列島バイオハザードの激甚…北とシリア結ぶBC兵器回廊

全国で行われる天然痘テロ対処訓練は何を意味するのか…サリン被害で浮かび上がるシリアと北朝鮮とのBC兵器同盟。日本列島に広域バイオハザードの暗闇が忍び寄る。
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「サリンを弾頭に付けて着弾させる能力について、既に北朝鮮は保有している可能性があるわけです」

4月13日の参院外交防衛委で安倍首相は、そう答弁した。これまでも多くの識者が北NBC兵器の危険性に警鐘を鳴らしてきたが、首相が「サリン」と明言したことは衝撃的だ。
▽外交防衛委で答弁する安倍首相4月13日(産経)
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VXやサリンなどの化合物は高温に弱く、弾道ミサイルへの搭載は技術的に困難とされる。大気圏再突入時の高温に耐え得る装備を北朝鮮が開発しているのか…

ICBMへの搭載は難しくとも、速度が遅い短距離弾道ミサイルなら可能とする見方もある。南鮮の国防部は、そもそも北が大気圏再突入技術を持っていないという呑気な判断を示す。
▽スカッドERの乱射3月6日(KCNA)
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しかし、北朝鮮は弾道ミサイルの大気圏再突入模擬実験を繰り返し実施。昨年3月には、金正恩が見守る中、実験は「成功した」と大宣伝している。

北朝鮮の核・弾道ミサイル開発は80年代に本格化した。並行してVX・サリン弾頭の研究を重ねてきたと考えられる。我が国は以前から、それらを深刻な脅威と捉えていた。
▽実験視察で弾頭を愛でる金正恩’16年(KCNA)
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「弾頭に化学兵器が装填された複数のノドンミサイルによる日本国土への直接攻撃」

旧内閣安全保障室が取りまとめた「草案」には、そう記されていた。対北軍事制裁に踏み切った際に想定される北の反撃マニュアルで、書かれたのは平成6年(’94年)。第1次核クライシスの最中である。
▽量産されたノドンミサイル(聯合file)
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「草案」は非公式・非公開で詳細は不明だが、既に我が国は北の化学兵器弾頭を警戒していたのだ。それから23年が過ぎ、金正恩は隠すこともしなくなった。

【ベールを脱いた北BC兵器部隊】

安倍首相の答弁は予言に近いものだった。外交防衛委で「サリン弾頭」に言及した2日後、平壌で行われた軍事パレードに白装束の部隊が登場した。南鮮メディアは、こう断定する。

「化学・生物・放射能兵器を担当する部隊で、公開されたのは初めてだ」
▽パレードに登場したBC兵器部隊4月15日(FNN)
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白い防護服に身を包んだ奇妙な兵団は、昨年新設されたBC兵器専門部隊だった。ベールを脱いだ北朝鮮軍の特殊部隊。一説には3000人規模の大部隊とも指摘される。

VXによる金正男の暗殺に続く、金正恩のBC兵器保有をカミングアウト。対外的には防護隊という設定だが、北朝鮮が強化する「米国によるBC兵器攻撃」キャンペーンと表裏一体をなす。
▽行進する北朝鮮BC兵器部隊4月15日(KCNA)
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「米帝は世界制覇野望を実現する為なら、我が民族を生物・化学兵器で全滅させることも躊躇わない犯罪的企図を再び余地もなく曝け出した」

パレードでBC兵器部隊が行進した5日後、北朝鮮の“米帝犯罪調査委員会”なる組織が緊急談話を発表。米軍が生物・化学攻撃を企んでいると非難したのだ。その名は「ジュピター計画」というらしい。
▽南鮮紙も興奮する「ジュピター計画」(ハンギョレ)
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「ジュピター計画」とは在南米軍が進める北のBC兵器対策で、南鮮メディアでも一部報道される。だが、研究施設がソウルだったり、烏山基地だったりと詳細は判っていない。

昨年7月には、釜山の市民団体が「実験室設置」に猛反対する運動が巻き起こった。ちなみに、釜山腐れ像設置を推進した団体とメンバーが重なる模様だ。明らかな親北勢力である。
▽抗議活動する釜山の“市民団体”16年7月
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化学兵器をめぐる中二病テイストの米帝陰謀論が南鮮で広がる中、クアラルンプールで金正男暗殺事件が起きた。そして間髪入れず、シリアで再び化学兵器が使われる。

VXとサリンの揃い踏み。猛毒化学兵器の2トップが相次いで公然と使用されたことは、果たして偶然だったのか?

【制裁で浮上した北・シリア同盟】

「いかなる国も、国際規範や国際合意に違反し、他国の脅威になるのであれば対抗措置が取られるというメッセージだった」
▽米駆逐艦から発射されたトマホーク4月7日(AP)
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米国のティラーソン国務長官は4月9日、米軍によるシリア限定攻撃に関し、そう語った。軍事挑発を続ける北朝鮮への警告だ。しかし、北情勢に詳しい関西大の李英和教授は別の見方をする。

「間接的なものではなく、むしろ直接的な警告だったと強調したい。なぜならアサド政権のサリン攻撃については、金正恩体制の北朝鮮はいわば共犯といえる関係だからである」
▽アサド軍が空爆続けるアレッポ’16年(ロイター)
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アサド政権軍は4月4日、北朝鮮製化学兵器の代理実験をシリア北東部で行ったというのだ。決して飛躍した分析ではない。北朝鮮とシリアの軍事的な結び付きは今も昔も強く、事実上の同盟関係である。

第4次核実験と新型ICBM発射を受け、昨年3月に採択されたUN安保理決議2270号。それに伴う経済制裁のリストには、シリア駐留の北朝鮮国籍者が複数含まれていた。
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参照:外務省HP28年3月11日『追加される北朝鮮の核関連、その他の大量破壊兵器関連及び弾道 ミサイル関連計画に関与する者(PDF)』

「端川商業銀行(TCB)」のシリア代表者2人、「朝鮮鉱業開発貿易会社(KOMID)シリア代表者の名前が並ぶ。この連中は銀行マンや商社マンではなく、金正恩に仕える“死の商人”だ。

「朝鮮鉱業開発貿易会社」は、ミサイルの輸出から武器工場建設まで手広く行う有名な北の国営企業。そして「端川商業銀行」は売り上げ管理から資金洗浄まで担う工作機関である。
▽ダマスカスに誕生した金日成公園’15年(AFP)
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「北朝鮮はミサイルなどの兵器をシリアに輸出してきたが、最も強力なものが化学兵器だ」

そう断言する米国の専門家もいる。李英和教授は、トランプ政権が対北強硬姿勢に転じた背景には、化学兵器のシリア輸出に関して裏付けが取れた為ではないかと推測する。

そして金正恩がシリアに送り込んでいるのは兵器だけではない。SOHR(シリア人権監視団)は’13年、北朝鮮軍パイロット15人がアサド政権軍に参加、攻撃ヘリで反政府組織を襲ったと報告した。
▽攻撃受けたシリア空軍基地4月7日(スプートニク)
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離反者が増える中、北朝鮮が熟練パイロットの派遣に応じた模様だ。また現地情報筋の話として、アサド政権軍の砲兵部隊が展開する地域で北朝鮮軍将校が目撃されたとも伝える。

2007年、イスラエル空軍が破壊したシリアの原子炉は、北朝鮮の支援を受け、寧辺から核技術者が派遣されていた。北製NBC兵器のセールス&メンテナンスは金正日時代から続くものだ。
▽シリア原子炉の破壊前と破壊後(ロイター)
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凄惨なシリアの化学兵器被害は、日本人にとって他人事ではない。列島は、北のVX&サリンに加え、核・生物兵器の脅威に晒されている。

【在日暴発とバイオハザード】

北朝鮮“死の商人”に制裁を加えた安保理決議2270号には、違和感を覚える文言があった。冒頭の一節。安保理の基本スタンスを示した部分なのだが、こう記されていた。

「核、化学及び生物兵器並びにその運搬手段の拡散が、国際の平和及び安全に対する脅威を構成することを再確認し…」
参照:外務省HP28年3月11日『国際連合安全保障理事会決議第2270号 和訳(PDF)』

唐突に踊る「生物兵器」の文字。北朝鮮は化学兵器の他、バイオ兵器に関しても世界トップの推定保有量を誇るのだ。安保理が懸念を表明し、敢えて言及するのも当然である。
▽養豚場視察する3代目4月23日公開(KCNA)
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高濃縮ウランによる核開発疑惑を巡り、緊張が高まった2002年。NYで開かれた米朝高官協議で、北朝鮮の代表・姜錫柱(カン・ソクジュ)は米国側を脅した。

「我が邦には核兵器以外にも、バイオでも何でもある」
▽日朝首脳会談時の姜錫柱02年(代表)
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核兵器はブラフだったが、生物兵器は当時から大量に保有していた。一定の生産基盤があるだけではない。前述した旧内閣安全保障室の草案では、攻撃を受ける事態も想定していた。

「生物兵器攻撃。天然痘ウィルスの人口密集地での曝露」

弾頭積載タイプではなく、工作員による市街地テロを警戒する記述だ。南鮮の研究機関は、北朝鮮が天然痘ウィルスや炭疽菌など13種の病原体を保有し、兵器用に培養・貯蔵していると推定する。
▽WHOが根絶宣言した天然痘ウィルス(wiki)
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「ジュピター計画」を巡る陰謀論の流布で北朝鮮が焦点を当てているのは、生物兵器だ。VXやサリンと同様に取り扱いが難しいが、半島有事暴発と同時に北がバイオテロを仕掛けてくる恐れは高い。

弾道ミサイルも特殊潜水艇も要らない。「人口密集地での曝露」を任うのは、既に我が国に多数潜伏する休眠工作員。化学兵器と同じく、生物兵器も既に列島内に搬入済みと考えられる。
▽国民保護ポータルサイトより
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国民保護法の施行を受け、我が国では12年前から対バイオテロ共同訓練が始まった。都内での図上訓練を皮切りに、全国各地で本格的な訓練が実施されている。

陸自・大宮駐屯地の中央特殊武器防護隊を筆頭に、各師団にNBC偵察車の配備が進む。だが、同時多発テロへの対処は難しく、生物兵器に対する国民の危機意識も低い。
▽陸自のNBC偵察車(防衛省提供)
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危険と絶望は空から降ってくるだけではない。正体不明の隣人にも警戒が必要である。北朝鮮の暴発とは、我が国に巣喰う親北勢力の暴発とイコールなのだ。

朝鮮半島有事の際、間違えなく金正恩は、現状で使える全ての攻撃カードを切ってくる。



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参考記事:
□現代ビジネス4月20日『北朝鮮とシリアの「黒い連携」をアメリカが見過ごさない理由』
□Newsweek4月21日『北朝鮮・シリアの化学兵器コネクション』
□日経新聞4月15日『米空母、朝鮮半島近海に 北朝鮮が新型ミサイル公開』
□FNN4月15日『北朝鮮軍事パレードで米をけん制』
□東スポ4月18日『米朝開戦危機 「白」「黒」部隊と最強軍団の正体』

□産経新聞4月13日『安倍晋三首相「サリン弾頭の着弾能力を保有している可能性」 自衛隊のミサイル防衛の限界にも言及』
□産經新聞4月19日『緊迫する北朝鮮情勢 NBC(核・生物・化学)攻撃への陸自の対処能力は』
□産経新聞2月24日『金日成時代から生物・化学兵器を開発 サリンや炭疽菌…事件は「実験」の場か シリアに密輸疑惑も』
□デイリーNK4月21日『北朝鮮民間団体「米国の化学戦争挑発策動を座視しない」』
□ハンギョレ新聞4月12日『米軍の生物化学防御戦略「ジュピタープログラム」の釜山港配備に反対広がる』
□聯合ニュース’16年3月18日『北朝鮮は大気圏再突入技術確保していない=韓国国防部長官』

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