海賊艦隊ベトナム沖侵攻ス…南シナ海の安倍ドクトリン

ベトナム沖の資源盗掘現場には7隻の中共軍艦が展開していた。生まれたてのベトナム沿岸警備隊を圧倒する無法で執拗な攻撃…盗人猛々しい海賊艦隊に安倍ドクトリンが立ち塞がる。
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尖閣侵犯船事件を再現したかのようなシーンだった。中共・海警37102は、スピードを上げたまま、標的の右舷後方に突っ込む。中世の海戦さながらのラムアタック、衝角攻撃だ。

標的となったベトナム巡視船の乗組員6人が負傷したほか、舷側の一部が大破した。排水量650tクラスの艦艇による激突。大きく抉られた舷側上部が衝撃の激しさを物語る。
▼攻撃受けた沿岸警備艇(越当局提供)
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上の画像を見ると、抉れているのは左舷後方だ。映像では確かに海警37102は船体の右側に突入していた…別に不可解でもミステリーでもない。説明が足りないのは、「衝突」を報じたメディアである。

ベトナム外務省は「巡視船数隻が損傷した」と発表している。中共艦艇は、繰り返しラムアタックを仕掛けたのだ。更に現場海域では高圧放水銃の発射も執拗に行われていた。
▼高圧放水銃発射する海警(越当局)
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現地紙が掲載した放水写真には「5月4日」のクレジットがある。ベトナム外務省の発表によると放水銃の発射は5月2日が最初だったという。ベトナム沖では、既に5日間以上も緊迫が続いていたのである。

5月7日の時点で、現場海域にはベトナム側29隻と中共側80隻以上が展開。RFAは、その中に中共海軍の艦艇7隻が含まれ、航空支援まで実行されたと伝えている。
▼負傷したベトナム人乗組員(越当局)
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一方のベトナム側も新設の沿岸警備隊だけではなく、海軍の艦船も出撃した模様だ。映像を見る限りでは、コーストガードによる衝突だが、その背後には海軍艦船が睨み合っていた。

中共海軍は1974年にパラセル諸島を侵略。スプラトリーに舞台を移した88年の衝突ではベトナム海軍側に数十人の戦死者が出た。今回の海上衝突は、それに続く深刻な事態だ。

【説明二転三転で最後は被害者…】

「掘削活動は違法行為であり、ベトナムの主権や管轄権を侵害している」

ベトナムのファム・ビン・ミン副首相兼外相は5月6日、中共・楊潔篪との緊急電話会談で、そう訴えた。楊潔篪は外交担当の国務委員。緊迫局面で外交ホットラインが使用されたのだ。
▼5月2日と見られる放水銃発射
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そして、会談は決裂…対話による解決は絶望的となった。5月2日に始まった現場海域の危機高まりを受け、ベトナム側は最後まで協議での解決を模索していたが、中共の高圧的な姿勢は変わらなかった。

実際には既に“手遅れ”の状態にあった。中共当局は、5月3日になって石油リグ「HD981」で掘削を始めると発表。全ての国の船舶に対し、施設から半径1海里以内の航行禁止を一方的に通告した。
▼中共石油リグ「HD981」(file)
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掘削活動のスタートにあたって、中共側は多数の艦船を派遣していた。軍艦で威嚇しながらの資源採掘。正に侵略行為である。国際社会は先ず、この異常な簒奪の光景を直視しなければならない。

現場海域についてメディアは安易に南シナ海“西沙諸島”周辺と報じるが、実際にはベトナム沖だ。中部の港湾都市ダナン南部の沿岸から120海里(約220㌔)しか離れていない。
▼現場はパラセルの南西だった(WSJ)
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もちろんUN海洋法条約で認められたベトナムのEEZ(排他的経済水域)の内側である。それに対し、中共側は軍事侵略したパラセル諸島チートン島の領有を根拠に、自国のEEZ内と言い張っているのだ。
▼ベトナム紙による現場海域の説明
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「ベトナムの船舶と衝突していない」

中共外交部の次官・程国平は5月8日、ベトナム側と発表を捏造と決め付ける見解を示した。世界に向けて衝突映像が大々的に公開された後の発言である。

参照:ロイター5月8日『中国とベトナムの船舶、「衝突」していない=中国外務次官』

映像公開直後の7日の時点では「ノーコメント」。翌8日には丸ごと否定…さらに9日になると今度は「ベトナム側が171回の意図的な衝突を仕掛けた」と事実関係の説明は二転三転した。
▼被害者と主張する中共高官5月8日(AP)
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同時に新華社は世界に向けて「衝突の証拠写真」とおぼしき画像を配信する。これが大問題のシロモノだった。

【犯人が暴く犯行の決定的瞬間】

新華社が配信した写真は、説明キャプションの付いていない。粗い画質からビデオのワンカットのように見える…特に奥の船のファンネル(煙突)マークに注目だ。
▼衝突の瞬間(新華社)

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記事の内容から、ベトナム巡視艇による海警へのラムアタックと言いたいのだろう。しかし、被害を受けている船舶がベトナム側の巡視艇にしか見えない。

両国とも共産国家を標榜することから「赤地に黄色の星」の旗・徽章が多いのだが、一つ星はベトナム国旗と同じである。昨年10月に進水した新巡視船のファンネルにも似たマークが確認できた。
▼進水した越沿岸警備隊巡視船(13年10月)
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また海上警察時代のベトナム巡視船には「DN2000」というナンバリングも見られる。ファンネルの手前にある「DN-25」は、これがベトナム側の船舶である証拠になるだろう。

そもそも新華社配信の画像は、衝突する瞬間を攻撃側のブリッジから撮影している。ベトナム巡視船のブリッジから捕らえた秘蔵映像を中共の宣伝機関が入手できるはずもない。
▼ブリッジからの撮影は確実…
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問題の写真は、中共・海警がベトナム巡視船にラムアタックを行った瞬間だ。被害を主張する記事内容とは完全に真逆…犯行の証拠写真を犯人側が大公開した格好である。

尖閣侵犯船事件の際も中共宣伝機関は、海保の巡視船が繰り返し体当たり攻撃を行ったとする噴飯図解を公開した。当時の菅政権が映像を隠蔽する中、やりたい放題で被害者を演じていたのを思い出す。
▼尖閣侵犯船事件のシナ報道解説
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一方、こうした捏造図解や今回の“証拠映像”撮影から、中共ダミー海軍が作戦としてラムアタックを認めていることが判る。現場の判断で緊急回避的に行われた措置ではないのだ。

尖閣周辺海域での対峙が常態化した我が国にとって、ベトナム沖の異常事態は他人事ではない。

【沿岸警備隊の“生みの親”】

「アジア太平洋地域では、近年軍事費や武器輸入が大幅増加しています。特に、中国の対外姿勢、軍事動向については、我が国を含む、国際社会の懸念事項となっています」

GW欧州歴訪中だった安倍首相は5月6日、ブリュッセルのNATO本部で演説。北朝鮮とともに中共を名指しで批判した。日本国総理の強い意志を表明する画期的な演説だ。
▼安倍首相のNATO演説5月6日(AP)
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参照:首相官邸HP5月6日『北大西洋理事会における安倍内閣総理大臣演説~日本とNATO:必然のパートナー~』

この安倍首相発言に対し、中共外交部は「悪意を持った脅威論を言いふらす」などと強いトーンで批判。一部の反日メディアも中共の主張に寄り添い、安倍首相の姿勢に疑問を投げ掛けた。



しかし、安倍首相の演説が行われた時、ベトナム沖では多数の中共海軍艦艇が展開する準戦闘局面が続いていたのだ。安倍演説は、現状を的確に指摘する実にタイムリーなものだった。

また、中共侵略艦隊に挑んだベトナム沿岸警備隊の「生みの親」とも言えるのが、安倍首相だ。昨年春、安倍首相はベトナムに巡視船10隻の提供を決定した。
▼日越首脳会談2013年1月(内閣広報室)
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ODA枠を利用した中古巡視船の供与だが、受け取る側のベトナム海上警察は海軍の一部局。各国軍組織への装備品供与を禁じたODA大綱がネックとなった。

そこで、ベトナム側は海上警察を軍から切り離し、沿岸警備隊に改編。英語名も「コーストガード」に改め、昨年秋に新組織を発足させた。巡視船がパラセル近海で重要な役割を担うことを予見していたのだ。
▼海上警察時代の巡視船(file)
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ただし、今回攻撃を受けたベトナム巡視船の中に旧海保の船は含まれていない。今年3月にベトナム元首のチュオン・タン・サン国家主席国賓待遇で来日、首脳会談が開かれた。
▼サン主席迎えた宮中晩餐会3月17日(代表)
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共同声明には、巡視船供与に伴う調査団の派遣が盛り込まれた。まだ予備調査の段階だ。しかし、中共艦艇がベトナム沖に侵攻する中、我が国は一刻も早く、ダース単位で巡視船を提供すべきである。

【安倍ドクトリンの真価】

「今回の事態は、中国の一連の一方的かつ挑発的な海洋進出活動の一環であると受け止めている」

菅義偉官房長官は5月8日の定例会見で、そう指摘した。安倍政権は、尖閣を念頭に「力による現状変更の動き」を繰り返し批判している。ベトナム沖の状況は、これまでの我が国の主張を裏付けるものだ。



反日メディアは中共の言い分そのままに、尖閣問題の発端を一昨年の国有化だと強調する。だが、南シナ海の緊張を鑑みた時、原因が中共にあることは明白。そこには獰猛な軍事国家の姿しかない。

ベトナム当局の映像公開を受けて、米国務省も中共に強い不快感を示した。しかし、防衛義務を明言した尖閣とは決定的に違う。「2国間の領土問題には立ち入らない」という米外交の原則が通用する場所だ。
▼放水銃発射する海警5月4日
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加えて、パラセル諸島は米軍が“敗退した島”でもある。中共軍がこれらの島々を侵略したのは74年…すなわち、ベトナム戦争の末期だ。米海軍は去り、南ベトナム軍が絶海の果てに取り残されていた。

パラセル諸島はハノイに近いのだが、北ベトナムは海軍力に乏しく、島嶼部には手出し出来なかった。それを横目に中共は、米軍撤退で野良兵団化した南守備隊を撃破。火事場泥棒以外の何者でもない。
▼中共・海警によるラムアタック
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南ベトナムを見捨てた米国。そうした歴史的経緯からも中共は、米政権が中途半端な対応で臨むことを見透かしていた。逆に、掘削強行をオバマのアジア歴訪後にずらし、面子を立てた格好だ。

5月10日からアセアン首脳会議が始まるが、南シナ海問題は大きなテーマにはならない。ベトナムは遅れてきた加盟国で、未だに外様扱いだ。資源の豊富なビルマとも異なり、ベトナムは孤独な国家である。
▼攻撃後に破損した海警の舳先
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そこで我が国の出番だ。海自と海保の連合艦隊を南シナ海に急派するわけではない。ベトナム政府高官は今回、国際海洋法裁判所への提訴も排除しない姿勢を示した。

実現すれば、3月末のフィリピンに続く第二弾となる。ところが、伝統的にベトナム政府は国際的な法体制を信頼していないという。これを我が国が説得し、あからさまに後押しするのだ。
▼ASEAN3ヵ国歴訪2013年1月(dpa)
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「力を背景にした現状変更への反対」と同時に、安倍政権は「国際法秩序の遵守」を掲げる。第二次政権の発足直後、安倍首相はアセアン各国に向け、新外交5原則を発表した。

「『力』でなく『法』が支配する、自由で開かれた海洋は『公共財』であり、これをアセアン諸国と共に全力で守る」

いわゆる安倍ドクトリンだ。優柔不断なオバマ政権に代わって、これを大胆に実行する時が巡ってきた。




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参照:
首相官邸HP25年1月『首脳外交、本格スタート! ~東南アジア3か国歴訪~』
外務省HP25年1月『開かれた、海の恵み―日本外交の新たな5原則―』

参考記事:
□ロイター5月9日『焦点:南シナ海の緊張長期化も、中国の掘削強行でベトナム劣勢色濃く』
□RFA5月7日『Vietnam Says China Rammed Ships in South China Sea』
□新華ニュース5月9日『ベトナム船舶が中国船舶に171回衝突、中国側がベトナムに撤収を要請-新華社』
□読売新聞5月8日『中国が艦船80隻を動員、ベトナムとにらみ合い』
□VETJO5月8日『南シナ海で中国船が越巡視船を攻撃、石油掘削をめぐる問題で』
□ZAKZAK5月9日『中国あきれた言い訳「相手が故意に171回衝突してきた」 ベトナムは提訴視野』
□産経新聞5月9日『中国とベトナム、南シナ海でにらみあい続く』
□WSJ5月8日『高まる中越間の緊張-南シナ海に両国の艦船数十隻が集結』
□時事通信5月8日『南シナ海「挑発行動に反対」=中越の船舶衝突で-米』
□読売新聞5月8日『中国船、ベトナム船に威嚇・放水・体当たり』
□WSJ5月5日『中国企業がベトナム近海で石油探査、ベトナムは「違法」と非難』

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