習近平 夏休みの大冒険…解禁された粛清バトル

殺人を犯しても党幹部は逮捕されない…無法国家=中共を象徴する不文律が破られた。党と軍の大幹部“摘発”に踏み切った習近平の大冒険は、成功か失敗か、運命の頂上決戦が目前に迫る。
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宿舎内で夕食を終え、自分の個室に戻った瞬間だった。突然、全館が停電した。暗闇の中、忍び寄る2人の賊…異変を察知したSPが駆け付けると、賊は観念し、握っていた拳銃で自分の頭を撃ち抜いた。

昨年8月に起きた中共指導部メンバー暗殺未遂事件の顛末だ。狙われたのは、王岐山(おう・きざん)。海外での知名度は低く、限りなくモブキャラに近いが、党内序列6位の大幹部である。
▼王岐山(新華社file)
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暗殺未遂事件の舞台は、江西省南昌市にある幹部専用の迎賓館。王岐山が地方視察に訪れた初日の出来事だった。通常、指導部メンバーの視察は隠密スタイルで、詳細な移動スケジュールは外部に漏れない。

2人の賊は下っ端の公安と判明したが、背後関係は判らない。しかし、最高幹部の移動状況を的確に把握したうえでの計画的犯行だったことは明らかだ。事件の黒幕は、王岐山に敵対する別の大物と見られる。
▼南昌は周恩来がテロ蜂起した“聖地”
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ブラックアウト中に突入し、ヒットする…そんなB級アクション映画風の内幕を伝えたのは、香港の政治評論誌『動向』だ。まるで現場を目撃したかのように細かく描写している。

何をソースにしているのか…用心深い読者はそう疑うだろうが、中共内部の抗争を語る場合、こうした出所不明の“目撃談”がキーになることが多い。
▼香港誌『動向』(file)
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劇画タッチの描写であっても、中共外交部スポークスマンの説教やタブロイド機関紙の論説を垂れ流す日本メディアより、何倍もまともだ。重要なのは暗闘が起きているという事実である。

王岐山は、党内の“汚職”を取り締まる党中央規律検査委員会のトップ。そして『動向』は、昨秋から今春までの半年間に、党中規委の調査員が30人謀殺されていると説く。

シナ大陸各地で、血の抗争が激化していることは、確かだ。

【党が法を超える野蛮国家】

昨年12月1日夜、北京・中南海にある周永康(しゅう・えいこう)の自宅に、党中規委の調査チームが乗り込んだ。それは任意聴取といった生易しいものではなく、武装捜査官の突入劇だったのではないか。

自宅を急襲した捜査官は、周永康の秘書と運転手を直ちに拘束・連行。そして、周本人を軟禁状態に置いた。並の汚職摘発ではない。まず自宅を武力制圧し、主を人質に立て籠るという過激なスタイルだ。
▼指導部時代の周永康(共同)
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周永康失脚のクライマックスが目前に迫る…誰もがそう予見した。海外のメディアは、12月中旬か遅くとも偽国会が始まる3月に周永康「立件」が宣言されると伝えた。

しかし、実際に周永康の「重大な規律違反」が公表されたのは、7月29日のことだった。自宅“軟禁”は予想外の8ヵ月以上に渡ったのだ。それは水面下で激しい党内抗争があったことを雄弁に物語る。
▼1面で特報する中共機関紙7月30日(共同)
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チャイナ・ナイン、最近ではチャイナ・セブンと呼ばれる中共指導部は、党中央政治局常務委員で構成される。元職を含め、常務委員だった者が“汚職”で失脚したケースは、中共の短い歴史でも初めてだ。

「刑不上常委」

中共指導部には「政治局常務委員は刑事責任を追及されない」という不文律が存在していた。これは支那の諺である「刑不上大夫(刑は大幹部には及ばない)」をもじったものだ。
▼周永康と習近平2012年3月(共同)
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「刑不上常委」は、第二次天安門事件後に鄧小平が残した言葉だった。鄧小平は、六四大屠殺が党内抗争に起因したと断定。新たな抗争を防止する目的で唱えたとされる。

それは中共が法治国家ではない事実を内外に宣言したに等しい。一旦、指導部入りすれば、殺人を犯しても盗みを働いても刑事訴追されないというのである。
▼公安部門トップだった頃の周永康(ロイター)
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我が国に置き替えたら、与党執行部の歴代メンバーに軒並み永遠の不逮捕特権を与えるようなものだ。特定の肩書を持つ者には法が適用されない…そんな有り得ない統治形態を誇るのが、この野蛮な隣国だ。

【習近平の背後で笑う男】

「背後にいるのは胡錦濤氏だ。国家主席在任中に江沢民派から嫌がらせを受けた恨みのある胡氏が、習氏をけしかけて江沢民派を追い落とさせている」

石平さんは、胡錦濤黒幕説を唱える。独特で、しかも衝撃的な分析だ。中共の主要3派のうち、習近平の太子党と江沢民ら上海閥が暗闘を繰り広げる中、残る共青団は、傍観者的な立場にあると見られてきた。
▼党大会で揃った3人2012年11月(ロイター)
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習近平と王岐山のコンビは、上海閥の大物だけではなく、共青団の幹部も摘発対象にしてきた。またモブキャラ登場になるが、6月19日には令政策(れい・せいさく)に「重大規律違反」が宣告された。

令政策は、胡錦濤の側近である現統一戦線部長・令計劃(れい・けいかく)の実兄だ。令計劃本人すら我が国では馴染み薄だが、一昨年起きた北京フェラーリ暴走事故を記憶している人も多いだろう。
▼高速道路で大破したフェラーリ(流出画像)
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2012年3月18日未明、北京空港近くの高速を時速300㌔で暴走していたフェラーリ458スパイダーが大破する。このクラッシュで即死した学生が、令計劃の息子だった。

数千万円の超高級車を乗り回す23歳の学生…異様な事故は、シナ庶民に深い絶望感を与え、党幹部腐敗のシンボルともなった。この期に及んで、令計劃の摘発も避けられない状況である。
▼失脚秒読みの令計劃(file)
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「胡錦濤氏としては、令計劃氏を早く切り捨てたいから、かえって好都合だ」

石平さんは、そう指摘する。令計劃失脚は、屠殺鬼の望む所であって、決して太子党vs共青団の構図をクローズアップするものではないという。そして、上海閥掃討の末に胡錦濤が狙うのは、院政だ。

“反腐敗”キャンペーンで習近平は、軍幹部・党幹部から強い恨みを買った。加えて、激しい民族弾圧で“内政”はガタガタ。力による現状変更で、外交もボロボロ…
▼南鮮では人気絶大の習近平7月3日(AFP)
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胡錦濤は、混乱の責任を習近平に押し付けて、失脚に追い込むプランを描いているという。それが何年先のドラマになるのか不明だが、暗闘の終わりを告げるゴングは、当面、鳴り響きそうにない。

【長老たちが待つ夏イベント】

周永康の失脚が宣告される一週間前、奇妙なニュースが内外に流れた。上海便を中心に臨時欠航が相次いだのである。附近で実施する軍事演習を優先した措置だというが、直前になっての欠航続出は不可解だ。

急遽、演習規模が拡大したとしか考えられない。実際、この演習は、軍区の枠を超えて6軍区が参加する空前の規模になっているという。そして、東シナ海で大規模演習が始まった日、周永康失脚が発表された。
▼欠航続出した上海浦東国際空港(AFP)
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「軍を動員したクーデターが勃発する恐れもあるので、大規模演習を行って、軍が身動きを取れないように縛り付けたのではないか」

日中関係筋は、そう関連付ける。習近平が不穏な動きを察知し、異例の大規模演習をセットしたと見るのが妥当だ。叛乱の恐れが最終的に排除できなかったことが、周永康の軟禁が長期に及んだ理由と見る。

習近平は、周永康処分に先立って、前中央軍事委員会副主席・徐才厚(じょ・さいこう)の党籍を剥奪、軍法会議送りにした。文革終息以降、制服組トップの失脚は、初めてのケースだった。
▼党籍剥奪された徐才厚(file)
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周永康を失脚させるに当たって、まず江沢民と親しい徐才厚を無効化する必要があったのだ。叛乱を未然に抑え込む為の“予防拘禁”。習近平にとっては、ギリギリの綱渡りが続く。

次の焦点は、江沢民の処遇だ。8月中旬に開かれる北戴河会議には、現指導部7人に加え、10人の長老が参加する見通しだという。江沢民も姿を見せるのは確実。そこで最後のガチンコ対決となるのか…
▼プーチン・江沢民会談5月20日(時事)
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北戴河会議は、避暑地で夏休み中の毛沢東を詣でたのが起源だが、近年は党大会を前にした談合の現場であり、時に抗争の修羅場ともなる。恐らく今年も昨年に引き続き、後者となる可能性が高い。

「刑不上常委」という暗黒の不文律がなくなったことに戦々恐々としているのが、死に損ないの長老たちだ。この重要な夏イベントを前に、習近平が周永康処分に踏み切った意図は読み切れない。
▼北戴河でリゾート満喫の鄧小平
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元指導部メンバーの刑事訴追解禁は、同時に、引退後の習近平失脚に道を拓くものでもあった。果たして何を担保に、習近平は不文律を破り捨てたのか、その自信の源は不明だ。

一気に江沢民ら上海閥重鎮を追い詰めるのか、それとも手打ちを行うのか…今夏の北戴河で、習近平の大冒険はメーンのアトラクションを迎える。



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参考記事:
□ZAKZAK7月31日『習主席を背後で操る黒幕の正体とは… 中国「仁義なき抗争」に突入』
□産経新聞7月30日『「反腐敗」という名の“粛清”に反撃も 江・胡両派が連携の可能性』
□ZAKZAK8月1日『習近平主席VS胡錦濤前首席 人民解放軍掌握めぐり苛烈な闘争』
□CNN7月2日『中国、前軍事委副主席ら4人の党籍を剥奪 収賄の疑い』
□CNN7月30日『中国共産党、前最高指導部メンバーの周氏を調査』

□大紀元4月22日『命がけの反腐敗調査 30人が暗殺された 当局が対策本部を設置』
□週刊ポストセブン5月11日『中国不正取り締まりトップ・王岐山氏に暗殺未遂事件があった』
□ニューズウィーク2012年10月30日『またも党幹部を直撃したフェラーリ・スキャンダル』

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