ウイグル救済12年後の選択…ユニクロを追う対テロ部門

故郷に戻った在日ウイグル女性は帰らぬ人となった。ウルムチ大虐殺から12年、今もメディアは中共に寄り添う報道を止めない。そして仏の対テロ捜査機関はユニクロの人道犯罪を追う。
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六四天安門のタンクマンと並び立つ伝説のウイグル女性がいる。ウルムチ中心部に侵攻した装甲車と向き合い、たった1人で進路を止めたトゥルスン・ギュル(Tursun Gul)さんだ。
▽装甲車に歩み寄るギュルさん’09年7月7日(ロイター)
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松葉杖を曳きながら、物怖じすることなく躙り寄る勇敢な姿が鮮烈な印象を与えた。この時、ギュルさんは中共当局に不当拘束された夫の解放を訴えていたという。

この翌日に海外の報道機関が撮影した別のショットも存在する。アパートのような場所で直ちに拘禁される事態は免れた模様だ。しかし、その後ギュルさん健在の続報が届くことはなかった。
▽周囲には多くの海外メディアがいた’09年7月7日(AP通信)
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ウルムチ非常事態の情報を受け、各国の主要メディアが現地に入った。その中、幼な児を抱えた女性は、憔悴しきった表情で報道陣に夫のIDカードを差し出した。

「どこかに囚われています。探して下さい」
▽IDカードを見せて懇願する女性’09年7月7日(アルジャジーラ)
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傍らには息子と見られる少年もいた。女性は夫と再会を果たせたのか。少年は成人してウルムチに暮らしているのだろうか…あの悲劇から12年の歳月が流れた。

「過去10年以上、世界中のウイグル人は7月5日、チャイナ政府によるウルムチ大虐殺で犠牲となった同胞を追悼しています」

世界ウイグル会議のドルクン・エイサ議長は、そう語る。欧米に先駆けて大規模抗議が開かれた我が国でも7月4日、義者者を追悼するデモ行進が都内で行われた。



「私達ウイグル人にとって、この日の事件は民族の運命の境目となった言っても過言ではありません」

支援活動を長年率いる日本ウイグル協会イリハム・マハムティ前会長の言葉が胸に響く。多くの有志が参列した今年の追悼デモでは、見慣れないウイグル女性の写真をあしらったプラカードが目を引いた。
▽新宿で行われた12周年追悼行進7月4日(Uyghur info)
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弾圧が待ち構える故郷に我が国から向かい、そして命を失ったミフライ・エルキン(Mihriay Erkin)さんだ。

【「自宅で病死」証言を遺族に強要】

「もし私が命を落としたら、シャクヤクの花束が私の墓を飾るでしょう」

故郷に向かう飛行機に搭乗する直前、ミフライさんは羽田空港の出発ラウンジから友人にメールを送った。中共当局に拘束され、過酷な立場に置かれることを覚悟した文面だった。
▽日本留学中のミフライさん(Bitter Winter)
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ミフライさんは’14年に来日し、2年後に東大大学院の修士課程を終えた。そして’18年からは、山中伸弥教授のノーベル賞受賞で知られる奈良先端科学技術大学院大に籍を移した。

バイオ研究者として順風満帆な人生を歩んでいるように見えた。しかし、東トルキスタンに暮らす父親と叔母が’17年に相次いで拘束され、翌年には別の親族が強制収容所に送られたことが判明する。
▽ミフライさん(左)と家族(Bitter Winter)
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「中共の公安は彼女の母親を使って、直ぐに帰郷するよう命じていました。私は帰ってはいけないと繰り返し忠告したのですが…」

ミフライさんの叔父でノルウェーに亡命したアブドゥエリ・アユプ(Abduweli Ayup)氏は後悔の念を滲ませた。同氏は自ら拘留経験を持つ著名なウイグル言語学者だ。

ミフライさんとは’19年6月の帰郷直後から連絡が取れなくなった。その後、現地の関係者から寄せられた情報で、カシュガル近郊のヤンブラク(Yanbulaq)強制収容所に監禁されたことが分かった。
▽肖像と花束持つ叔父のアユプ氏(Twitter)
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「姪のミフライがどんな拷問を受けたのか、どんな屈辱を受けたのか。私は誰ひとり救うことが叶わなかった」(6月3日付けBitter Winter)

強制収容所送りから10ヵ月後の昨年末、RFAがミフライさんに関する悪い報せを掴む。ミフライさんが親族の元に無言の帰宅をした…そして最近になって不審な死のアウトラインが浮かび上がってきた。

死因は不明だが、RFAはヤンブラク強制収容所で急死したことから激しい尋問の結果だった可能性を指摘。また公安は親族に「自宅にて病死」と証言するよう強要し、口外した場合は逮捕すると脅した。

参照:RFA5月25日『Niece of Prominent Uyghur Scholar Confirmed to Have Died in Xinjiang Internment Camp』
▽板橋区で食事するミフライさん’16年(ZAKZAK)
板橋区で食事するミフライさん’16年ZAKZAK.jpg

「チャイナ政府の収容政策がなければ、彼女は普通に暮らしていたはず。その普通が壊されてしまった」

ミフライさんと親交のあった日ウ協会のアフメット・レテプ副会長は、そう嘆く。我が国で健やかに過ごしていた女性が帰郷後2年を待たず、命を奪われた。私たち日本人にとっても辛い現実だ。



ミフライさん急逝のショックは世界に広がっている。ポートレートと花束を携えたメモリアルがSNSで広まった他、7月1日にはVOAが詳しく報道し、国際的なニュースとなった。

7月1日。暗黒に満ちたCCP結党100周年に合わせた痛烈なメッセージとも受け取れる。

【ユニクロの無知・無関心が暴かれる】

「その他多くの企業もウイグル人の人権蹂躙に加担した責任があるが、この4社の関与は明らかだった」

パリに拠点を置く消費者団体の幹部は、そう指摘した。ユニクロやZaraなどウイグル人の奴隷労働に関連したアパレル大手の捜査が遂に始まった。容疑は「人道に対する罪隠匿」の疑いである。
▽海外通信社の写真も不祥事企業風に変化(ロイター)
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経済活動の被害者を支援する仏NGO「シェルパ」や欧州ウイグル学会が4月に告発したものだ。検察が受理するか否か注目されていたが、7月1日に捜査開始が公表された。これもメッセージ性が強い。

本邦メディアの殆どは、捜査機関について「検察当局」「仏司法当局」と表記する。だが仏ル・モンド紙によれば、捜査に着手したのは「Le Parquet national antiterroriste」だ。
▽パリ警察庁襲撃事件直後の厳戒態勢’19年10月(ロイター)
ロイター19年10月3日パリで3日、警視庁前を警備する警察官2.png

一昨年のパリ警察襲撃事件でも過激派組織を追ったPNAT(仏国家テロ対策検察庁)である。PNATは、国境を越えて犯罪を起訴する普遍的な管轄権・独別な捜査権限を持つという。

「私達の日常の中にある多くのブランドが、奴隷となったウイグル人が製造した商品を売り、利益を上げているのです」

摘発を推進した「シェルパ」は7月2日付けの声明で、断定的に批判した。またウイグル支援で知られる仏議員は「歴史的な捜査」と語り、同様の告発が他の欧州諸国に広がる可能性も指摘する。
▽パリ市内のユニクロ店舗(Alterna)
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多国籍企業が奴隷労働で刑事責任を問われるケースは世界初と言う。本邦メディアの“ベタ記事扱い”とは温度差があり、事態は深刻なのでないか。その中でユニクロが下手を打ったことが明らかになった。

「製品の生産を委託する縫製工場で新疆ウイグル自治区に立地するものはなく、同地区で生産されている製品はありません」
参照:ファーストリテイリングHP’20年8月『新疆ウイグル自治区に関連する報道等について』

ユニクロは昨年8月のプレスリリースで、そう言い訳した。だがAFP通信によると、多くのウイグル人が強制移送され安徽省の工場からコットンを調達したことが犯罪の構成要素になっているという。
▽安徽省送りが決まったウイグル少女(BBC)
安徽省送りが決まったウイグル少女(BBC).png

ナイキは、ウイグル人は大量移送された山東省の工場が汚点となった。更にASPI(豪戦略政策研究所)報告書は、アディダスなど複数のブランドが下請けにする安徽省「華孚色紡」の強制労働を暴いた。

現代奴隷の代名詞となった“新疆綿”だが、問題は東トルキスタン産品に限らないのだ。ウイグル人の強制労働が支那各地に遍在するという指摘は、昨年3月に公表された同報告書の核心部分だった。
▽’17〜19年だけで8万人以上を移送(ASPI)
17〜19年で8万人以上を移送APSI図.jpg

一読すれば誰しも理解できるだろう。ユニクロ親会社の法務部はASPI報告書に目を通すことすら怠っていた…そんな企業の「人権尊重規定」など紙屑同然である。

【「暴動」と決めつけた罪の深さ】

ウルムチ大虐殺12周年を祈念し、犠牲者を追悼する活動は欧米各国でも開かれた。ロンドンの支那大使館前の抗議にはチベット人も参加。南蒙や香港、台湾国のシンボルも掲げられた。
▽ロンドン支那大使館前の抗議活動7月7日(ANI)
ロンドン支那大使館前の抗議活動77(ani).jpeg

カナダでは7月5日から抗議のウォーキング・ラリーが始まった。約2週間をかけてトロントからオタワに向かうという。加在住の亡命ウイグル人は行進の目的について、こう語る。

「第1はカナダ政府によるジェノサイド認定で、2番目は北京冬季五輪のボイコットです」
▽ラリーの準備をするウイグル人ら7月5日(ANI)
ANIカナダ行進準備するウイグル人ら.jpeg

カナダ下院議会は2月にジェノサイドを非難する動議を採択した。一方で外相が公然と棄権するなど親中トルドー政権は弱腰だ。それでも国会非難決議すら通らない我が国よりは上等だろう。

今も燻る対中非難決議の霧散だが、ブレーキ役になった親中売国議員・政党が決して野党やメディアから批判されない現実を重視すべきだ。我が国にはウイグル問題の厄介な“防波堤”がある。



今に至る東トルキスタン民族浄化政策の発端となった’09年7月のウルムチ大虐殺事件。産経を含む全ての既存メディアは、これを「暴動」と呼ぶ。紹介するのも忌々しい古い記事が現存する。

「対立を深める現地の漢族とウイグル族のどちらが被害者なのか(略)暴動の実態や背景については依然として謎が多い」(時事通信)
参照:時事通信’09年7月『特集 新疆ウイグル自治区暴動〜どちらが被害者?』

発端は同年6月26日未明に広東省韶関市の玩具工場でウイグル人2人が漢族のグループにリンチされ、死亡した事件だった。騒乱の一部を撮影した映像がネットに流れ、ウイグル社会は激しく動揺した。
▽再発防止訴えるウルムチ市民’09年7月5日(UAA)
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7月5日、ウルムチの市民が集まり、地元政府に対して犯人の逮捕、事件の再発防止を求めた。平和的な抗議とも少し違う。これは庶民による陳情のスタイルで、支那では一般的な光景である。

CCPの地方支部や公安が、陳情を受け付けて解決するケースもある。しかし、ウルムチの場合は水平射撃による皆殺しだった。続いて6・26事件後、郊外に展開していた武装警察部隊が市内に侵攻する。
▽ウルムチ大虐殺の数少ない現場写真(file)
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玩具工場の惨劇から情報を追っていた者にとって事態は明白だった。記者も同様のはずだが、報道各社は6・26事件を無視し、起点を7月5日に置いた。作為的な時系列の組み替え、歪曲である。

この悪質な「ボタンの掛け違い」が長く尾を引いている。ウルムチ大虐殺を「暴動」に書き換えたメディアは、ウイグル弾圧の系譜を上手く説明できない。被害者・加害者の設定で破綻するのだ。
▽漢族による党公認ウイグル人狩り’09年7月7日(AFP)
AFP09年77漢族によるCCP認定ウイグル人狩り.png

12年前の夏、多くのメディアは選択を誤り、事実を捻じ曲げた。今からでは手の施しようなく、中共が提供するフェイク・ストーリーに添って「暴動」と呼称し続けるしかない。

事実を握り潰した罪が、重くのし掛かる。そしてジェノサイドが加速する中、CCPのプロパガンダ拡散に加担するのか否か、再び選択を迫られている。




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参照:
□Sherpa HP7月2日『Complaint against 4 textile giants for forced labour of Uyghurs: French justice opens an investigation for concealment of crimes against humanity』
□ASPI(豪戦略政策研究所)’20年3月1日『Uyghurs for sale』

参考記事:
□大紀元7月4日『在日ウイグル人女性研究者、新疆の収容所で死亡 「中国警察の誘いで帰国」』
□VOA7月1日『China Accused in Death of Uyghur Researcher Returning From Japan』
□Bitter Winter6月3日『Mihray Erkin: The Senseless Killing of a Uyghur Young Girl』
□ZAKZAK6月13日『「お父さんを捜したい」と帰国、ウイグル女性の安否不明 精神的不調も母国語を在日児童に教え 拘束後に死亡の情報も』
□RFA’19年12月5日『Brother of Uyghur Linguist Confirmed Held in Xinjiang Internment Camp For Years』
□AFP7月2日『仏当局、ユニクロなどを捜査 ウイグル人強制労働問題で』
□産経新聞7月2日『ファストリ「捜査に協力」ウイグル人権問題でコメント、仏のユニクロ捜査で』
□Le Monde7月1日『Enquête en France contre quatre géants du textile, soupçonnés d’avoir profité du travail forcé des Ouïgours』
□LA times7月5日『France probes claims that Uniqlo, Skechers, Zara used forced Uyghur labor』
□Forbes7月6日『French Prosecutors To Investigate Retailers’ Involvement In Crimes Against Humanity In Xinjiang』
□Alterna7月6日『新疆ウイグル問題:仏検察はなぜユニクロやZARAを捜査したのか』
□BBC3月2日『’If the others go I'll go': Inside China's scheme to transfer Uighurs into work』
□ANI7月4日『Protest march held in Tokyo remembering July 5, 2009 violence by China in Urumqi』
□ANI7月5日『『Canada: Uyghur Muslims launch two-week long walking protest against China』
□ANI7月7日『Protest outside Chinese embassy in London on Urumqi massacre's 12th anniversary』

関連エントリ:
平成21(’09)年7月8日『官製暴徒がウルムチを蹂躙…ウイグル人抹殺計画の実景』

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金 国鎮
2021年07月15日 13:47
先日、トルコのエルドアンと中国の習近平ガ話し合いをして
共同声明を発表した。
エルドアンは中国にトルコ系民族に中国市民としての平等な権利を
要求したが中国の内政を同時に尊重するとも言った。

国際社会から初めて習近平に対して具体的に圧力が加わった。
これは中央アジアのトルコ系国家・民族も同じ思いである。
ロシアのプーチンもいつまでも中央アジアの民族を無視できない。
トルコは近年軍事技術の拡大強化が世界でも最も目覚ましい国だ。
何時何が起こってもおかしくない事態だ。

習近平は果たして事態を理解しているだろうか?
理解していない。
習近平が果たして中国共産党を継承しているかどうかにも
疑問を持つ。
習近平は中央アジアで軍事作戦を展開できるだろうか?
エルドアンとプーチンはできる。
習近平が早急にエルドアンに対応しなければ中国は深刻な事態を
招くだろう。