ウイグル法廷が裁く弾圧全史…“対中非難決議”の霧散無惨

加害者側だった漢族の元公安が“証言台”に立った。ロンドンで開かれたウイグル法廷が弾圧の全容を解き明かす。一方、我が国の無能で不能な国会に習近平指導部は喝采を惜しまない。
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「ある少女は100人の拘束者の前で繰り返しレイプされ、目を背けた者は連れ去られました。例外はありません。全員が飢え、屈辱を受けたのです」

ロンドンで6月4日から「ウイグル法廷」が始まった。第1回目のセッションは4日間で、絶望監獄から生還した亡命者14人と50人以上の専門家が証言・解説し、ジェノサイドの全体像を浮かび上がらせた。

「“生徒”になった人達は数時間に及ぶ授業中、ずっと手足を拘束されていました。人間として扱われていません。犬以下です」
▽収容所の実態を明かすシディクさん6月4日(AFP)
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ウルムチ出身のウズベキスタン人で教師役だったシディクさんは、涙ながらに語った。彼女が勤務した収容所は2ヵ所。強制避妊手術は日常的で、直後に死亡したケースもあったと告白する。

「私は『虎の椅子』に座らされ、鉄製のワイヤーで鞭打ちされました。頭上にある噴出口から熱には耐えきれませんでした」
▽実体験した拷問を語るマフムトさん6月4日(動画より)
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トルコに亡命した51歳のウイグル人・マフムトさんは、拷問のメソッドを詳細に説明した。『虎の椅子』とは、中共が政治犯拷問で使う伝統的な拘束具である。
▽文革以前から使われる支那製『虎の椅子』(SCMP)
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「天井から吊り下げられることもありました」

カザフ国籍だったことから九死に一生を得たオムル・ベカリさんは、拷問を実演して見せた。ベカリさんは来日した際、主流メディアでも大きく扱われた生還者だ。もう3年も前になる。
▽拘束・拷問の過程を再現するベカリさん(RFA)
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証言者の多くは以前に公の場で語った経験がある人物だった。内容は衝撃的であってもリピート感は否めない。だが、ウイグル法廷は隠し玉を持っていた。加害者側からの告発だ。

【擬似溺死の拷問明かす“寝返り公安”】

「私が赴任してから、組織は30万人のウイグル人を捕らえました」

隠し玉の証言者はウイグル法廷第1セッションの最終日に登場した。王レイザン(Wang Leizhan)を名乗る中共の元警察官。容姿と仮名から漢族と見られる。

王は’18年に支那各地から東トルキスタンに派遣された“公安新兵”15万人の中の1人だった。詳しい消息が明かされていないが昨年、ドイツに亡命したという。
▽素顔を隠し証言する王レイザン(BitterWinter)
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「拷問は中央政府から奨励されていたようです。ウイグル人は皆テロリストだと叩き込まれ、例え罪を犯していなくても、時間の問題に過ぎないのだと教えられました」

拷問は一部の看守の暴走ではなく、CCPが主導した組織的な行為だと明かす。そして上司から「可能な限り様々な種類の拷問」をするよう命じられたとして、いくつかの例を揚げた。
▽流出したウイグル人拷問画像(自由時報)
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「囚人の頭にビニール袋を被せ、窒息する寸前に取り外す。手足を縛った上、口にパイプを挿入し、肺に水を押し込む方法もあった」

米保守系メディアは、疑似溺死の殺害方法だと指摘する。元警官は見た目も不審で中共が仕掛けた罠の臭いもするが、同法廷は証人300人から40人を厳選するなど慎重な姿勢で臨んでいる。

40人の中にはBBCのスクープで衝撃を与えたジアウドゥンさんも居た。多数のメディアが彼女を後追いしたが、「15日毎に射たれる謎のワクチン」は無視された。武漢ウイルス人工説と同じ闇を感じる。
▽証言するジアウドゥンさん6月5日(豪Sky)
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「私達は未知の薬を飲まされ、腫瘍など身体に変化が起きた者は連れ去られました」

前出のベカリさんは、人体実験を示唆する体験を語った。強制的な採血も頻繁に行われたという。血の抜き取りに関しては、別のウイグル女性ダウトさんも証言している。

「私達は牢のドア穴から腕を出すだけで、どれだけの血が抜き取られたのか知りません」
▽ウイグル強制収容所の潜入写真(BitterWinter)
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採血は毎日飲まされていた「白い錠剤」と関連していた模様だ。ダウトさんによると薬の服用は厳格で、漢族の極悪看守は完全に飲み込んだことを確認する為に口腔内を入念に調べたという。

「25歳から31歳の拘束者が健康診断の後に姿を消している。彼らは臓器摘出の為に選ばれた疑いが濃い」

既に焦点は、強制的な不妊手術・IUD装着から臓器狩りに移っている。この問題の大御所イーサン・ガットマン氏が6月6日に出廷、生還者20人からの聞き取りで確証を得たと訴えた。
▽大虐殺の地グルジャの監獄横にも火葬場’19年
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同氏は衛星写真で収容所の近くに火葬場が設置される不自然な状況を解説。明らかに臓器摘出後の証拠隠滅で、収容所はウイグル人抹殺だけではなく、巨額の利益を上げていると指摘した。

【英ジェノサイド認定への一里塚】

「移植用臓器の調達に関する深刻な人権侵害の情報は増え続けている」

UN人権理の特別報告者12人は6月14日、支那の臓器狩りに関する「信頼できる情報」を得たと発表。中共政府に対して独立組織による国際調査団の受け入れを求めた。
▽臓器狩り問題の権威ガットマン氏’18年(中央社)
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ジュネーブの中共代表は「偽情報の誹謗中傷」と脊髄反射で反発した。調査団派遣は実現不可能だが、同様にウイグル法廷を「茶番」と罵っていた中共は、多方面から追い詰められた格好だ。

ウイグル法廷は英政府とは無関係の「民衆法廷」である。有罪判決が出ても法的拘束力はなく、習近平指導部は当然のように受け流す。しかし、法廷の結審が英政府に与える影響は大きい。
▽法廷は英国国教会本部チャーチハウスに設置6月4日(AP)
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「ウイグルで起きていることは忌まわしいが、ジェノサイド宣言は司法判断に委ねる」

英ジョンソン首相は1月20日、そう記者に答えた。米ポンペオ国務長官に続き、カナダ・オランダ・リトアニア、そして英議会もジェノサイド認定を行ったが、英政府の立場は議会決定に依存しない。

「この民衆法廷は、政府が行動する義務を怠った時、その空白を埋める為のものだ」
▽陪審員を務めた著名弁護士のナイス卿6月4日(AP)
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ウイグル法廷で陪審員を務めるジェフリー・ナイス卿は、そう意義を述べた。ナイス卿は旧ユーゴ国際刑事法廷でミロシェビッチ大統領らを訴追した遣り手の検察官だった。

中共はUNジェノサイド条約を批准しているが、拒否権を持つP5だ。ICJ(国際司法裁判所)も昨年12月、管轄外だとして審判不可能を表明。その中でウイグル法廷は代替機関を果たす気概を示した。

「この法廷はウイグル弾圧に関連する全ての証拠を文書化する為に不可欠な場です」
▽証言を聞くエイサ議長6月4日(動画より)
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法廷の開設を呼び掛けた世界ウイグル会議のドルクン・エイサ議長は、そう語る。国際社会が活用できる証拠の提供。それは同時に、英政府にも突き付けられる。

ウイグル法廷は9月に第2セッションが開かれ、年末に結審する。北京五輪の直前になるが、英政府は無視できないだろう。ただし、ジョンソン首相が言う司法判断に直結するものではない。
▽写真資料なども精査された6月4日(RFA)
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英議会は1月、イングランドとウェールズの高等法院がジェノサイド認定を行えるようにする法案を審議した。この高等法院の判決に英政府が従うという仕組みである。

ところが、この法案は下院で否決された。全会一致でジェノサイド決議を採択しながら、必要な法整備を放棄…グダグダな印象を受けるが、我が国の議会はもっと悲惨な状況だ。

【永田町“政治協商”議員の決議案潰し】

「このまま国会が閉会して、中国に対して一言の文句も言えない国会議員の集まりだと思われても良いのでしょうか?」



6月15日午後、国会議事堂前で有志の悲痛な声が響いた。3月から先延ばしになっていた対中非難決議は吹き飛び、霧散した。予想を遥かに下回る最悪の事態である。

自民党は同日午前、外交部会など合同会議で決議案を了承。これを受け、自民党幹事長で中共清華大学教授の二階俊博が公明党幹部と協議したが、その席で決議案のゴミ箱廃棄が決まった。
▽精華大名誉教授に選ばれた二階 ‘17年(東方IC)
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「まだ充分に結論に至るまで話していない」

中共精華大教授は記者団に、そう嘯いた。超党派になる前のウイグル議連が提案したのは昨年11月で、今春の採択を目指していた。それが日米首脳会談後に先送りされ、G7にも間に合わなかった。

戦後憲政史に残る汚点だ。元凶が公明党と信濃町であることは間違いない。しかし、中共の衛星カルトに加え、自民党内にも未だ実質的な政治協商議員が多数存在するという事実を直視する必要がある。
▽CCP補助メンバーの政治協商会議(産経file)
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「ただ、党内には採択に消極的な声が根強く、16日の会期末を目前にしても対応はいまだ決まっていない」(6月11日付け産経)

採択を妨害した自民党内の政治協商系議員を晒して頂きたいものだ。他方、野党側は日本維新の会は6月9日に決議案了承し、翌日には“共に民主党”も党内手続きを終えた。

これらも動きが鈍く褒める所でもないが、決議案の空中分解を想定してした上での了承とは思えない。CCPには一定の打撃だ。それでも与党の失点を声高に猛攻撃する定番のスタイルは影を潜める。
▽部会了承でも沈痛な自民護国派重鎮6月15日(産経)
産経新疆ウイグル自治区などでの人権侵害に対する非難決議案が自民党外交部会などで了承され、記者団の取材に応じる下村博文政調会長(左から2人目)=15日午前、党本部.jpg

お上品で控え目な態度は、アンチ自民の反日メディアも同じだ。与党の大失態であるにも拘らず、いつもの口汚く罵る論調は微塵もない。非難決議案の霧散は好都合だったのだ。

命懸けの証言をしたウイグル女性を「嘘吐き女」同然に見下した山口那津男がバッシングされることもない。世界が注目した英のウイグル法廷にしても取り上げた本邦の主流メディアはゼロだった。
▽法廷で嗚咽するウイグル女性タリップさん6月4日(RFA)
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「日本は、多くのウイグル人留学生を受け入れ、知識人を育てた世界で唯一の国です。そうした知識人が今、一斉に消息を絶っています」

我が国で暮らすウイグルやチベット、南蒙・香港人有志らは、繰り返し永田町で訴え続けた。しかし、その声がメディアを通じて拡散される機会は限られていた。
▽緊急会見に臨む有志団体6月8日(ZAKZAK)
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非難決議案採択に向けて暗雲が立ち籠める中、有志は6月8日に緊急会見を開き、全身全霊で訴えた。この席で世界モンゴル人連盟のジャルガルさんが口にした戒めの言葉は重く、肺腑を貫いた。

「独裁国家との友好関係は、ただ独裁者を守るだけです」



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参照:
□Uyghur Tribunal HP
□南モンゴルクリルタイHP6月8日『【非難決議】に関する緊急記者会見』
□南モンゴルクリルタイHP5月26日『【人権弾圧国家にNO】【今国会で非難決議の成立を】』
□世界ウイグル会議HP

参考記事:
□RFA6月4日『Uyghur Tribunal Hears Grim Accounts of Rape And Torture in China’s Xinjiang』
□RFA6月7日『Uyghur Tribunal Wraps up With Testimony on Enforced Disappearances, Detentions, And Deaths』
□Uyghur Tribunal (テレグラフ紙)6月4日『’THE HORROR MADE ME WONDER IF THEY ARE HUMAN’: UK INQUIRY EXAMINES CHINA GENOCIDE ALLEGATIONS』
□BitterWinter6月9日『Raped, Tortured, Humiliated: The Uyghur Tribunal Hears 24 Witnesses』
□BitterWinter6月10日『“We Were Trained to Torture Uyghurs”: A Former Police Officer Speaks』
□Human Rights Pulse6月9日『Uyghur Tribunal Day 4: “We Will Kill Them If We Can”』
□VOA6月14日『Activists Praise UK 'People's Tribunal' on China's Alleged Uyghur Abuse』
□豪Skyニュース6月6日『Uighur woman held in Chinese detention camp tells of 'inhuman torture’』
□Breitbart6月10日『Defecting Officer: China Uses Genital Torture on Uyghurs, Breaks Limbs with Hammers』
□印Chanakya Forum『Former Chinese policeman reveals chilling account of Uyghurs in China’s Xinjiang province』
□AFP6月5日『ロンドンで「ウイグル法廷」、中国による虐待の目撃証言を聴取』
□Forbes2月26日『英法律意見書「ウイグル族のジェノサイドに信憑性の高い証拠」』
□読売新聞6月15日『少数民族の囚人から、同意得ず移植用に心臓など摘出か…中国に国連人権委が調査受け入れ要求』
□産経新聞6月11日『対中決議案、野党相次ぎ了承 自公は足踏み』
□大紀元6月15日『自民外交部会、対中非難決議を全会一致で可決 「全力を挙げる」=下村政調会長』
□ZAKZAK6月9日『中国弾圧下の諸民族“怒りの声” 「インド太平洋人権問題連絡協議会」非難決議求め緊急記者会見』

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