武漢コウモリ洞窟の深淵…嵐を呼ぶ発生源“証拠発言”

「疑う余地なし」と国務長官は言った。武漢ウイルス発生源を特定する米の“証拠発言”に疑惑の研究員亡命説が交差する。世界がパンデミックの深淵を覗き込む日は近いのか。
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誰が呼んだかバットウーマン。漢字文化圏では「蝙蝠女郎」と渾名される。元祖コウモリ女と言えばパク・クネだが、檻の中に捨て置かれて久しく、時々思い出したりもしない。

「命を懸けて、新型コロナウイルスは実験室と無関係であることを保証します」

2月上旬、そんな書き込みを残して闇に消えた武漢ウイルス研究所の石正麗(シー・ジェンリ)に亡命説が持ち上がった。中共発パンデミックの核心を知り得る女性研究員だ。ただ事では済まない。
▽武漢BSL-4実験室で作業する石正麗'17年(AFP)
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一説によると家族と共に武漢から欧州に渡り、パリの米国大使館に駆け込んだという…詳細な経緯ではなく、ありがちな定番ストーリー。大元になった情報は何だったのか?

「武漢病毒研究所から上席研究員が先週、欧州に亡命した」

トランプ大統領の元上級顧問スティーブン・バノン氏のネット番組で飛び出した発言だ。放送は4月25日。語ったのは、2014年に米国に亡命した中共の元政商・郭文貴である。
▽Bannon's War Roomで語る郭文貴(YouTube)
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バノン元顧問は見識も分析も定評があるが、郭文貴は胡散臭さ満点だ。亡命当初は王岐山のスキャンダル暴露で渦中の人となったが、その後は弾切れ感が激しく、やたら流行りのテーマに食い付く。

そもそも都市封鎖された武漢から、どんなルートで欧州に逃げ延びたのか…初歩的な疑問に対しては、中共公安当局の大幹部が「脱出を手引きした」といった解説が補足される。
▽粛清された公安幹部の孫力軍(BBC file)
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習近平指導部は4月中旬までに公安部次官の孫力軍を“規律違反”で拘束した。武漢で陣頭指揮を取っていた経緯から、石正麗の逃避行と結び付けられた模様だ。

更に孫力軍の後ろ盾で、公安・司法部門の事務方トップに君臨した孟建柱の逮捕説も拡散。ニセ国会開幕を前に中南海が鳴動していることは確かだ。その最中でのトランプ発言である。

【米“証拠発言”に興奮と戦慄】

「何が起きたかを正確に示す強力な報告書を出す。それは決定的なものだ」

トランプ大統領は5月3日、出演したFOXニュースの番組で、そう語った。詳細は明かさなかったものの、武漢ウイルス研究所が発生源である証拠を実際に「見た」と繰り返し、こう付け加えた。

「チャイナは酷い過ちを犯し、それを隠そうとした」
▽番組に出演したトランプ大統領5月3日(FOX)
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断言である。正にトランプ節と形容するに相応しい。またポンペオ国務長官も同じ日、武漢の研究所発生源説に関する報告書について、こう語っている。

「疑う余地のないものになるだろう」
▽生出演したポンペオ長官5月3日(ABC)
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そう豪語する限り、米国が手中に納めたのが、単に状況証拠を積み重ねたリポートに留まるとは思えない。米国内では企業・個人に続き、ミズーリ州政府が対中賠償訴訟を起こしている。

それらの公判を維持できる十分な証拠があるのではないか、と勘ぐる。最有力は武漢ウイルス研関係者の証言だが、石正麗が米議会の公聴会に登場するビジョンは見えない。



WSJ紙によると、米教育省はテキサス大学に対して武漢研究所とのやり取りに関する文書等の提供を求めた。同大には石正麗からの「贈り物や契約」の記録がある模様だ。

この要請は、米国内の大学に流れ込んだチャイナ・マネーに関わる広範な調査の一環だという。今年1月にはハーバード大の著名化学者が逮捕・起訴されている。
▽逮捕された化学生物学部長C・リーバー1月(WSJ)
逮捕された化学生物学部長C・リーバー1月(WSJ).jpeg

参照:ブルームバーグ1月29日『ハーバード大の研究者を逮捕、中国との関係巡り虚偽の説明-米当局』

一方、武漢ウイルス研へのUSマネー流入も判明。米国立衛生研究所などから多額の資金提供があったことに批判が上がる。寄付の類いだが、間接的な中共軍支援とも受け取れられかねない。

武漢BSL-4実験室は中共軍との繋がりが指摘される。学術施設とは別の性格を持つ特殊なラボ。それが1月に兵器説を巻き起こした土壌であり、英米豪の情報機関が狙いを付けていた背景だ。

【無関係を強調し始めた仏政府】

「当初の計画では、設計を請け負うのはフランスの会社だったが、最終的に解放軍系の企業が請け負ったという」(1月30日付けJB Press)

1月に武漢BSL-4実験室の疑惑が浮上した際、福島香織さんは、そう指摘していた。ラボ創設におけるフランスの関与と排除だが、3ヵ月が過ぎて漸く関連情報が出てきた。

「チャイナ化された道具に過ぎない」

仏バイオ企業の創業者アラン・メリュー氏は、そう批判する。同氏は実験室立ち上げの共同ブロジェクトで仏側の実行委員長だったが、トラブル続発に嫌気が差し、辞任した。
▽武漢ウイルス研究所の関連施設群2月(財新)
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仏国際放送局RFIは4月17日、仏政府の全面協力で始まった実験室の建設は、中共側が仏排除の意向を剥き出しにし、関係は形骸化したと伝えた。急に責任逃れの言い訳を始めた印象だ。

仏国内では「生物兵器庫になる」といった批判も出たが、当時のシラク政権はプロジェクトを推進。その結果、2017年2月の除幕式には、ベルナール・カズヌーブ首相や閣僚が招かれた。
▽武漢BSL-4実験室視察する仏首相’17年(AFP)
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この席で仏側は、研究者ら50人を派遣し、共同研究に取り組むプランを謳いあげたが、これまでの派遣実績はゼロ人。仏がカネと技術を提供した後は全く無関係となった。

形式的な中仏共同実験室の疑惑にファイブ・アイズが斬り込んだことは皮肉だ。英連邦プラス米で構成される情報共有ネットワークで、旧枢軸国の他、同じ連合側の仏は仲間外れにされている。
▽研究所敷地内のバイオ実験室棟4月(AFP)
Wuhan Institute of Virology in Wuhan in China's central Hubei province (AFP)2のコピー.jpg

「武漢にこのような実験室があるのは偶然ではないだろう。ウイルスの性質からも漏洩説は信頼できる一つの見方だ」

英国家緊急事態対策委の高官は4月3日、そう語った。実験室から流出した可能性は排除できないとの報告が、英情報機関から上がって来たと明かす。武漢ウイルス研究所を名指した米報道より10日ほど早い。
▽武漢入りした対生物兵器部門の少将1月(中共軍網)
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「チャイナの国家衛生当局は、関連するの研究所からウイルスのサンプルなどを廃棄するように指示を出した」

豪サタデー・テレグラフ紙は5月2日、ファイブ・アイズが纏めた文書をスッパ抜いた。高度な情報共有ネットワークから機密が漏れることはなく、意図的な開示、情報戦の一貫だ。

【武漢在住バットマンの冒険譚】

「可能性は極めて低い」

CNNは5月4日、ファイブ・アイズが実験室発生源説に否定的な見解を示していると伝えた。トランプ&ポンペオの“証拠発言”と真逆で、ウイルス漏洩より極秘情報が漏れまくることが気になる。

これも情報戦の断片と見るが、米TV番組を舞台に相次いだ大統領らの“証拠発言”は強烈すぎて少し違和感を覚える。将棋で言えば王手、チェスならチェックメイト。切り札を繰り出すのは時期尚早だ。
▽番組で発言するトランプ大統領5月3日(AP)
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発生源の特定は、ペイシェント・ゼロ(初感染者)認定とイコールである。武漢市内での蔓延は昨年11月にまで遡る。既に半年以上が経過し、データも証人も軒並み「削除」されているに違いない。

これまでペイシェント・ゼロは浮かんでは消えた。最初に支那国内や漢字圏で注目されたのは、黄燕玲(ファン・ヤンリン)だ。武漢ウイルス研究所勤務の女性研究員である。
▽武漢研究所サイトから顔写真消滅(蘋果日報)
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感染死説が支那SNSで広まった2月中旬、石正麗が中共機関紙の取材に答える形で「そんな人知らない」と明言。ところが、その翌日に武漢ウイルス研が声明を発表、一転して実在を認める。

「黄燕玲氏は2015年に当方を卒業し修士号を取得した。卒業後は他省で勤務・生活しており武漢市に戻っていない。健康だ」
参照:中国網2月17日『武漢ウイルス研究所「0人目の患者」のデマを否定』

中共宣伝機関内の慌てぶりが伝わってくる。また米政権内では、別の研究員がペイシェント・ゼロだったとする可能性も浮上。武漢疾病予防管理センターの田俊華(ティエン・ジュンファ)である。
▽湖北省の洞窟でロケする田俊華(YouTube)
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「コウモリの血が何度も皮膚にかかった経験がある」

そう話す田俊華は同センター内にあるウイルス研究の責任者だ。コウモリ狩りの名手として知られ、3年前には湖北の深い洞窟に挑むドキュメンタリーが製作された。



石正麗も雲南地方の洞窟でサンプルを採取した実績が宣伝される。中共ではエリート研究者が虫取り網片手にトレジャー・ハンター風の探検を披露するようだ。

元凶たるペイシェント・ゼロ候補にしては露出度が高く、宣伝臭も鼻につく。米当局は未だ世界に知られていない第3、第4の適格者を見つけ出したのか…
▽コウモリを捕獲する田俊華(YouTube)
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広東の農村で発生したSARSでさえ、初症例を特定する作業は困難だった。トランプ大統領が早々に決定的な証拠を叩きつける日が来るのか疑問だ。
新たな疫病が誘う洞窟は暗く、世界がパンデミックの深淵に辿り着くまでには、なお多くの時間を要する。



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参考記事:
□時事通信5月4日『トランプ米大統領「中国は間違いを犯し、隠した」新型コロナの起源と主張』
□NNN5月4日『トランプ氏“コロナは武漢から”証拠公表へ』
□日経新聞5月4日『ウイルス、武漢研究所説に「多くの証拠」米国務長官』
□WSJ5月1日『米当局、武漢研究所とテキサス大の関係を調査 新型コロナ巡り』
□ニューズウィーク4月22日『ウイルス発生源をめぐる米中対立と失われたコロナ封じ込め機会』
□大紀元4月30日『ファイブ・アイズ、武漢ウイルス研究所の石正麗氏らを調査中=報道』
□WSJ5月1日『米当局、武漢研究所とテキサス大の関係を調査 新型コロナ巡り』
□NHK4月23日『新型コロナの発生源は? 真相究明求める声 世界で広がる』
□大紀元5月4日『武漢P4ラボ誕生の内幕 計画から締め出された仏と中国の暴走=RFI』
□ZAKZAK4月27日『武漢市「ウイルス研究所」に“中国とフランスの闇”は暴かれるのか? 仏の全面的協力で完成した「P4実験室」が発生源の可能性』
□大紀元4月8日『<中共ウイルス>英米メディア、「武漢実験室流出説」に再び注目』
□CNN5月5日『新型コロナ、研究所起源の可能性は「極めて低い」5カ国情報協定』
□産経新聞4月19日『中国、公安省次官を規律違反で調査 武漢に派遣』

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この記事へのコメント

ほろほろ
2020年05月06日 05:02
アメリカ政府が問題にしてるのは隠蔽工作の方で、そっちは証拠が揃ってるのでは?
初めから発生源は問題にしてなかったと思います。(おそらくおっても無駄な結果に終わるのは目に見えてますし)