“ペンス演説砲”の命中精度…絶滅危惧種となった反共闘士

数々の警告は不幸にも香港の抗議弾圧で証明された。再び火を吹く米ペンス副大統領の中共批判演説。しかし、その意志を汲み取り、獰猛な毛沢東2世に抗う反共の闘士は現れない。
AP通信ペンス副大統領.jpg

八村塁選手の鮮烈なデビューが我が国でも大きな話題となったNBAのプレシーズン・マッチ。10月9日に行われた支那チームとの対戦前、スタジアムが異様な雰囲気に包まれたことは余り知られていない。



「FREE HONG KONG」と書かれた黒Tシャツの集団が運営側と押し問答の末、退場を迫られた。こうした現象は、全米各地のNBA試合会場に広がっている。

「FIGHT FOR FREEDOM STAND WITH HONG KONG」
スクリーンショット 2019-10-30 19.56.11.png

発端は、ヒューストン・ロケッツのダリル・モーリーGMが10月4日に投稿した文字入り画像のツイートだった。これに中共が国家総動員とも言える大攻勢を仕掛ける。

在米の中共公館による公式抗議を皮切りに、支那バスケットボール協会はロケッツとの関係断絶を発表。関連商品の撤去が進んだ。矛先はNBAにも向き、試合中継の停止などが次々に打ち出された。
▽上海で撤去されるNBA広告10月9日(AP)
AP通信10月9日上海の広告撤去.jpg

モーリーGMはツイートを削除して謝罪。NBAも中文の声明で「不適切な発言」と断じて全面的に屈服する。10月10日には上海で親善試合が開かれ、中共とNBAの“7日間戦争”は終わったかに見えた。

「多大な利益を追求する為、発言を撤回させるとはNBAは恥知らずだ」(共和党テッド・クルーズ上院議員)

他にも民主党の次期大統領選候補ら有力議員が相次いで批判。米国ではNBAの姿勢に異を唱える声が燻り続ける。極め付けは、ペンス副大統領の演説だ。
▽ワシントンで演説するペンス副大統領10月24日(AFP)
AFPペンス副大統領.JPG

「中国共産党の肩を持ち、言論の自由を封じるなど、まるでNBAは、独裁政権の完全子会社のように振る舞っています」

痛烈である。副大統領は、米国内でのNBA人気にかこつけて演説に盛り込んだのではない。中共によるNBA波状攻撃は、これまでとは異質な問題を孕んでいた。

【「検閲の輸出」に苛立つ米国】

「モーリー氏は我が国の主権と民族の尊厳を尊重していない。彼の言論は他国の主権を恣意的に侵した」

中共宣伝機関は、ロケッツGMの投稿画像を「主権侵害」と決め付け、言論の自由に言及したNBAコミッショナーを強く批判した。石平氏は、そこに米支の価値観の対立を見出し、警告する。
▽ロケッツのモーリーGM(file)
Daryl-Morey-China-GettyImages-119413255.jpg

「中国はもはや、西側からの価値観の押し付けさえなければ満足するのではなく、むしろ自分たちから進んで、西側の価値観に挑戦状を叩きつけるようになった」

危険な兆候と石平氏は指摘する。従来、中共は欧米との価値観の違いを認めた上での“共存”を指向していたが、習近平政権は異なる。米国内の言論の自由も中共が線引きをすると言うのだ。

参照:ニューズウィーク10月15日『NBA騒動に学ぶ「かんしゃく国家」中国との付き合い方』

「米国の余りにも多くの多国籍企業はチャイナの目が眩む程の資本や市場に追従し、中国共産党への批判だけでなく米国の価値観を肯定する発言も封じ込めています」(副大統領演説10月24日)
▽演説するペンス副大統領(AFP)
AFPペンス副大統領jpg.jpg

ペンス副大統領に限らず、米国人にとって「言論の自由」は譲れない一線だ。腐れパヨクが排斥運動で悪用するものとは格が違う。石平氏が言う通り、それは米国の「核心的価値観」である。

NBAのスター選手が米政権を批判することは珍しくなく、反撃を受けても決して怯まない。だが、中共からの抗議には全面降伏で即時撤回…米国のNBA批判も、このダブスタと直結している。
▽ワシントンでNBAに抗議する市民10月9日(AP)
AP通信109ワシントンでActivists hold signs outside Capital One Arena before an NBA preseason basketball game between the Washington Wizards and the Guangzhou Loong-Lions.jpg

ペンス副大統領のNBA批判は、香港問題の文脈から発されたのではない。中共による「検閲の輸出」という米国内の問題から導き出されている。それでも香港に関する言及は多く、力強かった。

「我々は、平和的なデモを続けてきた香港の人々と共にあります。そして多くの米国人が称賛し、祈りを捧げていることを知って下さい」
▽香港・尖沙咀での抗議デモ10月27日(ブルームバーグ)
ブルームバーグ10月27日尖沙咀地区での抗議デモ、10月27日.jpg

支那問題をテーマにした副大統領演説は当初、六四天安門大屠殺30周年に合わせて行われる予定だった。しかし貿易協議を睨んで再三延期され、5ヵ月近く遅れることとなった。

香港の反送中デモが本格化したのは6月4日以降で、演説順延は結果的に習近平に災いした。昨年の演説の裏付けが強化された格好だが、ペンス副大統領は少し控え目に、こう語る。

「この1年間、香港の混乱ほど、中共が自由を毛嫌いしていることを曝け出した出来事はありません」
▽覆面禁止法で予想外の事態も10月18日(AP)
香港10月18日にあった覆面禁法に抗議するデモで、中国の習近平国家主席のお面を着用した参加者=AP.jpg

残念ならが昨年と比べ状況は悪化し、米国が死守するラインも後退している。台湾国への高評価は、危機感の裏返しだ。

【誰も見たことのない監視国家】

「この1年間でチャイナは2ヵ国に対して外交関係を台北から北京に切り替えさせました。台湾との関係は平和を脅かすものではなく、寧ろ地域の平和に繋がることを国際社会は忘れてはいけません」

ペンス副大統領は9月中旬にソロモン諸島とキリバスが台湾と国交を断絶した事態に触れた。昨年の演説でも中南米3ヵ国との断絶を取り上げたが、今回は、より多くの時間を割いて台湾国に言及した。
▽国交樹立文書に署名するソロモン諸島外相9月(時事)
国交樹立の共同文書に署名し、中国の王毅国務委員兼外相(右)と握手するソロモン諸島のマネレ外相=9月21日、北京(AFP時事).jpg

「苦労の末に獲得した自由を守る台湾を米国は支持しています。トランプ政権は追加の軍事援助を承認し、台湾が世界有数の経済大国であり、チャイナ文化と民主主義の象徴であることを認めました」

台湾国とは対照的に、東トルキスタン情勢に関する言及は減少した。それでも世界のウイグル人が悲観する必要はない。昨年は告発の形だっが、今や米国は制裁を実施している。
▽目隠し状態で連行されるウイグル人(流出動画)
スクリーンショット 2019-10-11 23.16.23のコピー.png

「中共高官のビザ規制に加え、20の公安局などに制裁を課した。我々は、ウイグル人や他のモスリム迫害に対し、北京に責任を追わせたのです」
参照:10月12日『“絶望監獄”は香港を目指す…ウイグル弾圧巡るNYの熱戦』

同様に中共が築く高度監視社会への批判も限定的だったが、これも華為技術やZTEの追放が急ピッチで進行。連邦通信委は11月下旬までに米国内からの完全排除を求める採決に踏み切る見通しだ。

「中共はこれまで世界の誰もが見たことのない監視国家を建設しています」
▽ウルムチ近郊の強制収容所’18年(ロイター)
ロイターウルムチ近郊の強制収容所のコピー.png

昨年の演説で個人的に強い衝撃を受けた「オーウェリアン・システム」という用語が消えたのは淋しい。このハイテク監視体制が小規模の独裁国家に「輸出」される事態を恐れる。

「少数民族は、血液サンプルや指紋の採取だけではなく、複数の角度から頭部を撮影され、声を録音されます。更に検問所では光彩スキャンまで強いられるのです」
▽ホータン近郊の強制収容所(新疆司法行政)
7f4e7068-0ee5-4355-b1f3-b2f5f372a183のコピー.jpeg

参照:H30年7月11日『砂漠の果てのディストピア…光彩を奪われたウイグル人』

中共のハイテク監視社会は、人文社会系の学者にとっては格好の研究対象だ。しかし、この1年間で深く切り込んだ論文は見当たらない。全く関心がないのか、IT関連の知識が乏しいのか…

中共の監視網・個人データ収集は、私たち一般人の想像を遥かに凌駕するレベルに達していると予言しておく。元から共産主義は全国民の監視を目指す。進化形態としては少しもブレていない。

【ペンスに続く反共闘士の不在】

「チャイナの挑発に対し、親密な同盟国である日本のスクランブル発進は過去最多を更新する見通しです。日本に施政権がある尖閣諸島の周辺海域には60日以上連続で艦船が送り込まれています」

南シナ海の島嶼侵略・要塞化問題に続き、ペンス副大統領は東シナ海情勢に触れた。「船舶が警邏」と手短に語った昨年の演説と比べ、より細かく、具体的に指摘している。
▽10月下旬に領海侵犯した中共武装船(FNN)
10月下旬に領海侵犯した中共武装船FNN.png

尖閣諸島周辺での領海侵犯は今年既に28回に及び、10月26日には中共武装船4隻が同時侵入した。4隻は5日間に渡り、接続水域を航行。31日は、入れ替わるように別の3隻が接続水域に入った。

「完全に正常な軌道へと戻った日中関係を新たな段階へと押し上げていく」
▽参院予算委で答弁する安倍首相3月6日(産経)
産経3月参院予算委員会で答弁を行う安倍晋三首相=6日午前、国会・参院第1委員会室(春名中撮影.jpg

安倍首相は今年3月、国会でそう答弁した。中共の海洋進出に関しては「安全保障上の強い懸念」とするが、来春に控える習近平の国賓待遇来日を含め、ペンス副大統領の強い言葉とは温度差が激しい。

対南外交“正常化”の反動で、中共と妥協したならば効果はマイナスだ。仮想敵国の軍事力増強は相対的な評価ではなく、絶対評価が求められる。
▽北京パレードに登場したICBM10月1日(ロイター)
webw191002-china-thumb-720xauto-169431.jpg

ペンス副大統領の演説が中共指導部を発狂させる一方、トランプ大統領は何食わぬ顔で習近平と会談するだろう。自分の発言ではない。だが、ペンス演説は米政権の公式「対中政策」と見做される。

総理大臣が、こうした正副大統領の役割を同時に担うことは難しい。それでも明瞭に危機を語り、警告を発するサブリーダーを我が国が持たないことは、不幸である以前に政治システムの欠陥ではないか。
▽役割分担する正副大統領コンビ’17年(ロイター)
役割分担する正副大統領’.17年ロイたjpg.jpg

米国には副大統領の他に、フリーハンドで奔放な発言をする強い議会が存在する。我が国の衆参議長や野党にその役割を求めるのは酷だ。特定野党は所詮、中共の子飼いに過ぎない。

政権与党内に、いわゆる対中強硬派が見当たらないことに危機感を抱く。青嵐会に遡る必要はない。かつて自民党には故・中川昭一元財務相のような反共の闘士が居た。
▽国際会合に出席する中川昭一財務相’08年(AFP)
AFP0810世銀年次総会にて.png

もし中川政権が誕生していたなら、違った道に進んだだろうと夢想する。また欧州先進国の政治指導者を見渡しても、ペンス演説に呼応する者が誰一人出現しないことは悲劇的だ。

「我々が提起した多くの問題について北京の行動は更に攻撃的で不安定になりました」
▽演説するペンス副大統領10月24日(AFP)
mike-pence-china-nba-nike.jpg

1年を振り返って、ペンス副大統領はそう総括した。昨年の刺激的な演説が何の効果を生まなかったのではない。終身主席の習近平は、軌道修正する機会も政敵もなく、ひとつの方向に突き進む。

後継者選びで腐心した江沢民や胡錦濤、鄧小平とも異なる危険な毛沢東2世だ。粗製のクローンでも劣化コピーでもない。核ミサイルを抱え、遥かな海洋に進出する凶暴な2世である。



最後まで読んで頂き有り難うございます
クリック1つが敵に浴びせる銃弾1発となります

banner1

参照:
□ホワイトハウスHP10月24日『Remarks by Vice President Pence at the Frederic V. Malek Memorial Lecture』
□海外ニュース翻訳情報局10月25日『【米国:必読スピーチ】フレデリック・V・マレック記念講演でのペンス副大統領の発言(全文翻訳)』
□【全文翻訳】ペンス米副大統領による現政権の対中政策演説 2018年10月4日

参考記事:
□産経新聞10月25日『ペンス米副大統領が対中演説 尖閣諸島での「挑発行為」批判』
□ZAKZAK10月25日『「中国は人々の自由と権利を抑圧…結局は軍事だ」ペンス米副大統領、対中強硬過熱  識者「中国の解体をも見据えている」』
□AFP10月25日『米副大統領、NBAを痛烈批判 中国の「完全子会社」呼ばわり』
□ガジェット通信10月25日『NBAの試合会場前で香港デモ支持者たちがTシャツを無料配布』
□ニューズウィーク10月26日『NBAを罵倒しながら熱愛する中国人の矛盾』
□ニューズウィーク10月8日『中国に謝罪したNBAに米議員が猛反発』
□時事通信10月10日『会場に響く「香港に自由を」=NBA』
□産経新聞10月28日『【緯度経度】対中政策、日米に相違 古森義久』
□産経社説10月26日『ペンス氏対中演説 日本は足並みをそろえよ』

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 13

ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス

この記事へのコメント