可視領域のシルクロード監獄…“家畜”にされた子供達

青天牙月旗と雪山獅子旗に包囲されたジュネーブのUN本部。各国の追及に中共代表は失点を重ねる。一方、都内で国際組織を旗揚げした「ウイグルの母」は新たな疑惑を投げ掛けた。
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2人のトフティが監獄に消えた。1人は東大大学院でウイグル民族史を研究していた留学生のトフティ・テュニヤズさん。もう1人は北京・中央民族大のイリハム・トフティ教授だ。

10年前の春のことだった。来日した胡錦濤を囲む朝のテーブル。海部俊樹あたりまで遡る歴代総理との朝食会は、空気を読まない安倍前首相(当時)の一言で凍り付いた。

「トフティさんは研究のため一時帰国した際に逮捕され、11年が経過した。彼の奥さん、家族は日本にいる」
▽胡錦濤を囲む朝食会H20年5月8日(代表)
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ヨイショと美辞麗句がお約束の席で、安倍前首相は、ウイグル関連の人権問題を切り出した。予期せぬ発言に胡錦濤は驚きつつ、ただ「私は知らない」とだけ答えた。

トフティ・テュニヤズさんは’98年2月、一時帰郷した時、中共当局に拘束された。歴史資料のコピーなどが国家分裂扇動罪に相当するとの判決を受け、ウルムチの刑務所に消えた。懲役11年の重い刑だ。
▽ウルムチ市内を巡回する武装警察(AP)
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冤罪加算での刑期延長が確実視される中、2009年の冬に刑期満了で釈放となった。安倍首相の直言が影響したのか否か不明だが、関係者によると胡錦濤の帰国後、刑務所内の待遇が改善されたという。

朝食会フリーズ事件から10年、支那訪問中の安倍首相がウイグル問題に切り込むか、注目が集まった。国賓待遇の訪問。ホームではなく、アウェーの北京である。

「日本を含む国際社会が人権状況を注視している」
▽会談する安倍首相と李克強10月25日(共同)
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支那訪問中の10月25日、李克強との会談で飛び出した発言だ。政府関係者によればウイグル問題を念頭に置いたもので、その瞬間、李克強の顔から笑みが消え、渋い表情に変わったという。

効果の程は未知数だ。かつて鋭く斬り込んだ安倍首相であっても、これが現職総理としての限界ならば、我が国が東トルキスタン解放で主導的な役割を担うことは難しい。
▽首脳会談に臨む安倍首相10月26日(AP)
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それでも亡命ウイグル人らにとって、東京が重要なプラットホームであり、国際社会で名誉ある地位を占めていることに変わりはない。

【2人目の獄中ノーベル平和賞候補】

「チャイナの強制収容所は、第二次大戦のナチスのものと全く変わりありません。今、ウイグル人は弾圧され、殺されているのです。私も5人の子供と11人の孫が収容所に送られ、妹は処刑されました」

ラビア・カーディル前総裁の悲痛な叫びが、会場に響く。10月26日に都内で旗揚げされた「自由インド太平洋連盟」。この日は奇しくも、安倍首相と習近平の会談が行われた日だった。
▽結成大会で演説するラビアさん10月26日(産経)
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「自由インド太平洋連盟」には、中共の侵略によって国土と自由を奪われた東トルキスタン・チベット・南モンゴルからの亡命者が参集。その結成大会の舞台に東京が選ばれたことは誇らしい。

「日本というアジアで最も自由で民主的な国で、自由インド太平洋連盟は発足しました。日本国民や多くの支援者に感謝します」

同時に責任も痛感する。アジア地域の侵略や無法行為を他人事とし、見て見ぬ振りを続けてきたのが戦後の我が国だ。これ以上、救いを求める手を跳ね除けることは許されない。



結成大会に合わせ、チベット亡命政権のニャムガル・ドルカ議員が来日。世界南モンゴル会議のテムチルト会長や、オルホノド・ダイチンさんらお馴染みの顔も見られた。

世界南モンゴル会議が発足したのも我が国だった。日本で暮らす有志の結束と行動が新たな連帯組織の足掛かりとなったのだ。しかし、過去の先進的な活動に満足するだけではいけない。
▽ラビアさんと同連盟の役員ら10月26日(産経)
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「米国はこの問題に目覚めた。日本も米国と一緒に問題を発信すべきです」

ラビアさんは、安倍首相に書簡を送った事実を明らかにすると共に、より強い姿勢で臨むことを希望した。数年前の状況と異なり、現在は、米国がウイグル問題の先頭に立っている。

「第二次大戦以来の大量監禁で、アパルトヘイトさながらの公的な人種差別政策だ」
▽会見するルビオ上院議員ら10月10日(RFA)
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超党派の米議員で構成される「中国に関する議会・政府委員会」が10月に公表した年次報告書は強烈だった。この委員会を率いるのが、マルコ・ルビオ上院議員だ。

ルビオ議員は10月10日、記者会見で’22年北京冬季五輪の開催地見直しをIOCに勧告したと表明。更に、投獄されたイリハム・トフティ教授をノーベル平和賞候補に推す意向も明らかにした。
▽不当拘束が続くトフティ教授(ロイター)
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中共指導部が最も嫌がる部分を突く、巧みな戦術だ。ウイグル問題への対応が議員個人に留まる我が国とは対照的である。そして米国の後塵を拝した欧州各国も俄かに動き出す。

【天を衝く亡命者の絶叫】

「彼らがもたらした強制収容所に関する情報は、概ね正確だ」

英国のジェレミー・ハント外相は10月下旬、そう議会で答弁した。英政府は今年8月に複数の外交官を東トルキスタンに派遣。一部で報道される大規模な弾圧が事実であるとの結論を導き出したという。

現地調査の詳しい内容について、ハント外相は説明を控えた。その一方、就任直後の北京訪問で中共外交部の王毅と会談した際、ウイグル問題に言及したことを明らかにした。
▽北京を訪れた英ハント外相7月30日(AFP)
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英紙によると、このタイミングでの発言は、ジュネーブで始まる「対中審査」を援護射撃する狙いがあった模様だ。11月6日、UN人権理で注目の審査が開幕した。

ジュネーブUN本部に続く道では、ウイグル人とチベット人を中心とするデモが行われた。約1,000人の大規模な抗議。デモ隊列の先頭付近には、雅びやかに翻る日章旗も見える。
▽UN欧州本部に向かう抗議デモ11月6日(EPA)
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「チャイナ政府の残忍な弾圧に抗議する為、チベット人とウイグル人はここに結集しました」

世界ウイグル会議のドルクン・エイサ総裁は、語気を強めた。今や亡命ウイグル人のほぼ全員が、祖国で暮らす家族との連絡が不可能になったという。UN人権理は、こうした現実に向き合えるのか?
▽UN本部前で演説するエイサ総裁11月6日(ロイター)
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「ウイグル人やその他のムスリム集団の強制的な収容を直ちに中止せよ」

強硬な姿勢を示したのは、外相の北京入りを目前にした豪州の代表だった。「人権状況の悪化」に懸念を表した英仏に続き、離脱表明したはずの米国が猛批判を繰り出す。
▽UN本部前で抗議するウイグル人11月6日(RFA)
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「恣意的な拘束をやめ、何十万人、何百万人という人々を即座に解放することを要求する」

痛快なまでの波状攻撃だ。中共指導部は非難集中を想定し、外交部次官とウルムチ市長らを派遣。欧米各国への反論を試みたが、これが使えない無能共だった。

【孤児は“家畜小屋”にも入れない】

中共外交部次官の楽玉成は「偏見に満ちた政治的な批判」と逆ギレ抗議。事実上のゼロ回答は中共の基本スタイルだが、ウイグル系と見られるウルムチ市長は、自信満々に“成果”を強調した。

「過激主義思想に染まった研修生も今は施設で文化・スポーツ活動に没頭している。その証拠に21ヵ月もテロが起きていない」
▽人権理で妄言連発の中共代表団(UN)
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先進国では予防拘禁として忌避される権力の濫用だ。しかも、強制収容所に囚われるウイグル人は、過去の犯罪歴もなく、過激思想とも無縁の一般市民である。

2年近くテロが発生していないとの説明も、自家撞着に陥る。習近平が東トルキスタン全土に布告した人民戦争は明確な終了宣言もなく、治安部隊員の増派が続く。
▽人民戦争布告でウルムチに進軍する部隊’13年(Twi)
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大規模施設の存在を渋々認め、それを「訓練施設」などと偽ったことが、運の尽きだ。中共宣伝機関は慌てて「施設内」の映像を垂れ流し始めた。だが、プロパガンダそのものが学芸会レベルである。

仏のAFP通信は10月半ばまでに、現地の政府文書をスクープ入手。収容所が少なくとも181箇所存在し、警棒やスタンガン、手錠に催涙スプレー、更に“釘バット”を大量に調達している事実が判明した。
参照:AFP10月24日『催涙ガスにスタンガン、手錠…中国ウイグル収容施設の実態 180か所超存在』
▽西部トルファンの強制収容所(WSJ)
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教育機関でも留置所でもない。既に衛星写真などで僻地の巨大施設が監視塔と鉄条網で囲まれていることは判明済み。外観も内容物も証拠は揃った。施設の正体を議論する時間は、もう終わったのだ。

「両親が連行されて残った子供を入れる為の新たな収容所が作られています。孤児発生の問題より深刻なのは、子供や若い世代が内陸の刑務所に次々移送されていることです」
▽質疑に応じるラビアさん10月26日(時事)
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ラビアさんは都内の新組織発足大会で、新たな疑惑を提示した。大量収監による孤児の問題は今春の時点で指摘があったが、事態は極めて残酷な方向に推移している。

「生後6ヵ月の乳児から12歳までの子供が、家畜のような扱いを受けている」
▽ホータン市街地のウイグル人母子(NYT)
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中共当局によって畜舎同然の建物に押し込まれる孤児。RFAがコンタクトに成功した「孤児院」のウイグル人作業員は、溢れた子供は「本土」に再移送されると証言する。

最早、UN人権理のような“豪華な劇場”で中共当局と問答している場合ではない。チベット大虐殺から10年がたった。凶暴な全体主義国家による侵略と民族浄化は、見逃されたままだ。
▽審査が行われた人権理事会11月6日(UN)
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列強の植民地争奪戦、或いは大航海時代から少しも人類は進歩していないのではないか…未だに人権意識はファッションに過ぎない。「最後に」と断って、ラビアさんは演説をこうの結んだ。

「チャイナは私達だけを挑発しているのではありません。これは人類、全世界に対する挑発行為なのです」



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参照:
□日本ウイグル協会HP9月9日『在日ウイグル人有識者会議リポート(PDF)』

参考記事:
□ZAKZAK10月27日『ウイグル人弾圧許すな! 亡命活動家らが日本で国際連帯組織を結成「中国の弾圧は全人類に対する罪」』
□時事通信10月26日『「ウイグル人釈放」安倍首相に書簡=中国政府に要求を-カーディル氏』
□産経新聞10月25日『ウイグル民族中心に東京で国際組織結成 中国の弾圧実態訴え』
□RFA7月2日『Dozens of Uyghur Children of Xinjiang Village Camp Detainees Sent to Live in Orphanages』

□Daily Mail11月6日『China dismisses criticism about mass detentions at UN』
□CNN11月1日『新疆ウイグルの「収容施設」、情報はほぼ事実 英政府』
□The Guardian10月31日『UK confirms reports of Chinese mass internment camps for Uighur Muslims』
□大紀元10月25日『新疆ウイグル、拡大する収容施設 催涙スプレーや有刺鉄線の注文も』
□NHK11月7日『国連人権理事会 ウイグル族の問題で中国への懸念相次ぐ』
□産経新聞10月11日『米議員、中国のウイグル政策を痛烈批判』
□CNN2016年10月12日『獄中のウイグル族学者に人権賞、中国政府は非難』

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