南鮮GSOMIAの粉飾決算…謎を秘めた米国11月攻勢

とんち比べか騙し絵のような“破棄の凍結”。GSOMIA玉虫色決着の背後に中共との密約説が浮かび上がる。それは米国が11月から突如始めた対南大攻勢のナゾを解く鍵だ。
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「GSOMIAが失効し、日韓の摩擦が続けば、北朝鮮と中国が得をするだけだ」

ソウルで会見に臨んだ米国のエスパー国防長官は11月15日、そう語った。タイムリミットまで1週間。米国は立て続けに政府高官・米軍トップを派遣し、文在寅政権に翻意を促した。
▽会見するエスパー国防長官ら11月15日(共同)
共同記者会見するエスパー米国防長官(左)と韓国の鄭景斗国防相=ソウルで15日、共同.png

いずれも南鮮によるGSOMIA破棄の“撤回”を強く求めたのだが、表面的な報道に関しては懐疑的だった。果たして撤回できるものなのか…日南が調印した協定の21条3項には、こう記される。

「一方の締約国政府から他方の締約国政府に対しこの協定を終了させる意思を九十日前に外交上の経路を通じて書面により通告しない限り、その効力は、毎年自動的に延長される」

「90日」という期間はモラトリアムではない。大掛かりな専門部署がないにせよ、担当官の異動や現場の混乱を避ける為に必要な準備期間であって、破棄の決定は不可逆に思えた。
▽破棄撤回を求める反文在寅派の集会11月20日(AP)
AP通信11月20日20日、GSOMIAの維持を求めてソウルで開かれた集会.jpg

ところが実際には“撤回”可能だった。しかも南鮮側は「破棄の凍結」といった珍妙な表現を繰り返す。青瓦台幹部の金有根(キム・ユグン)は11月22日の会見で、こう息巻いた。

「いつでも協定を破棄できるとの条件付きで、GSOMIAを終了するとした8月23日の日本側への通告を停止することを決めた」
▽緊急会見するNSC第1次長・金有根11月22日(AP)
AP通信112222日、ソウルで記者会見を開き、GSOMIA破棄回避の決定を発表する韓国の金有根国家安保室第1次長(AP).jpeg

南鮮側は任意の時点で破棄できると豪語するが、協定上不可能だ。米側の圧力を受け、南鮮政府部内では一時「破棄期限の延期」なる折衷案を模索したが、条文改訂には日南の合意が必須と判明したという。

「『いつでも効力を終了できる』ことなどあり得ない」

文在寅政権が惨めにマウント取りを試みる「破棄の凍結」に異議を唱えるのは、産経新聞だけだ。殆どのメディアは南鮮側の意味不明発言を垂れ流し、核心を避ける。
▽破棄通告で会見するNSC第2次長8月23日(聯合)
連合823GSOMIAの破棄を発表する韓国の金鉉宗・国家安保室第2次長のコピー.jpg

8月23日、南鮮外交部は長嶺大使に呼び出し、破棄を通告した。口頭だけではなく、終了の意思を明記した文書を手渡したのだ。そして11月22日、南鮮側は当該文書を無効化…外交上、これを撤回という。

「GSOMIA終了祭り」のカウントダウンは早くても来年の11月末まで、お預けとなった。

【米国11月攻勢の因果応報】

「日本と軍事情報を共有することは難しい」

文在寅は11月15日、訪南したエスパー国防長官に対し、そう明言した。青瓦台幹部でも国防筋でもなく、大統領の見解である。この最終回答を受けて、米国の調整は徒労に終わったと考えるのが妥当だ。

11月に入ってからの米側の攻勢は凄まじかった。スティルウェル国務次官補の訪問に始まり、ミリー統合参謀本部議長やエスパー長官が相次いでソウル入りし、破棄の“撤回”を呼び掛けた。
▽訪南したミリー統合参謀本部議長11月14日(時事)
時事14日、ソウルで開かれた定例の軍事委員会で握手する米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長.jpg

畳み掛けるような派遣ではあったが、彼らは対GSOMIA特使ではない。ミリー議長は定例のMCM(米南軍事委員会)出席が目的で、エスパー長官はこれも定例のSCM(米南安保協議)の為だ。

これらの定例会合は毎年10月末から11月にかけて相互の首都で開催される。寧ろ、米国との重要な国防会合が予定されている中、GSOMIA破棄をぶち込んだ文在寅の外交センスの無さが光る。

「GSOMIAが破棄されれば、我々は強くないというメッセージを相手に送る可能性がある」
▽会見するエイブラムス司令官11月12日(在南米軍提供)
記者会見するエイブラムス在韓米軍司令官(12日、韓国・平沢市)=在韓米軍提供.jpg

異例だったのは11月12日に開かれた在南米軍エイブラムス司令官の記者会見だ。定例会合を前にした強い警告だった。しかし、それでも文在寅の最終見解は揺るがなかった。

果たして、文在寅が直前でヘタれる決定打は何だったのか…米上院の緊急決議に要因を求めることは、いかにも優等生的な外交分析ではあるが、軽くスルーするほど脆弱でもない。

「GSOMIAはインド太平洋地域の安全と防衛、特に北朝鮮の核とミサイルの脅威に対抗する為に死活的に重要な軍事情報の共有協定であることを確認する」
▽法案主導したリッシュ上院外交委員長(ロイターfile)
ロイター上院外交委員会のジェームス・リッシュ委員長.jpeg

異例のスピード可決だった。GSOMIA支持法案の提出は11月20日。その翌日に上院外交委から直ちに本会議に送付され、全会一致で可決した。日本時間にすると11月22日朝である。

法案を主導した外交委のセネターは共和党・民主党の重鎮だ。我が国政府の静観モードは評価に値するが、米議会の機動力と比べた時、当事国の衆参両院は機能不全以下の職務放棄に等しい。
▽GSOMIA最終日の特定野党議員11月22日(毎日)
毎日11月22日野党.png

そして米上院の可決に前後して、ポンペオ国務長官が南鮮の康京和と電話会談を行う。ダメもとの懇願か、最後通牒か。この電話会談を分岐点と見ることが妥当だが、全く異質の情報も出てきた。

航空自衛隊と米空軍による“軍事行動”だ。

【アチソン・ラインの夜間飛行】

「11月22日、米空軍の戦略爆撃機が日本海に進入し、日本の航空自衛隊所属戦闘機の護衛を受け、日本海の日本側エリアを飛行した」

南鮮軍関係者は、GSOMIA“最後の日”に米空軍B52Hが空自機と編隊を組んで朝鮮半島に接近したことを明らかにした。発言にある「日本海」はもちろん原文では独自ネームだ。

青瓦台では当日の午後1時過ぎからNSC(国家安全保障会議)が始まっていた。その最中にB52が急接近したのなら正に威嚇だが、残念ながら編隊飛行は22日夜だという。
▽GSOMIA対応協議が続く青瓦台11月21日(共同)
GSOMIAへの対応を協議する国家安全保障会議が開かれた韓国大統領府(21日、ソウル)=共同.jpg

それでも南鮮側は神経を尖らせている模様だ。従来は米爆撃機が日本海北西空域を飛行する際は、南鮮軍機が護衛に担った。しかし、今回は南鮮側への事前連絡はなく、純粋な日米の共同行動だった。

編隊飛行がGSOMIA終了間際の時間帯を狙ったことは明らかだ。当日午後6時からの“破棄先送り”会見で目算は狂ったが、B52Hがグアム・アンダーセン基地から飛び立ったのは、会見の前だろう。
▽グアムから半島に飛来したB52爆撃機’16年(AFP)
AFP16年米グアムのアンダーセン空軍基地から飛来し、韓国の烏山空軍近くで演習を実施した米空軍の戦略爆撃機B52.jpg

米爆撃機が対馬海峡を抜けることは異例だが、最近になって頻度が上がっていた。前回は10月25日で、何の言及もなかった日南首相の翌日というタイミングだった。

その際、一部メディアは、GSOMIA破棄に怒った米国の軍事的恫喝とも指摘した。軍事ジャーナリストの潮匡人氏は、飛行ルートが冷戦初期のアチソン・ラインに沿ったものであることに注目する。

「B52の飛行は、文政権が日米韓の3カ国連携から、中国やロシア側に軸足を移すことへの警戒感や、『朝鮮半島の赤化統一は座視できない』というメッセージではないのか」
▽11月22日の飛行ルート(Aircraft Spots)
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GSOMIA“最後の日”の飛行ルートも同じだった。空中給油の訓練でも演習でもない…B52Hと空自F15による夜間フライトの意図に気づいた文在寅は震え上がったに違いない。

GSOMIA破棄と対南貿易管理の強化は全く別のテーマだが、底部には共通項が存在する。それは文在寅政権が中露朝のレッドチーム入りを志向し、日米を裏切り続けていることだ。

【コウモリが舞う中南密約説】

定番の反日大発狂で知られる8月15日の南鮮大統領演説が、今年は少しトーンダウン気味だった。対日強硬姿勢の転換も囁かれたが、予想に反して8月22日にGSOMIA破棄を決定する。
▽8・15大統領演説で吠える文在寅(聯合)
8・15会見でアジる文在寅(聯合)のコピー.jpeg

唐突な方向転換、乱暴な舵回しだ。いったい青瓦台内部で何か起きたのか…この間のミッシング・リンクとおぼしき断片が発見された。チャイナ・ウォッチャーの遠藤誉氏の指摘である。

「2日前の20日には中韓外相会談を行っており、もし継続すれば国交断絶もあり得るというほどの威嚇を中国側から受けていた」

日支南3ヵ国の外相が8月20日、北京郊外の古北水鎮に集まった。当時の河野外相が随行記者にカメラのメーカーを聞くシーンが、日南メディアの悪質な捏造報道に使われたことくらいしか記憶がない。
▽日本の記者に話しかける河野外相8月(南鮮TV)
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同じ場所で、中共と南鮮の外相会談も開かれている。会談の発表内容は勿論、綺麗事を羅列しただけの無難なものだ。しかし、このGSOMIA破棄強要説は、文在寅の豹変に符号するだけではない。

破棄撤回を求める米国の大攻勢は、秋が深まってから突如始まった。トランプ大統領は9月末の首脳会談でも強く迫らず、北朝鮮の新型SLBM発射を受けても反応しなかった。
▽破棄恫喝説の中南外相会談8月20日(新華社)
新華社8月20日王毅国務委員兼外交部長は20日、北京郊外の景勝地「古北水鎮」で、第9回中日韓外相会議のために北京入りした韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相と会談.jpg

ホワイトハウスが破棄撤回に向け、一転して猛攻を仕掛けたのは、中南外相会談の中身について裏が取れた為ではないか。推測に推測を重ねる悪い例だが、南鮮側からリークが入ったと考えられる。

構図は、THAAD配備をめぐる中南の密約説と似ている。親中傾斜が著しいパク・クネ政権に対し、見て見ぬ振りだったオバマ大統領は、’15年9月の北京軍事パレード参列を機に強硬路線に転じた。
▽北京軍事パレード観覧するクネ’15年9月(ロイター)
ロイター軍事パレードを観覧するクネ15年9月.jpg

笑顔でパレードを見守ったから激怒した訳ではない。クネはTHAADに関して「配備しない方針」を習近平に確約したとされる。その情報を得て、オバマも堪忍袋の尾が切れた。

米国の激高に怯えたクネはTHAAD配備を認める。すると今度は習近平がブチ切れ、中南蜜月の短い季節は去った。クネの哀れな最後をつぶさに見た人物が文在寅だ。同じ轍は踏まないつもりだろう。
▽大阪開催の中南首脳会談6月(聯合)
連合6月大阪開催の中南首脳会談.jpg

「GSOMIA破棄の凍結」という言い回しからは、中共に対する配慮と弁解が透けて見える。北京には「破棄の意思を示したままだ」とでも説明するに違いない。

クネは米国の怒りに震えて直ぐ様ワシントンに出向いたが、文在寅はどう対処するのか。前大統領とは異なる根っからの反米極左だ。米国の牙よりも中共に捨てられることを恐れる。
▽NYで開かれた米南首脳会談9月(共同)
9月23日、米ニューヨークで会談するトランプ大統領(右)と韓国の文在寅大統領(聯合=共同).jpg

両者の間には決定的な違いがある。だが、障害物に激突しながら米中の間を飛び回る外交姿勢は“同じ穴のコウモリ”だ。



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参照:
□外務省HP『秘密軍事情報の保護に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定(PDF)』

参考記事:
□ニューズウィーク11月14日『GSOMIA失効と韓国の「右往左往」(遠藤誉)』
□東亜日報11月25日『GSOMIA決定の日、米B52爆撃機が東海出撃』
□ZAKZAK10月30日『米、韓国にGSOMIA破棄撤回迫る!? 米空軍「死の鳥」B52が対馬海峡から日本海へ“異例”飛行で軍事的恫喝か 識者「このルートは偶然ではない」』
□ZAKZAK11月9日『米高官が韓国叱責!140分間にわたり… GSOMIA破棄撤回、文政権に“最終警告” 米国防長官も訪韓へ』
□産経新聞11月26日『【風を読む】文明国の掟から外れた韓国 論説副委員長・榊原智』
□デイリー新潮11月26日『GSOMIA維持も、米国は「韓国は今後も中国に接近」と予測 もう収まらない怒り(鈴置高史)』
□ZAKZAK11月13日『韓国GSOMIA破棄で米が報復準備 文政権「米韓同盟は揺るがず」と楽観視も… 識者「米国の本気度を理解していない」』
□FNN11月15日『「日本とは軍事情報共有しがたい」文大統領、エスパー長官へ』
□産経新聞11月26日『河野防衛相、GSOMIA継続は「一時的なものと理解」』
□産経新聞11月21日『米上院にGSOMIA重要性訴える決議案提出 韓国に破棄取り消し促す』

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