武漢ウイルス正体の朝令暮改…科学を裏切った“極秘会議”

実験室起源の可能性は70%…英米政府医療顧問も参加した頂上会議の驚くべき見解。だが各国のトップ学者は一夜で態度を豹変させる。米の情報開示でパンデミックの新たな闇が暴かれた。
UPI通信20年3月2日NIH訪問したトランプ大統領.png

「ファウチ博士が2つの事柄で警告を受けていたことが判明した。ひとつは、WIV(武漢ウイルス研究所)から流出した可能性。そして、このウイルスが意図的に遺伝子操作された疑いだ」

米下院監視委員会の共和党ジェームズ・コーマー議員らの疑念は核心に変わった。バイデン政権の首席医療顧問ファウチが、実験室起源説に関して真っ当な疫学的知見を得ていたことが分かったのだ。

時期はパンデミックが世界を覆い始めた約2年前に遡る。’20年2月1日、ファウチとNIH(米国立衛生研究所)のコリンズ所長は各国11人の著名科学者と電話会議を行った。
▽仲良しチームのコリンズとファウチら’17年(NBC)
NBC17年ゲイツとコリンズ&ファウチ.jpg

会議の終了後、ファウチらは著名科学者と私見を交えたメールのやり取りを続ける。その中で英医学研究支援財団のサー・ジェレミー・ファラー所長は実験室起源の可能性に関して、こう語っていた。

「I am 70:30 or 60:40」

機能獲得実験を経て実験室から流出した可能性は最大で7割、少なくとも6割あると見積もっていたのだ。文脈上、この実験室は具体的に武漢ウイルス研究所を指す。

「SARS系のコロナウイルスをBSL-2で長期間に渡って継代培養し、急速にヒトへ感染するウイルスを偶然生み出したといった単純な説明が可能だ」
▽厳戒態勢の武漢ウイルス研究所’21年2月(ロイター)
ロイター’20年2月武漢ウイルス研究所.JPG

BSL-2とは米国の歯科医院並みの安全性だという。武漢ウイルス研は最高レベルの実験室を持つが、BSL-2で危険な研究が実施されていたことが判明している。そしてファラー卿は悩ましい胸の内を明かす。

「これを偶然と片付けて良いものか…」

ファラー卿は英SAGE(緊急時医学諮問委員会)の筆頭で、当時は政府顧問を務めていた。英米の感染症対策部門トップが、実験室起源の知見と武漢研に対する疑いを共有していたのだ。

他の科学者も例に漏れなかった。

【黒塗りメールに隠された科学者の本音】

「私は実際に、もっともらしい自然発生のシナリオを思い浮かべることが出来ない」

米テュレーン大学のウイルス学者ロバート・ギャリーは自然由来説に極めて懐疑的だった。米スクリプス研究所の免疫学者クリスティアン・アンデルセンはファウチに対し、より率直に語っている。

「ウイルスの特徴的な機能は(潜在的に)設計されているように見える」

電話会議の前、1月31日付けのメール内容だ。もっとも同発言は、以前のメール公開で判明したもので、新しい発掘ではない。昨年6月、ファウチの膨大なメールが開示され、ダザックとの関係が暴かれた。
▽EHAダザックとファウチ’14年(BAS)
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バズフィードなど複数の米メディアが情報自由法に基づいて開示請求し、3,000件以上のメールが対象となった。しかし、殆どが黒塗りで極一部の内容が表面化したに過ぎなかったのだ。

参照:FNN’21年6月7日『木村太郎のNon Fake News:米国が武漢研究所に資金援助していた?!新型コロナ対策責任者のメールで明らかになった「危険な研究」』

下院監視委の共和党議員が改めてマル秘部分の開示を求めた結果、何件かのメールが閲覧可能となった。ただし原本の公開は不可で、肉眼で目視したメール文の書き写しが許されただけだった。
▽ファラーがファウチらに送ったメール(米下院監視委)
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その為、会話内容が複雑に入り組んで、英米メディアも発言者の特定で違いが生じる事態が起きている。先述したファラー卿の「7割発言」を別の科学者の意見とする記事も混在する。

ダザックの仕掛けたランセット誌の共同声明で、ファラー卿らが実験室起源説を「悪質なデマ」と罵倒したのは、その半月後だった。6〜7割に上る可能性が、いきなりゼロになったのだ。

【議論が集中した武漢ウイルスの特異点】

「自然界で変異することも有り得る。だが、その可能性は極めて低い」
▽ファラーが送信したメール抜粋(ZeroHedge)
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これは英医療顧問ファラー卿がファウチに送ったメール内容のまとめだ。コーマー議員ら1月11日に公開した米保健福祉省長官宛の手紙に添付された画像である。

冒頭に「From Mike Farzan」とある。米スクリプス研究所のマイケル・ファーザン教授の主張をファラー卿が引用し、ファウチに送ったメールの内容なのだが、登場人物が多く説明するのも難しい。
▽コンゴを訪問するファラー卿:左19年(WSJ)
コンゴを訪問するファラー卿:左19年(WSJ).jpeg

番号が付された1〜5は、ファーザンの発言で間違いないだろう。一方で「so~」から始まる下部のパラグラフについて解釈が分かれるが、筆者は英メール紙などを参考にファラー発言とした。

バイデン政権の隠蔽体質のせいで開示メールの解読が必要になる始末…けれどもヴォイニッチ手稿レベルの解読技術が試されるものでもない。パッと見で中心となるテーマが理解できる。
▽関係良好なFJBとファウチ11月(UPI)
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去年の記事で、パンデミックの関心事が「フリン切断部位」に大幅に偏ると自己紹介した。後で少し後悔し、疫学のド素人が介入するのも程々にすべきと考えたが、再び思い改めた。

関連エントリ:令和3年10月23日『21世紀の愚かなペストマスク…全ての道は武漢に通ず』

リストアップされたファーザン教授発言の5段落中、4つまでも「フリン部位(Furin site)のワードが躍る。打率にして8割を誇る異常なまでの関心度。もはや“フリン祭り”の様相である。

フリンとはヒトの気道などに多く見られるタンパク質分解酵素。武漢ウイルスのスパイク部分中央に何故かある都合の良い“キリトリ線”が切断部位で、これにより感染率が劇的に上がる。
▽フリンは感染を手助けするハサミに例えられる(file)
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関連エントリ:令和3年8月18日『塞がれた実験室起源の鍵穴…“感染メディア”覆う無関心』

ヒト感染に最適化したエンジニアリングと呼ばれる所以だ。

【最大の特徴を隠す科学界の“錬金術”】

「組織(tissue)の培養でフリン部位のような基本的な部位を獲得することはある」「フリン部位の獲得でウイルスは不安定化するが、新しい組織への播種が可能になる」

医学用語を含む会話を強引に翻訳した上で言うセリフではないが、ファーザン教授は基礎知識をファウチに説明しているように見える。少なくとも超ハイレベルの突っ込んだやり取りではない。

ファーザン教授はSARSウイルスがヒト細胞に結合する仕組みを最初に発見した人物で、この分野では第一人者だ。更に、同教授は知人と見られる研究者の困惑を紹介する。

「彼はフリン切断部位に悩まされていて、それをラボの外の出来事として説明するのに苦労している」
▽米スクリプス研のファーザン教授(NYT)
米スクリプス研のファーザン教授(NYT).jpg

唐突に登場する「彼」が誰なのか不明だが、重要な指摘だ。実験室での機能獲得実験で同部位が組み込まれたと解説することは簡単だが、自然由来説の提唱は難しい。現状で説明しきれないのである。

「自然の変異という観点から見た時、一点だけ気になるのがフリン切断部位があることです」

英エディンバラ大学のアンドリュー・ランボート(Andrew Rambaut)教授は簡潔にそう告白する。ファーザン教授ら多くが自然由来は有り得るが可能性は極めて低いと考えていた模様だ。
▽集中砲火を浴びた閻麗夢博士(NYポスト)
閻麗夢nyポスト.png

武漢ウイルスの最大にして唯一の特徴であるフリン切断部位。それが実験室起源論者の好奇心を沸き立たせたのは、閻麗夢博士の論文だ。顔を赤くして博士を叩く専門家は、こう言い放った。

「同様の切断部位は、野生のコウモリコロナウイルスに見られます」
参照:ハーバー・ビジネスonline’20年10月21日『いまだ蔓延る「新型コロナウイルス人工説」。世界の医師・研究者の見解は?』 (魚拓)

珍しくも何ともないのだそうだ。SARS研究の権威や英政府医療顧問はウイルス学の基本も知らない間抜けなのか。ダザックは無意味な機能獲得実験の為に巨額の助成金を政府に要求していたのか?

閻麗夢博士への集中砲火から1年以上経つが、自然由来派の研究者は誰もフリン部位を持った蝙蝠コロナウイルスを紹介してくれない。世界中に遍く居るはずなのに1体もゲット出来ないのは謎過ぎる。
▽コウモリ捕獲中のコウモリ女・石正麗(WIV)
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“フリン一般説”を唱えた記事は既に終了した悪質サイトのものだが、ソースは『ナショナル・ジオグラフィック』だ。更に、その記事の参照元を確かめると陝西省の地名が記された論文が出てくる…

参照:National Geographic’20年9月19日『Why misinformation about COVID-19’s origins keeps going viral』

無名の支那人研究者の小論文が、世界的に著名な自然科学系の高級誌を経由して、実験室起源派バッシングに使われていたのだ。一方の雄『ネイチャー』誌はフリン部位について、こう解説する。

「高病原性鳥インフルエンザウイルスにもこの部位があるとBarclayは言う」(’21年7月29日付けネイチャー・メディスン)

まさかの伝聞調で、英ウイルス学者の説明を引用している。明らかに、そこら辺の蝙蝠がやたらに持っているものではない。何か、幼稚な手品の種明かしをされたような気分だ。

【一夜で“集団転向”したトップ科学者】

「ファウチとコリンズは2月1日の会議で初めて流出・遺伝子操作の可能性に関する警告を受けた。この警告を政府高官に伝えたか、単に無視したか不明だ」

黒塗りメールを再調査した米下院監視委の共和党議員チームは、ファウチらの動向を注意深く見守る。相次ぐ実験室起源の指摘を受けて始まった不審な動きが、メール開示で浮き彫りになったのである。

’20年2月4日、電話会議に参加した科学者の一部が論文の原案を書き上げ、ファウチとコリンズに送っていたことがメール内容から判明する。会議の3日後という猛烈なスピードだ。
▽主張を翻し権威になったK・アンデルセン(NYT)
主張を翻し権威になったK・アンデルセンNYタイムズ.png

「既知のコロナウイルスの塩基配列と比べた結果、Sars-CoV-2が自然発生したものだと断定できる」

論文『SARS-CoV-2の近位起源』は、遺伝子操作された痕跡が見当たらないと結論付けた。主要執筆者は1月31日のメールで「潜在的な設計」の可能性をした米スクリプス研のK・アンデルセンである。

また「自然発生のシナリオを思い浮かべることが出来ない」と話していたR・ギャリーも執筆陣に名を連ねている。ほぼ一夜とも言える僅かな期間で見解を180度変え、自然由来派に転向したのだ。
▽フリン切断部位の図解も同論文だった
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論文『近位起源』は同年3月17日にネイチャー誌で発表され、大きな反響を呼んだ。米メディア「ジ・インターセプト」によるとアクセスは560万回を超え、2,000本以上の論文に引用されたという。

だが、NIH所長のコリンズは不安が尽きなかった。4月16日、論文が実験室起源説を完全に潰しきっていないことに失望し、鎮静化の為に「他に何かできないか」とファウチにメールで相談している。

トランプ政権と対立し、昨年末に退任したコリンズも武漢ウイルスの正体隠しで暗躍した1人だったのだ。そして悩み相談を受けたファウチは翌日、会見で論文を引き合いに出し、自然由来を強調した。
▽会見で論文を紹介するファウチ’20年4月17日(WH公式)
会見するファウチ 20年4月17日つべWH公式.png

ワシントンポスト紙が米国務省による武漢研への注意喚起をスクープし、実験室起源説が着火した直後だ。そして2週間後、ポンペオ長官が会見で「証拠」の存在を明言するとファウチは異例の行動に出る。

「蝙蝠から見つかったウイルスとその進化を見れば、これが人為的な操作を受けていないことが分かる」

実験室起源説を強く否定することだけの目的でファウチは『ナショナル・ジオグラフィック』に登場した。この時、ファウチが主張した「自然界での進化」の科学的な証拠は未だ欠片すら見付かっていない。

ファウチが実験室起源説潰しに奔走した動機は明白だ。違法な機能獲得実験に絡む自身の容疑がある。一方でコリンズや他の著名学者が非科学的な態度で武漢研を擁護した背景は不明だ。
▽NIHを案内するコリンズとファウチ’20年3月(AP)
AP通信20年3月2日NIH訪問したトランプ大統領.jpg

「起源をめぐる議論は研究者の仕事を妨げ、特にチャイナの科学全般に不必要な害を及ぼす」

蘭ウイルス学者ロン・フーシェの発言もメールで暴かれた。露骨な中共への配慮である。だが、最大手の専門誌も旗振り役になった陰謀論叩きを“単なる忖度事案”として看過することは出来ない。

果たして、なおも非公開の黒塗り部分で、米英の政府医療顧問らは何を話しあったのか。著名学者が会議後一斉に転向した時期は、パンデミックの始まりと符合する。そこで最初の一歩を踏み間違えたのだ。
▽医療崩壊に陥った武漢市’20年1月(AFP)
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武漢市のアウトブレイク露見から2年、WHOなど国際機関も各国政府もウイルスの正体から目を背け、ただ人々は感染拡大報道の波間に立ち竦む。



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参照:
□米下院監視委員会HP1月11日『保健福祉省(HHS)ザビエル・ベセラ長官宛の書簡(PDF)』
□ネイチャー・メディスン20年3月17日『The proximal origin of SARS-CoV-2』
参考記事:
□ギガジン1月13日『新型コロナの「武漢研究所流出説」が中国への忖度で握りつぶされていたことが政府の文書により判明』
□The Intercept1月13日『HOUSE REPUBLICANS RELEASE TEXT OF REDACTED FAUCI EMAILS ON COVID ORIGINS』
□Zero Hedge1月12日『House Republicans Release Damning Fauci Emails Suggesting Concealed Knowledge Of Lab Leak』
□ニューズウィーク1月15日『The Time for Transparency About COVID-19 Origins is Now :Opinion』
□英メール1月12日『Top SAGE adviser admitted lab leak theory was 'most likely' origin of Covid in February 2020 but debate was shut down because it could 'cause harm to China', bombshell emails reveal』
□英メール1月12日『IAN BIRRELL: Why DID the science establishment try so hard to silence those who feared Covid had leaked from China lab?』
□Yahoo(National Review)1月12日『Fauci and Collins Dismissed Prominent Scientists Who Endorsed Lab-Leak Theory, Emails Show』
□NYポスト1月11日『Fauci dismissed Wuhan lab leak theory as ‘shiny object’ in April 2020 email』
□ナショナル・ジオグラフィック誌’20年5月11日『ウイルスが中国の研究所で作られたという科学的根拠はない』
□National Review21年6月18日『Fauci Acknowledges He Privately Entertained Lab-Leak, Genetic-Engineering Theories Early in Pandemic』

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