テロ国家=北朝鮮と日本赤軍…米の指定解除を阻め

テロ支援国家の指定解除を狙い、北朝鮮が動き出した。米国は拉致事件に目を瞑るのか…しかし我が国にリンクするのは拉致問題だけではない。悪名高い過激派もかつて北と密接な関係にあった。
画像

「死んだ方がいいと思うような悲しみの中で、子どもたちが自由になった姿を一目見たいと思ってやってきた」

壇上で横田早紀江さんは、そう訴えた。

4月22日、都内・日比谷公会堂で拉致被害者の即時帰国を求める「国民大集会」が開かれ、約1,000人が詰め掛けた。集会にはタイ人拉致被害者アノーチェさんの家族なども参加し、 早期の解決を呼びかけた。
▽4・22国民大集会(時事=AFP)
画像

壇上には、ルーマニア人拉致被害者ドイナ・ブンベアさんの弟・ガブリエル氏の姿もあった。

「日本で10年も救出活動してきた人達がいることを知った。この問題を解決しようとしている素晴らしい国民と出会うことができた。解決の為に共に戦いましょう」

ドイナさんと判明したのは3月下旬のことだった。約1ヵ月という短い期間での素早い展開である。
画像

この集会に先立ち、家族会代表の横田滋さんが、11月に代表を退くことが決まった。11月の誕生日で滋さんは75歳になる。高齢の身を励ましての精力的な活動は、体力的に図り知れない負担がある。

拉致問題は国民の手で取り組まければならない重要な課題だ。長年の横田さんの活動を引き継ぎ、より若い世代が積極的に動く必要があろう。

【日本も独自にテロ国家指定を】

集会には、安倍首相を始め、中川政調会長、塩崎官房長官など自民党の幹部が出席し、挨拶に立った。

「被害者のご家族に、お子さんを、ご兄弟を、お母さんをもう一度抱きしめてもらう、それを実現させることが私の使命であり責任である」
画像

安倍首相はこのように述べ、改めて決意を表明したが、相変わらず民主党幹部クラスの姿はなかった。北朝鮮シンパの菅直人は無理にせよ、拉致問題は国民的なテーマである。野党幹部の不在は極めて歪んだ姿だ。

その中、国士・中川昭一の口から異例の発言が飛び出した。

「なぜ米国にはテロ指定制度があるのに、日本にはないのかとの要望がある」

国民大集会で壇上に立った中川政調会長は更に、こう語った。

「今国会中に、日本でも北朝鮮のような国をテロ国家と指定するような法律をつくりたい」

政調会長の発言だけに力強い。報道によると中川政調会長は、こう述べて、テロ支援国家指定制度を創設する法改正案を議員立法で今国会に提出する方針を表明したという。

北朝鮮を追い詰めるには、更なる追加制裁も必要だが、こうした非難宣言的な追い打ちも重要だ。特に米国による対北朝鮮「テロ国家指定」が揺らぐ中、我が国が独自の非難を行うことは効果的だろう。

【米の柔軟路線転換を察知していた】

中川政調会長は、米国の柔軟路線に対して強い危機感を持っているようだ。2月の6ヵ国協議前、中川政調会長は米国の方針転換を先読みしていた…
▽講演会での中川政調会長(2月)
画像

2月22日付け『朝日新聞』は、協議前夜のエピソードを報じている。裏の取れていない記事ではないだろう。

協議再開直前の2月6日夕、自民党の中川政調会長は党本部で、来日中のヒル米国務次官補に「まさか北朝鮮を『テロ支援国』とするカテゴリーを変えたりしないですよね」とクギを刺した。ヒル氏はうなづいた。協議後、同席した佐々江局長は中川氏に「よくぞ言ってくれました」と語りかけた。(朝日新聞2月22日朝刊)

杞憂ではなかった。実際に2月の6ヵ国協議では米朝作業部会の設置が決まり、そこではテロ支援国家の指定解除を含む米朝関係正常化交渉が進められることとなった。
▽2月6日都内でヒルと会談した麻生外相(時事通信)
画像

ブッシュ大統領は、日本を置き去りにしない方針を重ねて表明。また、米朝交渉の雲行きも怪しくなってはいるが、指定解除をチラつかせた話し合いは、我が国にとって余りにもショッキングな事態に変わりない。

そして、北朝鮮も米国の「テロ支援国家」の枠から抜け出ることを大きな目標の一つに据えている。

【指定解除の野望秘めた国交回復】

4月22日、インドネシアの首都ジャカルタに、北朝鮮高官が現れた。外務次官の金永日(キム・ヨンイル)だ。
▽画像:ANN
画像

金永日は25日からミャンマーを訪問。国交正常化に向けた協議を行い、合意書に調印すると見られている。その狙いは、関係回復よりも寧ろ、米国の「テロ支援国家」指定解除に照準を絞ったものだ。

米国が北朝鮮をテロ支援国家に組み入れた「北の犯罪歴」は複数あるが、その中でもビルマ(現ミャンマー)で起きたラングーン事件は大きな指定条件となっている。

1983年10月、ビルマを訪れていた当時の韓国大統領・全斗煥(チョン・ドファン)暗殺を狙い、 首都ラングーンにあるアウン・サン廟で爆弾が炸裂。大統領は難を逃れたが、韓国副首相ら20人以上が死亡。大勢が重軽傷を負う大惨事となった。

参考動画:YouTube『ラングーン事件』

北朝鮮の特殊工作員による遠隔操作での爆殺だった。事件後、市内で3人の朝鮮人が発見され、ビルマ警察との銃撃戦の末、1人死亡、2人が生け捕りになった。

対南工作機関である人民武力部偵察局のエージェントだ。ビルマ政府は、ビルマ当局者が犠牲になったことに加え、国父アウン・サン将軍の墓所破壊に激怒。北朝鮮との国交を断絶した。

対して北朝鮮は全斗煥大統領がその場に居なかったことを理由に、韓国の自作自演と主張。現在もテロ行為を認めていない。同じ社会主義国でありながら両国の対立は深刻であった。

【北朝鮮は支援国ではなくテロ国家】

しかし、事件発生から四半世紀近くが経過し、現ミャンマー政府が国際的に孤立する中、両国は急接近し、昨年には外交関係が復活。国交再開も秒読み段階に入っている。いわゆる嫌われ者同盟だ。

北朝鮮にとってビルマとの国交回復は、米国のテロ支援国家指定解除に向けて大きな弾みとなる。被害者側を懐柔して、足を掬う格好だ。

北朝鮮による大規模な国際テロとしては、1987年の大韓航空機爆破事件も指定案件だが、このテロも盧武鉉政権下では、なし崩し的になっている。この爆破事件も北朝鮮は韓国の自作自演としている。
▽同事件で拘束された金賢姫
画像

80年代に起きたふたつのテロ事件が、米国が北朝鮮をテロ支援国家に指定した大きな要因だが、その実態は「支援国家」ではなく「テロ国家」そのものである。

果たして米国が、北朝鮮のテロをオールクリアーにするのか、微妙な部分があり、今後も米朝間で駆け引きが続くものと思われれる。

我が国は、ブッシュ政権が拉致事件をテロと位置付けたことから、拉致問題の解決を見ずに、指定解除することを憂慮し、強く牽制している。

それは正しい。

しかし、北朝鮮とテロを繋ぐ線は、我が国にとって拉致事件だけではない。殆ど論じられることはないが、北朝鮮による重大なテロ支援が過去に存在した。

【パスポート番号の奇妙な一致】

4月19日、米国で服役を終えた一人の男が成田空港到着後、逮捕された。久しぶりに日本人が目にする固有名詞が紙面に踊った。

「日本赤軍」

▽逮捕された菊村優(時事=AFP)
画像

かつて世界に名を轟かせた極左テロ集団と北朝鮮が深く関わっていることは、余り知られていない。日本のメディアで取り上げられることは無きに等しい。しかし、両者の関係は極めて密接だった…

拉致被害者・石岡亨さんが使っていたパスポートと、日本赤軍メンバー・戸平和夫の偽装旅券は、発行日が同じで、番号も似通っていた。

発行日は1980年2月6日で完全一致。そして番号は末尾2桁が違っていただけだった。

本物:MG0209124
偽造:MG0209115


これは何を意味するのか?

偽造旅券は、本物と発行日を同じにし、番号の一部を変えて作られるのがパターンだという。

石岡さんのパスポートは拉致された後、北朝鮮当局者の手に渡り、更に、日本赤軍メンバー用の偽造旅券の参考となっていたのだ。こうしたケースは石岡さんだけではなく「よど号」妻の旅券も番号の末尾を変え、他の日本赤軍メンバーが使用していた。

【平壌にいた日本赤軍リーダー】

有本恵子さん拉致を告白した元「よど号」妻の八尾恵。彼女のパスポートも日本赤軍が使用した偽造旅券の原板になっていた。

本物:ME4220148
偽造:ME4220149


偽造旅券を手にしていたのは1977年にダッカ事件を起こした西川純だ。しかも、本物が発行されてから僅か6ヵ月余りで使われている。北朝鮮と日本赤軍の緊密な接触を証明する事例だ。

参考動画:YouTube『ダッカ事件』

その他のよど号妻の旅券も複数の日本赤軍メンバーの偽造旅券の原板となっている…北朝鮮は、日本赤軍のテロ支援も行っていたのだ。

「よど号」グループの主導者・田宮高麿にもその事実を90年代になるまで知らなかったという。北朝鮮当局が密かに偽造を行い、日本赤軍に与えていと見られる。

だが「よど号」関係者は、北朝鮮と日本赤軍が繋がっていることを知っていた。リーダーの重信房子は、度々平壌に姿を見せていたのだ…

八尾恵著『謝罪します』では、北朝鮮当局者の証言まで明かされている。

私が日本革命村で生活を始めた直後、柴田のアルバムを見ていたら、日本赤軍のリーダーと言われている重信房子の写真がありました。(略)重信はチマチョゴリを着て、2歳くらいの娘の手を引っ張っているところが写っていました。(略)

彼女は、北朝鮮に遊びに来ているということでした。56課の課長が重信のことを「いくらでも酒を飲む女傑ですよ」と誉めていたのが印象的でした。
(前掲書245ページ)
▽潜伏中に発見された重信房子
画像

詳しい時期は不明だが、70年代中頃だ。日本赤軍が過激なテロを連発していた当時、そのリーダーは北朝鮮に姿を見せていたのである。

つまり、北朝鮮は対南、対日テロ以外にも、反イスラエルのテロも支援していたことになる。

【テロ支援は北朝鮮の国家的性質】

米国の情報機関は当然、関係の背後まで知っているだろうが、それでもテロ支援国家指定の解除に踏み切るのか…仮に、指定を解くならば、それこそ「ご都合主義の正義」と誹られても仕方あるまい。

26日からの安倍首相の訪米では、このテロ支援国家指定をめぐる問題が焦点として浮上している。ブッシュ政権にプレッシャーを与えるならば、拉致問題に加え、日本赤軍との関係性も迫るべきだ。

後年、日本赤軍と北朝鮮は関係を絶ったとされるが、偽ドルの流通でもメンバーの影が見え隠れしている。米国の敵であるアラブ系テログループとも北朝鮮は緊密な連携を行っていたのだ。

米国が譲れない一線である。

前世代の反イスラエル闘争の時代から北朝鮮は一貫してテロ支援国家、テロ国家だったのだ。北朝鮮という国家が誕生の時から抱える特質である。

独裁体制が続く限り、その国家的なパーソナリティーが改まることはない。


     〆
最後まで読んで頂き有り難うございます♪
クリック1つが敵に浴びせる銃弾1発 となります

banner1

参考文献:
八尾恵著『謝罪します』文藝春秋2002年
高世仁著『金正日「闇ドル帝国」の壊死』光文社2006年

"テロ国家=北朝鮮と日本赤軍…米の指定解除を阻め" へのコメントを書く

お名前
ホームページアドレス
コメント