ウルムチ 奪われた金曜日…胡錦濤サミット放棄の謎

金曜礼拝のモスクが無人と化した日、抗議の声をあげたウイグル人を武装警官が襲う瞬間が撮影された。一方、胡錦濤は何に蒼褪めて緊急帰国したのか?サミット放棄で指揮系統の混乱が露呈した。
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大虐殺に続く、広範囲な弾圧。重武装の治安要員が市内を埋め尽くす中、ウルムチは最初の金曜日を迎えた。ムスリムにとって重要な礼拝日である。

半ば予想されていた事態ではあったが、中共当局はウルムチ市内の主要なモスクを閉鎖、礼拝に訪れたウイグル人を締め出した。
▼閉鎖されたモスク前に佇む人々7月10日(ロイター)
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当局サイドは治安上の問題としているが、自動小銃を掲げた武装警官がモスクを占拠する光景は、ムスリムにとって見るに耐えないもので、新たな不満を生み出すだけでしかない。

市内中心部のグランバザールにある大規模なモスク(Dong Kuruk Bridge mosque)は、6日から閉鎖が続き、ミナレット(尖塔)には、兵士が陣取っている。
▼尖塔で監視する武装警官7月10日(AP通信)
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ミナレットは礼拝を呼び掛けるアザーンを流す為にある。そこが今や監視塔に変わっているのだ…このモスクには、通常、2,000人ほどが礼拝に集まるというが、7月10日の金曜日、その代わりにいたのは、大量の治安部隊員と武警の装甲車だった。
▼同モスク前に陣取る武装警官(AFP)
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その一方で、中共当局は市東部のモスクで礼拝を許可した。そこは前日の木曜日に海外メディアの取材ツアーが行われたモスクで、金曜礼拝には約1,000人が集まったと報じられている。

多くの記者が“公認モスク”を取材、映像を配信しているが、「宗教弾圧」との批難を避ける為の拙いプロパガンダだ。市内の小さなモスクには、前日から門扉に「お祈りは各自宅で」と記した貼紙があった。
▼貼紙を見詰めるウイグル男性7月9日(ロイター)
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ウイグル語ではなく、漢字での指示である。これが異民族に占領されたウルムチの現状だ。そして、この日、武装警察によるウイグル人暴行の瞬間が捉えられた。

【武装警官がウイグル男性を殴打・拘束】

モスク封鎖との関連は不明だが、礼拝時刻が過ぎた頃、少数のウイグル人が街頭で抗議の声をあげた。場所は、多数の治安部隊要員が駐屯しているウイグル人居住区だ。

その様子を海外メディアのカメラが撮影していた。
▼抗議を行ったウイグル人7月10日(AP通信)
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だが間もなく、武装警察の装甲車両などが接近。さらに武装警官が、車道から柵を乗り越えて抗議者の列突入。ウイグル人男性を取り押える一部始終を英BBCのTVカメラがキャッチした。
■YouTubeにアップされたBBC映像


参照:BBC7月10日『China reimposes curfew in Urumqi』

武装警官が壁際に押し付けた男性の頭を激しく殴り付ける瞬間も映し出されている。無抵抗の人間に対する暴行だ。

NNNによれば、10数人が身柄を拘束されたという。何の容疑なのか、まったく不明だが、7日に凶器を持って市街を練り歩いた漢族と比べれば、その民族間差別は明白である。
▼ウイグル男性を殴打する武装警官(BBC)
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そして、この時、取材を行っていた外国メディアの記者数人も身柄を拘束されたとNNNは伝えていた。その後、テレビ東京の記者とスペインとオランダの記者が拘束されたとの情報が入って来た。

テレビ東京の記者は、日本時間の11日未明に解放されたが、拘束は8時間以上に及んだ模様だ。この邦人記者らの拘束が、BCCの撮影したウイグル人抗議者をめぐって起きたことは確実である。

だが一部メディアは、ここでも事実関係の狡猾なすり替えを行っている。

【海外取材陣が呼び込んだ抗議】

しかし、時事通信は「ウイグル族と警察との小競り合いを取材していた」と伝えている。BBCの映像を見れば「小競り合い」などではなく、一方的に武装警察側がウイグル人に暴行を加えていたのは明らかだ。

参照: 時事通信7月10日『邦人記者ら拘束=取材中、公安当局が連行』

時事通信にしても、中共治安当局によるウイグル人不当な暴行・拘束劇であることを知りながら、事実を捩じ曲げて報道している。我が国のメディアによる歪んだ中共関連報道を証明する記事の一例だ。
▼抗議者の列を牽制する武装警官(AP通信)
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だが、最も懸念する必要があるのは、拘束されたウイグル人の処遇である。取材した記者すら長時間にわたって拘束されたのだ。抗議の声を上げたウイグル人には、より過酷な対応が待っている。

そして、このウイグル人の抗議を海外メディアが「キャッチした」という表現は、実は誤りである。恐らく、抗議の列をつくったウイグル人は、周囲に海外メディアの取材クルーが多くいたことから、思い切って声をあげたのだ。
▼男性拘束後に涙ぐむウイグル女性(AP通信)
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取材したメディアには、拘束されたウイグル男性のみならず、顔を撮影された他の女性参加者も含め、追跡取材する責任がある。

今、ウイグル人は民族浄化の危機に晒されている。それはメディアの眼の届かない部分で進行しているのだ。殆どのメディが7月8日から「市内は平静を保っている」と伝えた。
▼ウイグル人居住区を低空飛行するヘリ(ロイター)
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だが、中共当局はウルムチ市内で、取り締まりと称したウイグル人狩りを続け、9日から10日未明までに190人を拘束したと豪語。当局発表だけでも200人近いのだ。闇では更に多くのウイグル
人が拉致されていると容易に想像できる…

昨年のチベット同様、機に乗じた徹底弾圧という中共の方針は一貫している。その中で奇妙な動きを示したのが、屠殺鬼・胡錦濤だ。

【余裕だった胡錦濤が蒼ざめた日】

周知の通り、胡錦濤は伊ラクイラ・サミットの開幕直前に急遽帰国した。各国首脳も驚く事態だ。サミット放棄だけではなく、ポルトガル公式訪問もキャンセルし、慌ただしく帰国した。
▼北京に到着した胡錦濤7月8日(FNN)
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何よりも面子を重んじる中共のトップが、国際会議をドタキャンすることは有り得ない。東トルキスタン情勢に絡む理由であったのは、明らかだが、真相に関しては諸説入り乱れ、憶測を呼んでいる。

当初は、ウルムチ入りして陣頭指揮を執るという説も浮上したが、胡錦濤は北京に張り付いたままだ。そもそも7月5日にウルムチで生じた事態が問題だったのであれば、直後に緊急帰国しただろう。
▼イタリア到着直後の胡錦濤7月5日(ロイター)
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ウルムチ大虐殺が起きた時刻、胡錦濤はイタリアに向かう飛行機に搭乗。詳しい状況を胡錦濤が知ったのは、現地到着後だったが、その後もコロッセウムを観光するなど余裕の構えだった。

そして現地時間の7月6日はナポリターノ大統領やベルルスコーニ首相と相次いで会談し翌7日もピサの斜塔を観光するなど予定のスケジュールをこなしていた。
▼ピサの斜塔前での記念撮影7月7日(AP通信)
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この時点で緊急帰国する必要性はなかったことになる。事態が急転したのは、現地時間の7月7日深夜だ。北京時間にすると、胡錦濤は8日朝に専用機に飛び乗った。

タイミングから推測すると北京時間の7日7日午後には、あの漢族暴徒が海外メディアの眼の前で大規模な示威行動と破壊活動を行っている。連中が公然と現れたのは後にも先にも、その1回だけだった。
▼大通りを威圧して歩く漢族暴徒7月7日(AFP)
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これが胡錦濤の意図に反した活動だった可能性は高い。しかし、直結させるのは短絡的だ。漢族暴徒の狼藉に対する海外メディアの批難は、それ程強くなく、サミットを放棄するまでには及ばない。

恐らく、よりディープな部分での動きだ。胡錦濤は、様々なチャンネルで指示を出せるが、物理的に自らが北京に戻る必要が生じたのである。

【東トルキスタン支援の声が希望を繋ぐ】

北京時間の7月8日夜、中南海に舞い戻った胡錦濤は、直ちに党政治局常務委員会会議を開催する。中共の最高意思決定機関であり、緊急会議開催の権限は党総書記にしかない。

これが物理的に胡錦濤が北京に戻らねばならなかった理由だ。さらに会議の開催を、新華社など党宣伝機関を通じ、異例の公表を行った。自らが党のトップとして対処することを内外に示したのだ。
▼余裕があった頃の胡錦濤7月6日(ロイター)
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反面、そうせざるを得ないほど、胡錦濤が追い込まれていたことも示唆している。緊急帰国の背景にあったのは中南海の政争と見るのが妥当だ。サミット放棄という失態を演じてまで守る必要があったのは自身の立場だったと考えられる。

そして胡錦濤は翌9日、公安・司法部門を統括する常務委員の周永康(しゅう・えいこう)をウルムチ入りさせた。これによって指揮系統の乱れが鮮明になる。

7月8日、ウルムチには公安部長の孟建柱(もう・けんちゅう)と武警トップの司令官・呉双戦が共に現地入りし、広場に集めた大部隊を前に演説。陣頭指揮を執ることを明確にしていた。
▼武装警察部隊を前に演説する孟建柱7月8日
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ところが直ぐ翌日に、格上の周永康が登場し、孟建柱の面子は丸潰れになる。実際、中共宣伝機関には周永康が病院を回る写真などが氾濫し、孟建柱の“活躍”は掻き消えている。
▼病院巡りする周永康(CCTV)
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不可解な混乱は、8日の孟建柱らの現地入りにある。

その日、胡錦濤は北京に戻る機中にいた。胡錦濤の意図しない動きが、そこにあったのだ。そして、その不穏な動きを察知した胡錦濤がラクイラを急遽離れたと考えられる。

参考動画:7月8日のウルムチ市内


鍵を握る人物は、次期主席ポストの最前列にいる習近平だが、どう動いているのか、現段階ではハッキリしない…

一方で、現在進行中の大弾圧に関して、胡錦濤を含む中共指導部が、国際社会からの批判など気に留めていない事はハッキリしている。胡錦濤が遁走しても、サミットで東トルキスタン情勢は完全に無視された。
▼ラクイラ・サミットの記念撮影7月10日(AFP)
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中共が安保理のP5の一角を占める限り、UNも「血の弾圧」にお墨付きを与える機関に過ぎない。それは昨年のチベット大虐殺でも経験した通りである。

今、東トルキスタン全土で恐怖に直面している人々を救う手立ては、余りにも少ない…しかし、それでも諦めてはいけない。
▼イスタンブールでの抗議行動7月10日(AP通信)
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大虐殺から5日…イスタンブールやベルリンでも抗議行動が相次ぎ、巨大な青天牙月旗が翻った。
▼ベルリンでの抗議行動7月10日(ロイター)
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例え、ごく僅かな人数に過ぎないとしても、世界の片隅に、東トルキスタンの惨状を懸念し、中共の非道に憤っている人々が存在する。
声を上げることが大切だ。それが必ずや彼の地で暮らすウイグル人に届くと信じて、声をあげることが大切だ。


  〆
最後まで読んで頂き有り難うございます
クリック1つが敵に浴びせる銃弾1発となります

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【Side Story】
▼7月7日のエントリで使用した2枚の写真がウルムチとは無関係の画像だったことが確認されました。ラビアさんが自身が指摘されています。
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参照:China Daily7月10日『Using wrong photo, Kadeer pleads case』

こうした事実誤認に関して、虐殺支持派は勝ち誇ったかのように、YouTubeなどで「捏造」と指弾・攻撃し始めています。今後、揚げ足を取られない為に、訂正し、同エントリのトップ画像を差し替えた上、誤認だった旨を但し書きします。

▼昨年のチベット大虐殺関連でも、僅かながら現地から画像が海外に流出しましたが、殆どの場合、チベット支援組織が「確かなもの」と吟味した上、ウェブ上に公開されました。

それに対して今回は、即日の流出だった為に、混乱が生じた模様です。また、その後、現地からの画像流出は確認されていません。これは中共当局の完全なネット遮断によるものです。

一方、テヘランでは9日に再び大規模な抗議行動が起こり、複数の動画が一斉にYouTubeにアップされました。ネットの接続が可能だったことで辛うじて届いたものです。G8はイランを非難する議長総括を採択しましたが、中共こそが地球の破壊者です。

参考記事:
■NNN7月10日『イスラム教徒の金曜礼拝禁止 新疆ウイグル』
■CNN7月10日『ウルムチ市内の主要モスク、礼拝日の金曜に閉鎖』
■共同通信7月10日『ウルムチ、金曜礼拝一部で中止  対立解消の糸口見えず』
■共同通信7月10日『ウルムチで邦人記者ら拘束  デモの取材途中に』
■読売新聞7月10日『ウルムチ暴動、190人を拘束』
■産経新聞7月8日【ウイグル暴動】武装警察部隊のトップが陣頭指揮
■イザ7月10日『ウイグル暴動 安定維持へ厳罰と教育 少数民族政策に変化なし』

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