チベット人殺戮の黒い正月…銃口による恐怖支配再び

野放しの抗議活動に仕掛けられた罠。集まったチベット人に治安部隊は無差別発砲を行った。止まない焼身抗議に対し、中共当局は強硬策に転じた。血に染まったシナ正月…大虐殺は繰り返される。
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シナ版のツイッター「微博」に、中共武装警察の装甲車と兵員輸送車の写真がアップされた。撮影場所は、成都からチベット東部に続く高速道路。日付は1月24日だった。

「多数の武警車両を見た。西蔵(チベット)で何か起きているようだ」
▼チベットに向かう武装車両1月24日(RFA)
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写真をアップした人物は、そう呟く。成都附近に住むシナ人は何も知らされていなかったが、この時、チベット東部カム地方では中共部隊によるジェノサイドが始まっていた。

1月23日から24日にかけて中共治安部隊は、カム地方の2つの町で相次いでチベット人住民に発砲。少なくとも数十人が死傷した。仏のAFP通信は流血の事態を受け、こう伝えた。

「2008年以来の惨事となっている」
▼虐殺が行われた2地域(RFA)
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正確な犠牲者数や現在の町の状況など不明な部分は多いが、あの五輪ジェノサイドに続く大規模なチベット人虐殺が起きていることは確かだ。欧米のメディアは大きなスペースを割いて報じている。

その中、RFAは現地の最新写真を入手、公開した。最初に虐殺が発生したカム地方ダンゴで撮影されたものだという。一般住民と治安部隊が対峙しているように見える。
▼ダンゴの中共治安部隊1月24日(RFA)
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写真の左端に固まっているのが武装警察部隊だ。ヘルメットと盾を備えた完全武装。中央に隊員1人が跪き、その周りには瓦礫が散乱している。

RFAによると「市民ジャーナリスト」が1月24日に撮影した写真だという。治安部隊による凶行は2日連続だったのか…これまでダンゴで虐殺が起きたのは23日と伝えられていた。

【治安部隊が自動小銃を乱射】

「大勢のチベット人が集まり、平和的な抗議活動が始まりました」

現地のチベット人がRFAの取材に対し、匿名で当日の状況を明かしている。カム地方ダンゴ(Drango:炉霍)の抗議デモは、1月23日朝、数百人規模で静かにスタートしたという。
▼ダンゴの中心部2008年4月(ロイター)
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やがて近郊からもチベット住民が駆け付け、デモは1000人以上に膨れ上がり、午後になっても終わる気配がなかった。そして、抗議者の波が公安本部に迫った時、虐殺が始まった。

「自動小銃を撃ってきたのです。少なくとも2人が射殺されました」

無差別発砲だった。その場で2人の即死が確認された。殺害された1人は、近郊のノルワ村に住むユンテンさん49歳と判明。米国の支援団体ICTが生前の写真を公開し、虐殺の事実を世界に訴えた。
▼射殺されたユンテンさん(ICT)
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もう1人は「ロギャ」という住民の息子としか判っていない。また亡命政府のあるインド北部マクロードガンジの報道機関は「6人が殺害された」と伝えている。

負傷者のうち32人はユンテンさんの遺体と共に、ダンゴ僧院に運び込まれた。中共当局から守る為の措置だが、僧院専属の医師も重傷を負うなどケガ人の多くが重体と見られる。
▼町の北部に建つダンゴ僧院(資料)
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「12人が頭部に銃弾を受け、極めてシリアスな容体だ」

現地からの声は、多くのチベット人住民が銃乱射の的となった事実を伝えている。そして、町中での虐殺に続いて中共当局はダンゴ周辺のチベット住民を相次いで拘束。多くが消息不明になっているという。

このダンゴの虐殺が衝撃をもって世界に伝えられた頃、中共治安部隊は別の地域で新たな虐殺を始めていた。

【住民を誘き出して一斉射撃】

「町の広場は血で覆われていました」

中共治安部隊は1月24日、ダンゴの北およそ150㌔に位置するセルタ(Serthar:色達)でもチベット住民に無差別発砲。ダワ・ダクパさん33歳ら少なくとも5人が銃撃を受けて死亡した。
▼虐殺が起きたセルタの広場(資料)
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当日、セルタの町の中心部では平和的な抗議活動が繰り広げられていた。それを約600人の中共治安部隊が包囲。無差別発砲を開始したという。現地からの情報を得た亡命チベット人は、こう語る。

「チベット住民は散り散りになったが、何人かは既に深い傷を負っていた為、逃げることすら出来なかった」

広場に集まっていたチベット人は300人以上の規模だったが、目撃情報によると中共治安部隊は排除せず、当初は静観していたという。そして、人数が増えたのを見計らって無差別に銃撃した模様だ。
▼セルタの中心部10月1日(ウーセルblog)
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前日のダンゴでも抗議者の増加を待って虐殺を行っている。街頭抗議を規制せず、放任した後に一斉射撃する手口は3年前のウルムチ大虐殺でも同じだった。中共によるジェノサイドの常套手段である。

しかもセルタは中共当局が監視対象に置いていた町だった。昨年10月1日の国慶節、中共の侵略支配に抗議して法王猊下のタンカと雪山獅子旗が広場の建物に掲げられたのが、この大草原の小さな町だった。
▼国慶節に掲げられたタンカ(ウーセルblog)
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その際は、住民が地元の公安を圧倒し、無事に終わった。だが、後に当局が警戒を強め、弾圧部隊を派遣していたことは確実だ。600人規模の部隊は展開済みだったのである。

中共当局は定型文を復唱するかのように「暴動への対処」と主張するが、計画的な殺戮だ。現在、セルタの町は外部と完全に遮断され、虐殺の全体像は判らない。
▼タンカを見上げるセルタ住民10月1日
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判っているのは、中共によるチベット弾圧が新たな局面に入った事実である。

【血に染まったシナ正月の悪夢】

ダンゴやセルタの虐殺もまた昨年から相次いでいる焼身抗議と無縁ではなかった。そしてシナ正月とも密接に関係している。虐殺の数日前、ダンゴの当局関連施設に焼身予告のビラが貼付けられていた。

「チベット人には自由がない。シナ正月に私は自己犠牲を行います。全てのチベット人は当局から私の遺体を守って下さい」

このビラが惨劇に繋がってしまった。地元の中共当局は弾圧に乗り出し、無関係のチベット住民200人余りを拘束した。それに憤ったチベット人が立ちがあり、1月23日に抗議デモを実行したという。
▼ダンゴに集結する武警車両08年4月(ロイター)
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セルタでも同様に、今年のシナ正月元日にあたる1月23日に焼身抗議を行うと予告するビラが撒かれていた。チベット住民はなぜ、シナ正月に狙いを定めたのか?

中共当局は占領地のチベット住民に対し、シナ正月を派手に祝うよう強要していたという。チベット歴の新年は旧正月と異なり、今年は2月22日が元日だ。シナ正月など平日に過ぎない。
▼北京市内のチベット寺院1月25日(AFP)
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余りに無謀な押し付けにチベット人は反発を強めていた模様だ。またシナ正月は中共の当局者が大型休暇を取り、弾圧機関も手薄になる。それに合わせた焼身予告は効果的だった。

しかし、シナ人侵略者は自らの新年を血で染めた。治安部隊はトリガーを引くことに躊躇しなかった。メディアが嬉々としてして報じるシナ沿岸部の春節イベントの陰で惨劇が起きていたのである。
▼インド北部での犠牲者追悼式1月25日(AP)
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街頭に繰り出した抗議者にとっても、無差別発砲は予期しない事態だったかも知れない。2008年の五輪虐殺以降、中共当局はチベット地域で大規模殺戮を控える傾向にあったのだ。

2つの町で相次いで虐殺が起きたのは、偶然ではない。胡錦濤政権は明らかに方針を転換した。殺戮指令を出したのである。血の弾圧にシフトした最初の銃声は既に1月半ば、あのンガバから届いていた。

【国際非難あざ笑い虐殺続く】

昨年3月以来、焼身抗議が相次ぐンガバで1月14日、元僧侶のチベット人青年が自らに火を放った。ロブサン・ジャムヤンさん、21歳。抗議の2日後、彼が息を引き取ったことが確認された。

「恐ろしい光景だった」

目撃者は、そう漏らした。現地の住民や各国のチベット支援団体が強い衝撃を受けたのは、16人目となる自己犠牲そのものではなかった。中共治安部隊が銃を乱射したのである。
▼自己犠牲に臨んだジャムヤンさん(SFT)
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惨劇の現場はキルティ僧院の近くだった。炎に包まれたジャムヤンさんの身を当局から守ろうと大勢のチベット人が駆け付け、治安部隊と対峙する状況になった。

チベット人の群衆に対し、治安部隊は催涙弾を放った後、発砲した。少なくとも1人の高齢女性が射殺され、若者2人が重傷を負った。それよりも遥かに多くの死傷者が出たという情報もある。
▼ンガバに進駐した治安部隊10月(AFP)
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これまで焼身抗議に絡んで治安部隊がチベット住民を襲撃する蛮行はあっても、無差別射撃を行うことはなかった。終わりの見えない焼身抗議に、中共当局は更なる恐怖で対処する強硬策に転じたのだ。

最悪の展開である。こうした状況の変化を敏感に察知したのは米国政府だった。チベット問題担当のオテロ国務次官は24日、ダンゴ・セルタの弾圧を受けて声明を発表。強いトーンで中共当局を批判した。

「中国政府は、チベット人地域で宗教的・文化的・言語的なアイデンティティを脅かし、繰り返し緊張を生み出している」
▼自制促す米国務省報道官1月24日(NHK)
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声明とは別に国務省のスポークスマンは来月に予定されるオバマ・習近平会談で人権問題を取り上げると警告。またドイツ政府も24日付で声明を発表している。

だが中共政府は、引き金に掛けた指を元に戻す気はないようだ。1月26日にもンガバ南西のザムタンで治安部隊がチベット人集落を襲撃。1人が射殺されたとの情報が入ってきた。
▼虐殺エリアに続く幹線道路は封鎖(RFA)
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情報統制が厳しくなっている為、詳しい状況は不明だが、緊迫した局面は確実に続いている。更に懸念されるのは、チベット人の抵抗が激しさを増し、流血の惨事が拡大することだ。

チベット地域は間もなく“弔いの新年”を迎え、そして3月には五輪大虐殺の発端となったラサ蜂起記念日が再び巡って来る。


  〆
最後まで読んで頂き有り難うございます
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参考動画:
RFA1月25日『Sichuan Rocked By Tibetan Protests』(YouTube)

参照:
アジア自由民主連帯協議会1月26日『中国共産党政権のチベット人殺戮に関する緊急声明』

参考記事:
■RFA1月25日『China Boosts Security In Tibet, Sichuan』
■RFA1月24日『More Shot Dead As Protests Escalate』
■RFA1月23日『Six Believed Killed in Protests』

■ICT1月25日『‘New Year of Mourning’ in Tibet: Police again open fire killing Tibetan』
■ICT1月23日『Three Tibetans shot dead on first day of Chinese New Year』
■FreeTibet1月24日『Chinese continue shooting Tibetans』
■Phayul1月26日『Another Tibetan killed in fresh protests』
■Phayul1月24日『5 killed in fresh protests in Serthar』
■Phayul1月24日『Day-long protests in Ngaba, Tibetans beaten and arrested』
■TCHRD1月25日『Indiscriminate Firing Kills 2 Tibetans, Maims 10 in Serta County』
■TCHRD1月23日『One Tibetan shot dead in Drango Protest in Kandze』
■RFA1月14日『Two Shot After Self-Immolation』
■AFP1月26日『四川省のチベット族居住区で衝突拡大、警官発砲でまた死者』
■大紀元1月24日『武装警察がチベット人に発砲 1人死亡 抗議集会中に』
■WSJ1月24日『チベット族1人死亡―中国四川省で治安部隊が発砲』
■ロイター1月25日『中国当局がチベット族デモにまた発砲、2人死亡=人権団体』

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