21世紀のABDA艦隊東方へ…暴支膺懲で蘇る日英同盟

多国籍の僚艦を従えた英空母打撃群が東方に針路を取った。終わりの時が近づく欧洲と中共の蜜月。100年ぶりに蘇る日英同盟もまた起因は支那独裁政権の横暴だった。
英ポーツマスの海軍基地を出航する空母「クイーン・エリザベス」3.jpg

一部の艦艇は弾薬が底を突き掛ける程の激しい砲撃戦だった。昭和17年2月27日からインドネシア・ジャワ島沿岸で始まった我が海軍と連合国艦隊との戦闘。スラバヤ沖海戦だ。
▽列強艦隊を駆逐したスラバヤ沖海戦(file)
Exeter_sinking.jpg

練り上げられた作戦行動ではなく、偶発的とも言える海戦だった。空の神兵で知られるパレンバン落下傘部隊の大勝利から約2週間。蘭印に展開する敵国部隊の多くは残存していた。

その中、ジャワ島攻略部隊を移送する我が軍が連合国の艦隊を発見。輸送船団を守る為、先手必勝の果敢な攻撃に出た。会敵から1時間で我が軍が射出した砲弾は実に1,500発を超えた。
▽砲雷撃を受ける英駆逐艦「エクセター」(wiki)
砲雷撃を受けるエクセタwiki.jpg

敵勢力は、米英蘭に加えオーストラリアの4ヵ国からなる艦隊だった。オランダ王立海軍のドールマン司令官率いるABDA艦隊。3昼夜に渡る戦闘で我が軍は著しい戦果を挙げ、壊滅に追いやる。

遠方射撃による消耗や魚雷の精度不足などが露呈し、大東亜戦争中は課題の残る水雷戦と捉える向きが多かった。評価が大きく変わったのは、戦後しばらく経ってからのことである。

「豪華客船でクルージングしているようだった」
▽50年後に訪日したフォール卿(BBC)
BBC来日したフォール卿.png

英駆逐艦「エンカウンター」に乗組み、スラバヤ沖海戦を戦ったサムエル・フォール卿は平成20年に来日した際、そう語った。同艦は海戦3日目に我が軍の猛攻を受けて撃沈された。

この時に生まれたのが、駆逐艦「雷(いかづち)」による英海軍将兵422人の救助秘話である。撃沈から20時間。単独哨戒中だった「雷」の艦長の工藤俊作中佐は漂流者を発見するや、こう号令した。

「総員、敵溺者救助用意」
▽「雷」艦長の工藤俊作海軍中佐(wiki)
工藤 俊作艦長.jpg

延命し、後に外交官となったフォール卿は56年後、英紙で秘話を明かし、反響を呼ぶ。工藤艦長の行動は「武士道」と讃えられ、欧米海軍関係者らの多くが知る所となった。
▽乗員が救助された蘭巡洋艦「ジャワ」(file)
蘭巡洋艦「ジャワ」.png

そして工藤艦長は決して特異な人物ではなく、他艦が蘭軽巡洋艦の乗員を救助した事例もあった。ABDA艦隊との激突は、我が国と欧米との物語を未来へ紡ぐ海戦だった。

【21世紀のABDA艦隊と日英同盟】

夕闇の中に巨大なシルエットが浮かんだ。英海軍史上最大の空母「クイーン・エリザベス」が5月22日、インド太平洋海域へ向け、南部ポーツマス港を出航した。
▽港を発つ英空母「クイーン・エリザベス」5月22日(AP)
BBC522エリザ出港.jpg

「クイーン・エリザベス」は7ヵ月を掛けて地中海やインド洋、そして南シナ海を巡航。今年後半には我が国に寄港し、海上自衛隊との共同訓練を実施する。

5月21日にはジョンソン首相が視察して乗員を激励。出航当日にはエリザベス女王が自らの名を冠した同艦を訪れ、艦長らと対面した。御召艦的な存在が今もあることは少し羨ましい。
▽空母を訪問したエリザベス女王5月22日(AP)
AP通信522女王視察.jpeg

「クイーン・エリザベス」の日本寄港は昨年12月、我が国の政府関係者がリークする形で判明する。その後、2月に開かれた日英2プラス2会合で派遣が確認された。

「英国の能力を示し、さらに防衛協力を深めたい」

ウォレス国防相は空母派遣について、そう語った。この2プラス2では海洋安全保障協力の深化に関する署名が交わされた他、共同コミュニケで日英陸軍・空軍の連携強化も謳われた。
▽テレビ会議形式の日英2プラス2会合2月3日(代表)
代表23日英2プラス2.png

参照:外務省HP2月3日『日英外務・防衛閣僚会合 共同声明(PDF)』

1923年に破綻した日英同盟。それがマライ、蘭印での激突と長い冷戦期を経て、100年ぶりに復活したという表現は決して大袈裟ではないだろう。

そして、東方に向かったクイーン・エリザベス空母打撃群には、米ミサイル駆逐艦「ザ・サリヴァンズ」にオランダ海軍のフリゲート「Evertsen」を加えた9隻編成になることが判った。
▽蘭海軍フリゲート「Evertsen」(file)
HNLMS Evertsen.jpg

事実上のNATO艦隊であるが、南シナ海方面では豪州海軍との訓練も予想される。ABDA艦隊の再来だ。不思議な歴史の巡り合わせだが、今度は我が軍が頼もしい友軍となる。

スラバヤ沖で壊滅した旧ABDA艦隊は、司令官が英語を話せなかったなど連携不足が露呈した。しかし、79年後の新装版には運用面での不安要素はない。
▽クイーン・エリザベス空母打撃群(英国防省)
クイーンエリザベス空母打撃群(英国防省file).jpg

次こそ、東亜の平和を掻き乱す真の敵と向き合う時だ。

【狙われる南太平洋にフランス厳重警戒】

激しい雨が降り頻る霧島演習場に精鋭部隊が展開した。自動小銃を手に突撃するのは、陸自の離島奪還部隊・水陸機動団と米海兵隊、そしてフランス陸軍の兵士だ。
▽雷雨の中行われたヘリボーン5月15日(ロイター)
ロイター515霧島演習場で日米仏共同訓練中、輸送ヘリ「チヌーク」近くを歩くフランス陸軍の兵士ら.png

5月11日から日米仏豪4ヵ国共同訓練ARC21が始まった。鹿児島県と宮崎県にまがたる霧島演習場は、銀行やTV局を模した対テロ用の常設施設があり、そこへの突入・制圧訓練などが行われた。

これまでも日仏の共同訓練は実施されているが、日本国内で陸上部隊が大掛かりな訓練を行うのは今回は初めてだ。霧島演習場には、中山防衛副大臣や豪仏の駐日大使が駆け付けた。
▽演習視察する中山副大臣と豪仏大使5月15日(ロイター)
ロイター515日米仏共同訓練で、写真撮影に応じる中山泰秀防衛副大臣(左)、フィリップ・セトン駐日フランス大使(中央)、ジャン・アダムズ駐日オーストラリア大使 (右).png

ARC21は島嶼防衛・奪還を想定したもので、東シナ海では仏海軍の練習艦隊ジャンヌ・ダルクなどが参加した訓練が続けられた。陣形の中心は護衛艦「いせ」と仏強襲揚陸艦「トネール」だ。
▽共同訓練で陣形整える日米豪仏艦艇5月14日(海自提供)
日米仏豪の共同訓練で、編隊を組んで航行する艦艇=14日、東シナ海(海上自衛隊提供).jpg

「ARC21を通じて『自由で開かれたインド太平洋』のビジョンを共有する日米豪仏4カ国の協力関係を一層深化させると共に、島嶼防衛に係る自衛隊の戦術技量や4カ国との連携を更に強化したい」

5月11日の定例会見で岸防衛相は、そう意義を語った。仏陸軍部隊の国内訓練は歴史上初だが、仏海軍は北朝鮮船の瀬取り監視任務に積極的に取り組んでいる。
▽霧島演習場で訓練する日仏の精鋭5月15日(ロイター)
ロイター515霧島演習場で日米仏共同訓練中陸自とフランス陸軍の兵士ら.png

仏マクロン政権は’18年6月に「インド太平洋の安全保障戦略」を発表した。これは安倍前首相によるTICADのFOIP(自由で開かれたインド太平洋戦略)提唱から2年後で、トランプ政権に次ぐ反応の早さだった。

そこには特有の事情もあった。仏はインド太平洋地域にニューカレドニアや仏領ポリネシアなど多くの海外領土を持つ。コモンスウェル諸国を抱える英国とも共通する。



しかし、マクロンがインド太平洋戦略を打ち出した当時、EU各国の反応は鈍かった。遥か東洋の無関係な事柄に過ぎなかったのだ。状況が変わったのは、つい最近のことである。

【トランプ嫌いEUの変節】

「アジアは21世紀の政治・経済の主要な舞台のひとつだ。欧州が実行力を維持したいのなら、単に経済面からこの地域を見るだけでは最早充分ではない」

独・マース外相は4月19日、そう述べた。この日に行われたEU外相会議で加盟各国は、インド太平洋への関与を強める新戦略に合意。発表文書には、こう記されていた。

「この地域では貿易や安全保障上の緊張が高まり、地政学的な競争が激化しているほか、人権も脅かされている」
▽ほぼ全ての民主派幹部が拘禁された香港3月(立場新聞)
立場新聞3月釈放要求.jpg

名指しこそ避けているが、中共を念頭に置いたものであることは明らかだ。ウイグル弾圧を巡って3月にEUが打ち出した30年ぶりの対中制裁と呼応している。

欧州版のリバランス政策だ。中共のWTO参加で本格化した経済優先の蜜月関係が破局を迎えつつある。安倍・トランプのコンビが国際政治の中枢から去った後、やや皮肉な展開とも言える。
▽遺産が膨れ上がる安倍&トランプ’19年5月(AP)
AP通信19年5月トランプと安倍前首相.jpg

「インド太平洋地域での戦略強化は、民主主義と法の支配・人権・国際法の促進に基づく」

EU合意文書は、我が国や豪州など共通の理念を抱く国との連携も再確認。脱シナ&日本回帰の印象を併せ持つ。軍事侵攻に直面する我が国や台湾国にとっては好ましい状況だ。

一方で、習近平は包囲網をどう受け止めているのか…指導部内での乱れは表面化せず、突き上げの兆候もない。内部変革は期待できず、強硬路線の維持しか選択肢はないだろう。
▽最近南シナ海で行われた中共軍の大規模演習(央視軍事)
中共軍が南シナ海で軍事演習(央視軍事).png

事態は、米中決戦や新冷戦が囁かれたトランプ時代から更に変わった。クアッド4ヵ国+英・EU対CCPの構図だ。清朝が8ヵ国に宣戦布告した義和団事件の頃と似通っている。

振り返れば、日英同盟の締結は義和団事件が切っ掛けのひとつでもあった。紫禁城周辺の攻防戦で目覚まし活躍を遂げ、軍紀も厳格な我が軍を英国は高く評価し、互いに手を結んだのだ。
▽空母を視察するジョンソン首相5月21日(ロイター)
ロイター521クイーン・エリザベスを視察した英ジョンソン首2.jpg

約80年ぶりのABDA艦隊再来にも、100年ぶりの日英同盟復活劇にも心が躍る。だが当時のような勇姿を見せつけることが出来るのか、不安もよぎる。

包囲網の強化を歓迎し、中共を牽制するだけでは意味がない。アジアの盟主としてリーダーシップを発揮する強い決意と行動力が不可欠だ。



最後まで読んで頂き有り難うございます
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参照:
□防衛省HP5月11日『防衛大臣記者会見』

参考記事:
□読売新聞5月23日『英空母「クイーン・エリザベス」、インド太平洋に向け出発…今年後半に海自と共同訓練』
□ニューズウィーク5月26日『拡大する中国包囲網…英仏も「中国は対抗すべき存在」との認識に』
□時事通信5月24日『英空母打撃群が出航 日本にも寄港、インド太平洋関与強化』
□産経新聞4月13日『インド太平洋 オランダもフリゲート艦派遣 英仏独に続き』
□産経新聞5月11日『仏陸軍、初めて日本で陸上演習 陸自、米海兵隊と共同訓練開始 中国の海洋進出を警戒』
□南日本新聞(共同)5月16日『離島防衛能力を内外に誇示 中国けん制 日米仏共同訓練始まる 霧島演習場』
□産経新聞5月14日『日米仏豪、東シナ海航行 画像公開で結束アピール』
□ZAKZAK5月11日『絶望想起…習主席に異変!? 日米英蘭で連合艦隊、インドや豪州も参加へ「対中包囲網」拡大 バイデン米政権の“本気度”に不安も』
□ニューズウィーク5月5日『欧州のインド太平洋傾斜・対中強硬姿勢に、日本は期待してよいのか』
□AFP4月20日『EU、インド太平洋地域との関係強化新戦略に合意』
□週刊ポスト’18年8月12日『英軍将兵422名の命を救った帝国海軍中佐 いまも英米で称賛』
□BBCアーカイブ’08年12月18日『Officer tells of extraordinary rescue』

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