岸田シェイシェイ外交の酸鼻…身包み剥がされた非難決議

三度の見送りで骨と皮を喪った対中非難決議。侵害と非難、そして最重要の文言も添削で消えた。媚中トリオが彩なす岸田シェイシェイ外交の悲惨な到達点がそこにある。
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ウクライナ生まれの若い弁護士が拘束された時、その名前が世界に轟き、繰り返し連呼されることになるとは誰も想像していなかった。弁護士の名は、セルゲイ・マグニツキー。

「彼は37歳で、妻と2人の子供が遺されました。彼が殺されたという知らせは、私にとって人生最大の衝撃でした」

友人は、そう語る。マグニツキーはロシア当局の巨額横領事件を告発した後、自宅に押し掛けた警察官によって拘束される。2008年11月の寒い朝のことだった。
▽拘束前のセルゲイ・マグニツキー氏(BBC)
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モスクワの拘置所で拷問を受け、逆に自分が約250億円を奪い取ったと自供するよう強要されたという。不正の告発は、オリガルヒと呼ばれる新興財閥に加え、捜査機関や司法を敵にする結果となった。

マグニツキーは拘束後に膵炎を発症するが、治療は受けられず、’09年暮れに不審死を遂げた。友人の投資家ビル・ブラウダーは、真相究明と関係者の処罰を求めて、国際的な運動を展開する。
▽マグニツキー氏の葬儀’09年(ロイター)
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その掛け声に強く反応したのが、米国オバマ政権だった。下院での法案提出から半年後、’12年末に大統領の署名で、ロシアの政府関係者を処罰する特異な法律が成立。当然、ロシア側は猛反発した。

「米国の動きは冷戦時代に引き戻すような、今後永続的な傷を両国関係に残すものだ」
▽法案にサインするオバマ’12年12月(AFP)
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米民主党重鎮が仕掛けたトランプ時代のロシア・ゲートが全くの偽りだと判った今、同法制定に至る一連のキャンペーンを裏読みする必要がある。また、反ロ政策を巡る偶然の産物だったとも言える。

そして、37歳の若さで獄中死した弁護士の名が、モスクワではなく、北京の喉元に匕首を突き立てる事態になった。中共にとっては偶然の積み重ねるによる不運、皮肉な巡り合わせだ。
▽モスクワにあるマグニツキー氏の墓(ロイター)
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成立から4年後、同法を発展させたグローバル・マグニツキー人権説明責任法が制定される。トランプ政権は’20年夏、ウイグル大虐殺・香港弾圧に関して、刀を振り下ろした。

【骨を抜かれ、皮も剥ぎ盗られた】

1月14日夜、高市早苗政調会長は虎ノ門の料亭で岸田首相と会食した。同席者の1人はウイグル議連の古屋圭司会長だ。“元非難決議”に関して詰めの話し合いをしたと見られる。

「中国は覇権主義的な姿勢や人権問題について何ら改めていない。(正常化)50周年だからといって何の対応もしないことは有り得ない」
▽対中政策について語る高市政調会長1月11日(FNN)
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高市政調会長は出演した報道番組で、そう力説し、通常国会冒頭での決議採択を呼び掛けた。産経新聞は、2月1日の採択で調整が進められていると報じている。どうやら4度目の見送りは無さそうだ。

しかし、少しも喜べない…残念、無念の敗北感に包まれる。昨年末の決議案で消滅した「非難」の文言は復活せず、題目にあった「人権侵害」が「人権状況」に置き換えられた。

「本当に情けない限りだ。中国に気兼ねして修正を加えた決議案がそのまま国会に出されるのであれば決議して欲しくない」
▽壇上で話す櫻井よしこ氏1月15日(ArabNews)
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日本ウイグル協会が主催した講演で櫻井よしこ氏は1月15日、そう訴えた。決議の意味は、我が国の議会が「人権侵害」を認定し、加害者の中共を「非難」することにある。

昨年6月に採択された「ミャンマー非難決議」と比べれば、違いは明らかだ。同決議は「国軍」の正当性を否定した上で「民間人虐殺」の即時停止を求め、「強く非難」している。

参照:衆議院HP『ミャンマーにおける軍事クーデターを非難し、民主的な政治体制の早期回復を求める決議案』
▽都内UN大前で演説する長尾前議員5月(大紀元)
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「見送りよりは良い」と考える議員も居るだろう。しかし、非難決議案の採択に尽力したウイグル議連の長尾敬事務局長は「骨抜き決議案では世界の笑者になる」と警告する。

昨年12月の民主主義サミットでホワイトハウスは、色分けされた台湾国の地図を“事故”と称してブラックアウト。権威主義国に対しては充分に配慮するという弱腰姿勢を示した。これと同じである。
▽検閲直前の地図とタンIT担当相(公式動画)
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決議案は公明党幹部の意向を汲み、骨抜きにされたことが判明している。しかし、それは二度目の先送りで二階俊博と林幹雄が握り潰したという舞台裏解説と矛盾する。

一度了承した原案を公明党が大幅に添削する必要はない。三度目の先送りも今回も、明らかに幹事長・茂木敏充と首相官邸の合作だ。岸田シェイシェイ外交の真骨頂である。

【全会一致で職務放棄する立法府】

決議に「中国」の二文字がないことが批判される。しかし昨年3月、決議に関する与野党協議会が開かれた際、既に「中国」はなかった。以下の画像は協議会に参加した長島昭久衆院議員が公開したものだ。
▽協議会に提出された原案R3年3月(SNS)
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原案作成に関わったウイグル議連など支援グループは、与野党協議会開催までに最大限の妥協をしたのである。菅首相訪米前の全会一致採択に向け、急いでいたのである。

結果的に菅首相は手ぶら状態でバイデンと初会談に臨むこととなった。これが最初の先送りだ。返す返すも日米首脳会談前に採択しなかったことが悔やまれる…この3月原案には重要な一文があった。
▽DCで開かれた日米首脳会談’21年4月16日(AP)
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「立法府の責任において、深刻な人権侵害を防止し、救済するために必要な法整備に速やかに取り組む決意である」

長い前フリだったが、この一文が日本版マグニツキー法の制定を明確に意図したものである。全会一致の決議文に記された宣言だ。法案が提出された際に反対する党はなく、自動的に成立する。

ところが二階らが潰した6月原案では、この一文が修正されて「法整備の検討」に書き換えられた。ビジネスシーンでは「対処します」と「検討します」では、天と地ほどの差がある。

参照:産経新聞R3年4月20日『ウイグルなどへの人権侵害「直ちに中止を」国会決議案判明』

与野党の中に、これが日本版マグニツキー法制定に直結すると気付いた議員が居たのだろう。親中派はハニトラ文盲軍団ではない。そして最新の決議案では、マグニツキー法関連の部分が丸ごと削除される。
▽激しく添削された元非難決議案(島田洋一教授SNS)
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もはや原形を留めていない。ウイグル救済に関する意見書は現時点で83に上る地方議会で採択されている。いずれも「人権侵害」と認めて「中国」を名指しする素晴らしい内容だ。

地方議会の採択で尽力された有志議員に改めて敬意を表したい。一方で、地方議会の意見書と国会の非難決議には相違点も存在する。法制化だ。立法府で採択する意味はそこにある。
▽那覇市議会に日ウ協会が感謝状4月23日(八重山日報)
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変わり果てた姿になった元非難決議は、日本版マグニツキー法制定宣言という核心を喪った。悲惨な添削を経て上程される同決議案の第2パラグラフには、こう記される。

「支援を打ち出す法律を制定する国も出てくるなど、国際社会においてもこれに応えようとする動きも広がっている」

この「法制化の動き」に関する一文は、元の第5パラグラフにあったマグニツキー法制定宣言の前提条件となるものだ。米に続く英加やEU議会のマグニツキー法整備の動きを肯定的に紹介している。
▽記者会見する日ウ協会ローズ副会長1月14日(産経)
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採択予定案によれば欧米の法制化の流れを受け、我が国の議会は「事実関係に関する情報収集」を行うのだと言う。インテリジェンス収集など臍が茶を沸かす。立法府は役割を放棄したのだ。

【媚中トリオがくれる腐ったケーキ】

「欧州連合や米国が中国に対しウイグル問題の是正などを求めて制裁を発動する中、日本は行動で示していない。『法律がない』というのが理由だが、それならば法律を作れば良い」

実に威勢の良い主張で、出来れば最後まで味方したかった。岸田政権の発足後、鳴り物入りで人権問題担当首相補佐官に任命された中谷元氏の昨年5月の発言である。
▽IPAC会合の中谷元氏らR3年3月(産経)
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中谷補佐官は、反CCPの各国議員が名を連ねるIPAC共同議長を務め、マグニツキー法整備の強力な推進エンジンとなった。同法制定に向けた超党派議連は新体制で今も継続している。

「超党派での議論をよく見守り、これまでの日本の人権外交を踏まえて引き続き検討していく」
▽代表質問に答える岸田首相12月8日(時事)
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代表質問を受けた岸田首相は12月8日、そう答弁した。「引き続き検討」は「やらない」と同義である。勿論、決議案からマグニツキー法直結の文言が消え去ったのは“奇妙な一致”ではない。

今国会でも1月21日、夏の参院選(比例)が控える自民党の次世代エース宇都隆史前外務副大臣が代表質問で中共の弾圧を強く批判。マグニツキー法制定に関する認識を質した。



岸田答弁は前回と同じだった。永遠に見守り、放置する所存である。総裁選の高揚感は消え、一丁目一番地の経済安全保障も二番地の人権問題対応も今や見捨てられた飛び地になった。

「いま暫く、しっかりと諸般の事情を総合的に勘案して判断していきたい」

虐殺五輪への政府関係者派遣を問われた際の回答は、早くもレジェンド級の迷言だ。何かするようで何もしない。諸般の事情で、外交的ボイコットをボイコットする結果に終わった。
▽SSOBことバイデンと話す岸田首相1月21日(時事)
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訪米調整に失敗した挙句の日米首脳テレビ会談も、形式的な挨拶の域を出なかった。今後もバイデンにさえ軽くあしらわれ、中共放任・北鮮放置・反ロシアの路線に引き摺り込まれるだろう。

岸田と茂木、林芳正の媚中トリオが誘う仄暗い未来。骨が抜かれ、皮も剥がされた元非難決議採択はその象徴だ。ある元閣僚は採択に向け、こう表現したという。

「12月26日にクリスマスケーキが届くようなものだが、やらないよりましだ」

なかなか洒落た比喩だが、同意できない。単に遅れて届くのではなく、それは潰れていて観賞用にも適さないのだ。腐ったケーキなんて食いたくもない。



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参照:
□自民党HP1月21日『第208回国会における宇都隆史参議院自民党政策審議会長代理代表質問』
□ACFE’19年6月30日『講演「ビル・ブラウダーはセルゲイ・マグニツキーの名の下に贈収賄と戦う」』

参考記事:
□産経新聞1月19日『〈独自〉ウイグル国会決議、来月1日にも採択 「中国」名指しせず、「非難」の文言もなく』
□産経新聞1月14日『対中決議で野党、自民を突き上げ 通常国会の焦点』
□産経新聞1月13日『ウイグル意見書、80超の地方議会で採択 中国に毅然とした対応を、公明は慎重』
□産経新聞1月15日『櫻井よしこ氏、対中非難決議「修正、情けない」』
□Arab News1月15日『ウイグル支援者ら 対中決議を求める』
□FNN’21年6月17日『中国での人権侵害を非難する国会決議は幻に 安倍氏後押しも与党内からブレーキ…舞台裏の攻防』
□産経新聞R3年12月19日『対中決議案、公明幹部の意向で「非難」削除 今国会採決も見送り』
□産経新聞R3年12月27日『『古屋さん、こんな対中非難決議ならやめませんか』
□毎日新聞’21年5月14『日本版マグニツキー法 日中関係悪化の懸念より普遍的価値』
□共同通信12月8日『日本版マグニツキー法の検討継続と首相』
□AFP’13年4月13日『米、露政府職員ら18人に制裁 人権弁護士の獄死などめぐり』

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