北京ジェノサイド五輪の絶息…開会式ボイコットに挑め

外交的ボイコットのドミノが始まった冬季五輪に『新疆文書』が暗い影を落とす。開会式で讃える相手は大虐殺の主犯だ。各国は悪魔崇拝の儀式に選手団を送り込むのか。
米首都の大規模抗議10月.jpg

「宗教的なラディカリズムは幻覚剤と同じだ」

CCP幹部に向けた秘密演説で、習近平はそう言った。今から7年前の発言だ。イスラム教の“過激派”を悪いウイルスと呼び、根絶を主張。そして部下に命じた。

「収容すべき者は全て収容し、刑を宣告すべき者には刑罰を下せ」
▽流出した習近平の演説文書(ウイグル法廷HP)
スクリーンショット 2021-12-08 16.17.30.png

英国で公判が続く「ウイグル法廷」で、大規模な東トルキスタン弾圧を指令した中共の極秘文書が公開された。習近平らが行った非公開演説が含まれ、一部は最高機密扱いになっている文書もあった。

「新疆文書」と命名されたこの文書は9月の第2回公判で存在が明らかになり、BitterWinterが速報していた。ただし、2年前にNYタイムズが入手したリーク文書との違いが正確に理解できなかった。

「ほぼ同一のものですが、同紙は重要な項目を強調せず、全文を開示することもなかったのです」
▽流出文書を提示するゼンツ博士12月1日(DW)
DWゼンツ博士月.png

文書を分析したウイグル研究の第1人者エイドリアン・ゼンツ博士は、そう解説する。2014年以降に東トルキスタンで行われた抑圧政策を検証することで演説の真意や重要性が浮かび上がってきたという。

「演説から間もなく収容施設建設が急ピッチで始まり、ウイグル人抑留を合法化する為の根拠づくりが加速しています」

ゼンツ博士は文書で言及される“テロ対策”がレトリックであることに注意を促す。プーは演説で’14年3月の昆明駅爆破事件を動機に掲げるが、ウイグル=過激分子とのレッテル貼りは誤解を増長しかねない。
▽ウルムチに増派された武警部隊 ‘13年6月(SNS)
Twitter6月末ウルムチ満載トラック交差点 のコピー2.png

中共が東トルキスタン全土での人民戦争開始を布告したのは、’13年7月だ。村民皆殺しやモスク閉鎖が相次ぐ中、最後の抵抗に立ち上がったウイグル人を弾圧する為、1万人超の武装警察部隊が侵攻した。

参照エントリ:平成25年7月8日『中共がウイグル人民戦争布告…非道“テロ宣伝”の嘘と闇』

人民戦争とは毛沢東の民兵構想に関連する反革命勢力の掃討戦だが、ここでは準軍事組織・公安そして漢族が一体化した“ウイグル人狩り”を指す。尚、この“人民戦争”の終結は未だ宣言されていない。
▽武警装甲車を歓迎する漢族 ‘13年6月(BBC)
BBC6月29ウルムチのコピー.jpg

「新疆文書」には、南部への支那人大量移住など民族浄化に絡む指令も含まれ、更なる解析が望まれる。そして、この時期にジェノサイドの総指揮者として習近平がクローズアップされた意味は大きい。

【外交的ボイコットのドミノ理論】

「外交団など公式の政府代表団を派遣すれば、北京五輪を通常の大会と同列に扱うことになってしまう。それは出来ない」

日本時間12月17日未明、米国は北京冬季五輪の外交的ボイコットを正式表明した。週内に発表との報道があり、10日の世界人権デーに合せると予想していたが、少し早かった。

同時に米国は選手団の派遣を表明し、フルボイコットの希望が砕けた瞬間でもあるが、主なウイグル支援団体は概ね賞賛しているようだ。ボイコット決断に関する米報道官の説明が簡潔でシャープだった。
▽会見で決定を伝えるサキ報道官12月16日(AP)
AP通信126サキ会見.png

「チャイナによる新疆でのジェノサイドや人道に対する罪、その他の人権侵害が理由だ」

ジェノサイドと明言したことは評価に値する。ウイグル問題ではトランプ政権の遺産を食い潰すだけの FJBだが、大きなトレンドの中で虐殺五輪のファンファーレに与する勇気はなかった。

外交的ボイコットは、12月4日にリトアニアが先陣を切り、豪州も決定。一部報道によると、7日にニュージーランド副首相が閣僚級の代表団派遣を否定したという。
▽決定を表明した豪・モリソン首相12月8日(SMH)
SMH128モリソン.png

「人権侵害国家のプロパガンダに社会的地位を与えることになる」

英議会は7月に政府関係者に五輪式典不参加を求める決議を採択。与党重鎮は「誰も航空券を予約していない」と答弁している。英国はほぼ確実で、これに新政権の独が加わる可能性も出てきた。

G7で、曖昧な態度を示しているのが、我が国とイタリアだ。’26年ミラノ冬季五輪が控える伊が最速で脱落する恐れが高かったが、今のところ不穏な動きはない。中共は一本釣りで苦戦中のようだ。
▽ローマのボイコット呼び掛け活動10月(ロイター)
ロイター10月ローマでのボイコット呼び掛け.png

「米政治家は招待を受けていないのに外交ボイコットを宣伝し、大衆の歓心を買おうとしている」

中共外交部の報道官は12月6日、先回りして米国を牽制した。狼狽を隠し切れない模様で、11月末にも「外交的ボイコットを検討した時点で招待しない」と吠えていた。

海外観客の制限に始まり、予防線を張り過ぎだ。しかも嘘に嘘を重ねている。五輪規約によれば、開閉式の招待状を送るのはIOCで、NOC(各国五輪委)でも開催都市の首長や党でもない。
▽LA中共総領事館前の抗議活動11月(AFP)
AFP11月ロス中共総領事館前の抗議.png

そして、この五輪規約が「新疆文書」との絡みで新たな問題になりつつある。

【選手団を待つ“悪魔崇拝の儀式”】

「バイデン政権が推進すべきは開催地の変更だ。CCPの悪意ある行為から全ての選手を守る為に、リーダーシップを発揮する必要がある」

前駐日大使のビル・ハガティ上院議員は12月5日、そう強く訴えた。米では「外交的ボイコットでは不充分」との指摘が相次ぐ。北京に派遣する米選手を守れるか、疑問視する声が高まっているのだ。
▽お伊勢参りするハガティ大使:左端'19年(伊勢新聞)
お伊勢参りするハガティ大使'19年(伊勢新聞).jpg

「このままでは派遣選手がチャイナの人質になる恐れがある。それは狼の口にアスリートを放り込むに等しい」

‘80年のモスクワ五輪問題に関わったカナダの元外交官は、外交的ボイコットを宣言した状態で、選手を送り込む危険性を説く。フルボイコットだったモスクワとは別次元のリスクが生じる。

背景にあるのは著名な女子テニス選手が性暴行の被害者となった張高麗事件だ。選手第一主義を貫くWTAとは対照的に、IOCは中共と結託し、事件を握り潰す側に回った。
▽ボイコット運動常連のバッハ仮面2月(AP)
抗議活動常連のバッハ仮面2月(AP).png

外交的ボイコットの報復で、リトアニアや台湾国の選手が現地で犯罪をデッチ上げられ、拘束されるという悲劇も起こり得る。その場合、IOCは中共側に与し、不介入の姿勢を取るだろう。

「実際に彭帥選手が安全なのか、圧力や検閲を受けず自由に自己表現できるのか、全く証拠を示していない。どのような動機でIOCは行動しているのか」 

独のトップ級選手で構成される「アスリート・ドイツ」は12月6日、独立調査を要求すると同時にIOCへの不信感を露わにした。既に事件に対する選手各自のスタンスが問われる事態に至っているのだ。

張高麗が立役者である冬季五輪に出場する選手にとっては、より切実な問題と言える。虐殺五輪の開会式に参加するアスリートは、規則上の義務により、プーとバッハを祝福しなければならない。
▽ソチ五輪開会式で祝福受けるプー’14年(代表)
代表2014年2月、ソチ五輪の開会式で=ロシア・ソチのフィシュト五輪スタジアムで2014年2月7日.jpg

「選手団は、貴賓席のボックス前を通過する際、開催国の国家元首ならびにIOC会長に敬礼をする」
参照:JOC公式サイト『オリンピック憲章69.開会式および閉会式’96年版』

元首に対する敬礼は1936年のベルリン五輪で採用された。外交問題に詳しい島田洋一教授によると、現在は形骸化し、敬礼の代わりにVIP席に向かって手を振るようになったという。

最新の憲章改訂版に敬礼義務の表記はないが、手を振って元首と会長を祝福する習慣は途絶えていない。因みに、中共式の敬礼は世界的にも類例がない左手敬礼である。
▽全老兵が泣いた黄熊の左手敬礼’15年9月(CCTV)
全老兵が泣いた左手敬礼15年9月(file).jpg

「新疆文書」が重くのし掛かる。開会式参列の選手には、ジェノサイドの主犯を讃え、敬意を表する義務が課せられているのだ。手を振ったら最後、一人の人間としてもう取り返しがつかない…

参加選手を闇落ちから唯一救い出せるのが、フルボイコットである。

【第2波攻撃は開会式ボイコット】

「外交使節団を派遣すれば、中国政府による人権弾圧を容認し、国際社会に誤ったメッセージを送ることになる」

官邸を訪れた青山繁晴参院議員は12月7日、記者団に対し、そう語った。この日、自民党「日本の尊厳と国益を護る会」メンバーは岸田首相に外交的ボイコット決断を強く求めた。
▽対面した「護る会」議員12月7日(山谷元拉致担当相SNS)
山谷元拉致担当相SNS.png

「五輪や外交の意義を総合的に勘案し、国益の観点から自ら判断していきたい」

岸田首相の優柔不断な態度は今も変わらない。ボイコット表明で「国益に資する」と明言したした豪モリソン首相との違いが浮き彫りになった。スポーツ庁長官派遣で得られる国益があるのか?
▽記者団に答える岸田首相12月7日(産経)
産経7日記者団の質問に答える岸田文雄首相=7日午前.jpg

「政府関係者の出欠は各国の政治的な判断で、中立の立場にある我々は、決定を尊重する」

米国の外交的ボイコット決定を受け、IOCは声明を発表した。復唱するが、招待状の送り主はIOCで、中共は関与しない。出席拒否で中共が報復すれば、それこそスポーツに政治を持ち込むことになる。

岸田政権は焦点が次のステップに移動している現状を判っていない。派遣選手団が慣例的に公然と“虐殺者万歳”のポーズを取る式典の問題。開会式ボイコットの可能性が視野に入ってきたのだ。
▽北京夏季虐殺五輪の開会式'08年(共同)
北京夏季虐殺五輪の開会式'08年(共同).png

開幕まで2ヵ月を切った時点で、出席を正式表明した大国の元首はプーチン唯一人。しかも当のロシアは五輪不参加、東京五輪と同様に“謎の強豪チーム”ROCが出場という異常な状況である。

ロシアの準衛星国ベラルーシなども出席するだろう。また中共が借金漬けにした植民地も命令に従う。ルカシェンコやアフリカの独裁者がVIP席に並ぶ姿は逆の意味で壮観、虐殺五輪の名に相応しい。
▽夏季虐殺五輪観るカシュガルの男性’08年(AFP)
AFP08年夏季五輪見るカシュガル男性.png

中共が党の威信と邪な野望を賭けた北京冬季五輪。中でも豪華絢爛なオープニング・セレモニーが“核心的利益”だ。それを叩き潰すことに意義がある。



最後まで読んで頂き有り難うございます
クリック1つが敵に浴びせる銃弾1発となります

banner1

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

中国侵攻で機能不全に陥る日米安保 [ 西村幸祐 ]
価格:1650円(税込、送料無料) (2021/11/19時点)




参照:
□ウイグル法廷HP11月27日『The Xinjiang Papers: An Introduction(PDF)』
□Stop the GenocideGames
□JOC公式サイト『オリンピック憲章2019年版・英和対訳(PDF)』

参考記事:
□ドイチェ・ヴェレ12月1日『Leaked documents link top Chinese leaders to crackdown on Uyghurs』
□BBC12月1日『ウイグル弾圧、習主席らの関与示す「新疆文書」が流出』
□WSJ12月1日『ウイグル問題の文書流出、習氏の強い関与裏付け』
□BitterWinter9月20日『Now We Know: Xinjiang, Xi Jinping Is Responsible』
□大紀元12月8日『「国益守る立場から一歩も引かず」豪モリソン首相、北京五輪「外交的ボイコット」表明 米に次ぎ2カ国目』
□ロイター12月7日『米、北京冬季五輪を外交ボイコット 日豪は対応検討』
□RFA12月6日『US declares diplomatic boycott of Beijing 2022 Winter Olympics, citing rights abuses』
□産経新聞12月7日『米国内で「全面ボイコット」求める声も』
□FOXニュース12月6日『Republicans blast Biden 'diplomatic boycott' of Olympics as too meager』
□産経新聞11月24日『北京五輪全面ボイコットを 選手「人質」とカナダ紙論評』
□Globe and Mail11月23日『A diplomatic boycott of the Beijing Olympics would put athletes in danger』
□読売新聞12月6日『北京五輪、欧州で外交ボイコット論活発化…英は「閣僚の航空券予約していない」』
□東スポ12月7日「ドイツのトップ選手が〝媚中IOC〟に怒りの直球猛抗議!』
□ZAKZAK12月8日『岸田首相、危うい「国益」発言 米の北京五輪「外交ボイコット」受け、閣僚派遣見送り検討 石平氏「人権を強調した発信せよ」』
□大紀元’13年7月3日『指名手配に装甲車配備 新疆各地、厳戒態勢』

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 7

なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
ナイス ナイス ナイス ナイス
ガッツ(がんばれ!)

この記事へのコメント