太陽光パネルが照らす深い闇…屋根の上のジェノサイド

サプライチェーン全体が汚染されている…太陽光パネル産業の一大拠点は、新疆侵略兵団が築いた街にあった。ウイグル人強制労働との関連は疑惑ではなく、明白だ。
東トルキスタン・アクス地方の太陽光パネル12年ロイター.png

「チャイナ政府はウイグル人や他の宗教的マイノリティに対するジェノサイドと弾圧を続けている」

米国のブリンケン国務長官は6月2日、会見でそう語った。この日、米政府は各国の「信教の自由」に関する年次報告書を発表。同報告書は状況が悪化していると結論付けた。

「CCPの教義にそぐわないと判断した他の宗教信者に対する嫌がらせも目立つ」
▽会見する国務長官とフセイン担当大使6月2日(AP)
AFP報告書について、記者会見を開くラシャド・フセイン信教自由担当特任大使とアントニー・ブリンケン国務長官.jpg

同席したラシャド・フセイン担当大使は、AIや顔認証などの先端技術を駆使した収容所等の監視・制御に言及。拘束中の死亡・拷問に関する多くの報告があることを強調、更にこう付け加えた。

「チャイナは信教の自由抑圧の顕著な例だ」

由緒ある古いモスクなど重要な宗教・文化施設の破壊は世界史的にも類例が少ない。そして伝統宗教をCCPの思想体系に組み込む「宗教の中共化」は人類史上初の乱暴な試みだ。
▽三日月が排除され、赤五星紅旗が翻るモスク(bitter winter)
三日月が排除され、赤五星紅旗が翻るモスク().jpg

改めてブリンケン長官がジェノサイドと定義する中、ウイグル強制労働防止法のカウントダウンが始まった。バイデンの署名から半年、6月21日に施行される。

産業界の一部は同法の骨抜きを働き掛けたが、米上下両院の政治決断は強く、逆効果となった。施行を前にした討論会で、CBP(米税関・国境警備局)幹部は、こう言い切った。

「米議会のメッセージは明白で、新疆自治区に関わる物品は何ひとつ米国に入れさせないということである」
▽綿花を集めるウイグル人労働者’15年(AP)
AP通信綿花を集めるウイグル人労働者’15年.jpeg

厳格な運用は確実で、抜け道はない。強制労働防止法の肝は、輸入を差し止められた業者側に「強制労働との関係を否定する証拠」の提示を義務付けた点だ。

しかも、反論の期限は従来法の3ヵ月から30日間に大幅短縮される。1ヵ月で潔白を証明する客観的な調査報告書を作成するのは不可能。当然、迂回輸入といった古典的な手法も通用しない。

【職業訓練校という名の奴隷工場】

「チャイナの人権侵害に立ち向かうのか、それとも安価な太陽光パネルが欲しいのか」

ノルウェーの太陽光パネル企業REC社の幹部は、そう問い掛ける。問題の本質を射抜く簡潔で優れた二者択一。同社の製品は割高だが、人と環境に優しい自国産の多結晶シリコンを主に使用しているという。

ウイグル強制労働防止法の施行と同じ頃、米国が太陽光パネル関連で制裁を発動してから丸1年を迎える。昨年6月24日、米商務省は中共4企業と新疆侵略兵団をブラックリストに入れた。
▽4大メーカーと強制収容所の位置関係(ブルームバーグ)
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バイデン政権の対応は決して素早いものではなかった。米コンサルティング会社ホライゾン・アドバイザリーの『新疆リポート』をNYタイムズ紙が取り上げたのは昨年1月初旬だった。

「太陽光発電産業も強制労働と関係している疑いが濃い」

世界第2位の多結晶シリコン製造メーカー・新疆GCLPoly社など東トルキスタン国内で事業展開する企業が中共の「労働者の移転」政策に加わっている事実が発覚したのだ。この移転政策が強制労働を示す。

「習近平総書記は新疆の多結晶シリコン生産を鼓舞している(略)我が集団は雇用を進め、新疆南部の余剰労働を受け入れている」
▽中共機関紙で紹介される“新疆”の多結晶シリコン工場
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’18年10月22日付けの人民日報には、そう記されていた。強制労働に関するホライゾンの調査手法は、ASPI(豪戦略政策研究所)の著名な報告書『Uyghurs for sale』と似ている。

企業の公式発表や中共機関紙のプロパガンダ記事を横断し、強制労働に結び付く証拠を収集、分析する。もちろん記事に「ウイグル人奴隷を連れて来た」などと書かれていることはない。
▽監視塔がある自称・職業訓練校'18年(ロイター)
監視塔がある自称・職業訓練校'18年(ロイター).png

余剰労働や労働移転、或いは「職業訓練校」といった隠語的な表現が使用される。中共が言う「職業訓練校の生徒」とは、強制収容所の奴隷労働者を指す。

いずれもスモークガンとは言えないが、ウイグル人連行の実態を少しでも知る者なら合点が行く。ホライゾンの先駆的なリポートは、こう結論付けた。

「太陽光パネル業界では強制労働が蔓延している」

【屋根の上のジェノサイド】

「少なくとも市場の95%以上、殆どのシリコン製パネル部材が、同地区で作られている可能性がある」

ホライゾンに続き、’21年4月に米シンクタンクCSIS(戦略国際問題研究所)が多結晶シリコンの極端な“新疆依存”を警告する論文を発表。「太陽エネルギー業界の暗部」というタイトルは刺戟的だった。

参照:CSIS’21年4月19日『A Dark Spot for the Solar Energy Industry: Forced Labor in Xinjiang』

この論文が注目を集め、同年4月末に産経新聞が太陽光パネル問題を1面トップに掲載。ただし同記事は米政権の“苦悩”に焦点を当て、強制労働に関しては懐疑的な見方も取り上げる。
▽1面で報じる昨年4月28日付け産経新聞(撮影筆者)
スクリーンショット 2022-06-10 1.22.52.png

専門家による分析は、CSISより早いアゴラの同年4月9日付け記事が最も早かった。執筆者はエネルギー政策に詳しいキャノングローバル戦略研究所の杉山大志主幹だ。

「世界に占める新疆ウイグル自治区の生産量のシェアはじつに45%に達すると推計されている」
▽砂漠地帯に置かれた太陽光パネル(UyghurTimes)
東トルキスタンの砂漠にある太陽光パネル.jpeg

杉山主幹は太陽光発電の心臓部である多結晶シリコンについて説明。安価な電力と低い環境基準が、東トルキスタンでの寡占に繋がっていると断言する。

太陽光パネルの仕組みから製造工程、市場シェアの推移など他の追随を許さない杉山主幹の独壇場。経済安全保障に踏み込んだ文藝春秋誌の論文は、問題の全体像を知る上で必読のレベルだ。
▽日本国内の小学校屋上を覆う太陽光パネル(日経file)
小学校の屋上を覆う太陽光パネル(日経file).png

「残念ながら、太陽光発電の現状は『屋根の上のジェノサイド』と呼ぶべきおぞましい状況にある」(文藝春秋3月号)

参照:キャノングローバル戦略研究所HP’22年3月15日『中国依存の脱炭素は愚かだ CO²と独裁国家、どちらが喫緊の脅威なのか?』

小池百合子や橋下徹が噛み締めるべき名言である。電力網へのサイバー攻撃リスクなど戦慄する問題が次々と語られ、同時にこれらを看過する我が国の政治状況に対して、疑念が込み上げる。
▽大阪市咲州の中共メガソーラー(摂津市・松本市議提供)
問題の大阪市咲州メガソーラー.jpg

「中国とCO²と、どちらが日本にとって真に差し迫った脅威か」(前掲論文)

発想の転換が必要だろう。非効率の太陽光発電システムは、中共の脅威を我が国に呼び込む為の材料なのだ。導かれる先が闇とは、ブラックジョークにもならない。

【汚れたサプライチェーンと奴隷の元締め】

2011年に撮影された衛星写真を見ると、農業地帯の只中に数棟の建物があるだけだった。新疆大全新能源(Xinjiang Daqo New Energy)の初期の工場である。
▽中央下にあるのが大全新能源の工場2011年(BuzzFeed)
2011年の農地.png

それが短期間で急激な発展を遂げて敷地を拡張。NY証券市場にも上場し、2019年にはサッカー場200個分を超す規模の大工場群となり、一昨年にはシェアも世界第3位にまで上り詰めた。
▽ウイグル人“失踪”急増に比例して巨大化2019年(BuzzFeed)
2019年の巨大化.png

この工場がある場所は、カシュガル盆地の南に位置する石河子市(占領名)。中共八大元老の1人・王震が東トルキスタン侵攻直後に入った街で、後にXPCC(新疆侵略兵団)の最重要拠点となった。

前述のホライゾン・リポートを受けて書かれた米バズフィードの記事は、XPCCと多結晶シリコン企業の深い繋がりにスポットを当てる。XPCCは既に新疆綿で米制裁を受けている凶悪な軍事組織だ。
▽260万人規模に膨れ上がったXPCC(file)
260万人規模に膨れ上がったXPCC.jpg

「XPCCは2013年に太陽エネルギーを開発目標のひとつに掲げた政策文書を公表している」(’21年1月15日付けBuzzFeed)

XPCCが開発・監督する城下町の石河子に業界最大手の合盛硅業(Hoshine Silicon Industry)など他のメーカーが集中するのは偶然ではない。

多結晶シリコンの製造過程では大量の石英と石炭が必要となる。この採掘を現地で取り仕切っているのがXPCCだ。鉱業は侵略初期からの兵団基幹事業に該当し、奴隷労働の巣窟である。
▽合盛硅業は金属級シリコン精錬の準独占組織(CNN)
新疆サプライ.jpg

米国による太陽光パネル関連の制裁も採掘に遡り、対象企業を炙り出した。製造過程に確実に存在する強制労働。現代の奴隷問題に詳しい英シェフィールド・ハラム大学のマーフィー教授は、こう断言する。

「サプライチェーンは汚染されており、今後は誰もそこから目を逸らすことは出来ない」

同教授らが昨年5月に発表した研究論文は、ウイグル地域の強制労働が業界の全体に浸透し、国際市場に広がっている深刻な状況を解き明かした。正に汚れたサプライチェーンである。
▽マーフィー教授が発表した研究論文の表紙
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“新疆”に限らず、支那太陽光パネル企業の殆どが合盛硅業からシリコン金属の供給を受ける。この合盛硅業が強制労働の元締めXPCCと密接な関係にある点について、我が国では理解が足りていないようだ。

更に研究者は東南アジア等の同業者も「汚れたサプライチェーン」にリンクしていると警告する。現状では、人と環境に優しいクリーンな太陽光パネルを見つけ出すことの方が難しい。


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【side story】

最重要と思えるホライゾン・アドバイザリーの『新疆リポート』原文が閲覧できなかった為、ペンディング状態が長く続いたテーマの蔵出しです。適当に保存していた産経新聞は、激しく劣化していた…英シェフィールド大の長大な論文も検証途中です。
多くの視点から参考になった米バズフィードの記事は、昨年ピュリツァー賞(国際報道部門)を受賞したチームによる執筆です。受賞記事はウイグル強制労働に懐疑的、また知識の乏しい人に読ませるのにうってつけかと。幸い日本語版が残っています。

参照:バズフィード’20年9月21日『中国政府、ウイグル自治区でイスラム教徒の強制収容所を拡大。衛星画像分析で明らかに』
パヨクが仰ぐピュリツァー賞のお墨付きが効果を発揮するかも。

【告知】
西村幸祐さんの新刊が発売されました。ウクライナ戦争など最新の世界情勢を踏まえた憲法問題の論点、護憲勢力のウィークポイントが網羅されています。


参照:
□英シェフィールド・ハラム大学HP’21年5月『In Broad Daylight: Uyghur Forced Labour and Global Solar Supply Chains』
□キャノングローバル戦略研究所HP’21年9月1日『太陽光発電は屋根の上のジェノサイド ~太陽光パネル発電の積極的な導入は強制労働に加担することになる~(「WiL」21年9月号掲載)』
□大阪・摂津市 松本あきひこ市議公式HP6月5日『咲洲メガソーラーの実態、上海電力の参入2022.6.1時点』
□ジェトロ’21年6月25日『バイデン米政権、人権侵害に基づき中国製太陽光パネル原料の輸入を一部制限、関連企業をELに追加』
□ジェトロ6月2日『ウイグル強制労働防止法、6月21日に輸入禁止施行へ、米税関ウェビナー』
□RECシリコンHP’21年9月14日『人や環境にやさしいソーラーパネルを追及した結果』

参考記事:
□BuzzFeed’21年1月15日『US Solar Companies Rely On Materials From Xinjiang, Where Forced Labor Is Rampant』
□ブルームバーグ’21年4月13日『Secrecy and Abuse Claims Haunt China’s Solar Factories in Xinjiang』
□NYタイムズ’21年4月20日『China’s Solar Dominance Presents Biden With an Ugly Dilemma』
□WSJ’21年4月13日『太陽光パネルにも新疆問題、強制労働との関連懸念』
□CNN’21年5月22日『太陽光パネルの供給網、新疆の強制労働に依存か<上> 米エネルギー政策の要に影』
□CNN’21年5月29日『太陽光パネルの供給網、新疆の強制労働に依存か<下> 汚れたサプライチェーン』
□大紀元5月26日『太陽光パネル、広範にわたるウイグル強制労働=ハドソン研究所』
□日経ESG’21年7月5日『中国製パネルに強制労働の疑い 新疆ウイグル問題が太陽光発電に落とす影』
□アゴラ’21年4月9日『『太陽光発電も強制労働の産物なのか』
□アゴラ’21年6月26日『日本も中国製太陽光発電パネルの輸入を止めるべきだ』
□産経新聞R2年4月27日『米国で指摘、太陽光パネルに難題、重要材料「ポリシリコン」生産5割が中国新疆ウイグル自治区』

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