米大統領の居ない世界…眠れるバイデンが導く危機

台本読み上げ形式の優しい記者会見も失敗だった。北朝鮮の恫喝と中露の挑発にもバイデンは沈黙。均衡を失った“米大統領の居ない世界”で有事のリスクは一気に高まる。
代表325バイデン記者会見1.jpg

「カメラはバイデン大統領が記者会見で使った複数のチートシートを捕らえていた」(3月25日付けNYポスト紙)

就任65日目にして漸く開催された初の公式記者会見。繰り返し下を向くバイデンの手元には、記者の顔写真と所属名を記したメモがあり、質問順と見られる数字が描かれていた。

チートシートとは、和製英語にするとカンニング・ペーパー。虎の巻とも訳されるが、それでは行儀が良すぎるだろう。滑稽なヤラセ会見の進行台本とも言える。
▽カンペに目を落とすバイデン3月25日(EPA)
EPAカンニング記者顔.jpg

会見に招かれた記者は、感染症対策を表の理由にして限定30人。質問した記者はCBSなど“優しいお友達”ばかり10人で、FOXニュースのピーター・ドゥーシー記者らは当然のように無視された。

「記者団の質問に落ち着いて回答し、攻撃的な記者会見を行ったトランプ前大統領とは一線を画した」
▽お友達記者を優待席に配置3月25日(ロイター)
ロイター325バイデン記者会見1.JPG

ロイター通信も異様に優しい。が、嘘はいけない。攻撃的だったのはトランプ前大統領ではなく、記者団だ。特にCNNは陰湿かつ執拗で、神経を逆撫ですることに心血を注いでいた。

「ソフトボールを投げ合うような、私の時とは別の世界だった。もし、会見場にジム・アコスタが居たなら、穏やかな質問をしただろうね」
▽会見で噛み付くアコスタ:左端’18年11月(BBC)
BBC18年11月ジム・アコスタ追放.jpg

トランプ大統領は、バイデンの初会見をそう評した。ジム・アコスタはCNNの狂犬番記者で、荒らし行為の果てにホワイトハウス出禁となった。宿敵にも質問を許していたトランプ時代の自由が懐かしい。

そして、カメラは別のカンニング・ペーパーを撮影していた。インフラ投資に関する質問に対応する回答メモだ。「ranks 13th globally」の文字が読める。
▽手元には回答文が書かれたカード3月25日(EPA)
EPAインフラメモ.png

ところが、バイデンは最初「世界85位」と言い間違える。カンペが役立って続く回答では突如「13位」に躍進するが、3項目の表題をそのまま読み上げる失態を犯す。

ホワイトハウスの会見録には「Bridges:」という謎の呟きが微調整なく記されている。南シナ海と共に飛び出した“北シナ海”発言も訂正なしで記録され、少しほっこりした。

【会見“直撃弾”も暖簾に腕押し】

「発射されたミサイルはUN安保理決議1718号違反だ。同盟国や友好国と協議し、北朝鮮が事態をエスカレートするなら相応の対応を講じる」

バイデンは会見で、決議の号数まで明言したという。4桁の数字を言えたことに感心したのだが、それも束の間、カンペを棒読みしただけだった。しかも北への言及は1分前後に過ぎなかった。
▽北が発射した新型弾道ミサイル3月26日公開(KCNA)
国防科学院が25日に実施した「新型戦術誘導弾」の試射の写真=2021年3月26日公開.png

一方、北朝鮮がバイデン初会見を狙い撃ちしたことには驚いた。北朝鮮軍は3月25日朝、日本海に向けて弾道ミサイル2基を相次いで発射。いずれも約450㎞飛翔し、EEZ外に落下した。

「新型の弾道ミサイルで、1月の軍事パレードに登場した5軸のTEL(移動式発射台)と同系統のものから発射されたと見られる」

岸防衛相は3月26日、新型だったとの見方を示した。低空を飛行して変則的な軌道を描くイスカンデルの改良版である可能性が高く、従来型より迎撃が難しい。
▽記者団に答える岸防衛相3月26日(毎日)
毎日記者団に答える岸防衛相3月26日.jpg

「バイデン政権が対北朝鮮政策の見直しを進める中、米国を過度に刺激しない範囲で自らの存在を意識させようという意図があるのではないか」

香田洋二元海将は、そう指摘する。他の朝鮮問題専門家も概ね同様の見解を示す。米国にスルーされた3月21日の巡航ミサイル発射に続き、揺さぶりを掛けたとの見方だ。

2月4日に行われた“外交演説”で、バイデンは北朝鮮に関して一言も触れなかった。南鮮政府は、初の記者会見で新たな対北政策の詳細が発表されると見通していたが、単なる妄想だった。
▽発射時の視察に3代目の姿はなかった(KCNA)
KCNA北朝鮮の国営メディアは発射実験の成功に拍手を送る軍人の画像を公開した.png

金正恩との直談判に的を絞ったトランプ外交の真似は出来ない。バイデンはオバマ政権の対北無関心政策を踏襲するものと見られるが、水面下で不穏な動きを見せていることが分かった。

【北工作員はトランプからの贈り物】

米政府高官によれば新政権は2月中旬から、北のUN大使が居るニューヨークなど複数のチャンネル接触を試みているという。主な交渉テーマはCVID(完全かつ不可逆な核廃棄)とハードルが高い。
▽団地の着工式に現れた公称3代目3月23日(産経)
産経3月23日団地の着工式に登場.jpg

いきなり無理難題である。高尚な理想を掲げながら、任期中に3度の核実験を北に許したのが、オバマ政権だった。ジョー・バイデンも朝鮮半島情勢には興味がない。餌なしの釣り針ではボウズ確実だ。

その中、米朝関係の今後を左右する出来事が3月半ばに起きた。マレーシアで拘束されていた北朝鮮工作員ムン・チョルミョンが3月17日、米国に引き渡されたのだ。
▽出廷したムン・チョルミョン’19年(AP)
出廷するムン工作員19年AP通信.jpg

直接の容疑は米金融システムに介入した対北制裁違反で、その5日後には早くも裁判が始まった。出廷に合わせて米司法省は声明を発表し、こう指摘した。

「ムンは米国に引き渡された初めての諜報員だ」

諜報員と断定したのである。ムンについて報道では「実業家」などと呼称されたが、北朝鮮軍の工作機関・偵察総局と連携するエージェントで、長年に渡ってマレーシアを拠点に活動していた。
▽強力弁護団が法廷闘争を繰り広げた’19年(地元紙)
出廷するムン工作員19年地元紙.jpeg

ムン工作員は、米情報当局がマークし、トランプ政権下の’19年5月に逮捕された。マレーシアでの裁判で容疑を全面否認し、上告を繰り返した結果、米国への引き渡しが大幅に遅れた。

引き渡しに激怒した北朝鮮は3月19日、マレーシアとの国交断絶を発表した。北の意思による断交は初のケースで、ムン工作員が北中枢に重宝される大物であることが浮き彫りになった。
▽KLの北大使館は閉鎖3月22日(AP)
AP通信322閉鎖の北大使館800.jpeg

即ち、金正男暗殺事件の重要秘密を握っている可能性もあるのだ。米新政権に転がり込んできた貴重な“捕虜”。バイデンは、それがトランプ大統領の置き土産であることを忘れてはならない。

【米大統領なき世界の不安定指数】

「ウイグルに対して、また香港について声を上げることを控えた米大統領はいない。それが米国だ」

対中外交最大の焦点となっているウイグル問題への言及は、僅かだった。台本に書かれた台詞はスタイリッシュだが、現職大統領の見解は明示されず、他人事のような印象を受ける。

初の記者会見は内政に比重が置かれた。事前にバイデンの不得意分野を避ける合意があったのだろうが、不法移民急増は自業自得の失政で、長々と喋ったフィリバスター対策は議会運営の問題だ。
▽米国境に殺到する入国希望者3月(AFP)
AFP3月メキシコ国境の人々.png

史上最高の得票数、全米に大旋風を巻き起こした新大統領の渾身会見とは思えない。取り巻きの記者も、優しさこそあれ、有能な味方ではない。その象徴が「プーチン殺人者」発言だった。

舌禍が起きたのは3月17日、米ABCニュースだった。ロシアの米大統領選介入を結論付けた報告書に絡み、インタビュアーは「プーチンは殺人者だと思うか」と問いかけた。

「イエス。そう思う」
▽質問に答えるバイデン3月17日(ABC)
インタビュー答えるバイデンABC.jpg

不用意な質問に対し、バイデンは不用意に答えた。ロシア側は直ちに反応し、駐米大使を召還すると共に、プーチンは公開オンライン会談の即時実施を申し入れた。勿論、断られるのを承知だ。

「返答として私は彼に『ご健康を願う』と言う。これは皮肉でも冗談でもない」
▽生中継ガチ会談を呼び掛けるプーチン3月18日(ロイター)
ロイター生中継会談呼び掛けるプーチン3月18日.jpeg

プーチンはバイデンの判断能力に支障があることを強く示唆する言葉を送った。ロシアの情報網はバイデンの認知症進行度を的確に把握し、政策遂行が困難だと割り出しているのではないか。

選挙期間中に広まった重度の認知症説は不正確だった。だが、これまでに露出した映像を見るだけでも、バイデンの会話は年齢以上に衰え、最強の軍隊を率いるリーダーとしては明らかに不適格だ。
▽初の記者会見場全景3月25日(AP)
AP通信325バイデン記者会見1.jpg

「大統領のみが核兵器使用を命じる権利を持つが、それを1人に与えることはリスクを伴う」

2月下旬、民主党の下院議員31人が連名でバイデンから「核のフットボール」取り上げを訴える書簡を送った。意味不明のトランプ批判を混ぜ込んで体裁を整えているが、バイデンへの不安感は隠せない。
▽核のフットボール運ぶ軍事補佐官2月16日(ロイター)
ロイター216核のフットボール持つ軍事補佐官.png

優しいお友達メディアを含め、果たして誰がどこまで真実を知っているのか…大統領に権限が集中する米国の政治システムで、集団指導体制は有り得ない。老害叩きの笑い話で済む猶予期間は終わった。

20世紀以降初めて、諸国民は“米大統領の居ない世界”に足を踏み入れている。何人も体験したことのない未知の領域。中共がこの好機を逃すことは絶対にない。



最後まで読んで頂き有り難うございます
クリック1つが敵に浴びせる銃弾1発となります

banner1

参照:
□ホワイトハウスHP3月25日『Remarks by President Biden in Press Conference』
□米司法省HP3月22日『First North Korean National Brought to the United States to Stand Trial for Money Laundering Offenses』

参考記事:
□NYポスト3月26日『New photos show cheat sheets used by Biden during his first press conference』
□FOXニュース3月26日『Photos show Biden 'cheat sheets' during first formal press conference』
□日経新聞3月26日『バイデン米大統領の記者会見要旨』
□ロイター3月26日『バイデン米大統領、中国に主導的地位譲らず 再出馬に意欲』
□WeLoveTRUMP3月26日『President Trump Reacts To Biden’s Latest Press Conference』
□VOA2月26日『Democrats Want Biden to Relinquish Sole Authority for Nuclear Launches』
□アゴラ2月27日『民主党議員がバイデンに「核のボタン」の大統領専権放棄を求める』
□NHK3月25日『【詳細分析 北朝鮮の狙いは】約1年ぶりに弾道ミサイル発射』
□ロイター3月15日『米、北朝鮮と接触試み 現時点で反応得られず=高官』

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 14

なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた 驚いた
面白い
ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス

この記事へのコメント