総裁レース視界不良の一寸先…希望を繋ぐ“高市自民党”

“高市推し”に一点の曇りなし。新たなキングメーカー安倍&麻生コンビの仕掛けで、二階が描いた無風の再選シナリオは崩壊。最も玄人好みの総裁レースが始まった。
表紙候補総裁選.png

「去年辞めて今年出る訳がない」

安倍前首相は即座に出馬を否定した。会話の相手は高市早苗前総務相で、これまで繰り返し再出馬を要請してきたが、態度は変わらなかった。

「じゃあ私が…」

高市前総務相は自らが自民党総裁選に挑む決意を表明した。7月の末だ。そして8月上旬、総裁選出馬宣言となる文章を文藝春秋誌に寄稿していることが明らかになった。
▽出馬の意向示す高市早苗前総務相8月19日(時事)
時事819高市.jpeg

「私は、国の究極の使命は、『国民の皆様の生命と財産を守り抜くこと』『領土・領海・領空・資源を守り抜くこと』『国家の主権と名誉を守り抜くこと』だと考えている」

味も素っ気もない総裁選に俄然、興味が湧いてきた。護国系議員のエース格、本命の登場である。冷まし湯のような他の候補者と比較にならない。

改めて高市前総務相の経歴や政治信条を解説する必要性はないと思えるが、ごく最近、南蒙支援議連とは別に過去の議員活動で感銘を受けた事柄があった。教科書の「従軍慰安婦」記述に関する問題だ。
▽南モンゴル議連の設立で挨拶4月21日(産経)
産経4月21日自民党有志の「南モンゴルを支援する議員連盟」であいさつする会長の高市早苗元総務相.jpg

今年4月に日本維新の会・馬場伸幸幹事長が質問主意書を提出し、重要な政府答弁を引き出した。以前にも同様の議論があったように記憶し、調べると高市前総務相の質問主意書が見つかった。

「『従軍慰安婦』という呼称は『従軍看護婦』『従軍神職僧侶教師』『従軍記者』が担った公的な『従軍』の実質が無い」
参照:衆院HP平成9年11月21日『「慰安婦」問題の教科書掲載に関する再質問主意書』

24年も前のことだ。当時、2回生だった高市議員は、偏向教科書の是正を求める伝説的な議連で幹事長代理を務め、圧倒的に不利な状況で慰安婦捏造問題に切り込んでいた。歴戦の猛者である。
▽靖国参拝を欠かさない高市前総務相(産経file)
産経19年靖国参拝を欠かさない.jpg

因みに当時の政府答弁は「辞書にも従軍慰安婦って書いてある」という乱暴なものだった。辞書に掲載された背景が報道機関での濫用だから始末が悪い。捏造を生む反日の構造で、90年代は酷かった。

【高市vs下村の国士相打ちは困ります】

「安倍内閣のやり残し案件がいくつもある。しっかりと引き継いでいきたい」

高市前総務相は8月26日午後、自民党本部で記者団に応じ、正式に出馬を表明した。この日、9月17日告示・29日投開票のスケジュールが決定し、事実上の総裁レースに入った。
▽正式出馬を表明する高市前総務相8月26日(産経)
産経新聞記者団に対し総裁選出馬への意欲を語る高市早苗前総務相=26日午後.jpg

「政治生命を懸けて新しい選択肢を示す」

岸田文雄前政調会長も記者会見を開き、立候補する意向を明らかにした。大差で菅首相に敗れてから約1年、自ら率いる岸田派(宏池会)以外に支持を広げられるか、劣勢に大きな変化はない。
▽出馬表明会見の岸田前政調会長8月26日(時事)
時事8月26日正式表明する岸田前政調会長.jpg

「チャンスと可能性があればチャレンジしたい」

下村博文政調会長は先週、安倍前首相や麻生副総理を訪ね、出馬する意向を伝えていたが、正式表明には至っていない。菅政権を支える党三役であることから自重すべきとの反対意見もある模様だ。

一方で推薦人20人は既に確保しているという。所属する清和会(細田派)は、細田博之会長が8月上旬、菅首相の再選支持を明言している。この20人は何処から来たのか…
▽出馬に意欲示した下村政調会長8月19日(産経)
産経819出馬に意欲示した下村政調会長.jpg

下村政調会長は何年か前の取材で、普通に「ご皇室」と敬称を付けて語るような朝臣だ。歴史認識も素晴らしく、応援する大物議員の1人だが、今回ばかりは大所高所から優しく見守って頂きたい。

どうも推薦人が高市前総務相と重なるような気がしてならないのだ。前総務相も清和会メンバーだったが、派閥を離脱してから久しく、現在は基盤を持たず、一匹狼に近い。
▽報道陣に答える高市前総務相8月26日(時事)
時事826報道陣に答える高市前総務相.jpg

同志の集まりとしては4月に旗揚げした世界初の南蒙議連がある。設立総会の参加議員を見渡すと、衛藤晟一参院議員ら清和会の重鎮が目立つ。告示までに推薦人の積み上げが可能なのか、不安に駆られる。

要するに細田会長の明言とは裏腹に、安倍前首相と麻生副総理がどう動くかで総裁選の枠組み、ひいては勝敗までが決まる情勢だ。

【小此木ショックの本震と余震】

「安倍さんの本音は高市さんと岸田さん。高市さんの参戦で右より層からの盛り上がりを演出し、しかし落とし所はバランスの取れた岸田さんとすることで、衆院選に備えるつもりだろう」

海外通信社が伝える匿名コメントだ。安倍前首相に近い中堅幹部という触れ込みは信用に値しないが、割とツボを抑えているように感じる。高市前総務相の出馬で寝た子(筆者)が起きたのは確かである。

「自民党に対し、厳しい風が吹いている。都議選の結果もそうだった。私たちは謙虚に受け止めなければいけない」
▽苫小牧市で講演する安倍前首相7月11日(道新)
北海道新聞7月11日苫小牧で講演する安倍前首相.png

安倍前首相は7月の講演で、次期衆院選に対する強い危機感を滲ませた。表向きは再選支持だが、総選挙を睨んで「顔のすげ替え」を視野に入れていると考えられる。

そこに“小此木ショック”が追い討ちを掛けた。菅首相が支持した小此木八郎前国家公安委員長が横浜市長選で立民・代々木推薦の新人候補に敗れる。接戦の末の惜敗ならまだしも、惨敗だった。
▽支持者に頭下げる小此木候補8月22日(時事)
支持者に頭下げる小此木氏8月22日(時事).jpg

「菅首相のもとで衆院選は戦えない」

若手議員からは、そんな悲鳴が上がっているという。これも実在するか不明の匿名コメントだが、永田町力学とは無関係の地方首長選が党内の動揺を生んだことは確かだ。

菅首相のお膝元、小此木氏は長年の盟友であり、自身の国政デビューにも深く関係していた。市長選敗北で盟友は政界引退。半世紀を超えたハマの小此木ブランドは一瞬で消滅した。
▽新総裁誕生祝う小此木氏R2年9月(産経)
産経R2年9月新総裁祝う小此木前公安委員長.jpg

また市長選では争点のIR誘致が吹き飛び、感染症対策が命運を分けたとも囁かれる。投票行動に関しては精緻な分析が必要だが、陽性判定至上主義の報道が続く中、衆院選に大きな影響を与える恐れも高い。

ファイザー製ワクチンの獲得で菅政権は功績を上げた。しかし、それが支持率アップに全く繋がらなかったことは、メディアの偏向報道以前に、発信力の弱さに問題があるように思える。
▽聖火リレー集火式の菅首相8月20日(ロイター)
ロイター東京パラリンピックの聖火リレー集火式に出席した菅首相。8月20日、東京の迎賓館赤坂離宮で撮影.png

果たして安倍&麻生コンビは、その辺りをどう読み解くのか?

【新キングメーカーからの挑戦状】

9・29決戦の自民党総裁選は、いわゆるフルスペックだ。簡易型だった昨年とは異なり、衆参両院議長を除く国会議員票と党員・党友の計766票で争われる。

夏前には特例による総裁任期延長や無投票再選案も浮上していた。菅首相の“不戦勝”を狙っていたのは二階俊博だったが、緊急事態宣言で衆院選後の総裁選は不可能になった。
▽会見で再選支持強調する国賊8月24日(時事)
時事記者会見する自民党の二階俊博幹事長(中央)=24日.jpg

中共・精華大の二階教授が後手に回っている印象も覚える。総裁選の号砲が響く遥か以前から、キングメーカー同士による密かな争いは始まっていたのだ。

菅首相の後見人・二階と対抗する新たなキングメーカーは安倍・麻生連合である。志公会(麻生派)と清和会は両派合わせて150議員の一大勢力で、揺さぶりを掛けるには充分な実力を持つ。
▽平成30年9月の総裁選アキバ演説(産経)
産経H30年9月の総裁選アキバ演説.jpg

岸田前政調会長は、2週に1度の頻度で“安倍詣で”を続けているという。政策面でも安倍カラーに接近する他、いわゆる「3A」とも連携を密にしている。

「3A」とは安倍・麻生コンビに甘利明党税制調査会長を加えた3人だ。5月に設立された半導体戦略推進議連で会長・顧問に就任、超党派の日豪友好議連も同じ顔ぶれが揃う。
▽半導体戦略推進議連の初会合5月21日(共同)
共同半導体戦略推進議連の初会合で、あいさつする安倍前首相。右は麻生財務相、左は甘利会長=5月21日.png

この3人が「二階降ろし」の急先鋒とも見做される。自民総裁選は常に出所不明の噂話が新聞紙上でも飛び交うが、妄想に近い希望的観測を述べれば、事実であって欲しい。

また出馬見送りの公算が大きい河野太郎規制改革相が先週、安倍前首相の事務所を訪ねたことが発覚。総裁選に絡んだ動きとも勘繰られる。確かに、所属する志公会の出方は不鮮明だ。
▽官邸に入る河野規制改革相8月20日(産経)
産経官邸に入る河野規制改革相8月20日.jpg

「党の顔を変えるべきだ」

第2派閥の志公会では若手議員を中心に危機感が増し、河野太郎擁立の動きが具体化する可能性もある。ただし、自分の選挙当選を最終目標に総裁を選ぶような連中の悲鳴などは無視してもいい。

新キングメーカーの安倍・麻生コンビも同じだ。次期衆院選も来夏の参院選も通過点に過ぎない。問題は党総裁が国益に資する人物か否かである。その点で、二階の無力化は必須とも言える。
▽政府与党連絡会議に臨む麻生副総理7月(毎日)
スクリーンショット 2021-08-27 3.57.52.png

現職有利とされる総裁選だが、めでたく再選した場合でも菅首相は幹事長の交替に踏み切れない。ましてや事前に二階切り捨てを安倍・麻生コンビに確約することなど不可能だ。

今回は投票ギリギリまで波乱含みで推移するに違いない。永田町界隈の怪情報に踊らされるのも一興。史上かつてない玄人好みの激闘がスタートした。



最後まで読んで頂き有り難うございます
クリック1つが敵に浴びせる銃弾1発となります

banner1

参考記事:
□産経新聞8月26日『高市氏が総裁選出馬正式表明「同志に政策伝え、賛同お願いする」』
□産経新聞8月25日『高市早苗氏「総裁選に何が何でも立候補」月刊正論で』
□ニッポン放送8月17日『高市早苗前総務大臣が意欲を語る~ニューアベノミクスとも言える「サナエノミクス」が「日本経済強靭化計画」』
□日刊スポーツ(共同)8月19日『下村博文政調会長、総裁選に関し「チャンスと可能性があればチャレンジ」』
□ブルームバーグ8月26日『菅首相に岸田氏が対抗へ、派閥巡る駆け引きも活発化-自民総裁選』
□ロイター8月26日『アングル:崩れた菅首相の再選構想、岸田氏出馬で総裁選の行方不確実』https://jp.reuters.com/article/japan-politics-idJPKBN2FR0E3
□産経新聞8月26日『麻生派で首相続投に反発の声 河野氏去就も焦点』
□読売新聞7月17日『安倍と麻生に接近する岸田、二階にとって「保険」の石破…[政治の現場]決戦の足音<3>』
□共同通信6月18日『コロナ批判の中、秋に「五輪解散」へ 菅首相は「第2次政権」をつくることができるか』
□西日本新聞8月18日『9月解散、無投票で自民総裁再選…コロナ禍で崩れる首相のシナリオ』
□週刊ポスト8月17日『自民総裁選 高市・岸田氏出馬は安倍・麻生氏の思惑通りの展開か』
□ZAKZAK8月21日『次の自民党総裁にふさわしいのは誰? 高市前総務相が衝撃の「81%」 菅首相の11・9%を7倍近く引き離す 夕刊フジ・zakzak緊急アンケート』

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 9

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス

この記事へのコメント