ビルマ~北朝鮮 フンタ同盟…極秘の北式トンネルを暴く

ビルマに向かっていた北朝鮮の貨物船が反転北上した。関係を強化する2つの軍事政権…反軍政団体が北式トンネルの写真・映像を入手。更にビルマ軍政の極秘訪朝も暴かれた。
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日本海に向け、朝鮮人民軍が再びミサイルを乱射した。短距離ミサイルであったが、日本時間7月2日午後5時20分から9時20分にかけ、計4基が相次いで発射された。

いずれも地対艦ミサイル「KN-01」と見られ、北朝鮮東部・咸鏡南道咸興(ハムフン)市の南方にある新上里(シンサンリ)の基地から発射。また1基は、南東部・江原道の旗対嶺 (キッテリョン)から発射された可能性があるという。

これで5月の再核実験後に発射されたミサイルは計10基となった。
▼ミサイル発射報道を見るソウル市民(AP通信)
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「KN-01」は、最大レンジが150kmを超えるが、韓国国防省は、発射基地から約100km沖合に着弾したと推定。「通常の軍事訓練の一環」などとミスリードする指摘もあるが、明らかな軍事的挑発だ。

北朝鮮当局は海保に対して7月11日まで特定海域で訓練射撃を行なうと事前通報。だが、それは午前8時から午後8時にかけての時間帯で、今回は、通報時刻外の午後9時過ぎにもミサイルを発射した。
▼旗対嶺などの位置関係(読売新聞)
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通報した期間内にミサイルを発射することは想定内であったが、なぜ北朝鮮は7月2日を選んだのか?

この日、北京では安保理決議1874号の履行をめぐる米中当局者の協議がスタートしていた。対北制裁問題を担当するフィリップ・ゴールドバーグ調整官ら米政府代表団が北京を訪問し、中共外交部などと意見を交換した。
▼会見するゴールドバーグ調整官7月2日(ロイター)
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米中協議は翌7月3日まで行なわれる予定であることから、北朝鮮がミサイルを乱射した時間帯は、確実に、北京で両国の関係者が接触していた。脅しとしてのタイミングは“効果的”だった。
この米代表団の動きに絡んで、北朝鮮は更に次ぎの挑発を行なう可能性が高い。

【すでに金融制裁カードは切られた】

「テポドン2改」発射の兆候が伝えられる北朝鮮北西部・東倉里では現在、差し迫った動きはない。しかし、旗端嶺ではノドン2基発射の兆候が見られるとの情報もある。韓国政府関係者は、こう指摘する。

「7月4日の米独立記念日に合わせて撃つ可能性が高い」
▼北朝鮮が1月に公開した小型ミサイル写真
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この7月4日が現地時間か米東部時間か不明だが、北京を訪れている米代表団は、7月5日にマレーシアに入る。北朝鮮側が軍事的示威行為を繰り返すのであれば、このタイミングに合わせる恐れが高い。

マレーシアは、海上交通の要衝であるマラッカ海峡に面していることから北朝鮮船舶の貨物検査で積極的な協力を求める必要がある。また同時に、マレーシアは北朝鮮の有力な送金拠点。米代表団には財務省高官も含まれており、マレーシア側と金融制裁に関しても協議が行なわれる模様だ。
▼平壌の大規模集会6月25日(KCNA)
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米財務省は6月30日、イラン南部の島に本拠を置く「香港エレクトロニクス社」に金融制裁を発動した。同社が2007年からWMD拡散に絡む数百万ドル相当の資金移動を行なったと米財務省は指摘している。

本格的な対北制裁カードを最初に切ったのは米財務省だった。かつてBDA凍結が他の国際金融機関に大きな影響を及ぼしたのと同様、今回の措置も、北と取引を行なう外国企業への強いメッセージとなっている。

一方、1874号決議の採択後、国際メディアは北朝鮮船舶に対する貨物検査にスポットを当てていた。具体的には「カンナム1号」の追跡劇だ。しかし“謎の反転”で、事態は意外な針路を取り始めた。

【カンナム1号は人民武力部に所属】

「カンナム号が香港南側40キロ付近を航海していたが、6月29日頃、突然航路を変更し、北側へ進んでいる」

AP通信は複数の政府当局者の話として6月30日、「カンナム1号」が反転したことを報じた。「カンナム1号」はWMD関連の物資を積載している疑いがもたれ、米軍に追尾されていた北朝鮮籍の貨物船だ。

「北朝鮮へ帰国するのか、他の目的地へ向かう為に航路を変えたのか定かではない」
▼カンナム1号2006年10月(AP通信)
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意外な展開である。 安保理決議採択後、関係各国のメディアは対北制裁のシンボルとして「カンナム1号」の動きに関心を寄せていた。前回の1718号決議採択後も、同じ「カンナム1号」に注目が集まった。それをトレースするかのような報道である。

なぜ、再び「カンナム1号」だったのか?

安保理決議1784号に基づく船舶検査は、禁輸兵器・武器などを「含んでいると信じるに足る」情報がなければ実施できない。今回、米国は「信じるに足る情報」を持っていたか否か明言していない。
▼香港沖を航行するカンナム1号2006年10月
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しかし、メディアは言及していないが、重要なのは「カンナム1号」が、北朝鮮・人民武力部所属の貨物船であることだ。食糧や中古自転車を運ぶ商船などではない。

「カンナム1号」の目的地・寄港地が何処なのか、当初は明確ではなかった。中東なのかアフリカなのか、まったく不明とされていた。しかし「カンナム1号」は過去に“実績”があった。

そこに登場するのがビルマ軍事政権である。

【巨大“オトリ船”が反転した背景】

米国は、2007年5月に「カンナム1号」がビルマに小型武器を運搬した経緯を把握していた。今回も、目的地がビルマであることが出港から4日後には明確になってきた。追跡するに値する“前科”があったのだ。
▼ビルマの港に入るカンナム1号2007年5月
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その一方で、実際に禁輸対象の兵器を積載しているか疑問視する声も多かった。「カンナム1号」が平壌に近い南浦港を出たのは、制裁決議が採択されてから僅か4日後の6月17日だった。

果たして、船舶検査に注目が集まる中、実際に禁輸物資を積んで出航するか?米海軍がセブンス・フリートのイージス艦「ジョン・S・マケイン」を派遣する一方、米国の出方を探る為の“オトリ船”であるとの慎重論が根強い。
▼米イージス艦ジョン・S・マケイン(AP通信file)
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実際、2006年10月の核実験後「カンナム1号」は、香港で出港禁止措置を受けたものの、武器類は積み込まれていなかった。前回の追跡劇は、それで終幕した。

ところが、今回は積み荷の開示を避け、「カンナム1号」は漂流を開始している。そこからは、ビルマ軍事政権との微妙なバランスが透けて見える。

RFA(ラジオ・フリー・アジア)の報道によると、ビルマ軍事政権外交部が、同国駐在の金ソクチョル大使を呼び、検査実施を示唆する通告を発していたことが判った。

「武器類を含め、禁止した物質を積んでいるのであれば、どの港にも入れないようにする」
▼ティラワ港に停泊するカンナム1号2007年5月
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更に、ビルマ軍事政権外交部のセイン局長は、必要があると判断した場合は「他の外国公館の協力を受けて検査を行なう」とまで述べたという。

時期がほぼ一致することから「カンナム1号」謎の反転は、ビルマ軍事政権側の拒絶にあったと考えられる。例え“オトリ船”であったとしても、北朝鮮絡みで国際社会からスポットライトを浴びることは、極力避けたかったに違いない。

また、北朝鮮側がビルマ軍事政権に補償措置を求めたとの報道もある。両国は軍事的に密接な関係にあるのだ。その一端が、我が国で行なわれた捜査でも浮かび上がった。

【ビルマ経由で北移送の計略が露呈】

神奈川県警外事課などは6月29日、WMDの開発に転用できる「直流磁化特性自記装置」をマレーシア経由でビルマに輸出しようとした疑いで、在日朝鮮人を逮捕した。

外為法に違反した無許可輸出未遂の容疑で逮捕されたのは、新宿にアジトを持つ北朝鮮直系の商社「東興貿易」社長の李慶鎬(イ・キョンホ)ら3人で、装置を製作した「理研電子」の社長らも含まれている。
▼逮捕された李慶鎬容疑者(NNN)
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北朝鮮系商社「東興貿易」は今年2月末に家宅捜索を受け、調べが続けられてきた。捜索開始から約4ヵ月、経産省による「キャッチオール規制」による経産省の告発という形で今回の逮捕に至った。

参照:経産省6月29日『大協産業株式会社、理研電子株式会社及び有限会社東興貿易の外為法違反容疑に係る告発について』PDF 

この特殊な装置は、ミサイルの設計・開発過程で必要な他、高濃縮ウランの製造に欠かせない遠心分離器の調整にも使われるという。
▼直流磁化特性自記装置(神奈川県警)
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参照:「理研電子」HP 直流磁化性自動測定・解析装置

装置の輸出先はビルマであったが、最終的には北朝鮮だ。直接の輸出が不可能な現在、在日朝鮮人の李慶鎬は、二重三重のクッションを用いてWMD関連機器を北朝鮮に迂回輸出する計画だった。

ビルマ軍事政権と北朝鮮の信頼関係がなければ、成立し得ない輸出トリックである。そして、両国の密接な関係を暴いた証拠写真がスクープされた。

【北朝鮮式トンネルの写真を入手】

ビルマ軍事政権が、北朝鮮技術者の協力を得て国内各地にトンネルを掘削していたことが判明した。その証拠写真と映像を入手したのは国際的なネットワークを誇る反軍政団体「ビルマ民主の声」だ。

公開された写真の一部には、明らかにビルマ系とは異なった北東アジア系の集団が写り込んでいる。この一団が北朝鮮から訪れた技術者チームだという。
▼北朝鮮のトンネル建設技術者(ビルマ民主の声)
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写真が撮影されたのは、軍都ネピドーと推定されるエリアの宿舎で、手前に居る青い服装の男性は、ビルマ軍事政権の関係者と見られる。

ここで指摘されているトンネルは極秘裏に建設が進められているもので、それらはトンネルと表現するよりは、巨大な地下施設に近い。
▼トンネル建設現場(ビルマ民主の声)
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極秘トンネルは北朝鮮の技術協力によって2003年頃から造られ、各地に600~800本が存在。軍都ネピドー近郊には巨大な軍事施設のネットワークも形成されていると指摘する。

一部の地下施設は約600人が数ヶ月生活できる食糧保管スペースや個別の部屋があるという。その目的は判然としないが、「民主の声」が入手した極秘ファイルには、大型ミサイルと衛星通信司令部を設置する計画が記されていた。
▼極秘施設内部の写真(ビルマ民主の声)
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「民主の声」が入手した極秘トンネル、巨大地下施設の写真や映像は、一方で、北朝鮮内に同様の設備が存在する事実を裏付けている。有名な南侵トンネルなどは旧時代の遺物で、脱北者が証言しているように、北朝鮮は近代的な設備の地下施設を建設しているのだ。

【ビルマ軍政代表団が極秘訪朝していた】

「ビルマ民主の声」がキャッチした写真の一部は6月上旬に米イェール大のサイトで報じられた。その波紋は大きく、直後にはビルマ軍事政権の幹部クラスが更迭された模様だ。
■YouTube『Myanmar's secret military tunnel network』


その入手経路は明かされていないが、今度は7月2日、RFAが訪朝したビルマ軍政幹部の写真を公開した。しかも、新たな軍事協力の覚書に調印する瞬間を捉えた写真である。
▼昨年11月26日の調印式(RFA)
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左側のスーツ姿の男がビルマ軍政ナンバー3のシュエ・マン統合参謀長。そして右側が金格植(キム・キョクシク)朝鮮人民軍総参謀長(当時)だ。

シュエ・マン総参謀長ら訪朝団は、昨年11月22日から29日にかけて北朝鮮を訪問し、弾道ミサイルの組み立て施設などを視察。そして、サインした覚書には、地下施設建設に関する協力も含まれていたという。
▼メダルを貰うシュエ・マン総参謀長(RFA)
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正に、ビルマと北朝鮮の軍事同盟化である。しかも、軍事政権同士の関係強化であり、極めて危険な同盟だ。

軍事政権を欧米メディアはjunta(フンタ)と呼ぶことがある。元はクーデター直後の軍政を表現するスパニッシュだが、現ビルマ軍事政権は「Burma’s junta」とも言い現される。また、北朝鮮も軍事独裁政権である。
▼ビルマ軍政代表団の訪朝記念撮影11月22日(RFA)
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21世紀になってアジアには、劣悪なフンタ同盟が誕生していたのだ。民衆を弾圧し、軍事強国を目指す国家が、我が国の周囲に存在していることを、しっかり認識しておく必要がある。

そして2つの軍事政権を支えているのが、他ならない中共だ。


  〆
最後まで読んで頂き有り難うございます
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参考記事:
■ビルマ民主の声(DVB)6月24日『Burma’s military regime: Digging the tunnels』
■Yale Global Online6月9日『Tunnels, Guns and Kimchi: North Korea’s Quest for Dollars – Part I』
■RFA7月2日『Burma, North Korea Said To Expand Military Ties』
■RFA7月2日『North Korean Armament on Display』

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【Side Story】
▼かなり前に解説しましたが、ミャンマーなる国名は現行の軍事政権が強引に変えた名称です。反軍政の立場からは旧来の国号「ビルマ」を用いています。軍政側が新しい首都とするネピドーも首都とは認めません。

▼RFAが報じたシュエ・マンらの極秘訪朝は、2日夜の時点で確認して驚いたのですが、意外にも読売と共同が記事にしています。UN事務総長の事務的な訪問よりも重要なニュースです。

■共同通信7月3日『ミャンマー軍大将が極秘訪朝  昨年、軍事協力で合意』
■読売新聞7月3日『北朝鮮・ミャンマーが軍事協力…米政府系放送報道』

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参考記事:
■読売新聞6月24日『ミャンマー各地に秘密トンネル、タイ紙報道』
■イザ7月1日『別の転用物資も輸出 逮捕の社長、北機関の指示受け」』
■産経MSN2月26日『ミサイル関連物資、北朝鮮に不正輸出 都内の商社を強制捜査』
■朝鮮日報7月2日『対北制裁:「ミャンマー、カンナム号の検査を北に通告」』
■CNN7月1日『兵器積載疑惑の北朝鮮貨物船、針路を北に転じる 帰国か』

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