トランプが暴く戦後嘘秩序…“一つの中国”は侵略の道具

衝撃の電話会談に続く台湾国総統の訪米。トランプ新政権を警戒する中共は空母派遣で威嚇した。だが、“一つの中国”への疑問提起は、各国が見逃してきた戦後秩序の「嘘と曲解」を突き崩す。
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「私達のシスターのような蔡総統。台湾共和国から来た蔡総統です」

ニカラグアのオルテガ大統領は、就任式典に招いた蔡英文総統をそう紹介した。台湾国と国交のあるニカラグアだが、公式の場で大統領が「台湾共和国」という名称を用いたのは初めてだ。



紹介を受け、蔡総統が立ち上がって挨拶すると会場は大きな拍手に包まれた。習近平が発狂する痛快なシーン。そして、これが中共が恐れていた波及効果のひとつである。

「蔡英文と会ってはならない」

中共指導部は蔡総統の中米訪問を前に、米国の有力議員に対し、脅迫の書簡を送り付けていた。蔡総統が米国に立ち寄った際、接触する可能性が高いと予測。宣伝機関もフル出力で牽制していた。

「共和党議員にさえ会えやしない」
▽米国入りした蔡英文総統1月7日(ロイター)
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ところが米ヒューストンに降り立った蔡総統は1月8日、地元選出のテッド・クルーズ上院議員たテキサス州のアボット知事らと対面。また共和党の重鎮ジョン・マケイン上院軍事委員長とも電話で会談した。

「米国で訪問客と会うか否かを決めるのは私達だ」

クルーズ議員は会談後にそう述べ、中共側から“接触禁止”の警告があったことも暴露した。ちなみにクルーズ議員は大統領指名争いを前に、二重国籍だったことを認め、有権者に謝罪した正直者だ。
▽蔡英文・クルーズ会談1月8日(twitter)
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参照:H28年9月4日『華人議員・謝蓮舫の選択…泥沼化する二重国籍疑惑』

更に訪問先で蔡総統は、台僑から熱い歓迎を受けた。在米の台湾人は国民党の迫害を逃れて50~60年代移住した人々も多い。中共の飼い犬系支那人とは全く別の民族集団である。
▽蔡総統歓迎する在米台僑1月8日(中央社)
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米議員との会談で顔に泥を塗られた習近平が心底ムカつく光景だ。そして苛立った末に発動したのが、軍事オプションだった。ある意味、分かり易いリアクションとも言える。

【外国産空母が怒りの抜錨】

12月25日午前、中共海軍が唯一保有するアドミラル・クズネツォフ級空母「遼寧」が、沖縄県の宮古海峡を通過した。中共空母艦隊が第1列島線を越えて展開したケースは、これが初めてだ。

翌26日、「遼寧」(旧ヴァリャーグ)は台湾国南端から約170㎞のバシー海峡を抜け、南支那海に突入。台湾国が実効支配するプラタス諸島に接近した後、中共南海艦隊と合流し、威嚇行動を開始した。
▽東シナ海展開中の「遼寧」12月24日(海自提供)
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「米国の空母が独占してきた南シナ海の歴史は終わりを告げた」

クズネツォフ級空母には宣伝機関の撮影部門も同乗し、艦載機の発着訓練などがCCTVで繰り返し伝えられた。これを受け、蔡英文総統は陸軍駐屯地を急遽訪問したが、その表情は険しかった。
▽桃園市の駐屯地視察する蔡総統12月30日(中央社)
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そして蔡総統歴訪中の1月11日、クズネツォフ級空母は台湾海峡に入り、台湾国のADIZ(防空識別圏)を侵犯した。福建省・厦門から見える金門島は台湾領土だが、海峡の中間線が事実上の停戦ラインだ。

「遼寧」は’13年11月にも台湾海峡を通過している。しかし、この時は艦載機を搭載しない“練習航行”だった。今回は、宮古海峡を抜け、台湾を1周するという明らかな威嚇行動である。
▽クズネツォフ級2番艦の航路(産経)
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このクズネツォフ級空母は突如12月中旬、母港・青島を発つ。同月16日には渤海で実弾演習に参加したことがアナウンスされた。つまり、トランプ発言に中共指導部は即座に反応していたのだ。

中共指導部にとって昨年度最大級の衝撃事件は、蔡総統とトランプ次期大統領の電話会談だった。米東部時間12月2日のことだ。中南海に激震が走ったという形容は決して大袈裟ではない。
▽蔡・トランプ電話会談の実景(12月3日総統府公開)
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「台湾側の小細工にすぎない」

中共外交部・王毅は、吐き捨てるように言ったが、電話会談はトランプ陣営が周到に準備してきたものと見られている。その数時間前のキッシンジャー・習近平会談も政権移行チームが手配したものだ。

発狂する中共指導部に対し、ペンス次期大統領は「表敬に過ぎない」と冷静な対応を呼びかけていた。そこまでは想定内だったが、中共側の異様な興奮が収まらない中、トランプ次期大統領が追撃を加える。
▽宮古海峡に向かう旧ヴァリャーグ12月24日(AFP)
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クズネツォフ級空母が抜錨した瞬間だ。

【“一つの中国”という戦後嘘秩序】

「なぜ我々が“一つの中国”に縛られなければいけないのか」

米FOXテレビに出演したトランプ次期大統領は12月11日、そう語った。貿易摩擦に絡んだ発言だが、中共指導部は元より、関係各国に大きな衝撃を与えた。これが本物のトランプ・ショックだ。
▽FOXで発言するトランプ次期大統領(AP)
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“一つの中国”とは、中共にとっては台湾が不可分の自国領土で、唯一の合法政府は大陸にあるとするものだ。また、かつての国民党政権は、大陸地域が中華民国の領土であると主張していた。

米国は国交樹立以来、中共が訴える“一つの中国”を「認知」し、国民党政権側の言い分を退けてきた。我が国も日支共同声明で中共側の立場表明を「理解する」とした。
▽キッシンジャー迎える周恩来’71年
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ソ連包囲網を狙った中共支援という冷戦構造、70年代の遺物だ。今の台湾国に大陸反攻の野望はなく、首都は北京でも南京でもなく台北。UN代表権を巡る争いは遠い昔の出来事である。

“一つの中国”はファンタジーに過ぎない。歴代のG7首脳を始め、各国政府が腫れ物扱いで、極力触れずにやり過ごしてき中共のプロパガンダ。それにトランプ次期大統領がいきなりツッコミを入れたのだ。
▽トランプ発言直後の北京キオスク12月(AP)
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20年前の両岸危機以降も、中共は関係各国の政治家に対して“一つの中国”を認めるか否か、踏み絵を押し付けた。一時は挨拶代わりに用いられ、我が国でも新華社系メディアが盛んに報道した。

その一方で、中共は改めて“一つの中国”が論議されることを恐れている。神通力を失った冷戦時代の虚構。再検証されたら一溜まりもない。次期大統領が“一つの中国”を問題提起したこと自体が、悪夢である。

「『一つの中国』論で言った時に、二重国籍とメディアの方が使われることにビックリしている」
▽台湾人を激怒させた共同会見9月11日(産経)
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苦し紛れに台湾を国家ではないと言い切った謝蓮舫が笑われる時代だ。更に、この反論を練り上げた反日陣営も「日本政府の認識」と逃げ腰で、真正面から“一つの中国”を論じようとしない。

“一つの中国”を議論・再検証することは、中共が築いてきた壮大なフィクションを粉砕する可能性がある。そこに秘められたトリックは「台湾は自国領土」という横軸だけではないのだ。

【侵略を正当化する“一つの中国”】

「中国4000年の歴史」

NHKが頻繁に使うこのフレーズの歴史は非常に浅く、元は昭和後期のインスタント麺のCMだという。生みの親のコピーライターに悪意はないにせよ、捏造史の刷り込みに役立ってしまった。

「中国」という言葉が初登場したのは、紀元前周代の『詩経』とされる。確かに古いが、あくまでも「地理的な中心」を示す言葉だ。特定の国家や集団を表す固有名詞ではなく、普通名詞である。
▽地名なし…普通名詞を並べた国号
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英語の「china」やラテン語の「sinae」などは古代の「秦」由来とされるが、近代の「清」を同様に呼んだことから混乱が生じた。紀元前と19世紀が無理解なまま直結してしまったのだ。

言葉の起源探索は別の機会に譲るとして問題は、中共が欧米の誤解を悪用して「中国」なる国家が古来存在してきたと偽っていることだ。民国か人民共和国か、一方を選べという話ではない。
▽17世紀の支那大陸東部(file)
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誤解と無理解に加え、意図的な単純化も目立つ。中共や謝蓮舫らは“中国侵略”というプロパガンダ用語で我々の先人を貶めるが、歴史歪曲も甚だしい。「侵略」も嘘なら「中国」も嘘だ。

通州事件を初めて紹介した際に、時代背景や地理区分の説明で苦労した記憶がある。大虐殺の舞台となった通州は、冀東防共自治政府と冀察政務委員会が鬩ぎ合うエリアにあった。
▽S12年(’37年)当時の支那大陸東部(wiki)
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満州人による独立国家を始め、南モンゴルには蒙古聯合自治政府、上海一帯の沿岸部には汪兆銘の南京民国政府。それらを十把一絡げに戦後自虐史観では「中国」と呼ぶ。これも“一つの中国”である。

そして、普通名詞でしかない「中国」を最大限利用し、版図拡大を目論むのが、70年の歴史にも満たない中共だ。侵略の魔の手は、清朝支配を捏造する尖閣諸島や東シナ海に留まらない。
▽CIWS(近接防空システム)配備した人工島(ロイター)
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暗礁の近くに要塞人工島を築く、南シナ海も領有権の主張は“一つの中国”に震源を発する。一部の暗礁は元王朝の貿易商が見付けたと言い、別の暗礁は、夏時代に“発見”されたと息巻く。

伝説に彩られた夏王朝は約4000年前、元はモンゴル人の王朝だ。征服された外国王朝の版図も今の中共に領有権があると絶叫する。こうした誇大妄想は、昨年7月のハーグ裁定で一笑に付された。
▽ハーグ仲裁裁の南シナ海審理’15年(共同)
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台湾島を「中国の不可分の領土」とする主張も、南シナ海やチベット・東トルキスタンに連なる捏造史と同じだ。清朝が「化外の地」と断言した台湾を中共が支配したことは一度もない。

親中派は台湾国内での独立志向が頭打ちだと喜ぶが、中共指導部は、独立宣言と同時に武力侵攻すると公言。今回の「遼寧」威嚇航行は有言実行で、台独派が焦土化を嫌ってトーンを低めるのは仕方ない。
▽南シナ海で威嚇を続ける「遼寧」1月2日(新華社)
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トランプ発言を機会に、日本人を含む先進国の人々は南シナ海の現状を直視し、改めて意味を問い直すべきである。“一つの中国”とは、中共による他国侵略を正当化するツールでしかないのだ。



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【追記1月14日】

「和親条約と修好通商条約を結んでから百六十年以上たって、日米関係は何回か変化しています。そういった大きな歴史のなかで、一九四五年の日本の敗戦とアメリカの勝利で始まったポスト・ウォーの体制、『戦後体制』にピリオドを打つべき時代が来ました」(60頁)

西村幸祐さんとケント・ギルバートさんが、トランプ政権の誕生で大きく変化する日米関係や国際情勢、また大統領選を巡って明らかになったメディアの異常性などを縦横無尽に語り尽くす。丁々発止の対談第2弾『トランプ革命で甦る日本』がイースト・プレスから発売されます。


前に同じことを言ったけれども、お二人の対談は実にテレビ向きだ。

関連エントリ:
□H26年5月15日『南シナ海を覆う「九段線」…失われた帝国の妄想版図』
□H27年11月13日『習近平の“死体蹴り”会談…国民党は北京に凱旋せよ』
□H28年7月14日『中共捏造史に国際法廷が鉄槌…南シナ海にあった“落し穴”』

参考記事:
□産経新聞1月11日『中国空母「遼寧」が台湾海峡を航行 蔡英文総統は中米歴訪中で不在』
□ZAKZAK1月12日『中国空母「遼寧」の限界露呈 艦長「小学生にすぎない」…米軍と本格的対峙避けたい本音ポロリ』
□Newsweek1月9日『中国政府系紙がトランプを警告「一つの中国放棄なら報復」』
□産経新聞1月12日『ニカラグア大統領、蔡英文氏を「台湾共和国」総統と紹介』
□日経新聞1月9日『米、親台姿勢で足並み 共和クルーズ氏が蔡総統と会談』
□Newsweek1月10日『米中断交さえ!? 台湾総統の米国経由外交』
□産経新聞1月9日『中国、米議員に「面会拒否」要請 台湾・蔡英文総統との会談めぐり』

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