台湾国を護る十字架の誓い…警戒高まる中露同時侵攻

ウクライナ情勢緊迫から中露同時侵攻説も囁かれ始めた。台湾有事の引き金になり得る中共内部の予震も感知。一方、欧州の歴史ある小国は軍事侵攻を阻むべく“防護壁”の石を積み上げる。
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「一方的な現状変更の試みに反対すると共に極めて深刻な懸念を伝達し、中国側に強く自制を求めた」

岸信夫防衛相は12月27日夜の記者会見で、そう語った。この日開かれたテレビ形式の会談で、岸防衛相は中共国防部長に対し、東シナ海や台湾海峡など幅広い分野で問題を指摘。会談は2時間に及んだ。

異例だったのは、日本側が会談を要請したことである。今年2月の海警法施行以来、岸防衛相は個別会談を求めていたが、中共側は先送りを続けてきた。それが漸く年末になって実現する運びとなった。
▽記者会見する岸信夫防衛相12月27日(産経)
産経中国国防相とのテレビ電話会談後、記者会見する岸防衛相12月27日夜.jpg

「中国の軍事的活動が地域の安全保障上の強い懸念となっていることを中国側が正確に理解し、責任ある行動を取るよう隣国のカウンターパートとして強く求めた」

尖閣海域で常態化する中共武装船の領海侵犯以外にも喫緊の課題が積み重なる。防衛省のプレスリリースには明記されていないが、恐らく2時間の会談では、空の威嚇行為にも抗議したと思われる。

今年8月以降、中共軍機による我が国ADIZ侵入が急増。空自機のスクランブルは、10・11月とも100件を突破した。半年前の5倍にのぼる異常事態である。
▽急増傾向は台湾西部方面とも連動(産経)
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11月19日には中ロ両空軍の爆撃機4機が、東シナ海上空を飛行し、沖縄・宮古島間を抜けた。中露艦隊の津軽・大隈海峡航行が衝撃を与えた直後で、深刻に受け止めた岸防衛相は、こう指摘した。

「両国の度重なる軍事演習は、我が国に対する示威行動を意図したものと考えられる。更に軍事的な連携を深めて行く可能性も否めない」
▽テレビ会談に臨む岸防衛相12月27日(防衛省HP)
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示唆に富んだ発言だ。新冷戦構造という表現は最早生温い。中共・ロシア両軍の連携は第3次大戦の枠組みに直結し、ユーラシア大陸の東と西に戦雲を呼び込んでいる。

【支那人暴挙で決意したリトアニア】

2019年7月、香港では反送中デモが無限の広がりを見せ、数十万人が街頭に繰り出すケースも珍しくなかった。その中、手を繋いで抗議の意思を表す者達も現れた。「人間の鎖」である。
▽人間の鎖で抗議する香港市民’19年8月(日経)
日経19年8月23日香港で人間の鎖.png

人間の鎖はバルト三国発祥の平和的な抗議の手法だ。’89年に三ヵ国の200万人が一斉に手を繋ぎ、ソ連からの独立を訴えた。同年末のベルリンの壁崩壊に連なる歴史的な抗議で「バルトの道」と呼ばれる。

香港で発生した人間の鎖を意気に感じたリトアニア国民有志は、30周年の記念日に香港旗を掲げ、民主派にエールを送った。そこで後にEUの基本方針をも揺るがす事件が起きる。
▽ビリニュスでの「人間の鎖」’19年8月23日(AFP)
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チベット支援者らが集まった首都ビリニュス中心部で、人間の鎖切断を謀る集団が出現、現場は大混乱に陥った。不逞支那人が五星紅旗を振り回す騒擾事件である。

「一部の外交官が違法行為の企図に関与した」

騒擾事件についてリトアニア外務省は声明を発出し、非難した。警察当局は現場で2人の支那国籍者を摘発すると共に、中共大使館の職員が妨害行為を煽動した事実を突き止めたのだ。
▽参加者を脅す支那人集団’19年8月23日(LRT)
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中共公館が指揮する平和的集会への殴り込み事件は、長野市など各国で発生している。勿論、北京からの指示だが、リトアニア国民にとって人間の鎖が特別で尊いものであることを理解していなかった。

更に同年12月、リトアニアの外交転換を決定付ける事件が起きる。北部にある世界遺産「十字架の丘」で支那人観光客が十字架を投げ捨てる動画が発掘され、波紋が広がった。



「今日は良いことをした。私達の祖国は素晴らしい」

北京語を話す2人の女は、笑いあった。放られた十字架には漢字で「香港光復」と記されていた。香港民主派のスローガンを刻み、祈りを込めて誰かが丘に捧げたものである。

「恥ずべき、実に恥ずべき行為だ。我が国で最も神聖な場所で、そのような蛮行した者の再入国は有り得ない」

リトアニア外相は怒りを露わにし、不敬行為を働いた女をペルソナ・ノングラータに指定する方針を表明。そして、外相以上に衝撃を受け、憤慨した国民も多かった。
▽北部シャウレイにある十字架の丘(BBC)
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十字架の丘は、ドイツ騎士団に落とされた城の跡に築かれた。帝政ロシア占領下の蜂起で死亡した者を偲び、遺体を弔う代わりに十字架を立てたことが始まりとされる。

ソ連占領下でも抵抗の象徴として十字架は増え続けた。モスクワの共産主義者は丘の更地化を目論んだが、失敗に終わった。リトアニア人の苦難と祈りの歴史、自主独立への渇望が具現化した巡礼地だ。

「チャイナに対する認識を変えるターニングポイントとなった」

リトアニアの政治学者は、2年前に起きた事件をそう振り返る。

【報復と恫喝がEUの風向きを変えた】

「リトアニアとの交流協力関係に新たなページを開いた」

台湾国外交部は胸を張り、意義を強調した。11月18日、首都ビリニュスに「駐リトアニア台湾代表処」がオープンした。台北ではなく台湾の名を冠した外交機関の設置は欧州初となる。
▽台湾代表処開設を祝う職員ら11月18日(AP通信)
AP通信11月18日駐リトアニア台湾代表処」のプレートの前でポーズを取る職員ら.jpg

リトアニアは今年7月に事実上の台湾国大使館開設を表明。中共は発狂して圧力を掛けたが、少しも揺るがなかった。続いて11月下旬には議員団が台湾国を訪問する。

エストニア・ラトビアを含むバルト三国議員団という体裁だが、10議員中リトアニアが過半数の6人を占める。団長を務めるリトアニアのマルデイキス議員は蔡英文総統との会談で、こう語った。
▽バルト三国議員団迎える蔡総統11月29日(ロイター)
リトアニアは台湾と経済協力の強化をめざす(11月、台湾の蔡英文総統と会談したバルト3国議員団)=台湾総統府提供・ロイター.png

「台湾と友好関係を構築することはリトアニア国民から広く支持を受けている」

中共はWTO違反上等でリトアニア製品の全面禁輸を打ち出した他、多国籍企業にも圧力を掛けた。腐った親中派のドイツ財界が命令に従う動きを見せるが、今のところ報復は裏目に出ている。

「加盟国へのあらゆる政治圧力や威圧的措置に対抗する用意がある」

EUは12月8日、外務・通商代表の連名で加盟国のリトアニアを擁護する声明を発表。禁輸措置が事実であると確認した際は、WTOに訴えて問題化すると明言した。
▽報復指令を受けた独自動車部品大手12月(LRT)
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今年10月、EU本会議は台湾との政治関係強化を謳った文書が採択され、翌月には議員団が台湾国を初訪問。採択文書には同国に置くEUの代表所名を「台北」から「台湾」に変更する方針も盛り込まれている。

議員団に関しては、仏の上院・下院が相次ぎ訪台団を送り、北京を震撼させた。総人口300万人に満たない小国リトアニアの強い意志が欧州の台湾シフトに繋がった格好だ。

「台湾が直面するサイバー攻撃や情報戦・軍事威嚇は、我々がロシアの脅威に晒されている状況と、極めて似ていることに驚く。中露の動きは連動している。台湾支援は欧州の安全保障に直結する」
▽単独取材に答えるマルデイキス議員12月(産経)
産経12月リトアニア国会で産経新聞と会見するマルデイキス議員.jpg

マルデイキス議員団長は帰国後、そう語った。台湾の民主主義が崩壊すれば、影響はドミノ現象で欧州にも波及すると指摘する。大国に蹂躙され、自力で自由を取り戻した歴史ある国家からの警鐘である。

中米ニカラグアの国交断絶宣言で台湾国と国交を持つ国は14ヵ国に減った。それでも蔡英文政権には追い風が吹き続けている。台湾国を軍事侵攻の危機から救う為に、この風が一層強く吹くことを願う。

【中南海に潜む台湾国侵攻のトリガー】

「共産党史上、前代未聞の異常事態だ」

さしもの石平さんも驚きを隠せなかった。12月9日付けの中共核心的機関紙に掲載された改革開放に関する論文。長い記述の中で鄧小平や江沢民・胡錦濤を讃える一方、習近平の名前は一切出てこなかった。
▽金日成並みの神格化が進む習近平11月(新華社)
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連載物の1本という見方もあるが、海外の支那ウォッチャーも「暗に現体制を批判した論文」と注目する。執筆者が党中央委員であることから、専ら反周派の表面化と捉えられ、様々な憶測が飛び交う。

11月の“歴史決議”以降、中共機関紙はプー礼賛一色に染まった。終身首領の安泰と見えたが、抵抗勢力が全て処分された訳ではなかった。そして、CCPの権力闘争はコップの中の争いに留まらない。
▽全宣伝機関がプー礼賛で埋まる11月(産経)
産経新聞やインターネット上で習近平国家主席の業績をたたえる中国メディア=11月9日.jpg

食糧難や失業者増といった内政の失敗も感染症蔓延も党中央とは無関係。黄熊の地位を脅かす中南海の内紛激化が、台湾国侵攻のトリガーとなるのだ。開戦のレッドラインは中共内部にある。

党機関紙の異常運転に続き、中共空軍元上将の劉亜洲が当局に拘束されたとの情報が駆け巡っている。在米支那人作家が発信した第一報はやや曖昧だったが、毎日新聞は複数の関係筋から裏が取れたとする。
▽いわゆる失踪中の劉亜洲(file)
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劉亜洲は、元国家主席で“八大元老”の1人である李先念の娘婿で、以前はプーの側近と称された理論派だ。対日強硬派だが、尖閣占領に否定的で、台湾侵攻にも慎重な論説を残している。

劉の著作内容や台湾侵攻の無意味さを訴える匿名文書が最近、支那国内で俄かに広まっていたとのディープ情報もある。大物軍人の拘束が、台湾有事を見据えた措置だった可能性も捨て切れない。
▽中共軍揚陸演習の映像を繰り返し放映7月(CCTV)
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台湾国侵攻に至る条件が徐々に整ってきた印象を持つ。欧米メディアは、ロシア軍が兵力を増強するウクライナ情勢に注目。一部では、中ロ同時の侵攻開始が囁かれる。時期は北京虐殺五輪の後だという。

しかし年初の米ロ2国間協議で、米側がプーチン案を丸呑みすることも、決裂して開戦となることもない。恐らく対話継続と称して問題は先送りされ、ウクライナ東部の睨み合いは膠着状態が続くだろう。
▽前線を訪れたウクライナ大統領12月6日(EPA)
前線を視察するウクライナ大統領12月6日(EPA).png

ホワイトハウスは軍事・外交面のリソースを割かれ、南シナ海方面は手薄になる。中共にとっては好都合。台湾国や我が国にとっては不安定で不穏な状況が生じる。

北京虐殺パラリンピックの閉会式予定日は3月13日。その直後から、いつ戦端が開かれてもおかしくない危険な季節が始まる。



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参照:
□防衛省HP12月27日『日中防衛相テレビ会談について』
□統幕監部HP『月間緊急発進状況〜11月(PDF)』

参考記事:
□SAKISIRU12月25日『外交的ボイコット:人口280万のリトアニアが、なぜ14億の中国に毅然と闘えるのか?(佐々木正明)』
□AFP19年9月3日『リトアニア、中国大使に抗議 香港民主派の支持集会での騒動めぐり』
□LRT(リトアニア国営放送局)’19年8月23日『Hong Kong solidarity rally in Vilnius met with Chinese counter-protesters』
□BBC’19年12月31日『立陶宛十字架山:香港“反送中”蓝黄交锋缘何引来外长批评』
□LRT(リトアニア国営放送局)’20年1月14日『Lithuania to ban Chinese-speaker who vandalised pro-Hong Kong crosses – Lithuanian FM』
□産経新聞12月25日『リトアニアの訪台議員に聞く「中露が小国揺さぶる手段は同じ」』
□産経新聞11月29日『台湾・総統がバルト三国議員団と会談 民主主義保護へ協力呼びかけ』
□日経新聞12月15日『仏下院議員団が台湾訪問 上院に続き、中国反発』
□WSJ12月14日『中国、台湾めぐりリトアニアに圧力』
□産経新聞12月22日『米、「台湾代表処」開設のリトアニアと「強固な連帯」確認 中国の威圧に対抗』
□時事通信12月9日『中国、リトアニアから輸入停止 EU「圧力には対抗」―台湾問題』
□読売新聞12月24日『トウ氏の名は9度登場、一度も出ない習氏の名…「静かな抵抗」暗に体制批判の文章』
□JB Press12月30日『またも習近平が政敵つぶしか、元解放軍幹部の劉亜洲が「失踪」中』
□毎日新聞12月23日『元軍最高幹部・劉亜洲氏を汚職容疑で調査 習氏、政敵排除か』
□産経新聞H27年10月22日『「中国は武力衝突避けるべき」習主席側近の論文が波紋 尖閣めぐり日中衝突すれば「中国に退路はない」』

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