安倍首相のいない靖国神社…8・15不参拝の水面下

靖国参拝に猛反発する政党の国会議員は僅か25人。国論は二分されていない。それでも8月15日の参拝は実現しなかった。安倍首相、無念の決断…背景には何があったのか。
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「祖国を思い、家族を案じつつ、戦場に倒れられた御霊、戦禍に遭われ、あるいは戦後、遠い異郷に亡くなられた御霊の御前に、政府を代表し、式辞を申し述べます」

天皇陛下・皇后陛下ご臨席の中、安倍首相は8月15日、武道館で行なわれた全国戦没者追悼式で、式辞を述べた。素晴らしいスピーチだ。冒頭から続く次のセンテンスが感銘深い。

「いとしい我が子や妻を思い、残していく父、母に幸多かれ、ふるさとの山河よ、緑なせと念じつつ、貴い命をささげられた、あなた方の犠牲の上に、いま、私たちが享受する平和と、繁栄があります。そのことを、片時たりとも忘れません」
▼式辞述べる安倍首相8月15日(官邸HP)
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安倍首相の真骨頂だ。特に「あなた方の~」という呼び掛けに心が籠っていた。筆者が感激する式辞となれば、反日勢力には不愉快だろう。案の上、朝日新聞は式辞内容に発狂して猛批判に踏み切った。

「歴代首相が踏襲してきたアジア諸国への加害責任に触れなかった」
参照:朝日新聞8月16日『安倍色にじむ式辞 アジア諸国への「反省」「哀悼」消える』

朝日新聞は16日付朝刊で1面から政治面、社会面、社説欄を使ってダラダラ愚痴を並べ立てた。批判の主な理由は「アジア諸国への加害責任」に触れなかったことだが、そこから支離滅裂だ…
▼68回全国戦没者追悼式8月15日(産経)
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大東亜戦争の“加害責任”など政府見解ではなく、多様な受け取り方のひとつだ。朝日が言う「歴代首相」も相変わらずの捏造報道で、富市が勝手に言い出したものである。

全国戦没者追悼式の総理挨拶が、村山談話を踏襲する必要はない。しかも「アジア諸国」というウソも不変。殆どの国民はそれが中共・朝鮮だけであることに気付いているが、朝日は素知らぬ振りだ。
▼大鳥居前に翻る半旗8月15日(ロイター)
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そして、靖国神社の参拝に何の問題があるのか…反日陣営は理屈を整理できなくなっている。

【中共代弁で迷走する朝日新聞】

「公人ですか、私人ですか?」

靖国神社に参拝する議員への定番質問は、今も絶えない。この問い掛けは、靖国参拝を宗教行事と捉えて問題視する古いタイプの批判に基づく。若い記者は、昔そんな論争があったことすら知らないだろう。
▼報道陣が集まる到着殿前(撮影筆者)
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8月13日付の朝日社説は、この政教分離を問題にして安倍首相の参拝を牽制した。ところが16日付社説では中共・南鮮との関係改善を靖国と結びつける。

文句の付け方が日替わりでコロコロ変わる珍しい言論機関。実際に参拝のどこに発狂する程の問題があるのか、読者は理解に苦しむだろう。朝日は、他人に説教する前にクレーム内容を整理するのが先だ。
▼開門を待つ参拝者8月15日(ロイター)
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中共が首相らの靖国神社に反対している理由は明確である。中曽根首相は昭和60年、親しかった胡耀邦を守る為に参拝を取りやめた。その際に中共指導部と口約束を交わしたのだ。

「かつて政府の顔である首相・官房長官・外相の3人は在任中に参拝しないという紳士協定があった」

中共外交部長の王毅(おう・き)は、駐日大使時代の2005年、講演でそう明かした。中曽根本人は「記憶違いだ」とトボケるが、胡耀邦サイドと“紳士協定”を結んだことは確かである。
▼神門を越える参拝者の列8月15日(産経)
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朝日新聞など反日メディアは、この“紳士協定”を隠蔽し、中共の代弁を繰り返すうちに、見事に参拝批判の理屈が崩壊。古臭い“政教分離論”を倉庫から引っ張り出すようなボロボロの状態に陥った。

問題は中共が“紳士協定”を切っ掛けに、靖国参拝をめぐる外交カードを手にしたことである。以来、中共は適当なタイミングと匙加減で、カードをちらつかせ、外交を有利に進めるようになった。
▼今年は遅刻して正午過ぎに参拝(撮影筆者)
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この外交カード化についても朝日は伏せる。“靖国問題”の経緯に関する本質を紙面で隠蔽しまくっているのだ。同じく、他の反日メディアも参拝批判の骨格が不安定で専ら“アジア諸国の批判”に頼るばかり…

もう国内の世論を二分するような状況ではないのだ。

【参拝反対派政党の大陥落】

超党派議員による8月15日の靖国集団参拝は、102人に上った。昨年の55人に比べて倍増に近い。衆院選・参院選を経たことで、一気に参拝する議員が増えた結果だ。直近の民意とも言える。

集団参拝は自民党を中心に民主党から6人、みんなの党3人、そして日本維新の会からは20人が参加。ここでも維新の登場が、国会議員の構成を大きく変えている。
▼本殿に向う「議員の会」重鎮(産経)
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注目するのは今回、明確に靖国参拝を真っ向から批判した勢力だ。反対を表明したのは代々木と社民党の弱小2政党だけ。民主党の大畠章宏も閣僚参拝を批判したが、自党の議員を除名処分にするのが先だ。

そんな民主党やらカルト・無所属を除き、明確に反対した2政党の議員数は僅か25人である。これを国論二分と言えば嘘になる。靖国参拝が「国内の反対を押し切る」という形ではないことが重要だ。
▼参拝する「議員の会」若手(産経)
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「国務大臣だが、それ以前に日本人として犠牲になられた英霊に哀悼の誠をささげた。戦没者をどういう形で慰霊するかは純粋に国内問題だ。よその国から批判や干渉を受けるものではない」

神殿を出た古屋圭司国家公安委員長は、待ち構える記者にそう答えた。国会内の少数反対勢力など歯牙にもかけず、中共・朝鮮のクレームに絞って牽制している。正しい認識だ。
▼昇殿参拝を終えた稲田朋美大臣(産経)
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閣僚では他に新藤義孝総務相と稲田朋美行政改革担当相が15日に参拝。前倒しで参拝した根本匠復興相を含めると4人にのぼった。第1次安倍内閣の1人とは様変わりしている。

ここでも首相と官房長官・外相が含まれないことに注目だ。中共側が自白した例の“紳士協定”は生きている…果たして、それが安倍首相が参拝を避けた理由と関係しているのか?

【8・15を尊ぶ信仰トレンド】

「松陰先生は、大変困難な決断をし、自らの一身を投げうって国家の為に尽くされた」

地元に帰省していた安倍首相は8月13日、山口県萩市の松陰神社を参拝した。吉田松陰は靖国神社の祭神だ。九段の杜には軍人・武人以外にも、近代化に導いた思想家が祀られている。
▼松陰神社参拝する安倍首相8月13日(FNN)
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そして8月15日、安倍首相は靖国神社に詣でることなく、玉串料を奉納した。代理で靖国神社を訪れた萩生田光一総裁補佐は、安倍首相に託された言葉を公にした。

「先の大戦で亡くなった先人の御霊に、本日は参拝できないことをお詫びしてほしい。靖国への思いは変わらないと伝えてほしい」

言葉には安倍首相の苦しい思いが滲んでいる。このメッセージと2日前の松陰神社参拝をセットにして、“一定の理解”を示すことも出来るだろうが、やはり不参拝は安倍首相にとって大きな痛手だ。
▼首相の言葉伝える萩生田補佐(ロイター)
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首相周辺からは秋の例大祭に合わせた参拝を示唆する声も漏れる。確かに春秋の例大祭こそ重要な神事だ。それでも8月15日が大切であることに変わりない。小泉元首相は12年前、こう訴えた。

「首相に就任したら、8月15日の戦没慰霊祭が行われるその日、靖国神社をいかなる批判があろうとも参拝します」
▼参拝を終えた進次郎議員(産経)
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毎年8月15日は日本武道館で全国戦没者追悼式が催され、首相は必ず参列する。武道館は靖国神社の隣り。小泉元首相は、つまり「素通りしない」と宣言したのだ。

メディアの過剰報道も影響したが、この小泉発言に呼応する形で同年8月15日の靖国参拝者は記録的な数にのぼった。若い層を巻き込んだ新しい靖国信仰が始まったとも位置付けられる。
▼参拝者で埋まる8月15日の境内(産経)
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今年の参拝者数は、昨年より1万人以上増え、実に17万5,000人を超えた。こうした潮流に、安倍首相が盤石なはずの第2次政権でも合流できなかったことは残念で無念だ。

【秋の例大祭に参拝果たすか…】

「現下の日中関係について真剣かつ率直な雰囲気の中で幅広く意見交換した。さまざまなチャンネルを通じて対話を継続していくことで了解し合った」

北京に乗り込んだ外務省の斎木昭隆事務次官は7月30日、帰国に先立ち、そう語った。昨年末の政権発足以来、初めてハイレベルで中共側と突っ込んだ議論を交わしたのだ。
▼帰国前に会見する斎木次官7月(共同)
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詳しい会談内容は不明だが、この北京訪問を受けて8月の靖国参拝を見送り、9月初めのロシアG20で日支首脳会談が開かれるとの観測も浮上。また、会談後の秋の例大祭に参拝する可能性も指摘された。

しかし会談後に参拝すれば、それこそ習近平の面子が丸潰れになる。最悪のシナリオだ。一方の安倍政権も、会談と引き換えに参拝を自粛したと受け止められ、失望論が高まる。
▼吉田松陰の墓を参る安倍首相8月13日(産経)
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「未来志向の決定だ」

安倍首相の不参拝を評価した米要人がいた。上院外交委のメネンデス委員長だ。来日中のメネンデスは8月15日午前、官邸を訪れ、安倍首相と会談した。参拝に打ってつけの時間帯に会談が開かれたのだ。

意味ありげで、実際に意味があった。米上院は7月29日、尖閣問題で中共を非難する決議を採択している。決議は、中共軍艦によるレーダー照射事件など具体例を挙げた強い内容だった。
▼侵犯繰り返す中共の「海警」8月9日(11管)
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「中国が領海基線を不適切に設定するなど、一方的な措置を取った。 尖閣諸島が日本の施政権下にあるという米国の認識が、第三者の一方的な行動によって変わることはない」

我が国のメディアはこの上院決議を大きく報じなかったが、明らかに今回の不参拝と密接に関係している。安倍首相は、米国に配慮して参拝を自粛した公算が高い。

【英霊にこたえる国軍の復活】

反日メディアは、日支外交の停滞を「アジア外交の空白」と歪曲し、安倍首相の靖国参拝を牽制し続けた。安倍・習近平会談が開催されれば、万事オッケーといった論調だ。

対して、米国が懸念するのは日支首脳会談の実施ではない。小泉時代には日支トップ外交がなくとも大きな問題はなかった。更に、今の米国には他国の2国間外交に口を挟む資格も余裕もない。
▼個人攻撃も始めたオバマ8月9日(FNN)
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「プーチン大統領が権力の座に戻ってから、ロシアは、かつての冷戦時代のような古臭い“反米的言動”が増えた」

オバマ大統領は8月9日の会見で異例の名指し批判を行なった。中共や南鮮の反日的言動に比べたら蚊に刺された程度だが、9月上旬に決まっていた米ロ首脳会談は吹き飛んだ。

アフガンやシリアなど世界各地の安全保障に影響を及ぼす軍事大国。その2国間会談がキャンセルになったのである。日支首脳会談など朝日新聞が泣き喚くほど重要でもなんでもない。
▼G8の冴えない米ロ会談6月(ロイター)
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米国が重視したのは、恐らく尖閣情勢だ。首相による靖国参拝が中共側に「恰好の口実を与える」と懸念した可能性が高い。尖閣周辺海域は、想像以上に緊迫しているのかも知れない。

首相の靖国参拝について「軍国主義復活」とか「戦争賛美」とか非難しながら、中共が尖閣で軍事行動を起こす…まったく倒錯した事態だが、中共指導部は、そんな矛盾も気に掛けないだろう。

実際に、中共海軍は8月15日から東シナ海での実弾射撃演習を開始。お下がり空母「遼寧」を出港させた。終戦の日を選んだ武力示威であることは明らかだった。
▼青島港を出港する「遼寧」8月15日(NHK)
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一方、参拝自粛の真相が、尖閣情勢が絡む対米配慮であれば、安倍首相にとっては深刻だ。中共が1~2年間で尖閣をあっさり諦めることはない。在任中の靖国参拝が危ぶまれる事態になったのである。

小泉-ブッシュ時代と安倍-オバマ時代の違いも大きい。それでも安倍首相には不参拝の失点を補って余りある大仕事が残されている。憲法改正による国軍の復活だ。
▼昨8月15日の靖国演説(撮影筆者)
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昭和20年8月15日は、明治以来の伝統を誇る国軍が失われた日である。武装解除された将兵の無念は計り知れない。

その雪辱を果たし、伝統の国軍を取り戻すことが、安倍首相の使命だ。




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参照:
官邸HP『平成25年8月15日 全国戦没者追悼式式辞』

参考記事:
■産経新聞(阿比留さん)8月15日『靖国神社 首相が堂々参れる日いつ…いまだ残る「熱狂と偏見」』
■WSJ8月15日『3閣僚が靖国参拝―首相参拝せず周辺国との衝突避ける』
■産経新聞8月13日『靖国参拝、米はどうみる? 慎重対応求め、警戒論も』
■産経新聞8月15日『米上院委員長が首相の靖国参拝見送り評価』
■産経新聞8月15日『参拝した閣僚らの発言要旨』
■産経新聞8月15日『米上院委員長が首相の靖国参拝見送り評価』
■産経新聞8月14日『首相参拝、中韓より米の反応見極め、時機模索』
■朝日新聞8月15日『靖国参拝、野党に温度差 政権批判は共産・社民だけ』

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