法王猊下迎えたオバマの雪辱…中共を震わす70分会談

ついにダライ・ラマ14世法王猊下とオバマ大統領の会談が実現した。在米チベット人が歓喜する一方で中共は過剰に反発。1時間を超した会談には重要な人物も同席していた。
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新月を迎えた2月14日。シナ大陸各地や東南アジアのチャイナタウンでは、旧正月を祝う行事が例年通り盛大に行われた。大量の爆竹を打ち鳴らすなど派手なイベントの連続だ。

チベットも同じく新月に正月を迎える。ロサルと呼ばれるチベット暦のニューイヤーだ。しかし、今年のロサルも去年に続いて自粛ムードとなった。

2年前の3月に起きた大虐殺の影響だ。惨劇の記憶が生々しいという理由だけではなく、現在も多くのチベット人が不当に牢獄に収監され、処刑情報も断続的に聞こえて来る。
▼ロサルの儀式を行う法王猊下2月14日(AP通信)
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「多くのチベット地域では、いまも苦しみの最中にあるチベットの人々のことを考慮して新年の祭事を控えている」

チベット暦2137年の元旦、ダライ・ラマ14世法王猊下は、祭事を慎み、祈りを捧げるよう提言した。またチベット難民が多く暮らすカトマンズでは、灯火を手にした尼僧らが沈黙の行進をする光景が見られた。
▼尼僧による灯火のデモ行進2月14日(AP通信)
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お祭り騒ぎのシナ人と追悼の色に染まるチベット人の対比は、虐殺を行った側と犠牲者側の意識の違いを際立たせている。残念ながら、チベット世界の静かなニューイヤーは暫く続きそうだ。

中共当局は、植民地のチベット人に対して正月を華やかに祝うよう異例の通達を出したという。アムド北東部のレゴン(占領名:同仁)ではロサルに続く大祈願祭が開催されたが、町中では行進する武装警官の姿もキャッチされている。
▼レゴンの町を行進する武装警官隊2月18日(ロイター)
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何も変わらない重苦しい状況と各地の自粛ムードが続く中、チベット世界に明るいニュースが届いた。長く待っていた法王猊下とオバマ大統領との会談実現だ。

【DCに翻る喜びの雪山獅子旗】

ヒマラヤを望むマクロードガンジでロサルの説法や儀式を終えたダライ・ラマ14世法王猊下は、山を下り、インドを出国。2月17日にワシントンD.C.に到着した。

在米チベット人たちが待ち望んでいた瞬間だ。滞在先のパークハイアットホテル前には、国旗を手にした大勢のチベット人。法王猊下が車から降りると、自然発生的にチベット国歌が唱和された。
▼滞在先のホテル到着直後2月17日(AP通信)
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熱い歓迎を受けた法王猊下は、ホテル前に並んでいた高齢のチベット女性に突然、話しかけた。何か直感的なものなのか…昨年のマクロードガンジでも同じような光景を間近で目撃した。
▼女性に近寄って話しかける猊下2月17日(AP通信)
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またホテル玄関近くには、民族衣装を着た少年少女から供物を捧げられた。正式な歓迎の儀式。法王猊下は供物を口に含んで祝福した。周囲のSPは厳めしいけれど、心温まるシーンだ。
▼供物を手にしたチベット人少年少女(AFP)
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そして、翌2月18日。いよいよオバマ大統領との会談である。ホワイトハウス前のラファイエット広場には、早くから雪山獅子旗を手にした在米チベットが詰めかけた。
▼ホワイトハウス前に集まったチベット人(AP通信)
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辺りには、記録的な豪雪の名残りが確認できる。寒さが続く中、そこに集まったチベット人の多くは、法王猊下とオバマ大統領の並ぶ写真のパネルを手にしていた。
▼2ショット写真を持ち寄った女性(AP通信)
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これは2005年に上院外交委のイベントで2人があった際のスナップだ。当時、国際的に全く無名だったバラク・フセイン・オバマは合衆国大統領に登り詰めた。

【意外だった会談のオバマ写真】

ホワイトハウス西ウィングにあるマップルーム(地図の間)で開かれたダライ・ラマ14世法王猊下とオバマ大統領の会談は、約70分に及んだ。 メディアには非公開で、会談の頭撮りも許されなかった。
▼ホワイトハウス前に集まったチベット人(AP通信)
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一部の媚中メディアは、会談場所がオーバルオフィス(大統領執務室)ではなく、私的なマップルームだったことを強調。しかし、この対応は過去の歴代大統領と同じものだ。

会談の終了後、なかなかホワイトハウス側は写真を公表せず、暫くして出したのも僅か1枚だけだった。その写真を見てショックを受けた。オバマ大統領は、足を組んだ失礼な姿勢だった…
▼唯一公表された会談写真(ホワイトハウス提供)
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過去の大統領と比較すると、このオバマ大統領の姿勢はどうなのか。法王猊下と歴代大統領との会談は1991年の41stブッシュから始まるが、2001年5月の43rdブッシュの態度は酷かった。
▼対ブッシュ会談2001年5月23日(AFP)
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合掌しているにも関わらず、ブッシュ前大統領は足の組み方も偉そうで、傲慢そのものだ。当時、CNNでこの画像を見て憤慨した記憶がある。一番まもとだったのは、意外にもクリントン元大統領だった。
▼対クリントン会談97年4月23日(AFP)
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背後に扇風機みたいなグッズがあるのはアル・ゴアの影響なのか…この写真が撮られたのも同じマップルームだ。ちなみにモニカ・ルインスキーと密会を重ねていたのはオーバルオフィスだった。

10点満点で43rdブッシュが0点だとすれば、オバマ大統領の態度は3点ぐらいだが、声明は力強かった。

【報道陣が視線を向けた先は…】

ホワイトハウスは会談後、ステートメントを発表した。実質的な最初のセンテンスで「stated his strong support」と記されている。

「大統領は、チベット特有の宗教や文化、言語的なアイデンティティ、中国国内のチベット人の人権の保護に対して強い支持を表明した」

参照: ホワイトハウスHP2月18日『Statement from the Press Secretary on the President's Meeting with His Holiness the XIV Dalai Lama』

強い支持を訴えたのは、人権保護だけではなく、チベット語にも及んでいるのだ。植民地チベットでは中共当局によるシナ語教育の徹底・強化でチベット語が危機的な状況にある。この踏み込み方は良い。
▼ホワイトハウス前で待つチベット女性(AP通信)
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続いて声明は、オバマ大統領が「中道的アプローチを称賛した」と表現。“Middle Way”は「中庸」とも訳されるケースがあるが、これは、有名なスジャータの逸話に因んだ「中道を歩む」という仏教徒的なスタンスだ。

声明に引用された「中道」の仏教的な意味について、米メディアが深く考察することはないだろうが、報道陣は館内から出てきた法王猊下の意外な点に注目したようだ。寒さの中で足許は…素足だった。
▼ホワイトハウスを出る猊下(AFP)
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法王猊下は編み上げのブーツなどを履くこともあるが、素足が正装。この日はサンダルも質素な感じだ。敷地内に雪が残る中、素足だったことに報道陣は驚いていたに違いない。
▼足許をフォーカスした写真
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屋外で会見に応じる前、法王猊下は、残雪の前でふと足を止め、指で何やら描き始めた。仏AFP通信によれば、描いたのは円と2本の線で、雪山獅子旗を表わしたものだと伝えている。
▼立ち止まって指で雪に描く(AFP)
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深い意味はなく、猊下らしいイタズラなのだろうが、細かく報じるAFPも茶目っ気があって面白い。会談後の会見は最後、大きな笑いに包まれて幕を閉じた。

相変わらず余裕のトーンで、優雅な印象もあったが、会談の中身はシリアスだったのではないか…ホワイトハウスから出てきた法王猊下の背後には会談内容の手掛かりとなるキーパーソンの姿があった。
▼報道陣の元に向かう猊下(ロイター)
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1月末に特使としてシナを訪れたロディ・ギャリ氏である。

【会談実現を加速させた“不毛な対話”】

「米中関係の政治的な基礎を損なうものだ。経済危機を前に、米国にどんな利点があるのか」

中共統一戦線工作部の朱維群副部長は2月2日、近く予想される法王猊下の訪米を牽制し、恫喝した。朱維群は1月末に行われた第9回チベット=中共対話の協議代表者だった。
▼会見する統一戦線工作部の朱維群2月2日
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しかし、この恫喝会見に対し、米国側から態度を硬化させるリアクショが相次ぎ、2月4日にギブズ報道官が「2月下旬」の会談を明言。そして11日には具体的なスケジュールの正式発表に至った。

1年3ヶ月ぶりに突如再開されたチベット=中共対話。それは訪米を睨んで対話ムードを演出する為だったが、逆に火に油を注ぐ結果を招いてしまった。
▼会見するロディ・ギャリ特使ら2月2日(ロイター)
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1月26日から始まった対話は、これまでと同じく議論は平行線を辿り、何の実りもなく終わった。そればかりか、今回、中共側はチベット側の特使を湖南省の毛沢東生家に連行する始末だった。

チベット側が特使として派遣したのは、前回同様、ロディ・ギャリ氏とケルサン・ギャルツェン氏。帰国後に会見した2人は失望感を隠さなかった。

しかし、その直後に急展開で法王猊下とオバマ大統領の会談が具体化。訪米に随行したロディ・ギャリ氏は、ホワイトハウスでオバマ大統領に対話の実状を直接リポートする立場となった。
▼会見する猊下を見守るギャリ特使(ロイター)
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それは中共にとって不愉快極まりない状況だ。2月初旬から中共側が過剰な反応を示し続けた背景はそこにある。これまでの歴代大統領との会談とは直前の状況が異なっていたのだ。

オバマ大統領は昨年の北京訪問時に、法王猊下との会談を告知していた。一部には全人代が閉幕し、胡錦濤の4月訪米が終わった後に会談することで中共側が了承していたという説もあるが、真偽は不明である。

【全米が突き上げたオバマ大統領】

オバマ大統領との会談に続き、法王猊下はクリントン国務長官とも会談した。内容は明かされていないが、このコンタクトも中共サイドを苛立たせるに充分なものだろう。
▼クリントン国務長官との会談2月18日(FNN)
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そして翌19日には、米議会図書館のクーリッジ講堂に招かれ、NED(全米民主主義基金)から、民主主義功労勲章が授与された。
▼米議会図書館講堂での授与式2月19日(ロイター)
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今回のDC訪問で講演の予定はないが、授賞式ではスピーチも行われた模様だ。会場には約500人が詰めかけ、その中にはリチャード・ギア氏らの姿もあった。
▼後ろにはハリー・ウー氏の姿も(ロイター)
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この後、法王猊下はカリフォルニアやフロリダを訪問し、24日に帰国するが、最大のイベントとなったオバマ大統領との会談は、ホワイトハウス側の事情があったとも指摘される。

昨年秋の訪米で会談をキャンセルしたオバマ大統領に対しては、根強い批判があった。一部の日本メディアは対中強硬派から非難の声があがったと伝えているが、リベラル派からの突き上げも大きかった。
▼昨年11月の米中首脳会談(AP通信)
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CNNの共同調査では「中共との良好な関係維持よりも人権問題で強く出るべき」と考える米国民が5割りを超えたという。これが我が国との大きな違いだ。

本物のリベラルは人権強硬派であって、激しい弾圧を現在進行形で続ける中共に与しない。中共にシッポを振る連中がリベラルを自称するのは我が国だけの特異な状況である。
▼米議会図書館でのスピーチ2月19日(AP通信)
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今年6月にダライ・ラマ14世法王猊下は、あの長野市に入り、善光寺を訪問する予定だ。3年前、幹事長時代の鳩山由紀夫は猊下と会談したが、昨年11月と同様に次回も、首相として会う可能性は0%より低い。

それは鳩山自身が原因ではなく、激しく突き上げる真性リベラルが居ないという我が国の悲劇的な現状に依るものだ。チベットや東トルキスタンをめぐっては常に、その根本的な歪みが問われる



  〆
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参考記事:
■AFP2月19日『オバマ米大統領、ダライ・ラマ14世とホワイトハウスで会談』
■ブルームバーグ2月18日『米大統領がダライ・ラマと会談-人権や信教の自由を協議、中国は反発』
■CNN2月18日『対中政策、良好関係維持より人権での注文が大事と米国民53%』
■ホワイトハウス公式BLOG2月18日『His Holiness the XIV Dalai Lama at the White House』
■ダライ・ラマ法王代表部HP2月2日『オバマ大統領、ダライ・ラマ法王と会談へ:およびダライ・ラマ法王の特使と中国との対話に関する報告(RFA)』

この記事へのコメント

花うさぎ
2010年02月20日 08:53
アネモネさん おはようございます。

このエントリー、産経新聞に掲載させたいくらいです。見事な視点、分析に敬意を表します。

日本はアメリカ以上の毅然たる対応をすべきなのですが、いまの政権では望むほうが無理ですね。
名前募集中
2010年02月20日 14:34
「中国共産党の幹部らは潔く引退すべきだ」このことばをダライ・ラマに言わせることにいみがあるのでしょうね。アメリカが言ったら角が立ちますから・・・名前募集中

いなんな検索 - ダライ・ラマ 中国共産党の幹部らは潔く引退
http://inanna-search.net/index.php?sword=%83_%83%89%83C%81E%83%89%83%7D%81%40%92%86%8D%91%8B%A4%8EY%93%7D%82%CC%8A%B2%95%94%82%E7%82%CD%8C%89%82%AD%88%F8%91%DE&cmd=search&cat=link&page=1&sbmt=%8C%9F%8D%F5
靖国
2010年02月20日 17:55
アネモネ様、いつも素晴らしいエントリーを有難うございます。非常に勉強になります。
アネモネ様の記事を拝見し、アメリカのリベラルは結構本物の部分があるのに対し、日本のリベラルは背後に中共や朝鮮半島の影がクッキリとあるエセ・リベラルと断言して差し支えありませんね。その証拠に彼らは国内向けに「核廃絶」とか「人権」とか「平和」と声高に叫ぶだけで、中共や北朝鮮に対しては決して何も言いません。そして民主党政権を通じて、日本の国体・社会・教育・家庭を崩壊させ、日本の統治権を中国や朝鮮に渡すために活動しているのが日本のリベラル。すなわちエセ・リベラル。中共・朝鮮の手先。
切葉鳩
2010年02月21日 01:51
はじめまして。

いやぁ、日本のマスコミなんかより、遥かに素晴らしい記事だ!

もうすぐ、ラサ決起の3/10もやってきます。日本政府は期待出来ません。自民で出来なかったことが民主で出来たら、日本の反民主が発狂します(笑)

僕には陣営は関係ない。
とにかく、チベットに自由を。
チベット議連なんかで賛意の声明でも出してもらいたいですね…
bibcat
2010年02月21日 11:44
>オバマ大統領の態度は3点ぐらいだが、声明は力強かった。

オバマ大統領は、チベットを本気で支援するつもりがあるのでしょうか。
下記のBlogを観ると、単に中間選挙を前に米国内の人権派を懐柔するための会談の様にしか思えません。
http://island.iza.ne.jp/blog/entry/1469527/
2010年02月21日 17:37
例えば、『リベラル』とは日本に於いては、一体誰を、どの様な集団を指すのでしょうか?

一昨年のゴールデンウイークに、中国共産党国家主席胡錦濤訪日に対して、雪山獅子旗や青天牙月旗を掲げ共に抗議の意思を行動で示した、アネモネさんや花うさぎ様達の方がよっぽど、弱者擁護、人権擁護、人道主義と言った観点から見れば、鳩山由紀夫総理大臣率いる民主党や福島みずぽ擁する社民党の連中より、リベラルに近く見えてしまった事はどう言う訳でしょうか?

そもそもリベラルとは、何ぞや?と、ネットで調べてみました。例えば、弱者救済とか福祉重視とか、人権擁護とか・・・、少し想像力を働かせて、国家や地域の利益よりも個人の権利や利益を優先する主義とでも考えたら良いのか知らん?。

では、『命を守りたい』と、いのちいのちと薄気味悪く、奇麗事ばかり唱え続けた鳩山総理大臣や民主党。事あるごとに差別反対や人権擁護を唱える福島みずぽや社民党は、一体何者なのかしら?

只の、売国奴。日本国民の主権や安全平和に生きて行く権利を、自分達の権力欲や利益の為に売り渡そうとする者達。

結局、鳩山が唱える『命』も、福島達が喚き散らしている「人権」「平和」も、ある特定の人間集団のそれを指している訳です。

>そして民主党政権を通じて、日本の国体・社会・教育・家庭を崩壊させ、日本の統治権を中国や朝鮮に渡すために活動しているのが日本のリベラル。
靖国 2010/02/20 17:55

結局、奴等にとっては「人権」「平和」も、取り敢えず有権者を騙して政権を奪取する為のツールでしかないのだと思います。
yukichi
2010年02月22日 10:20
「まことに小さな国」「その列島の中のひとつの島が四国」 司馬遼太郎「坂の上の雲 一」の出だし部分です。

日本は、大陸の東の島々が集まった小さな国で、歴史の動きがおそく伝わる、報道が権力・利権維持派によりゆがめられるなど、その社会発展も遅れる傾向があります。

しかし、人びとは現実を見て社会を理解します。きびいしい現実ほど、人々の自覚を深めます。自覚した人々は、社会を変える力となる。 歴史のリクツであり、原動力です。

放送が与党・多数会派に偏り、人々や少数会派の論点を軽視・無視しても、このリクツを変えることはできません。 

明治以来、生産力が上がり国際化が進んだとはいっても、社会の枠組み、少数の権力・利権集団が人々の食べるべき部分からメシを食べている構造は変わっていません。 

しかし、それが永遠につづくかといえば、そんなリクツは歴史にはないのではないでしょうか?
,,,
2010年02月24日 09:39
yukichi様


インドや中国、ロシアと比べれば日本は小さい、でも、ドイツやイギリス、ヨーロッパの国々と比べたら、同じか大きいくらいです。
小さい、小さいというのは変な感じがします


それにただ広ければいいという問題でもないです。
シナ中国やオーストラリアとはと違い、日本はどこへ行っても水があるし綺麗、気候も良い非常に豊かな国土です。凄く恵まれています。

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