グアム包囲射撃予告の暗礁…終幕迫る対UN10年戦争

自称350万人の決戦部隊はグアム包囲射撃の延期で腰砕け。だが王朝崩壊に繋がる撤収命令を金正恩は下せない。最初の安保理決議から11年…UN制裁無視のツケは3代目が全て支払う。
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「視力を失う可能性がある為、閃光や火球を見ない。放射能物質の拡散防止の為に衣服を脱ぐ」

米領グアムの地元政府は8月11日、島民らに向け、核攻撃を受けた際の対処ガイドラインを発表。緊急時の退避行動を指導するなど最悪の事態を想定した準備が進む。
▽グアム島タモン湾のリゾート施設8月13日(AP)
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西太平洋のリゾート・アイランドは、名指しの威嚇で、緊迫する極東情勢の最前線に押し出された格好だ。北朝鮮軍司令官は宣伝機関を通じ、弾道ミサイルの発射について具体的に予告した。

「火星12は、島根・広島・高知県の上空を通過し、射程3356.7㎞を1065秒間飛行した後、グアム島周辺30~40㎞の海上水域に着弾することになろう」

「火星12(KN-17)」は今年4月の平壌パレードに初登場し、5月に発射実験が行われた新型の中距離弾道ミサイル。核弾頭の搭載が可能で、発射に立ち会った金正恩が増産を命じていたとされる。
▽KN-17を視察する金正恩5月(KCNA)
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「ここ数日、近所で米軍人の姿を見なくなった」

グアムで戦跡ツアーを主催する邦人男性は、そう語る。観光産業は通常通りだが、島内の米軍基地関係者は臨戦態勢だ。北のミサイルが領海外の接続海域に着弾するとは限らない。
▽グアム包囲射撃予告伝える南鮮TV8月9日(AFP)
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北朝鮮軍は「グアム島周辺の包囲射撃作戦」と命名。4基のKN-17を沿岸の四方に着弾させる模様だ。しかし通常軌道での試射回数はゼロで、誤差の範囲を超えて領海内や島内に落ちる危険もある。

もし領海に着弾すれば、トランプ大統領は直ちに軍事報復に踏み切るだろう。一方、ミサイルが目標海域に落ちたとしても、それはグアムの米軍基地打撃能力を北朝鮮が保有した証となる。

【金正恩が恐れるランサー召喚】

「グアムを地球上から消す」

北朝鮮軍総参謀部は昨年9月、声明でそう警告した。同時に「ソウルを灰の山にする」とも宣言。これは核攻撃を示唆するものだった。なぜ北はグアムに拘るのか…答えは、声明の前段にあった。
▽包囲射撃予告を報じる地元紙(AP)
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「今後もB1を出動させるなら」

グアム島の米アンダーセン空軍基地には、戦略爆撃機B1-Bが配備されている。第5次核実験後、2機のB1-Bランサーがグアムから発進、ソウル南方の烏山空軍基地に舞い降りた。
▽烏山基地に飛来したするB1-B’16年9月(聯合)
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初めて朝鮮半島に飛来したランサー。金正恩は発狂し、グアムを射程に収めた中距離弾道弾「ムスダン」の発射実験を強行するが、空中で大爆発。脅しは失敗に終わった。オバマ時代の末期である。

「グアムに対して何かすれば、誰も見たことのないような事態が北朝鮮で起きることになる」

トランプ大統領は、北の「グアム包囲射撃」予告に対し、そう答えた。先の「火力と怒り」発言と合わせ、反トランプのフェイクニュース系メディアは批判するが、見当はずれだ。
▽記者団に答えるトランプ大統領8月15日(AP)
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「ムスダン」が計画通り、グアム近海に着弾していれば、オバマはより強硬な発言もしくは軍事力による強烈な威嚇に出ただろう。米軍の行動原理は大統領個人の資質に依存しない。

一方、金正恩が必要以上にB1-Bランサーを恐る理由は分からない。イラク戦争で有名になったバンカーバスターは、F-15Eにも搭載可能で、南鮮空軍にも39機が配備されている。
▽空自と共同訓練中のランサー8月9日(ロイター)
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ランサーは、バンカーバスターの後継となる大型貫通爆弾GBU-57を搭載できる。GBU-57への極端な警戒は有事の際、金正恩が地下深くに遁走すると自白しているに等しい。

対北サージカル・ストライクの先陣を切るのは、日本海に展開する米艦が放つ巡航ミサイルだ。主
要なミサイル基地や空軍施設を短時間で破壊する。
▽巡航ミサイル撃つ米駆逐艦4月(AFP)
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金正恩の居場所が正確に突き止められない限り、平壌空爆は行わないだろう。イラク戦争直前、ブッシュ政権が二正面作戦を示唆した時、金正日は最北部の白頭山麓に逃げ、地下施設で震えていたとされる。

チキンな性格は3代目にも遺伝しているだろう。

【志願者350万人殺到の猿芝居】

「何よりも北朝鮮にミサイル発射を強行させないことが最も重要との認識で一致した」

会談終了後、安倍首相は記者団に対し、そう説明した。8月15日午前に開かれた日米首脳電話会談。具体的な内容は不明だが、グアム包囲射撃予告に関する対応が中心だったと見られる。
▽電話会談終えた安倍首相8月15日(時事)
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米国の対応とは、グアム周辺を舞台にしたターミナル段階での北ミサイル迎撃で、発射ポイントへのサージカル・ストライクではない。ただし、その後の展開は米国側も読みきれていない。

「いかなる攻撃も打倒され、いかなる核兵器の使用も効果的で圧倒的な報復に遭うだろう」

8月14日付けのWSJ紙は、ティラーソン国務長官とマティス国防長官の連名による異例の寄稿を掲載。同時に両長官は、北の対応次第では交渉の余地があることを強調した。
▽会見するティラーソン長官8月15日(ロイター)
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公式の声明ではなく、メディアを媒体にした揺さぶりだ。そして金正恩サイドも宣伝機関を通じ、ホワイトハウスに回答する。WSJへの寄稿発表から間もなく、朝鮮中央通信はこう伝えた。

「愚かな米国の行動をもう少し見守る」

“米国の危険な妄動”が起きない限りという条件付きだが、グアム包囲射撃作戦は凍結だ。21日から始まる米南演習開始を前にした急展開。前日の党機関紙は、勇ましく吠えていた。
▽強硬姿勢を示す8月14日付け労働新聞(NHK)
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「グアム島を包囲射撃圏内に収めた中距離弾道ミサイル『火星12型』は発射命令だけを待っている」

ところが同じ日、視察先で作戦報告を受けた金正恩は、命令を下さなかったという。脚本通りとは言え、3代目の将軍サマはヘタレ過ぎだ。対米決戦に向けて軍に入隊志願した人々も、さぞ興醒めしただろう。

「350万人近くの若者らが軍への入隊や復隊を願い出た」
▽入隊志願者受付に殺到する男女8月10日(KCNA)
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8月上旬から北朝鮮各地で始まった大規模な反米集会。宣伝機関は、行列して入隊志願する男女の姿を映し出していた。わずか3日間で347万人が志願し、決戦用民兵隊の組織が進むと脅す。

もちろんお家芸の寸劇である。94年の第1次核クライシス当時に訪朝していた人物によると、軍関係者や工員、男子大学生が一斉に丸刈りになり、平壌全域が異様なムードに包まれたという。
▽平壌10万人集会の学生ら8月(KCNA)
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とろこが先日の映像を見る限り、入隊志願者さえ普通の髪型だ。アップで映る男女が劇団員だとしても、リアリティに欠ける下手な芝居。最終決戦に挑む度胸も覚悟も3代目にはない。

【11年目に突入した対UN戦争】

北朝鮮当局が宣伝する「350万人入隊」は、米空母の北上やトランプ発言とは無関係だ。宣伝機関によると、UN安保理の新たな対北制裁決議に反発して「志願する国民が殺到した」という。

「これまでで最も厳しい制裁だ」
▽決議採択前のヘイリー大使ら8月5日(時事)
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8月5日の安保理決議2371号採択を受け、米国のヘイリーUN大使は、そう語った。毎回、米側は同じようなコメントを出しているが、北朝鮮の反発は尋常ではなかった。

「史上最悪の制裁」(8月11日付け労働新聞)

難色を示していたロシアが棄権ではなく、賛成に回ったことがショックだったのか…また中共商務部は8月14日、制裁履行のポーズを示し、北朝鮮からの鉄鉱石・海産物の輸入全面禁止を表明した。
▽横断幕には「制裁決議全面排撃」8月(KCNA)
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中共の対北制裁は、抜け道と裏道で構成されている。効果には巨大な疑問符が付くが、金正恩政権が慌てていることは確かだ。直ぐにも“国内の猛反発”を目に見える形で表現するに違いない。

これまで北朝鮮は例外なく、制裁決議に対し、報復措置と称して弾道ミサイル発射や核実験を繰り返してきた。今年6月の2356号決議を受け、翌月にICBMを発射したことは記憶に新しい。
▽対北制裁決議に基づく禁止リスト(産経)
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2006年のテポドン2改発射に伴う1695号決議を皮切りに、UN安保理は計9回の対北非難・制裁決議を採択している。最初の核実験宣言は、1695号決議への報復と位置付けられた。

北朝鮮情勢をめぐる内外の報道では、これらの度重なる対北制裁決議に触れないケースが多い。特に我が国のメディアは、意図的に対北制裁を軽視。複数のメディアが判で押したように、こう表現する。

「米朝の応酬エスカレート」
▽グアム作戦の報告受ける金正恩8月14日(KCNA)
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在ジュネーブ条約機関の対日勧告を「国連の決議」と大騒ぎする一方、UN安保理決議は軽く受け流す。野党や全国紙が唱える“国連中心主義”とは、反日のツールでしかないのだ。

そしてメディアは「トランプvs金正恩」という構図をクローズアップ。「米朝が非難の応酬」などとケンカ両成敗的に高所から論評。北朝鮮が反UNの立場を貫き、国際社会から孤立している事実は伝えない。
▽「核戦争」警告する北UN次席大使5月(中央日報)
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仮にアフリカの小国が安保理決議を無視し続けた場合、新たな決議は軍事行使を含むチャプター7に進み、武力制裁を受ける。これまで北朝鮮が無傷だったのは、P5の2カ国から庇護を受けていた為だ。

ぬるま湯の状況は今後も続くのか…朝鮮有事を回避する落とし所は実に簡単で、金正恩が決議を受け入れ、遵守するだけで良い。北朝鮮には、核とミサイルを捨てアジアの小国として生き延びる道もある。

戦争か和平か…決断するのはホワイトハウスではなく、平壌だ。



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参考記事:
□産経新聞8月12日『グアムで核攻撃への緊急対処指針 「閃光や火球を見てはいけない」「24時間は地下に隠れろ!」』
□NHK8月14日『北朝鮮「発射命令だけ待っている」米への威嚇続ける』
□産経新聞8月15日『金正恩氏「米国の行動をもう少し見守る」猶予設けトランプ政権揺さぶり「妄動続ければ重大な決断」とも』
□時事通信8月14日『いかなる攻撃も打倒=対北朝鮮、交渉呼び掛けも-米長官』
□時事通信8月15日『北朝鮮、米の出方うかがう=ミサイル発射態勢は維持-グアム威嚇の計画完成』
□産経新聞8月10日『グアムに度重なる脅し 背景に空軍基地配備のB1爆撃機の存在』

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