米朝対話の失われた10年…忌わしき観光名所=板門店

北兵士亡命劇の映像公開に中共特使の訪朝が待ったを掛けた。成否が問われる中、トランプ大統領の回答はテロ支援国家の再指定。米国の対北迷走“失われた10年”は終わりを告げた。
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側溝にタイヤが嵌り、運転不能と判断した兵士は車両を降り、南方向に走る。直後に北朝鮮警備兵4人が現場へ到達。至近距離から銃撃するが、頭部や脚には当たらず、逃亡を許す。

板門店で11月13日に発生した北兵士亡命事件の映像が公開された。編集が加えられ、不自然に途切れる場面もあるが、南鮮警備兵のカメラは、車両が接近する段階から、状況を追っていた。
▽「72時間橋」に向かう軍事車両(公開映像)
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JSA(南北共同警戒区域)の北西にある通称「72時間橋」に向かって1台の軍用車両が猛スピードで接近。微かな手振れから、異常を察知した南警備兵が手動で撮影を試みたことが判る。

車両が難なく橋を越えた後、北側にある板門閣などから北警備兵が一斉ダッシュ。アラートが鳴り響いたのか、映像からは判別できない。北警備兵は目視して現場に向かったように見える。
▽板門閣から駆け出す北警備兵(公開映像)
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時間的には充分だったが、数メートル先から放ったライフル弾は標的に当たらない。北亡命兵が複数被弾したのは、どのエリアだったのか…映像は熱源感知カメラに代わり、救出するシーンで終わっている。

「亡命者が落葉に覆われていて肉眼で確認できず、亡命者を探すのに時間が掛かった」
▽塀際に倒れこむ北亡命兵(公開映像)
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南鮮軍関係者は、そう説明する。北亡命兵が MDL(軍事境界線)を突破してから救出作業まで実に40分以上が経過。対応の遅れについて、南鮮国内では批判の声も噴出する。

亡命者が南側エリアで倒れているにも拘らず、南鮮警備兵は対応射撃どころか、警告射撃も行わなかった。JSAの交戦規定を厳格に遵守した模様だが、北兵士の徒歩亡命は想定された事態だった。



最も深刻な問題は、とりわけ南鮮側に「休戦中」という意識が薄まっていることだ。板門店はツアー客で賑わう観光スポットに堕落したが、南北両軍が常に向き合う「緊迫の最前線」である。

【北警備兵が震える処刑地獄】

板門店で銃声が響いたのは33年ぶりだ。北朝鮮を旅行中のソ連大学生ヴァシリー・マトゥザックは’84年11月、観光ツアーで訪れた板門店から徒歩でMDLを越えて南鮮に亡命した。

続いてマトゥザックを追う北警備兵もMDLを突破。激しい銃撃戦に発展し、北兵士1人と南兵士3人が死亡、米国兵も首を撃たれる重傷を負った。北もまた、観光ツアーに商売気を出していたのだ。
▽大学生亡命事件20年の追悼式典’04年(S&S)
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この銃撃戦の8年前には、米国兵が北警備兵に惨殺されるポプラ事件が発生。第2次朝鮮戦争勃発の寸前まで緊張が激化する中、金日成の命乞い土下座で事態は終息する。1代目からヘタレだ。

JSAは文字通り、南北の兵士が共同で警邏するエリアだったが、ポプラ事件を契機に、MDLを挟んで両軍が向かい合うスタイルとなった。南北兵の完全隔離が、観光地化促進の原因でもある。
▽板門店ポプラ事件’76年(file)
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「朝鮮戦争の休戦協定に違反した」

映像を公開した在南UN軍司令部の軍事停戦委員会は、北朝鮮側の重大な違反行為と結論付けた。北兵士がMDLを越えて“南侵”したとの情報は、事件発生当初から出ていたものだ。

しかし、実際の映像を見て印象は変わった。亡命兵を追う北警備兵はMDLを跨いだことに気付き、慌てて引き返す。緊迫した状況と相反するコント風の切ないシーンだ。
▽ラインに気付き戻る北兵士(公開映像)
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もちろん停戦委は発砲行為も問題視するが、休戦協定ではJSA内では規則上、短銃しか携行できない。映像では2人の北警備兵がアサルトライフルを所持・狙撃している。

エリア内に隠し置いていたのではなく、ダッシュする瞬間から、北警備兵の手にはライフルがあった。自動小銃の常時携行は、南側の監視施設からも把握できるはずだ。休戦協定は形骸化している。
▽現場に駆け付けた北警備兵団(公開映像)
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重体だった北亡命兵は一命を取り留めたという。一方、敵前逃亡を許した北警備兵や担当将校には厳しいペナルティが待つ。出身階層によっては処刑となるだろう。誰も報われない亡命劇だ。

そして、映像の公開が大幅に遅れた理由も判った。

【北京発~平壌便の最終フライト】

北兵士亡命事件の現場映像は当初、11月16日に公開される予定だった。ところが突然キャンセルされ、無期限延期扱いとなる。南側の交戦規定違反など様々な憶測を呼んだが、理由は別にあった。

「大きな動きだ。何が起きるか見てみよう」

トランプ大統領はTwitterに、そう書き込んだ。中共指導部が特使の北朝鮮派遣を発表したのである。在南UN軍司令部は、映像公開が特使訪朝に水を差す形になることを嫌った。
▽平壌入りした宋濤11月17日(共同)
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特使は中共対外連絡部のトップ・宋濤(そうとう)で、11月17日に平壌入りした。そして4日間の滞在を終え、20日に北京に戻った。事件映像は、訪朝の成果を見極めた上で公開が決まったのだ。

訪朝した宋濤は、序列2位で立憲民主党幹部の古いお友達でもある崔竜海らと会談。しかし、金正恩との接触は実現しなかった。それに関して、中共側は「成果なし」とは表向き言わない。
▽宋濤と会談する崔竜海11月17日(AP)
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「特使派遣は先月開かれた党大会の概況を報告するため」

中共対外連絡部は、各国の共産党や極左政党を指導する工作機関で、朝鮮労働党との通常窓口だ。宋濤は今年8月に来日した際、民進党の謝蓮舫らと接触、連携を確認している。
▽党本部で謝に指導する宋濤8月7日(民進HP)
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特使と呼ぶには不釣り合いだった。宋濤は習近平の側近の1人とされるが、党内序列も低く、謝蓮舫に指導が出来ても、金正恩のカウンター・パートには成り得ない。

そうであれば何故、トランプ大統領は期待を表明したのか。ホワイトハウスが特使の格を見誤ることはない。北朝鮮に対する北京の決定事項を伝えるなど、宋濤は一定の役割を担っていたと推測する。
▽北京に舞い戻った宋濤11月20日(聯合)
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中共宣伝機関は事実関係を伝えるのみで論評を加えない。特使訪朝が成功だったとも失敗だったとも言わないのだ。ところが、特使帰国の2日後になって注目すべき事実が明らかになった。

北京と平壌を結ぶエア・チャイナ(中国国際航空)の定期運行便が、無期限で停止となったことが判明する。今年4月にも運行停止が伝えられたが、その後も運行は続いていた。
▽中共特使を乗せたエア・チャイナ機11月17日(共同)
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エア・チャイナ側は状況により運行再開もあると説明しているが、特使帰国直後のタイミングで停止が決まったことは象徴的だ。中共指導部が金正恩に対して「NO」を突き付けた格好である。

中共特使が今回の訪朝で利用したのは、エア・チャイナだった。これが平壌順安国際空港からのラストフライトになるかも知れない。

【無責任対話論で失われた10年】

中共特使が帰国した日の夜遅く、トランプ大統領は閣議を開き、北朝鮮をテロ支援国家に再指定した。北京からの報告を受けての決断だったことは想像に難くない。

「核兵器で世界を脅かすだけでなく、北朝鮮は国外での暗殺を含む国際テロ行為を繰り返しサポートしている」
▽閣議で発言するトランプ大統領11月20日(AFP)
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閣議後、記者質問に応じたトランプ大統領は再指定の理由について、そう語った。「国外での暗殺」とは無論、実兄・金正男襲撃だ。更に、金正恩政権を「殺人政権」と言い切った。

繰り返すが、森友捏造キャンペーン始動の少し前に起きた金正男暗殺が、現在の半島危機の始まりだった。国際空港での大胆な犯行。3代目が世界を、中共を敵に回した瞬間だった。
▽金正男暗殺事件伝える地元紙2月(ロイター)
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「重大な挑発で攻撃的な侵害だ」

平壌は脊髄反射で発狂している。ロシアやキューバといった友好国が懸念を表明する一方、我が国や南の親北・朝鮮労働党系メディアは「北の反発を招く」などと米国糾弾に余念がない。

参照:琉球新報社説11月22火『テロ支援国家再指定 北朝鮮の反発招くだけだ』

米国による北のテロ支援国家指定は9年ぶりとなるが、当時のブッシュ政権が決めた指定解除こそが間違いだったのだ。その時、いわゆる対話厨や反日メディアが諸手を挙げて称賛したことを忘れてはない。
▽老朽冷却塔の破壊ショー’08年6月(ロイター)
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金融制裁が完成する目前の2007年、金正日が米側に妥協策を提示。翌年には寧辺核施設の冷却塔破壊ショーなどで米朝雪解けムードが進む。NYフィルが平壌公演を開催したのも同じ頃だ。
▽NYフィルの平壌特別公演’08年(AP)
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ただ米国による指定解除には時間を要した。苛立った金正日は’08年夏、核施設の再稼働に踏み切る。慌てたブッシュ政権は、再稼働の2ヵ月後に、テロ支援国家指定リストから北朝鮮を外した。

そして指定解除の半年後、第2次核実験を強行する。高笑いする金正恩、騙されたことに呆然とするホワイトハウス。指定解除は更なる核・ミサイル開発を促しただけだった。
▽自動車工場視察する金正恩11月(KCNA)
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2007年の米朝対話スタートから10年。米国に収穫はなく、北朝鮮は水爆やICBMなど多くの大量破壊兵器を獲るに至った。金王朝は冷戦に勝利し、親北勢力は北叟笑む。

騙し騙されの「対話」が何の解決にも繋がらなかったことは、この10年が証明している。そして内外の親北勢力は過去に学び、北朝鮮の軍事力をより強固にするべく、見せ掛けの「対話」を連呼し続ける。




最後まで読んで頂き有り難うございます
クリック1つが敵に浴びせる銃弾1発となります

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参考記事:
□ZAKZAK11月22日『北、トランプ氏の「テロ国家指定」に反発か 朝鮮半島にミサイル発射兆候、「異次元の危機」突入の可能性』
□産経新聞11月21日『トランプ政権が北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定 9年ぶり 化学兵器使用を根拠「残忍な体制」』
□ハフポス11月21日「殺人政権を孤立させる」トランプ大統領、北朝鮮をテロ支援国家に再指定』
□日経新聞11月24日『北朝鮮外相、テロ支援国家再指定を批判』
□時事通信11月22日『北朝鮮兵、軍事境界線越える=国連軍「休戦協定違反」-亡命・銃撃事件の映像公開』
□中央日報11月23日『「72時間橋」から北朝鮮亡命兵士の救出まで44分…韓国軍は何をしていたのか』
□産経新聞11月20日『なぜ伝えられない習近平氏中国特使と金正恩氏の会談…焦らして譲歩引き出す?』
□ロイター11月22日『中国国際航空、北京・平壌便の運航を無期限で停止』

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