穢れた“張高麗記念”五輪…中共痛恨のダブルフォルト

著名選手を隷従させた序列7位は北京五輪統括組織のトップだった。IOCバッハの臭い芝居で中共は鎮静化に失敗。張高麗が発表したエンブレムが虐殺五輪を更に穢す。
新華社17年12月発表式典の張.png

「美しい祖国の建設に努め、人類全体と将来の世代に利益をもたらすべきである」

2016年に行われたパリ協定署名式で偉そうに説教した男が居た。渦中の色情老人・張高麗(Zhang Gaoli)だ。この時は、習近平の特使としてNYのUN本部の演壇に立った。
▽UN本部で演説する張高麗’16年(AFP)
2016年の国連演説中の張高麗AFP.jpg

「部屋に連れて行かれると性行為を求めて来ました。本当に怖かった。全く同意はなく、その日の午後はずっと泣いていました」

かつてウィンブルドンを制した彭帥(Peng Shuai)選手がSNSに投稿した告発の内容は陰惨な色を帯びていた。性暴行の被害に遭った場所は、張高麗の自宅だった。
▽豪州遠征時の彭帥選手6月(ブルームバーグ)
ブルムバーグ6月豪州遠征時のポン.jpg

芸能ゴシップ調で取り扱う各種メディアは「彭帥さん問題」と表現するが、違和感は拭えない。本来は、加害者の中共大幹部にスポットを当てるべき犯罪だ。即ち、張高麗事件である。

前副首相という肩書きも少々理解の妨げになる。張高麗は、中共18期の中央政治局常務委員。いわゆるチャイナ・セブンの1人で、最高序列7位まで昇り詰めた指導部中枢の人物だ。
▽CCPセブンに選ばれた張高麗:左端(file)
ABCチャイナセブン時代の張高麗.jpg

黄熊のビッグ・ブラザー化で今や形骸化したが、プー体制の初期はまだ集団指導体制の装いが残っていた。厳選された常務委員は権力そのものであり、法体系からも超越した存在である。

告発文には“良好な関係”だったことを匂わす件りもあるが、それを一般的な「愛人」と見做すのは飛躍している。また張の妻から繰り返し侮辱されたとも訴える。公然の「不倫」などではない。
▽全米オープン出場時の彭選手’14年(AFP)
AFP14年全米オープン出場時.jpg

「当局の人間が権力を盾に欲望の処理をするなんて中国人の誰もが知っている」
参照:ロイター11月25日『Where is Zhang Gaoli? Chinese politician accused by tennis star Peng keeps out of sight』

在外の支那人学者は身も蓋もないことを言う。張高麗は超法規的な特権階級の最高位メンバーで、他国に準えると、警察庁長官と検事総長、最高裁判事の三役を併せ持つ地位を誇る。

例え陵辱の相手が著名なアストリートであっても支那人は驚かない。醜聞ではなく、日常の範囲。だが、海外で“共産支那の常識”は通用しなかった。

【最凶検閲システムの有り得ないミス】

「石に投げ付けられる卵、或いは火に飛び込む蛾のように、私は自爆的な手段で事実を語ります」

彭帥選手の投稿は、そう最後に結ばれていた。刺し違える覚悟で、元序列7位の最高幹部を告発したのだ。常務委員の性犯罪暴露は過去に例がないが、労働改造所送りレベルでは済まない。

投稿は20〜30分前後、ネット上に存在し、間もなくアカウントごとbanされた。著名人の告発が広まるには充分な時間だ。その際、中共当局は最初の失敗を犯した。
▽WTA南昌オープンで優勝した彭選手’17年(AFP)
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最適解は公安担当部門が、アカ乗っ取りを偽装し、イタズラとして処理することだ。乗っ取った犯人をデッチ上げ、自供と謝罪を国営放送で垂れ流して一件落着。全体主義国なら容易い作業である。

「当局のネット検閲能力からすれば1分と経たずに直ぐに削除され、跡形もなく消去されるはず。当局が意図的に情報を拡散させたことが窺えます」

石平さんは、政争の側面があると説く。告発文が投稿された11月2日は、CCPの重要会議開催直前だった。習近平が敵対派閥を牽制・脅す意図が見え隠れすると指摘する。
▽全人代のプーと張高麗’14年(AFP)
全人代のプーと張高麗14年AFP.png

張高麗は共青団出身で、江沢民に可愛がられて党序列を駆け登った。いわゆる上海閥の系統と見られ、プーの太子党とはライバル関係にある。引退したとは言え、張高麗一派は残存しているはずだ。

今年初め、支那で「翠」の文字がネット上の禁止文字になったことが判明して話題になった。「翠」を分解すると「習近平は二度死ぬ」という意味に取れなくもないとの理由からだった。
▽反CCP抗議で焼かれる黄熊’20年(EPA)
反CCP抗議で焼かれる黄熊20年(EPA).png

更に「春華」の商標登録も禁じられた。現副首相の胡春華と重なる為だと公式に説明されている。胡春華は常務委員入りも取り沙汰されるが、今は中央委員でしかなく、序列も20位以下だ。

新たな「文字の獄」とも呼ばれる中共の禁止ワード指定は、3万5,000規模に達し、増え続けている。その中で「張高麗」の文字列が野放しになっていたことは謎である。
▽ロシアを訪問する張高麗’14年(AFP)
AFP14年ロシアを訪問する張.jpeg

背景に政争の匂いを嗅ぎ付けるのも妥当だろう。一方、プー指導部が張高麗を引退した常務委員に過ぎないと軽く扱っていたのなら、脇が甘すぎた。
張高麗は目前に迫る党重要イベントのキーマンだったのだ。二番目のミス。習近平チーム、ダブルフォルトである。

【中共五輪委の上に君臨した最高責任者】

投稿から10日間が過ぎ、火に飛び込んだ女性の告発は、スポーツ界のゴシップとして葬られ掛けていた。その状況に一石を投じたのが、WTA(女子テニス協会)のスティーブ・サイモンCEOだ。

「彭帥と全ての女性の訴えは検閲されるのではなく、聴き入れられるべきだ。チャイナの元指導者の行為に関し、性的暴行があったとする彼女の告発は、最大限の真剣さをもって扱われなくてはならない」

WTAは11月14日、彭帥選手の安否確認と性暴行事件の透明な調査を求める声明を発表。これにより真相究明の機運が一気に高まると同時に、責任問題を拡げる論調も出始める。
▽真相究明求めるサイモンCEO11月18日(CNN)
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「IOCは、この件に関して回答していません」

英BBCは関連報道の中で、そう付け足していた。確かに被害者は五輪に連続出場しているテニス選手だが、IOCマターではないだろう、と筆者は考えた。だが、一部メディアは関係性を把握していたのだ。

「この元幹部は北京冬季五輪の準備で中心的な役割を果たしていた」(11月25日付けWSJ紙)

IOCの文書によれば、張高麗は冬季五輪誘致の指導・支援・監督する運営組織のトップと位置付けられていた。ニューズウィークは「冬季五輪実行部門の監督役」と表現する。
▽五輪関連の会議を仕切る張高麗’17年(新華社)
新華社1710月北京五輪工作指導小組の総会.png

非常に分かり難い“役職”で、中共宣伝機関が伝える肩書きも「北京五輪指導工作小組長」だ。通常、最高責任者は当該国の五輪委会長だが、党が君臨する中共の場合は事情が異なる。

COC(中共五輪委)は中共指導部の命令に従う下部組織に過ぎない。序列7位の常務委員だった張高麗は実質的なトップで、冬季五輪誘致の立役者と言える。

「張氏は責任者としてトーマス・バッハ会長をはじめIOC幹部と定期的に連絡を取っていた」(前掲紙)
▽北京詣のバッハと中共側五輪責任者’16年(新華社)
新華社16年6月中国の張高麗・中国共産党中央政治局常務委員・国務院副総理は12日、北京の中南海紫光閣で国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長と会見.png

WSJ紙のスクープではない。張高麗の履歴を辿れば、告発が表面化した直後にも簡単に判った事実だ。バッハとの2ショット写真もリークではなく、新華社の古い日本語版記事にも掲載されている。

本邦の全国紙を含め大手メディアは、張高麗事件が北京五輪を揺らがす大ネタであることを最初から知っていたのではないか、と勘繰る。そこに風穴を開けたWTAサイモンCEOの功績は大きい。

【選手に問う“張高麗メダル”の価値】

張高麗による著名テニス選手の隷属化は、冬季五輪工作責任者という圧倒的権威とは直接関係がない。2人が知り合ったのは、10年前。張が天津市党委書記だった時代である。

その後の2014年、女子オンリーの天津オープンが創設され、彭帥選手も大活躍する。企画発案から競技場建設などのスパンを考えると、天津市トップだった張高麗が深く関与していることは間違いない。
▽天津市党委書記時代の張高麗’08年(新華社)
新華社08年天津市トップ時代の張高麗.jpg

新華社の人物紹介では張高麗の趣味のひとつにテニスが挙げられている。天津オープンは、彭帥選手とも繋がる張の肝煎りプロジェクトだ。そしてWTAツアーの国際大会でもある。

WTAは、天津オープンの創設で張高麗と頻繁に接触し、サイモンCEOも面識があると考えられる。そうした背景から、性暴行事件の厳格な調査を強く求めたのだ。
▽天津オープンのメーン競技場(WTA)
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「映像で姿を見て嬉しくなった。しかし、彼女が自由な状態にあるか分からない。引き続き、彼女の安全と性的暴行が検閲され、隠蔽されていることを懸念する」

中共当局は彭帥選手の新撮映像を出して沈静化を企てたが、サイモンCEOには通じなかった。対照的だったのが、ビデオ通話の写真1枚を公表して幕引きを目論んだIOCのバッハだ。
▽ビデオ通話で芝居するバッハ11月21日(時事)
時事ビデオ通話するバッハ11月21日.jpg

「チャイナ政府のプロパガンダに加担するな」

HRWなど人権団体は声明を出し、IOCを猛批判する。海外メディアも北京五輪に絡めて非難し、外交ボイコット程度では不十分との論調も出始めている。

「より強力なのは、アスリートの開閉会式ボイコットだ」(11月22日付けカナダ紙)

同紙は前提となるウイグル弾圧にも触れ、今こそ著名なアスリートが主導権を発揮すべきと呼び掛けた。時同じく、NBAスターのエネス・カンター選手も張高麗事件に絡めて訴えた。
▽抗議集会に参加したカンター選手10月30日(SNS)
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「何十年もの間、西洋のアスリートはチャイナの人権弾圧に沈黙してきた。スポーツ界は目を醒まし、声を上げる必要がある。安全で自由な世界を築く為に、アスリートは重要な役割を果たせる」

カンター選手は五輪のメダルよりも輝かしく大切な価値があると説く。北京冬季五輪の立役者が引き起こした未解決の事件は、参加予定の選手に、厳しい選択を迫らせる結果となった。
▽五輪エンブレム発表する張高麗’17年(AP)
AP通信北京2022の1.png

4年前のエンブレム発表式典で、中心に居たのは序列7位の発情老人だった。来年2月に開幕する虐殺五輪は「張高麗記念大会」と名付けるに相応しい。

穢れたエンブレムを背景に、メダリストは何事もなかったかのように勝利を喜び、笑顔を振りまくことが出来るのか?



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関連エントリ:
11月11日『ウイグル決議に託された命運…北京ジェノサイド五輪の残火』

参考記事:
□ニューズウィーク11月27日『女子テニス彭帥選手の告発に沈黙守る元副首相 中国共産党、口を閉ざしてきた歴史』
□ロイター11月25日『アングル:彭帥選手の曝露に沈黙守る元副首相、中国当局の影』
□WSJ11月25日『性的暴行疑惑の中国元副首相、五輪準備の立役者』
□加Ottawa Citizen紙11月22日『McCuaig-Johnston: We should boycott the 2022 Winter Olympics — but what kind of boycott?』
□WSJ11月20日『Enes Kanter: Move the Olympics for Peng Shuai’s Sake』
□CNN11月25日『Who is Zhang Gaoli? The man at the center of Chinese tennis star Peng Shuai's #MeToo allegation』
□ロイター11月25日『Where is Zhang Gaoli? Chinese politician accused by tennis star Peng keeps out of sight』
□東スポ11月23日『北京五輪は「外交的ボイコットでは不十分」 テニス・彭帥〝行方不明〟問題で強まる逆風』
□週刊ポスト11月29日『女子テニス彭帥選手の性的関係強要告発 習近平国家主席 の「計算通り」か』
□SAKISIRU11月17日『前副首相との不倫を告白した中国テニス選手、消息不明前にSNSで暴露した内容とは?』
□BBC11月15日『中国テニス選手の性被害の訴えを「聴くべき」WTAが声明』
□大紀元3月9日『「翠」に次ぎ「春華」も禁止ワードに 中国指導者の名前巡る「文字の獄」』
□新華網’16年6月13日『張高麗副総理、IOCのバッハ会長と会見』

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