台湾有事招く絶海の発火点…封印解かれた米軍隠密部隊

台湾国に駐留する米部隊の存在を蔡英文総統が認めた。情勢緊迫化で牽制するバイデンと威圧する習近平指導部。中共軍機の大挙侵入ルートは、南シナ海の一点を指し示していた。
台湾の海軍陸戦隊(海兵隊)員=資料写真(中央社.png

不定期開催のCNN“生討論”は、お仲間の政治家と仕込みの観客で台本通りに進行するヤラセ番組だ。右肩上がりの不支持率に慌て、久々にバイデンを招いた際に“放送事故”が起きた。

「イエス、アンド、イエスだ。我々は、そうすることを約束する」

FJBことバイデンは、そう答えた。編集の出来ない生放送。米大統領が台湾国の防衛義務を明言した瞬間で、瞬時に大きなニュースとして世界を駆け巡った。因みに番組は直後にCMに入った。
▽ポケットに手を入れて答えるFJB10月21日(CNN)
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我が国の報道はどれも微妙に訳が異なる。ホワイトハウスの公式記録を検めると、質問は複数で市民の問いに司会者が畳み掛けた格好だ。それでも和訳に曲解やこじつけはなく、概ね正確と言える。

米国は台湾国への武器供与を続ける一方、中共が侵攻した際の対処に関しては態度を曖昧にしている。米政府は従来の方針に「変更はない」と火消しに追われたが、同様の発言は8月にもあったばかりだ。

参照:時事通信8月20日『米大統領「台湾に防衛義務」 政権高官が「失言」修正』
▽仕込みの客と握手するFJB10月21日(AFP)
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現実と淫夢の区別がつかない痴呆症老人の譫言と切って捨てることも出来るが、平常運転の失言と決め付けるのも難しい。CNNの司会者は助け舟を出したのではなく、火に油を注ぐ役回りだった。

「だが、政府高官の釈明を額面通りには受け取れない。大統領の発言は、台湾防衛が米国内で常識化している表れだろう」(10月26日付け産経社説)

米政権が危機感を強めていることは確実だ。台湾有事は、米軍が想定するシナリオの中で最上位のランクに移ったと考えられる。バイデンの任期内に中共軍侵攻が現実化する恐れも高い。
▽会見中にフリーズするFJB8月23日(AP)
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その時、米国が半世紀保ってきた台湾防衛を巡る“戦略的曖昧”は通用しない。ケースバイケースの解釈が抑止力になることはないのだ。

【追放決議50年後の“懺悔録”】

「台湾は民主主義のサクセス・ストーリーそのもので、透明性・人権の尊重・法の支配といったUNの価値観と一致する」

ブリンケン米国務長官は10月26日、台湾のUN機関などへの復帰を求める声明を発表。「大切なパートナー」と表現し、加盟各国に対して支持するよう呼び掛けた。

「毎年、何千万人もの乗客が航空機を利用しているにも拘らず、台湾はICAO(国際民間航空機関)から排除されている」
▽外遊先で会見するブリンケン長官10月21日(AP)
外遊中に会見するブリンケン長官.jpg

ブリンケンは台湾がパンデミック対策で功績を残す一方、WHOへの参加が拒絶されている現状を説明。国際機関からの排除が最近顕著になっていると強調した。

下部機関や条約機関への復帰要請に留まり、UN本体への再加盟には言及しない。この辺りがバンデン政権の限界だ。対して米上院外交委の共和党重鎮が同じ日に出した声明はストレートで、痛烈だった。
▽声明発表したジム・リッシュ外交委員長9月(ロイター)
声明発表したジム・リッシュ委員長9月(ロイター).png

「台湾はUN憲章に則って国民の基本的人権を尊重し、国際平和に努めている。しかしPRC(中共)は広範な人権侵害に従事し、台湾海峡や東シナ海、その先の平和と安全を脅かしている」

相次ぐ声明は、今年10月25日に台湾を追放したUN決議2758号の採択から50年の節目を迎えるに当たって出された。台湾国の替わりに中共を常任理事国に組み込んだ“アルバニア決議”である。

「過去50年、PRCは2758号を用いて台湾国民がUNビルに入ることさえ阻止した。この恥ずべき排除は、UN設立の理念を弱めるものだ」
▽NYのUN本部ビル(AFP file)
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台湾外交部は米国の声明に対して謝意を表明し、国際ルールを遵守する自国の姿勢に国際社会の理解を求めた。対照的に中共側は50周年記念会合にプーが現れて「世界人民の勝利」などと虚勢を張った。

1971年の同決議は、世界が道を踏み外した第一歩だ。半世紀の長きに渡って一度も見直し論が沸騰しなかったことは国際社会の黒歴史、人類の敗北である。

【入れ替え手続きに瑕疵はないのか?】

東欧の小国アルバニアはソ連に設計された衛星国だったが、60年代にフルシチョフと対立し、毛沢東に接近する。この小国を中共が利用し、影でUN決議を操ったことは誰の目にも明らかだった。
▽独特の国旗で知られるアルバニア’20年(AP)
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日米は中華民国の追放反対決議案と台中二重代表制決議案を推進。しかし反対案の否決後、2758号決議が採択され、二重代表制案は表決に至らず、消滅した。

参照:外務省HP『国連第26回総会における政治問題』

“アルバニア決議”の3ヵ月前、キッシンジャーは北京を極秘訪問し、後のニクソン・ショックの下準備を進めていた。加えて英仏を始め欧州主要国も中共に肩入れし、決議賛成に回るなど背景は複雑だった。
▽キッシンジャーの北京極秘訪問’71年9月(file)
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素直に受け入れられない奇妙な決議だ。中華民国はUNの核心機構である安保理のP5(常任理事国)で拒否権という特権を持つ。だが、総会の採決で簡単に特権を奪われ、追放されてしまう…

圧倒的なパワーを誇るP5国家が、下部機関に過ぎない総会の議決に命令される倒錯した事態。しかも定義の曖昧な「代表権」を奪われたのは、中華民国ではなく「蒋介石」だという。
▽決議前に離席する台湾外相'71年10月(file)
決議前に離席する台湾外相(file).jpg

今も腑に落ちる合理的な解説を探しているが、見当たらない。中共政権と国民党政権の入れ替え手続きに瑕疵があれば、国際法の専門家が50年も黙っていないと思うが、それでも納得出来ない。

よく知られた話ではあるが、P5の特権を定めたUN憲章第23章には中華民国やソ連という名称が残っている。一般的な解釈に従えば、ロシアによるソ連の継承と中共による中華民国継承が同じなのだ。
▽戦勝国クラブに中共名で参加は出来なかった(資料より)
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「中華民国台湾は主権独立の民主国家であり、中華人民共和国とは互いに隷属していない」

台湾国外務省は決議50周年に関する声明で、そう訴えた。消滅したソ連邦と並列して存在する台湾は全く違う。更にアルバニアの盾を使った中共によるUN諸機関からの台湾排除は、決議の曲解・乱用だ。

国際社会の壮大な勘違いは、中共が当時から乱用していた「ワン・チャイナ」プロパガンダに起因するが、解釈に没頭している暇はない。台湾情勢は逼迫し、危機は目前に迫る。

【獰猛な翼が狙う絶海の台湾国領土】

「我々の防衛能力を高める為、米国と幅広く協力している」

台湾国の蔡英文総統は10月26日、米軍部隊を訓練目的で国内に受け入れていることを初めて認めた。バイデン“放送事故”と同じCNNだが、こちらは台北でのインタビュー取材だ。

「人々が考える程、多くはない」

米軍の規模については明確な返答を避けたものの、台湾国派遣を公然の事実と化した意味は大きい。約3万人の駐台米軍が撤退してから42年が経つ。
▽台北市内にあった米軍施設:時期不詳(file)
台北にあった米軍施設(file).jpg

駐台米軍部隊については今月上旬にWSJ紙が米当局者の話として具体的に報じていた。20数人の米特殊部隊が台湾国陸軍と訓練にあたり、海兵隊は海軍と共同で小型艇を使った訓練を実施していると伝えた。

その報道よれば、訓練は少なくとも1年に渡り続けられているという。米海兵隊の派遣場所は台湾南部の海軍左営基地。かつての我が海軍の高雄警備府だ。
▽インタビューに答える蔡総統(CNN)
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「この人口2300万人の島は自らを守り、自分達の民主主義を守ろうとしている。民主主義の灯台で、もし我々が失敗すれば、そうした価値観を信じる者達は、守るべき価値観なのか疑念を抱くだろう」

訴える蔡総統の表情はいつになく固く、微かに悲壮感も漂う。駐台米軍に関しては、秋になって一気に激しさを増した中共軍の脅威を語る中で飛び出したものだ。
▽10月4日の中共軍機侵入データ(台湾国防部)
10月4日の中共軍機侵入データ(台湾国防部).jpg

10月1日からの“国慶節連休”中、殲-16など戦闘爆撃機を中心に4日間で計149機が台湾国のADIZ(防空識別圏)を突破。過去最多の侵入記録を更新し続けた。

狙われているのは、南シナ海北部の絶海に浮かぶ東沙島。滑走路を備え、台湾軍兵士らが常駐する離島である。10月26日には上陸作戦で編成される攻撃ヘリも確認された。
▽ADIZ突破した中共軍攻撃ヘリ10月26日(中央社)
26日、台湾南西のADIZに進入した中国の攻撃ヘリ「WZ-10」=国防部提供(中央社フォーカス台湾).png

台湾本島への全面侵攻の前に、中共軍が東沙島、更にスプラトリー諸島の太平島を電撃的に奪取する可能性も排除できない。侵攻時期は北京ジェノサイド五輪閉幕予定日の直後も有り得る。

台湾有事の到来は、中共包囲網の形成とはおよそ無関係だ。権力基盤が揺らぎ、政局に発展する兆しが見えた時、習近平は捨て身の対外武力行使に打って出る。CCPの統治原理は昔も今も変わらない。
▽高雄から450km離れた東沙島(香港01)
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AUKUS制服組トップに、バイデン政権に、そして我が国に備えと覚悟はあるか。根拠のない楽観論は、感覚的な悲観論よりも質が悪い。台湾有事を迫り来る最大級の危機と捉え、腹を括る必要がある。



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参照:
□ホワイトハウスHP10月22日『Remarks by President Biden in a CNN Town Hall with Anderson Cooper』
□米上院外交委HP10月26日『RISCH: TAIWAN DESERVES TO PARTICIPATE IN UN』
□米国務省HP10月26日『PRESS STATEMENT:Supporting Taiwan’s Participation in the UN System』

参考記事:
□産経新聞10月27日『国連の台湾追放決議を「中国が悪用」米重鎮議員が声明』
□時事通信10月27日『台湾の国連活動参加支持を 米長官』
□産経新聞10月22日『台湾防衛の「責任ある」バイデン大統領が表明「変更ない」と高官火消し』
□AFP10月23日『バイデン氏の台湾防衛宣言、米政府が火消し 「政策変更ない」』
□産経社説10月26日『バイデン氏の発言 日本も台湾防衛に協力を』
□CNN10月28日『台湾総統、米軍の存在を初めて認める 中国の脅威は「日々」増大』
□時事通信10月28日『台湾総統、米軍受け入れ認める 中国の脅威「日々増大」―CNN』
□WSJ10月8日『米部隊が台湾軍を訓練、最低1年前から極秘で活動』
□フォーカス台湾10月4日『中国軍機52機が台湾防空圏進入=過去最多』
□Taiwan today10月25日『「アルバニア決議」50周年、中華民国台湾と中華人民共和国は互いに隷属せず』
□フォーカス台湾10月26日『国連決議「台湾の声の代弁、中国に認めていない」=外交部』

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