|
北京でヤラセ会見を開いた脱北女性は脱北日本人第1号の実妹だった。在朝日本人が北で体験した“地上の地獄”とは…そして、嘲笑された会は拉致をめぐる北朝鮮からのサインだ。 「日本社会は氷のように冷たかった」 見え透いたヤラセ会見、タイミングを見計らったうえでの杜撰な演出だった。 6月26日、北京の北朝鮮大使館で脱北女性の会見が開かれた。テーブル中央に座るのは、北朝鮮を出て日本に暮らしていた女性だ。終始顔を下に向けたままで、用意された文面を淡々と読み上げる姿は痛々しい。 読み上げられた内容は「日本によって誘拐された…」という失笑すべきものだった。会見時間は約20分間。最後に映画『民族と運命』の主題歌を歌って一方的に打ち切られ、集まった取材陣は呆然としたという。 ▽北朝鮮大使館での会見26日(ロイター) 北朝鮮当局は、この女性を「朝鮮人・都秋枝(ト・チュジ)だ」と紹介し、あろうことか日本を拉致国家として非難した。もちろん最初から最後まで北朝鮮当局による芝居だ。 日本の報道各社も、相変わらずの茶番劇を深く掘り下げて伝えることはなかった。ただ会見が開かれ、脱北女性が日本非難の発言をしたという程度だった。 しかし、異様な背景までは追及せず、一面的な伝え方で終わったようだ。呆れるほど低レベルの報道だ。この会見で重要だったのは、騙されて世界各国の多数の現地記者が掻き集められたことである。 北朝鮮大使館側は6月25日夜、プレスに会見予定を伝達した。 「明日午前9時、大使館で緊急記者会見を行う」 ▽会見に駆け付けた報道陣(ロイター) ちょうど26日にはIAEA代表団が平壌に足を踏み入れる。多くの記者は、核問題での重要発表があると予想、会見場にはカメラの放列が完成。取材陣も実に80人規模に膨れ上がった。 最初から騙しで行なわれたのがポイントだったが、日本メディアはその経緯まで伝えていない。さらに、会見した女性は、他の多くの脱北者とは決定的な違いがあったのだ… 【脱北女性スクープ映像を隠すNHK】 「悪い人にだまされて日本に行ったが、日本での生活に絶望した」 その脱北女性は会見中、何度も日本批判を繰り返した。聴くに値しない内容で、ディテールには明らかな嘘が散りばめられいた。 「2003年10月、悪い人たちに唆され、豆満江を越えて中国に渡ったところで無理やりジープに乗せられ、日本へ連れていかれた」 この発言に立ち止まり、脱北女性の正体を報じたメディアは、極めて少なかった。実は、2003年10月「脱北者の兄妹感動の再会劇」として一部で報道された女性だった。 ▽会見する脱北女性(AP) 日本人初の脱北者と知られる人物がいる。宮崎俊輔(筆名)氏だ。96年に脱北し、2000年には飢餓体験などを告白した手記『北朝鮮大脱出 地獄からの生還』を新潮社から出版。一時はTVにもモザイクで出演していた。 会見した女性は、その宮崎氏の実妹だったのだ。 「ドラマチックなの再会劇」をスクープしたのはNHK。宮崎氏が旧満州の瀋陽まで出向き、総領事館スタッフと共に瀋陽北駅で妹と再会、保護するまでの一部始終をNHKのカメラが捕らえていた。 また当時、他の報道局や週刊誌もスペースを割いて伝えた。会見の嘘、北朝鮮当局のデマを完全に暴く素材を各社とも持っているのだが、4年前の出来事を振り返るメディアはなかった… 参照:首相官邸HP平成15年10月21日『瀋陽における脱北者問題について』 ▽再会の舞台となった瀋陽北駅(参考画像) 在瀋陽日本総領事館スタッフが保護に向かうという異例の展開は、日支関係にも微妙な影響を与えるデリケートな要素を含んでいたようだ。しかし、その保護の経緯を北朝鮮当局は重要視していた。 つまり総領事館が直接関わった経緯を逆手に取り、あたかも日本が国家意思で「誘拐した」と情報操作を試みたのだ。杜撰な仕掛けだが、果たしてメディアは、そこに気づいていたのか? そして、数少ない情報を元に、この脱北女性をほぼ特定することが出来た。 【日本人脱北者第1号の3人の妹】 宮崎俊輔氏は手記の中で、自分には3人の妹がいると語っている。 「私の下には香奈恵、尚美、真奈美の妹三人がいた」(『北朝鮮大脱出』28頁) 本では仮名となっているが、会見したのはその中の1人だ。日本政府筋は、石川一二三(ひふみ)さんと見ているという。年齢は、兄の俊輔氏より2歳下の57歳。これだけの情報から、手記で特定していくと1人に絞られる。 「私が働き出したところで稼ぎはたかが知れていた。妹たちはまだ学生で香奈恵は高等中学校五年生、尚美は四年生、真奈美は人民学校四年生…」(前掲書97頁) 現在と違い当時は北朝鮮の高等中学校は5年制。単純に計算すると2歳下の妹とは二女の「尚美」だ。『朝日新聞』は三女と報道しているが、年齢差は5歳以上あり、間違いと考えられる。 ▽会見した宮崎(仮名)氏の実妹(AP) 脱北手記はプライバシー面から通常かなり加工を施す。しかし、内容から判断すると、三女はあり得ない。手記によれば、真奈美は多額の借金を抱えたまま失踪し、その後も完全に兄と連絡を絶っていた。 『朝日新聞』を含め、会見を伝えた報道各社は、北朝鮮当局の紹介通りに、一二三さんを在日朝鮮人と断定。朝鮮人・都秋枝(ト・チュジ)としている。 だが、そこには単純に割り切れない部分があるのだ。 【北朝鮮の壮絶な貧困日本人差別】 兄妹の父は昭和8年頃に入域した在日朝鮮人で、母親は生粋の日本人だ。出身地は神奈川県川崎市で、古い家柄だったという。宮崎俊輔氏は手記の中で何度も自分が日本人であることを強調している。 実際に、宮崎氏が96年の脱北後、帰国した際には母方の戸籍が確認され、日本人としてパスポート代わりの渡航証明書が使われた。日本国籍の所有者であるか否かは、妹たちも同じ状況だ。 ▽『北朝鮮大脱出 地獄からの生還』新潮OH!文庫 兄妹は日本時代、母親の味方で父を激しく嫌っていた。物心がついて暫くするまで、父親が在日と知らず、日本人として普通の小学校に通っていたのだ。 さらに宮崎俊輔氏が自ら日本人と主張する背景には、北朝鮮で受けた壮絶な差別があった… 一家6人が北朝鮮に渡ったのは、帰国事業が始まった翌年の昭和30年。咸鏡南道(ハムギョンナムド)の寒村に送り込まれる。そこで一家を待っていたのは、北朝鮮特有の厳しい監視だ。 ▽北朝鮮国境の監視員(AFP) 日本からの移住者で資産のない者は、最初から「敵対階層」に振り分けられ、満足な住居も仕事も与えられない。とりわけ日本人であることに誇りを持つ母親は苦しい立場に置かれ、差別の目が向けられた。 安全員は母を指して乱暴な口調でこう言った。「名前を直せ」。母はその書類の「民族欄」に「日本」と記し、また「姓名欄」に「宮崎和歌子」と書いていたのだ。私は少しむっとした口調で言い返した。 「母は日本人ですから直す必要はないでしょう」 「ここをどこだと思ってる。朝鮮に来たら朝鮮名にしろ」(前掲書88〜89頁) 是非とも在日朝鮮人に知らせたいエピソードである。こども達も日常的に「チョッパリ」と罵られ、結婚も職業も理不尽な目に遭遇。出身成分という恐ろしい格差の中で、一家は辛酸を舐め尽くす… そこから何が導き出せるのか? 【生き地獄に比べ日本は楽園だった】 恐らく宮崎俊輔(筆名)氏と同様に、会見した石川一二三さんは、自分を日本人と捉えているだろう。本人の意思であると同時に、政府筋が「石川一二三」という名前を示唆していることから、日本籍ホルダーだ。 この場合の日本政府筋とは、外務省本省ではなく在北京日本大使館である。 ▽会見する石川一二三さん(ロイター) そして、一二三さんが体験した壮絶な北朝鮮での暮らしを垣間見ると、会見での日本社会批判の言葉は説得力を持たない。 「日本は子どもが親を殺すような国だ。人間の住む所ではない」 「酒と睡眠薬におぼれる毎日でした…北朝鮮では“苦難の行軍”の時にも幸せだったのに…」 帰国事業で北朝鮮に渡った一家が遭遇したのは、筆舌に難い災厄ばかりだ。与えられた住居は土砂崩れで瓦解、母親は若くして死亡、生まれてきた赤ちゃんも衰弱死…絶望的な生活の果てに飢餓地獄が訪れる。 ▽飢餓宣伝の幼児写真(AP) 一部には過剰な表現もあろうが、食糧難での「松の木の皮の食べ方」などは、体験者にしか描けないリアリティに溢れている。『北朝鮮大脱出』に一二三さんと思われる人物「尚美」は殆ど登場しないが、1人だけ満足な生活を送っていたとは考えられない。 最下層の生活から抜け出す最後の手段として2003年に脱北したのは明らかだ。 だが、なぜ日本で暮らしていた女性が突然、北京に姿を現したのか? 【ヤラセ会見は拉致問題での秋波】 一二三さんは2003年に兄・宮崎俊輔(筆名)氏の尽力で、保護された。日本国内に身寄りがあったのだが、脱北者支援グループによると、帰国後に関係が悪化していたとも言う。 しかし、理由はもっと深刻なものだろう。日本政府筋は「北朝鮮に残る子どもが脅されていたようだ」と明かす。手紙でのやり取りがメーンだったと想像できるが、そこに綴られてのは当然、脅し文句だ。 ▽北京空港での記者質問(AP) 会見で日本批判するという条件を呑まされ、誰にも相談せず北京に向かったと思われる。判っている足取りは先週木曜日21日に日本を出国していたことだけだ。 そして数日間、北朝鮮大使館に拘束された挙げ句、IAEA代表団訪朝のタイミングに合わせて会見がセットされた。仕掛けは実にシンプルで判り易い。 誰も信じる者のいない演説だが、北朝鮮が「拉致」をキーワードに演出した事実を、注意深く受け止める必要がある。何らかのリアクションを求める連中のサインだ。 ▽促されて着席する一二三さん(AP) 表向き北朝鮮は「拉致は解決済み」として素知らぬ振りをしている。しかし裏では、それが日朝間の大きな懸案事項であることを理解し、事態の転換を試みているようだ。 2年前には日本人妻脱北者の平島筆子さんが同じ場所で同様の会見を行なった。それも巧妙に仕掛けられた罠に嵌まった形だったが、日朝関係が完全な膠着状態に陥ったタイミングでのアクションだった。 ▽2005年の平島会見(ネナラ) 脱北女性のヤラセ会見を嘲笑するだけではなく、背後にある戦略やタイミングを注視すべきだろう。それは拉致問題に絡めて北朝鮮が送ってきた“秋波”でもあるのだ。 【今も変わらない北朝鮮=地上の地獄】 北朝鮮当局に騙されてやって来た80人の取材陣は、会見打ち切り後、苦りきった様子だったという。中央日報は会見後の反応を、こう書いている。 「集まった外信記者たちは露骨に不満を吐いては嘲笑った」 嘲笑して終わりに出来る問題ではない。会見した一二三さんの暗い表情から何かを読み取ることは不可能だったのか? ▽終始陰鬱な表情だった一二三さん(AP) それは正に“誘拐犯が人質に強要した嘘会見”だ。犯罪が進行している現場でもある。 宮崎俊輔(仮名)氏の一家が体験した北朝鮮の生活は、凄惨極まりない正真正銘の生き地獄だ。在朝日本人の問題だけではなく、敵対階層の烙印を押された人々すべてに横たわる悲劇である。 世界のメディアは、それを直視し、現在の北朝鮮体制が「対話し、握手する相手」であるか否か、深く自問すべきだ。 〆 最後まで読んで頂き有り難うございます クリック1つが敵に浴びせる銃弾1発 となります ↓ *************** 【side story】 『北朝鮮大脱出』の著者・宮崎俊輔(仮名)氏は、外務省との密約を破って手記を出版したことから悪評も高い。また充分な保護政策を講じない日本政府への痛烈な批判者でもある。 また2005年に会見した平島筆子さんは、北朝鮮内で反日遊説を続けていることから、ダミー脱北者説も根強い。ただし、北朝鮮当局の狡猾さを考えると「犠牲者」の色合いが濃いように考えられる。 恐らく石川一二三さんは今後「広告塔」として利用され、反日活動の最前線に送られるが、それもまた継続する悲劇だ。 参考記事: デイリーNK6月27日“脱北女性ト・チュジは拉致されていなかった” AFPBB6月26日「誘拐され日本に連れて行かれた」と主張する脱北女性が記者会見 西日本新聞6月26日『脱北女性が北京で会見 海外の生活苦を宣伝?』 朝日新聞6月26日『脱北女性が会見「日本社会は冷たい」拉致問題で牽制か』 中央日報6月27日<取材日記>日本が北朝鮮人拉致?…北大使館の“生半可”会見 朝鮮日報6月27日【記者手帳】北朝鮮大使館のおかしな会見 |
| << 前記事(2007/06/27) | トップへ | 後記事(2007/06/29)>> |
| タイトル (本文) | ブログ名/日時 |
|---|---|
北朝鮮へは、いつでも帰国可能を証明した脱北女性
<html> <font size="3"> 【写真は、在日の大半は自由意志で日本に来た事を示す朝日新聞記事】「昭和34年(1959年)7月13日 朝日新聞」第2面 -大半、自由意思で居住 外務省、在日朝鮮人で発表 - </font> <font size="5">北朝鮮へは、いつでも帰国可能を証明した脱北女性</b></font> <font size="... ...続きを見る |
屋根の上のミケ 2007/06/29 00:57 |
社会保険庁改革は、反日運動の拠点である「自治労」つぶしであり、「戦後レジームからの脱却」の大きな一歩...
年金5000万件の処理漏れの原因を作った「自治労」が、実は、中国や北朝鮮と一緒になって、わが国の戦争犯罪を追及する運動の中心であることは、意外と知られていない。 ...続きを見る |
草莽崛起 ーPRID... 2007/06/29 09:29 |
緒方ごときでお茶を濁すな!
東京地検特捜部が緒方重威を逮捕した。 巷間、地検特捜部の素早い対応を賞賛する声が多い。だが、表もあれば裏もあるのが世の習い。裏側から勘繰ってみるのも無駄ではあるまい。 @緒方について 公安調査庁は戦後、共産党を監視する目的で発足した。共産党が弱体化してその役割を終えた公安調査庁の新任務は、朝鮮総連やオウムの監視に移行した。緒方が長官を務めた当時(93年7月〜95年7月)は、自民党が弱体化し下野あるいは自社さ連立政権の頃で、 北朝鮮との胡乱な動きがあった時代 だった。緒方は立場上、その辺りの情報を... ...続きを見る |
風来坊の口上 2007/06/29 14:46 |
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
|---|---|
こんばんは。 |
現役保険営業マン 2007/06/29 00:46 |
脱北女性が北朝鮮に再帰国したニュースの背景が良く分かりました。表面的な内容に留まっていますが、この事件に関する私のブログをトラックバックさせて頂きました。よろしくお願い致します。ミケ |
屋根の上のミケ 2007/06/29 01:00 |
こんな脱北女性が自力で「酷い国・日本」から「脱出」できたのに、北朝鮮政府は、在日朝鮮人の 脱日 に何の言及もしないとは、残酷ですね〜。 一刻も早く、酷い国から在日朝鮮人の皆さんを救ってあげましょう! 日本が再び帰国船を仕立てて、朝鮮人の皆様を全員、楽園の祖国へお返しして差し上げれば、少しは悪者日本のイメージ改善に繋がること間違い無し! |
梅昆布茶 2007/06/29 01:37 |
梅昆布茶様。 |
神谷晃良 2007/06/29 01:52 |
これって...日本人が朝鮮人女性を拉致する現場をNHKが撮影して感動の兄弟再開劇として報道したが実は拉致でしたって言ってますよね。 |
taka 2007/06/29 02:07 |
一日も早く日朝間の国交を正常化し、双方が自由に往来できるようになれば、こういう問題も解決すると思います。いろいろな懸案事項はあると思いますが、ここは安部総理の英断に期待します。まず道を開けましょう。 |
ジェラード 2007/06/29 08:05 |
このニュースを見ているうちに、2005年に北に舞い戻った脱北者の(平島筆子さん)の異様な会見を思い出しました。 |
アサピー嫌い 2007/06/29 09:26 |
(つづき) |
アサピー嫌い 2007/06/29 09:27 |
>背後にある戦略やタイミングを注視すべきだろう |
sdi 2007/06/29 10:04 |
日朝間だけでなく、他のどこの国とも国交をしたがらないのは、北朝鮮です。 |
アセアン 2007/06/29 13:56 |
北の企みは、タイミングは絶妙だったが、如何せん中身がお粗末だった。 |
風来坊 2007/06/29 14:43 |
伝えられている情報では、北では、キムに連なる特権階級の暮らしは、なるほど目も眩むほどの贅を極めたものだ。プール付きの壮大な御殿に糖尿病になるほどの飽食。 |
ドラージェ 2007/06/29 14:53 |
在日の方にも北に帰って欲しいです。日本は北より住み難いと同胞が言ってるのですから本当です、在日の皆さん。文句言いながら日本にすみ続ける必要は無い。金豚のためにかえるべきです。 |
K8 2007/06/29 17:51 |
>現役保険営業マン |
アネモネ 2007/06/30 05:05 |
>sdiさま |
アネモネ 2007/06/30 05:06 |
"north korea japan beijing"でググったら、アメリカでもニュースになっていることが分かります。中国語のニュースにもなっています。 |
morimoto 2007/07/01 00:05 |
初めまして。 |
浅 2007/07/15 01:26 |
| << 前記事(2007/06/27) | トップへ | 後記事(2007/06/29)>> |