ウイグル決議に託された命運…北京ジェノサイド五輪の残火

「残忍な独裁者」と習近平を猛批判したNBAスターに喝采が送られる。開幕が近付く北京虐殺五輪。我が国が決意を示す最初の一手が、対中非難・ウイグル救済決議の採択だ。
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「ウイグル人へのジェノサイドを行なっている最中、どうしたら北京での五輪開催を許すことが出来るのか?」

チベット系カナダ人のケミ・ラモさんは、そう大きな声で問い掛けた。10月18日、ギリシャの古代遺跡オリンピアで開かれた聖火の採火式に有志グループが突撃した。
▽採火式に突撃したチベット難民ら10月18日(AP)
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男性は雪山獅子旗を両手に、ラモさんら2人の女性は「NO GENOCIDE GAMES」と記された横断幕を手にしていた。虐殺五輪反対派による懸命な抵抗だ。

3人はヘラ神殿前に進もうとしたが、警備陣に取り囲まれ、一時拘束された。生中継されたIOCの配信映像では採火の直後、カメラ前を駆け抜けるSPの姿が映っている。
▽周辺でも数人が逮捕・拘束された10月18日(AP)
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13年前の採火式もチベット支援者が突撃を敢行し、大荒れとなった。赤っ恥をかいた中共は厳重な警備を要請し、会場は数日前から閉鎖されていたという。

加えて採火式前日にはアテネのアクロポリスで、五輪反対派の連帯組織「NoBeijing2022」メンバーが抗議活動を展開。修復工事の足場に雪山獅子旗と香港民主派の旗を掲げ
▽アクロポリス遺跡での抗議活動10月17日(AP)
AP通信101717日、北京冬季五輪の開催に抗議する活動家がアテネの古代遺跡アクロポリスで掲げたチベットの旗.png

「IOCは再び五輪開催の栄誉をチャイナ政府に与えることで、香港・チベット・東トルキスタン・南モンゴルでの虐殺や人道犯罪に目を瞑っても大丈夫だという誤ったメッセージを世界に発信している」

アクロポリス抗議に参加した邵嵐(ジョーイ・シウ)さんは、そう訴える。彼女は香港城市大で運動を率いた民主派リーダーの1人で、現在は米国に在住し、精力的に活動を続けている。

前回の第1回虐殺五輪は、聖火と共に抗議が世界を1周したが、今回はダイレクトで北京に空輸された。元から地味な冬季五輪とは言え、高揚感のないまま開催まで残り100日を切った。

【巨漢のシューズが世界に語り掛ける】

「諸民族を弾圧する中国政府に五輪を開催する資格があるのか。開催しても良いとなれば、人権や自由・平等は無視されてしまう」

我が国に暮らすモンゴル人ら反対派有志が10月27日、中共大使館前で抗議の声を上げた。この日は、北京ジェノサイド五輪開幕予定日の100日前。最終期限が刻々と迫る。
▽中共大使館前の抗議活動10月27日(日本ウイグル協会)
中共大使館前の抗議活動1027(日ウ協会).jpg

CCPが“海外からの無観客”を打ち出したことで、外交的ボイコットは実現する運びとなった。’26年ミラノ五輪が控えるイタリアでさえも首相派遣を表明していない。得意の一本釣りでも未だ釣果なしだ。

選手を含むフルボイコットの呼び掛けも成果なく終わる気配だったが、13年前の壮絶な敗北とは趣きが違う。米NBAスターという大物援軍の登場で、ウイグル支援団体などは沸き立っている。
▽集会に参加したE・カンター選手10月30日(WUC)
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「残忍な独裁者である習近平に私達の声を届けましょう」

10月30日、米議会前で開かれたウイグル人強制労働に反対する集会に身長211cmの巨漢が現れた。ボストン・セルティックスのエネス・カンター選手だ。

カンター選手は10月20日、チベットを擁護し、中共を批判する動画を自身のSNSに投稿。国際規模の話題になる中、遠征試合の前に集会に参加した。いわばサプライズ登場だった。
▽集会で演説するカンター選手10月30日(RFA)
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中共当局は直ちにセルティックスの試合配信を止め、ネット上では関連情報が検索不可能になった。カンター選手は少しも動揺せず、矛先をNBAなどにも広げ、追及する。

「1人のプレーヤーとして、チャイナ政府の悪行を見逃すNBAに対し、悲しく、恥ずかしく、嫌に思っている」

支那マネーで儲けるNBAは、2年前に大問題を引き起こしている。ロケッツ幹部が香港の民主派支持を表明したことにCCPが激怒。NBAは平身低頭で、発言した幹部も謝罪する後味の悪い結末を迎えた。

「ナイキは米国内の不正義には声を張り上げるが、チャイナには沈黙を決め込む。偽善はやめろ。今すぐ現代の奴隷制をやめるんだ」



豪ASPI報告書で強制労働との深い繋がりが暴かれたナイキを容赦なく糾弾する。北京冬季五輪は、奴隷が作らされたウェアをアスリートが身に着ける可能性の高い最悪の競技大会である。

カンター選手は政治的メッセージを記したシューズを履き、試合に出場し続けている。米議会前のウイグル集会に参加した日、彼のシューズは、こう“主張”していた。

「N0 BEIJING 2022 NO RIGHT NO GAMES」
▽カンター選手が試合で使用するシューズ10月30日(USA today)
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【メディアが隠す“反共列国議連”】

岸田首相が総裁選で大きなインパクト与えた公約が、中共を念頭にした人権問題担当補佐官の新設だった。一時、不安視されたが第二次政権の発足に伴い無事任命された。

「次に内閣総理大臣補佐官を発表いたします。国際人権問題担当・中谷元」
▽閣僚名簿発表する松野官房長官11月10日(官邸HP)
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松野官房長官の閣僚名簿発表で意外だったのは、正式名称に「国際」の冠が付いていたことだ。総裁選当時の呼称にはなく、国内のエセ人権派勢力に付け込まれる隙があった。

任命された中谷元補佐官は、陸自出身のベテランで防衛相などを歴任。立憲共産党誕生の呼び水となった平和安全法案の制定では特命大臣として荒波に揉まれた。
▽官邸に入る中谷国際人権問題補佐官11月10日(時事)
時事国際人権問題担当の首相補佐官に決まり首相官邸に入る中谷元氏=10日午後.jpg

任命の決め手となったのが、今年6月の見送り騒動で波紋を広げた“対中非難”決議案だった。中谷補佐官は人権外交議連の会長として決議案の取りまとめに腐心した。補佐官任命は極めて妥当なラインだ。

一方、新設補佐官の関連報道で殆ど触れられないキャリアがある。それが各国の国政議員代表で構成されるIPAC(対中政策に関する列国議会連盟)だ。中谷氏は共同議長の1人である。
▽各国代表40人が共同議長を務める(IPAC)
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「CCP主導のチャイナの台頭は、世界の民主主義に対する決定的な挑戦だ。我々は断固として自衛する」

台湾国の呉釗燮外相は10月30日、そう力強く語り、反響を呼んだ。発言した会合は、ローマG20を前にIPACが主催したものだった。産経が触れた程度で、他の大手メディアはダブー扱いだ。
▽チェコ上院で叙勲される呉外相10月27日(台北時報)
台北時報10月27日チェコ上院に招かれた呉外相.jpg

IPACは英保守党ダンカンスミス元党首の呼び掛けで昨年6月に結成された対中強硬派の国際議連。中谷補佐官は山尾志桜里前議員と共に参加し、直後に旗揚げしたJPAC代表にも就任した。

「ますます権威主義、覇権主義になっていく中国共産主義に対して、日本は公正性と相互主義に基づいて対応することが必要だ」
▽旗揚げ会合で挨拶する中谷氏R2年7月29日(J-CAST)
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設立総会では、そう訴えた。対中強硬派の印象がなかっただけに少し驚く。IPAC参加者は米マルコ・ルビオ上院議員のような筋金入りの反共闘士が顔を揃える。

岸田首相が当初から中谷氏のキャリアを重視し、補佐官への起用を想定しいたのであれば、なかなかの策士と言える。ただし、ルビコン河を見下ろす場所まで来ても、渡るとは限らない。

【岸田政権“親中色”払拭の最低条件】

「我々は各国の政治指導者や国家の代表に対して、2022年北京五輪への招待を辞退するよう呼び掛ける。招待を受けることはチャイナ政府による抑圧的な政策を正当化するリスクを孕む」

欧米で議論が花盛りになった今年7月、IPACは声明で強く訴えた。外交的ボイコットの提唱だ。声明の文責を担う中谷氏を閣内に抱えた状態で、閣僚級が招待に応じる可能性は低い。
▽空輸で北京に直送された聖火10月20日(読売)
北京に空輸された聖火10月20日(読売).jpeg

一部では東京五輪の外交返礼で、文科相を北京に送る案も取り沙汰されるが、末松文科相は安倍派だ。開会式で拍手した瞬間に政治生命も絶たれる。そんな人身御供を元総理が許すとは思えない。

更に虐殺五輪を前に我が国では重要な決議が採択される見通しだ。ウイグル人救済に繋がる前述の“対中非難”決議である。岸田政権にとっては試金石のレベルではなく、生命線と言っても過言ではない。
▽第二次岸田内閣の記念撮影11月10日(時事)
第二次岸田内閣の記念撮影11月10日(時事).jpg

6月の決議案を握り潰した自民党の林幹雄は副幹事長ポストを失い、中共・精華大の教授も権力中枢から去った。当時のリーク情報を全面的に信じれば、もう何の障害もなく、スピード採択される。

「時期は分からないが、採択すべきだ」

岸田首相は総裁選中の9月、アンケートにそう回答した。「臨時国会で直ちに採択すべき」と即答した高市早苗政調会長と比べ、曖昧さが残る。12月初旬召集の臨時国会で決議案が採択されるか、微妙だ。
▽記者会見する岸田首相11月10日(時事)
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中谷国際人権問題担当補佐官の誕生を歓迎する一方、今回の総選挙で反CCP・護国陣営が負った痛手は大きい。精力的な活動を続けるウイグル議連の長尾敬事務局長がバッジを失った。

「この程度の決議が出来ないと、国会議員をしている資格はない。強い覚悟を持ち、次は必ず採択したい」
▽IPACメンバーにも名を連ねる長尾前議員(同HP)
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見送りの際、長尾前議員がそう憤慨していたことを思い出す。更に南蒙議連で高市代表を支えた上野宏史元厚労政務官も選挙区で敗れ、比例復活も叶わなかった。

上野元政務官は米留学の際、モンゴルのエルベグドルジ前大統領と同級生だったという逸材で、今も親しい間柄だ。前大統領は中共の南蒙言語狩りを強く非難した猛者でもある。
▽支援会議で語る上野前議員2年12月(南蒙クリルタイ)
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チベットや東トルキスタン、南蒙や香港民主派を支援する議員は、多いように見えて実は少ない。国会全体を見渡すと、ほんの一握りのマイノリティーに過ぎない。

林芳正の外相起用や茂木幹事長就任で、岸田首相の“親中シフト”転換も囁かれる。その懸念を払拭し、プー国賓来日策動の息の根を絶つ為にも人権侵害非難決議は不可欠だ。
▽「現代の奴隷制」「もう言い訳はたくさんだ」10月25日(AP)
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臨時国会の冒頭で採択し、責任ある国家としての意志を示せ。



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参照:
□IPAC(Inter-Parliamentary Alliance on China)HP
□IPAC7月7日『Statement on the 2022 Beijing Winter Olympics』
□南モンゴルクリルタイHP2年12月3日『【モンゴル母語保護運動国際会議】報告』

参考記事:
□AFP10月18日『北京五輪に抗議の活動家逮捕 採火式控え ギリシャ』
□パユル10月19日『Activists disrupt Beijing Olympics torch-lighting ceremony in Greece』
□SFT10月17日『IBET AND HONG KONG ACTIVISTS DETAINED AT ACROPOLIS CALLING FOR ‘NO BEIJING 2022’』
□香港ポスト10月21日『元城大学生会幹部がギリシャで逮捕』
□産経新聞11月9日『フォト特集:「NO BEIJING 2022」 シューズで北京五輪反対、NBA選手』
□USA today10月31日『NBA Player Enes Kanter Leads Rally Against Uyghur Forced Labor』
□AFP10月21日『NBA選手がチベットめぐり中国批判、習主席は「残忍な独裁者」』
□ニッポン放送11月9日『「期待半分、少し不安あり」という人事 ~人権問題担当補佐官に中谷元・元防衛大臣』
□産経社説11月9日『人権担当補佐官 名前だけに終わらせるな』
□産経新聞10月30日『台湾外相、各国議員会合にオンライン参加 G20控えローマで』
□J-CAST’20年7月29日『超党派で「香港人をサポート」日本の「対中政策」議連がこれから取り組むこと』
□ZAKZAK11月9日『岸田首相、“親中”林外相起用で習氏の「国賓」来日再燃も!? 自民党内からも「中国に近すぎる」との懸念 門田隆将氏「貴国と仲良しのメッセージ」 』
□産経新聞9月22日『対中非難決議、総裁候補3氏「採択すべき」河野氏回答せず』
□ZAKZAK6月28日『対中非難決議見送り…“国会議員の資格なし”!自民・長尾議員が激白「次は覚悟を持って採択する」13民族団体と連携強化で世論喚起』

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