天安門包むテロの黒い霧…矛盾だらけの“高速逮捕劇”

炎上した車内の3遺体は誰だったのか? 中共当局は“テロ共犯者”の一斉逮捕を宣言、超高速で幕引きをはかる。ジハードを唱え自爆した70代女性…メディアは矛盾に満ちた捜査の顛末を垂れ流す。
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「2013年10月28日に市内で起きた重大事件の容疑者」

北京の公安当局は、市内の各ホテルに向け、一斉に通知書を流した。重大事件とは、28日天安門に近い紫禁城門付近で発生した車両の“炎上事故”を指している。

通知書は、ウイグル人居住地の出身とする男性2人の情報を求めていた。発生直後、シナ版SNSには現場写真が次々にアップされたが、当局は速攻で削除。一方、公安の通知書は野放し状態だった。
▼捜査協力求める公安の通知(FNN)
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当局が車両炎上関係の情報を刈り取る中、公安書類の写真がそのまま放置されていたことは不自然だ。最近、中共はSNSを政府プロパガンダの広報ツールとして活用している。

「ウイグル人がやったらしいぞ」

ウイグル人の犯行を唱える無責任な書き込みも放置される。第一報で「事故」と報じた新華社の異様な沈黙とは対照的に、中共タブロイド紙は、公安当局による容疑者2人と車両4台の特定を大きく報じた。
▼直後の現場を捕らえた投稿写真10月28日
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最初から一元的な情報の管理だ。北京市内のホテル側も、何故か口が異様に軽く、公安の捜査情報を海外のメディアにリーク。29日午後にはウイグル人7人らの出身地・氏名を明記した手配書がアップされる。

当局が意図的に情報を漏らしていることは明白だが、手掛かりのない海外メディアは、検証もせず安易に飛びつき、当局による操作情報を垂れ流す。
▼削除されず残る手配書(NHK)
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「北京の警察当局は、7人のウイグル族を重大犯罪の容疑者と断定して手配しているということがANNの取材で分かりました」(テレ朝)

取材とは名ばかりで、当局から「情報」を貰っただけ…我が国のメディアが中共プロパガンダの拡散機関になっている無様な証拠だ。そして、車両炎上の謎にまったく気付かないふりをする。

【情報封鎖で消えた邦人被害者】

削除された写真の中には、炎上直後の現場に大勢の人々が集まっている模様を捉えたものもあった。だが、海外メディアが到着した頃には厳しい報道規制が敷かれていた。

「車がカーブを曲がったと思ったら突然、歩道を走っていた。あっという間の出来事だったが、車は人々を轢いていたようだった」

貴重な目撃証言をゲットしたのはフランスのAFP通信だ。現場に急行したE・ジョーンズ記者は、匿名で目撃談を報じている。しかし、その直後、AFPの記者2人と英BBCの記者は一時拘束されてしまう。
▼報道陣を威圧する現場の公安10月28日(AFP)
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情報封鎖の完了である。後は、当局が都合の良い情報&デマを流すだけで、事件の全体像をデッサンすることが可能だ。そこで中共当局は、この1件を「ウイグル人による爆破テロ」と宣伝し始めた。

犠牲者の中にはフィリピン人の観光客が含まれていたが、氏名など詳しく公表されていない。また、負傷した上海在住の日本人も病院に送られた後、メディアが接触できないまま丸2日以上が過ぎた。
▼現場附近で倒れ込む被害者?(投稿写真)
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その一方で、車両に乗っていた「ウイグル人」に関しては直後から詳細な情報が流れる。メディアは、こうした矛盾にただ沈黙。当局は焼け焦げた車両から、どうやって個人を素早く特定できたのか?

現場写真からは車両全体が炎に包まれていることが判る。遺体の損傷は激しく、所持品も焼失済みだったはずだ。更に、直後の写真から自爆テロではなかったことが推測できるだろう。
▼炎上する車両に形状変化なし(投稿写真)
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車両のフレームは、しっかり残っている。また炎や煙の量から、車載のガソリンが衝撃で引火、炎上したものだと推定される。爆発物が炸裂した状態ではない。

東トルキスタンで不当弾圧を続ける中共当局は、これまで「テロリスト集団を逮捕し、大量の爆発物を押収した」と繰り返し発表している。計画的な自爆テロで、なぜ敢えて「爆発物」を使わなかったのか?
▼現場に急行した散水車10月28日(AFP)
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当局は疑問に何も答えない。そして、海外メディアの北京支局が矛盾を指摘することもない。

【「ジハード旗」の付け焼き刃】

北京虐殺五輪の開幕を直前に控えた2008年7月、雲南省の省都・昆明で、通勤バスの爆破テロ事件が発生。硝酸アンモニウムを使った時限爆弾だった。
▼爆破された昆明市内バス2008年(AP)
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事件発生から間もなく、米国の民間調査機関がTIP(トルキスタン・イスラム党)を名乗る集団の犯行声明ビデオを“発掘”。登場人物は声明で、その年に上海などで起きたバス爆破を自供した。

中共指導部が待ちに待っていたウイグル“テロ集団”の出現だ。ところが、当局は犯行声明の火消しに躍起となり、謎集団の正体を追及することはなかった。事件は今でも未解決のままだ。
▼謎の「TIP」犯行声明ビデオ2008年
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今年6月以降、中共当局は東トルキスタン国内で“テロ集団”の摘発を加速させている。しかし、大規模なテロ被害の報告もなければ、犯行声明が出ることもない。

今回の車両炎上が計画的な自爆テロであれば、犯行声明が出てもおかしくないケースだ。テロ実行者は、自らの命と引き換えに、政治的なメッセージを広く伝えようとする。
▼炎上直後の現場周辺10月28日(投稿写真)
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「旗のようなものを振っていた」

暴走中の車内から旗が振られていたという目撃証言がある程度で、他にメッセージ性は見当たらない。旗が黒かったことから、19世末の反清朝組織「黒旗軍」を連想する声が飛び交う始末だ。

10月30日夜、北京市の公安当局は、車両炎上をテロ事件と決め付け、ウイグル人の容疑者5人を逮捕したと発表した。宿泊先を捜索した際、「ジハード」と記された旗も押収したと息巻く。
▼天安門広場に向う公安車両10月28日(ロイター)
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報道内容を追って、後付けで証拠品を偽造したのがバレバレだ。ジハードを唱えた自爆テロは、ごく少数のイスラム過激派特有の手法で、各国のムスリムに共通する思想ではない。

東トルキスタン国内に、汎トルコ主義的な考え方は存在するが、自爆テロに踏み出すような過激組織は未確認。そして、ジハードを唱えた自爆テロで実行者が死後に救済されるという思想も幻想に近い。
▼炎上車両を間近で撮影した投稿写真
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主にパキスタン北部で相次ぐ自爆テロでは、実行者の遺族に巨額の“報奨金”が渡される。貧しい少年・少女をテロに走らせる悲劇のシステム。それを支えるには、資金潤沢な過激派組織が必要となる。

一方、東トルキスタンでは逆に、テロ容疑者の一族郎党は徹底した弾圧を受ける。容疑者の家族が拘束され、消息を絶つ事例も多い。ジハードを叫ぶ自爆テロが全く成立しない世界だ。
▼テロを指摘するSNSの書き込み
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9・11以降、中共は東トルキスタン地域に「イスラム過激派」が存在するとアピール。繰り返し「摘発」するが、国際報道で知ったアルカイダ系のイメージをそのまま被せた幼稚な脚色だ。

【科学的な証拠を提示せよ】

北京の公安当局によると逮捕した“容疑者”5人は、犯行を認める供述をしていると広報する。“テロ実行犯3人”は70代の母親を含む家族という無理な設定で、遺族が抗議することも、弾圧されることもなさそうだ。

「事件後、10数時間で逮捕されるとは思わなかった」

そう供述しているという5人の“容疑者”は、SNSで流布された顔写真付きの手配者とも一致…供述が事実ならば、公安は被疑者を拘束した後に手配書を作成し、各ホテルに捜査協力を求めたことになる。
▼炎上現場に向う武警車両(投稿写真)
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完全に矛盾した行動。中共指導部は、11月9日から始まる三中全会を前に、ウイグル人風の名前を持った犯人グループをデッチ上げてスピード決着を図った格好だ。

果たして炎上した車内で発見された3遺体は誰だったのか…中共当局が犯人と容疑者を指名した後、問い直されることはないが、3人が農村から来たシナ人陳情者である可能性も指摘されていた。
▼直後の現場近くを撮影した投稿写真
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更に、事件ではなく、事故だった疑いも捨て切れない。現場は城楼に貼られた薄汚い毛沢東の肖像の正面で、実に政治的なポイントだった。だが、橋の欄干に激突して自爆するという最期が理解不能だ。

単に車の操作を誤って暴走したとも考えられる。当局が削除した写真を見ると、一般市民風の男性が倒れた人を介抱している他、公安も高圧的な強制排除をしていない模様で、緊迫感に欠ける。
▼現場の街灯に設置された監視カメラ
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街灯に据え付けられたドーム状の物体。天安門広場一帯は、高性能の監視カメラが設置されている。激突する前の車両の動きは、バッチリ撮影済みだ。

中共当局は、すでに東トルキスタン国内で“テロ事件”に関連付けた捜査を開始している。ウイグル人弾圧の新たな口実だ。不当拘束が相次ぎ、緊張が激化する恐れが高い。
▼規制線を突破する原付も10月28日(AFP)
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“犯行グループ”の供述など何の意味もない。国際社会は、こうした統一発表の「重大事件」について、常に客観的・科学的な証拠を求めなければならない。いま必要なのは、現場監視カメラの映像公開だ。



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参考記事:
■産経新聞10月30日『テロと断定、ウイグル族5人拘束 車中からガソリン容器』
■共同通信10月30日『天安門の車突入、計画的テロ濃厚 公安がウイグル族ら8人関与断定』
■日経新聞10月30日『ウイグル族、漢民族支配に反発 天安門突入』
■FNN10月30日『天安門暴走車事件 公安当局、ウイグル族宿泊の際の報告求める』
■ AFP10月29日『天安門の車炎上、「容疑者は新疆ウイグル自治区の2人」 中国当局』
■AFP10月28日『天安門広場で自動車炎上、5人死亡 38人負傷』
■NHK10月30日『当局手配の容疑者とされる写真掲載』
■産経新聞10月29日『警察、長安街を封鎖、AFP記者ら一時拘束、ネット投稿次々削除』

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