チベット高校生蜂起の衝撃…大弾圧から子供達を守れ

現地情報を伝え続けたのは既存メディアではなかった。チベット人高校生らのデモ行進はアムド各地に広がり、遂に6日目に突入。当局が一部黙認の姿勢を取る一方、大規模弾圧の危機も迫っている。
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「文化的平等を要求する」

デモ行進に参加したチベット人高校生は、そう叫んだ。長い植民地支配の果て、教育現場から自分たちの言葉が奪われようとしている。牧草地帯の街で起きた勇気ある行動は、直ちに世界に伝えられた。

チベット東北部アムドのレブコンで、チベット人高校生らが蜂起したのは、10月19日のことだった。レブコン(Rebkong、占領名:同仁)はアムド文化の中心とされる古い街だ。
▼僧院前を進むデモ隊列10月19日(RFA)
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午前7時、第一民族中学校の生徒がデモ行進を開始した。そこに近隣の5校の生徒が加わり、抗議者は7,000人以上に増加。デモに参加したチベット人の年齢は14歳から20歳で殆どが10代だった。

「民族の平等!言語の平等!」
▼レブコンのデモ行進10月19日(RFA)
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あるチベット人生徒は、そう書き記したプラカードを掲げていた。街の練り歩いたデモ隊列は、地区の人民政府庁舎前に集結。抗議活動は午後2時頃まで続いたという。
▼庁舎前に集まるチベット人生徒10月19日(RFA)
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大規模抗議の原因は、中共当局のチベット語抹殺プログラムだった。植民地政府である青海省は9月下旬、チベット語・英語以外の全教科での北京語授業を義務付け、教科書も北京語に変える方針を打ち出した。

「この政策は、文化大革命を思い出させます」

元教師のチベット人は、そう語る。レブコンだけではなく、青海省支配地域全てに関わる問題だ。当然のように、チベット人生徒による抗議は、他の街にも広がった。

【アムド各地で大規模デモ行進が続発】

「今朝8時頃、2,000人の生徒が学校のグラウンドに集まりました。そして、街の中心部に向かって行進を始めたのです」

10月20日、レブコンから約150㌔離れたチャブチャ(Chabcha、占領名:海南チベット族自治州共和県)でもチベット人生徒が蜂起。大規模な抗議に発展した。
▼チャブチャのデモ行進10月20日(RFA)
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青海湖の南、広大なステップ地帯にあるチャブチャは、かつてラサと唐の都・長安を結ぶ交易で栄えたオアシスだ。約2,000人規模で始まった抗議は時間が経つにつれて増えたという。

「我々は、チベット語を使う自由を取り戻したい」

ここでもチベット人生徒は、人民政府庁舎に向かって行進し、抗議を続けた。前日のレブコンと比べると、生徒が一斉に走り出すなど、やや騒然とした光景も見られた。



さらに10月21日、今度はレブコンから南西に300㌔以上離れたマチェン(占領名:青海省果洛チベット族自治州大武)で中学生らが蜂起。デモ行進は、日の出を待って朝の早い時間帯から行われた。
▼マチェンの中学生デモ行進10月21日(RFA)
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マチェンは、アムドの聖山アムニェ・マチェンを望む小さな町だ。チベット人生徒による抗議活動は、青海省に組み込まれたアムド全域に一気に広がった模様だ。

【支援団体とRFAが速報し続けた】

アムドで連続する抗議活動は北京にも波及した。10月22日、北京の中央民族大で400人以上の学生がキャンパス内で抗議の声をあげた。同大に籍を置くチベット人の大半が参加したと見られる。

「民族の言語を保護し、中華文明を盛んにしよう」
▼中央民族大で抗議するチベット人学生(HPPE)
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横断幕にはチベット語と中文で、そう書かれていた。これは「各民族の独自言語による発展」を謳った中共の表向きの主張を逆手に取ったメッセージだろう。校内での抗議活動は2時間ほど続いという。

この北京の学生抗議は、我が国のメディアでも報じられたが、全てRFA(ラジオ・フリー・アジア)からの引用だった。どこの社も独自取材をしていないのだ。
▼後方に抗議の集団が見える(HPPE)
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さらに、情報の元を辿ると発信源はチベット支援ブログ「High Peaks Pure Earth」の22日付け記事に行き着く。このブログが写真を掲載し、それを英国の支援団体が紹介する格好だった。

最初の抗議発生から現在まで海外メディアは1社も現地に入っていない。日本メディアがご案内される反日騒乱とは対照的で、厳しい取材規制が敷かれ、立ち入り制限が徹底されているのは確実だ。
▼レブコンのデモ行進10月19日(RFA)
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その中、ロンドンに本部を置く支援団体「Free Tibet」とRFAが大活躍した。「Free Tibet」は2年前のシナ棒回しで徹底抗議を呼び掛けた老舗のグループである。

そして一方のRFAは、レブコンでデモ行進が繰り広げられた直後に画像と動画を公表した。現地の住民が撮影した素材を独自ルートで入手したものだが、驚くべきスピードだ。
▼10月19日付けでアップされた動画


もしRFAが速報していなければ、チベット人高校生らによる勇気ある行動が、広く伝えられることはなかった。だが、抗議デモが連続する一方で、現地からの情報は徐々に減少している。

危険な状況が近付いている恐れが高い。

【治安部隊は数時間の抗議を見守った?】

「その時、20台から30台の公安車両が到着してデモ隊列を包囲していました」

10月19日のデモ行進を目撃していた人物は、そう証言する。公安は直ちに態勢を整えたが、弾圧には踏み切らなかった。これは生徒だけで抗議活動を行ったことが影響している模様だ。
デモ隊列と離れて歩く僧侶10月19日(RFA)
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レブコンのデモ行進に、初期の段階では僧侶も加わっていた。しかし途中から僧侶の姿は消える。治安部隊による弾圧を避ける為の措置だ。ある僧侶は、こう語っている。

「僧侶が参加すれば、それは当局が武装警察を介入させる口実になってしまう恐れがあるのです」

レブコンでは2008年3月、中心部にあるロンウォ・ゴンパ(法務寺)の僧侶300人が抗議活動を行った際、武装警察の大部隊が包囲し、装甲車両も出動している。
▼レブコンを巡回する武装警察2月18日(ロイター)
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今年のチベット正月もレブコンでは、武装警察部隊が市内を巡回する光景が見られた。僧侶の活動に対し、警戒を強めているエリアなのだ。そこで6時間に達する抗議活動が規制されなかったのは異例である。

10月21日のデモ行進でも周辺に武装警察部隊が確認されているが、抗議活動は数時間に及んだ。またチャブチャでは、デモの一団を遠巻きに眺める公安の姿がキャッチされている。
▼チャブチャのデモ行進10月20日(RFA)
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このチャブチャでは生徒20人が拘束されたとの情報も流れている。詳細は不明だが、当局は規制を弛めた後で一気に大弾圧を強行する可能性もあり、予断を許さない。

完全に情報統制した暗闇の中で虐殺を行うのが、これまでの中共の手口だ。

【抗議した生徒の安全を確保せよ】

「学生たちの願いは十分尊重する」

植民地総督にあたる青海省トップの強衛(きょう・えい)は10月21日、急遽現地に入り、そう約束したという。だが、これは地元の党機関紙が伝えたもので、本当に柔軟姿勢を示したか真偽不明だ。
▼上海万博に現れた強衛:中央(万博HP)
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アムドでの抗議活動は21日以降も続発。22日にカワスムド(占領名:青海省同徳県)、そして24日にはレブコンの北50㌔にあるチェンツァ(占領名:黄南チベット族自治州尖扎県)でデモが行われた。
▼チベット東北部アムド地方(RFA)
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チェンツァでの抗議活動は1,000人以上に上り、チベット人教師も加勢したという。英BBCは、治安部隊が出動する事態に発展したと報道。現地の状況はRFAも確認できず、強硬措置の発動が懸念される。

このチェンツァでは一昨年10月、当時17歳のユン・ルンドゥップ君がチベットの自由を訴えて抗議の投身自殺を行い、世界各国のチベット支援者の間に衝撃が走った。
▼ユン・ルンドゥップ君:享年17(看不見的西蔵)
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2008年3月、大虐殺に抗議して学校の五星紅旗を引き摺り降ろしたルンドゥップ君は、転校を余儀なくされ、その半年後に校舎から身を投じた。教師や同級生に宛てた遺書には、こう書かれていたという。

「チベット語を守るために、頑張って下さい」

中共当局によるチベット語の抹殺プログラムは今に始まったことでも、アムド地方特有の問題でもない。東トルキスタンも同様に、植民地での文化的ジェノサイドは確実に進行しているのだ。
▼行進するレブコンの女子生徒10月19日(RFA)
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どうすれば、それを阻止することが出来るのか…

UNが中共の機嫌を窺い、弾圧の支援機関に成り下がる中、有効な手段は尽きつつある。せめてもの抑止策は、各国の人々がチベット世界の出来事に視線を向け続けることだ。
▼デモ行進を受けたNYの抗議活動10月21日(SFT)
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欧米の有力なチベット支援団体は、デモ行進の頻発を受け、アムド地方の厳重監視態勢に入ったが、現地からの情報量は減少傾向。海外メディアには早急に現地入りし、状況を報道することが求められる。

そして中共当局が大規模な弾圧に踏み切らないよう監視し、抗議活動に立ち上がったチベットの子供たちの安全を確保することが最優先だ。



  〆
最後まで読んで頂き有り難うございます
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【Side Story】

過去のエントリで、Rebkongを現地の呼び方とされる「レゴン」と表記しましたが、ダライ・ラマ法王日本代表部の日本語表記に従い「レブコン」に変更しました。

ちなみに海外メディアは総じてRebkongというチベット名を用いて報道していますが、日本メディアは「同仁」なる占領名で統一。そんな所にも、基本的なスタンスの違い…というかダメっぷりが現れています。

またチャブチャの動画はRFAが10月23日に公開しましたが、撮影日時に関する説明はなく、画像との比較から20日のデモ行進と推定しました。同じ地区で2度目の抗議が行われていないことも特徴です。

参照:
HIGH PEAKS PURE EARTH10月22日『Tibetan Students in Beijing Protest for Tibetan Language』
ウーセルさんブログ:看不見的西蔵2009年8月4日『以身殉族的安多中学生永冷智和他的诗集《被囚禁的藏人》』
freeTibet HP『Student protests spread』

参考記事:
■RFA10月19日『Students Protest Language Change』
■RFA10月20日『Tibet Student Protests Spread』
■RFA10月21日『Security Tight in Tibetan Towns』
■RFA10月22日『Language Protests Spread to Beijing』
■産経新聞10月24日『中国でチベット族のデモも拡大 中国語教育の強制に反発』
■共同通信10月24日『青海省でチベット族また千人デモ 中国語教育に反発』
■大紀元10月21日『チベット人中高生、大規模デモ 中国語による授業に反対=青海省』
■AFP10月23日『チベット人学生ら数千人がデモ、中国語での学習強制に反発』
■東京新聞10月23日『チベット族学生らデモ 青海省、中国語強制に反発』
■時事通信10月22日『数千人が3日連続の抗議デモ=言語問題でチベット族学生-中国』

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