武漢チェルノブイリの政争…負け戦に挑む毛沢東2世

北京で重大発表があった日、習近平は雲南の山里で陽気に踊っていた…生物学的チェルノブイリとも命名された一党独裁の危機。毛沢東2世を目指した男の負け戦が始まる。
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「349」

それは習近平にとって“魔の数字”だった。支那大陸におけるSARSの死者数が349人。今回の武漢肺炎が18年前のパンデミックを凌駕したことで、最高指導者の統治能力が問われる下地が生まれた。

最初の関連エントリで公式死者数には「上限が設定されている」と記した。その際に想定した数値は、この349だが、2月初旬に早くも“上限”を突破した。
▽武漢の病院脇で息絶えた男性1月(AFP)
AFP1月武漢市内の病院脇路上.jpg

もちろんSARSの感染・死者数も当局が操作した数字だ。実数はもっと多く、過少報告に過ぎないことを習近平は知っている。それでも胡錦濤を呪ったところで立つ瀬はない。

「到武漢去!(武漢へ行け!)」

そんな命令口調の文字列が、習近平の視察写真とニアミスする事態が起きた。党機関紙のスマホ向け配信画面で、ほんの一時的な現象にせよ、偶然にしては出来過ぎた印象で、作為的だったとの説もある。
▽アプリ画面のキャプ(蘋果日報)
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参照:産経新聞2月12日『習近平氏の北京視察伝えた直後に「武漢へ行け!」 人民日報、アプリ配信で巧妙批判か』

写真は2月10日、北京市内の福祉施設を訪れた時の広報用ショットだ。この日、習近平はパンデミック発生後初めてとなる「視察ショー」を実施した。

「非常時なので握手はしない」

軽口の設定で、仕込みの住民は笑ったそうだが、本心から握手なんかしたくなかったと想像する。巡回先は、いずれも北京市内の絶対安全圏。緊張感皆無のヤラセ視察に批判が高まるのも当然だ。
▽仕込みの住民と話す習近平2月10日(新華社)
北京市内の「社区」を訪れ、マスクを着けて住民と話す中国の習近平国家主席(左手前)=10日(新華社.jpg

「感染力は強くないとデマを流した当局者の責任は問わないのか?」

支那のSNSでは一時的に批判が表面化した。節目となったのは武漢の異状を告発して逮捕された李文亮医師の死だった。習近平は危険な兆候を察知し、動いた。北京漫遊も懐柔策の一環だった。

しかし、情報統制の強化に続く、時系列の組み替えといった荒技も全て裏目に出る。

【1月7日起源説のワープ航法】

「演説はその様式も内容も不可解。演説で分かったことよりも、分からなくなったことの方が多い」

米国な著名なシナ・ウォッチャーであるシャーク元国務次官補も頭を抱える。議論を巻き起こしているのは、中共の党機関誌「求是」が2月15日に突如掲載した習近平の演説だ。

「私は1月7日の会議で新型コロナウイルスを防ぐよう指示した」
▽党新春祝賀会で挨拶する習近平1月23日(新華社)
新華社1月23ひ中国共産党の新春祝賀会でスピーチをする習近平国家主席.jpg

これまで習近平の最初の重要指示は1月20日とされてきた。春節を前に方針を示したと伝えられたが、この演説文では時系列が2週間も捻じ曲げられる。

少々ややこしいが、習近平は2月3日に招集した党中央政治局常務委員会議で「最初の指示は1月7日だ」と発言したと言うのだ。誰もが違和感を覚える通り、捏造である。
▽プロパガンダ写真も迷走中2月10日(新華社)
マスク姿で北京市内の施設を視察する中国の習近平国家主席=10日(新華社=共同).jpg

中共メディア分析に定評がある遠藤誉氏は、新華社が2月3日に公表した同会議のプレスリリースと比較。「1月7日指示」の部分だけが新たたに付け加えられていることを発見した。
参照:中国問題グローバル研究所HP2月16日『習近平「1月7日に感染対策指示」は虚偽か』

浅ましく愚かしい明白な過去改変である。習近平は初動対応の遅れが批判されていることを懸念し、起点を2週間ほど前倒しにしたのだが、無理がある。
▽ネピドーで習近平迎えるスーチー1月18日(代表)
代表1月18日ネピドーを訪れた習近平.jpg

習近平は1月17日にビルマを訪問し、スーチー国家顧問ら要人と会談。子飼いのFacebookが習近平を「Mr Shithole」と正直に自動翻訳して話題になった。BBC日本支社は別記事で「肥溜め」と訳す。

続いて肥溜め男は、1月19日から雲南方面に入った。新華社が1月20日午後と日時を添えた昆明視察写真も残る。この視察後、習近平が北京に飛んで帰って重要指示を発したのではない。

「主席が19日から21日にかけて、雲南省の騰衝市や昆明市などを視察しました」(1月22日付け党宣伝機関CRI)
▽和順古鎮を漫遊する習近平1月19日(新華社)
新華社1月19日和順古鎮を漫遊する習近平.jpg

習近平は北京に居なかったのだ。「重要指示」を伝える新華社の第一報は1月20日夜の配信で、場所は明示していない。最高指導者の北京不在を巧妙に隠したのだが、不自然な点は、これだけに留まらない。

【鬼の居ぬ間の方向転換&重大発表】

「武漢市と広東省でヒトからヒトへの感染が証明された」

支那で感染症研究の第一人者とされる鍾南山は1月20日夜、CCTVに出演し、そう明言した。鍾は中共国家衛生当局が現地に派遣した調査団リーダーで、医療従事者の集団感染も明らかにする。

そして支那各地の感染者数も、この日の集計分で前日の3倍超をマークした。唐突過ぎる急増は「重要指示」に絡んだ情報解禁と見られたが、習近平が北京に戻る前だった。
▽昆明の市場を散歩する習近平1月20日(新華社)
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もちろん地方から習近平が指示した可能性は残るが、呑気に市場を散歩するスマイル写真と相反する。緊迫した事態と認識すれば、どうでもいい視察を切り上げ、中南海に急行するはずだ。

ちなみに1月20日といえば、東南アジア各国で感染者が相次ぎ、我が国で最初の感染者が確認されてから5日が経過。既に武漢市内の病院は地獄と化していた。
▽ワ族の子供と合唱する習近平1月19日(新華社)
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なぜ、そんな非常事態時に習近平は山岳民族と戯れていたのか…北京で留守番する指導部メンバーが意図的に情報を与えず、習近平を嵌めた疑いも拭えない。

鍾南山のTV発言も感染者数“急増”も、最高指導者の知らぬ所で決まっていた可能性が高い。1月23日未明の武漢都市封鎖は、習近平が全容を把握してブチ切れたタイミングと恐らく一致する。
▽緊急生出演した鍾南山1月20日夜(CCTV)
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鬼の居ぬ間のクーデター的な背景があったのではないか。習近平が雲南で踊っている間に、感染者数が大幅変動し、調査団長が深刻な状況を暴露した…従来の中共政権下では有り得ない事態だ。

そして1月25日に漸く政治局常務委員を招集。2月3日でも1月7日でもなく、これが最初の武漢肺炎に関する幹部会議で、タスクフォースを設置するが、ここでも波乱が起こる。

「正式発表は『疫情対策指導小組』の設置を伝えたものの、誰かがこの『小組』の『組長』となっているかに一切言及してない」
▽政治局常務委員を集めた習近平1月25日(CCTV)
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石平さんによれば、小組設置と責任者の発表は同時だという。しかし、李克強のトップ任命公表は翌日にズレ込む。通常なら習近平の独断でトップが決まる。つまり幹部会議が紛糾した可能性が高い。

貧乏くじを引いた李克強は1月27日、武漢に飛ばされる。この視察ショーは一瞬で、以降3週間、李克強は武漢に入ることなく、現地指導は副総理の孫春蘭を置き去りにしたままだ。
▽湖北省内を巡回する孫春蘭:右2月3日(新華社)
新華社2月3日副総理の孫春蘭.png

指導部内で責任の押し付け合いが続いた果てに、死亡者が349人を超す。習近平は数字の上で胡錦濤に敗北を喫した。危機管理能力で前任者に劣る人物が終身主席で良いのか…

後任者を巡る権力闘争は既に勃発している。

【バイオロジカル・チェルノブイリ】

「世界的な注目を集めるチャイナの生物学的チェルノブイリ」

米国の支那人権問題監視サイト「デモクラシー・ダイジェスト」は、武漢肺炎のパンデミックをそう名付けた。ソ連崩壊に繋がった原発事故に準え、中共瓦解の可能性を論じている。

「無能と隠蔽はレーニズム、マオイズム特有の症状だ。共産党政権は自らの正当性を脅かす問題に対処できない」

共産国家の特徴は、指導部が統治の無謬説に立脚することだ。政策や国家運営の誤りを認めるには、かつての毛沢東批判のような膨大なエネルギーと時間と粛清が必要となる。
▽上海市内に掲げられた政治宣伝2月10日(ロイター)
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同サイトは、六四事件後に亡命した韓連潮氏らが運営するもので、論調は急進的で時に荒々しい。だが、ソ連崩壊と比較する考察は別の政治学者からも提示され、トレンドになる可能性を秘める。

「新型コロナウイルスの感染拡大は、1986年に旧ソ連で発生したチェルノブイリ原発事故の時のような惨状を招くだろう」
参照:ニューズウィーク2月14日『中国の新型コロナウイルス危機は「チェルノブイリ級」と世界が囁き始めた』

元大統領本人によると、原発事故発生からゴルバチョフへの報告は大幅に遅れたという。この部分は習近平の「事情知らずに雲南でダンス説」と似通っている。
▽素手で餃子作りにチャレンジ2月19日(新華社)
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「言論の自由の封殺によって引き起こされた人災だ」

北京大の著名学者ら50人は連名で非難声明を出した。核心をつく勇気ある発言で、チベット大虐殺の際にも同様の声明が公開されたが、政局には至らず、胡錦濤に軽く捻り潰された。

言論統制への批判が高まることは望ましい。しかし習近平にはグラスノスチ(情報公開)に応じる度量も力量もなく、経済状況も黄昏の中にあったソ連末期とは異なる。
▽マスク姿で買い出しする上海市民2月10日(ロイター)
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習近平失脚・中共分裂の鍵になるのは、上海の動向だ。これは太子党vs上海閥といった派閥争いに限らず、豊かな上海及び沿岸部と富を食い尽くす内陸部その他の対立軸に関係する。

上海直轄市の感染状況は党発表で約330人と比較的軽微だ。だが、パンデミックが起きなくとも、商工業の部分閉鎖を伴う厳戒状態が長引けば、不満は臨界点に達し、爆発するだろう。
▽今も閑散とする上海駅2月18日(ロイター)
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習近平は2月13日、湖北省と武漢市の党書記を同時に更迭した。予想よりも早いカードの切り方だ。次のスケープゴートは李克強だが、この男を更迭するともう後がない。

国が滅ぶか、党が滅ぶか、己の身が滅ぶか…勝ち筋は何処にも見当たらない。ひ弱で臆病な毛沢東2世の負け戦が始まった。



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参考記事:
□JB Press2月12日『新型コロナウイルス、人民軍への感染で北朝鮮崩壊』
□ZAKZAK2月1日『新型肺炎が招く中国“共産党体制”の崩壊…情報隠蔽、官僚的対応に募る「不信感」』
□JB Press2月12日『国民は怒り心頭、習近平政権は持ち堪えられるのか?』
□Democracy Digest2月6日『China’s ‘biological Chernobyl’ puts CCP legitimacy on the line』
□Democracy Digest2月14日『China’s ‘biological Chernobyl’ exposes absurdities of autocracy』
□WSJ2月17日『チェルノブイリと新型ウイルス、独裁体制の限界』
□蘋果日報2月11日『習總北京防疫 黨媒微信貼圖諷「到武漢去」』
□ブルームバーグ2月18日『新ウイルス巡る習主席の1月の演説、共産党が異例の公表-悩む専門家』
□ニューズウィーク1月27日『習近平「新型肺炎対策」の責任逃れと権謀術数(石平さん)』
□時事通信2月11日『習氏、ようやく現場視察 新型肺炎、広がる国民の不満―中国』

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