカードを目にすることはない。街頭での示威行為のみならず、単純所持も違法と認定されたのである。
▽国安法支持で気勢を上げる親中派6月30日(AP)
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自由を訴え、政権を批判するスローガンは街から消え去り、代わって五星紅旗の群れが出現した。民主派の弾圧と同時に、親中派の横暴が黙認・推奨されるようになったのだ。

数十万人規模に膨れ上がった昨年7月1日の返還記念日デモが、まるで並行世界の出来事のように思える。行政長官は追い詰められ、民主派陣営は希望に満ちていた。
▽返還記念日の大規模抗議デモ’19年7月1日(SCMP)
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習近平が狼狽し、機動隊員や交通警官が実弾の水平射撃を開始したのは、その後だ。無抵抗の青年が腹を撃ち抜かれるシーンに沈黙した先進国のリベラル派は、香港の惨状にも目を瞑るだろう。

たった1年で何もかも変わった。自由な社会を築くのは長い歳月と努力が必要だが、奪うのは一瞬…今の香港は可視化されたチベットであり、東トルキスタンだ。
▽公安部隊に拘束された男性7月1日(ロイター)
ロイター71香港で行われた国家安全維持法への抗議集会で、機動隊に拘束される男性.jpeg

中共の蛮行と向き合い、戦うのは誰か? 反共の最前線に立っていた香港の若者から、先進各国の責任ある大人達にバトンは託されたと心得よう。



最後まで読んで頂き有り難うございます
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参考記事:
□HKFP7月1日『Hong Kong protesters defy police ban despite security law, as man with independence flag arrested』
□NHK7月1日『逮捕者300人以上に 香港国家安全維持法違反などの疑い』
□産経新聞7月1日『香港は死んだ 目に見えない戦車がやってきた』
□産経新聞7月1日『最高刑は無期懲役、外国人にも適用 香港駐在メディアへ管理強化も…香港安全法全文が明らかに』
□読売新聞7月1日『香港の自治破壊・権威主義にのみ込まれる…米国務長官が非難』
□AFP6月30日『香港民主派政党、解散を発表 国家安全法の可決受け』
□時事通信6月30日『香港の民主派団体、解散相次ぐ 黄之鋒氏の「香港衆志」も』
□時事通信6月29日『香港民主派に恐怖広がる 「逮捕情報」出回る―国家安全法、30日にも成立』
□BBC6月30日『【解説】 中国の「香港国家安全維持法」 香港市民が恐れるのは』
□JB Press4月16日『中国人のむごいアフリカ人差別、コロナ禍で露骨に』
□AFP4月15日『中国のマクドナルド店舗、黒人の入店禁止で物議 米本社が謝罪』
□CNN4月13日『Africans in Guangzhou are on edge, after many are left homeless amid rising xenophobia as China fights a second wave of coronavirus』

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