中共“便衣兵”の香港侵攻…装甲車が境界を越える時

被弾失明の惨事が覆い隠される一方、記者拘束は大きく報じられた。しかし渦中の記者は中共秘密警察のエージェントと判明。情報戦が加熱する中、装甲車の大群が香港に暗い影を落とす。
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8月11日、香港では各地で散発的な抗議が続いていた。警察部隊による制圧行動は、これまでとは異なり、威圧的で暴力的だった。街頭の若者達が重大な変化に気付くのは、夜になってからである。

九龍エリア南端の尖沙咀で流血の惨事が起きた。警官隊の放った弾が抗議女性の顔面を直撃。鼻の骨をへし折られ、右眼を失明する重傷を負った。
▽右眼を被弾した抗議女性8月11日(Twitter)
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警官隊が使用したのは、ビーンバッグ弾だった。鉛粒を布に包んだもので布袋弾とも言われる。ゴム弾などと並び暴動鎮圧で用いられる非致死性の弾丸だが、顔面に当たれば重大な事態を招く。

香港警察によるビーンバッグ弾の使用は、6月中旬の大規模で抗議鎮圧で発覚した。立法会に接近したデモ隊の鎮圧で投入され、負傷者は一気に数十人に達した。
▽救護活動を受ける被弾女性8月11日(AFP)
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鎮圧用の特殊弾は、排除対象の足元か下半身に向けて放つようマニュアル化されている。だが今回、香港警察は至近距離から抗議者の上半身を狙った模様だ。

尖沙咀の惨事は、SNSを通じて瞬く間に広まった。同時に、親中共派の工作員は“同士討ち説”を拡散するが、現場に残された被害女性のゴーグルは、小粒の弾に貫かれたことを如実に物語る。
▽狙撃現場にあった女性のゴーグル8月11日(Twitter)
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香港国際空港で座り込みを続けていた若者の多くは翌12日から、一斉に眼帯を付け、抵抗と抗議の意思を示した。8月9日から静かに始まった空港内の活動も、この時を境に変容する。

警察部隊の強硬姿勢に併せ、抗議活動が過激化したのではない。疑心暗鬼が生じたのである。当局者が、変装して抗議者に紛れ込んでることが明らかになったのだ。


【デモ隊に偽装する警官の罠】

7月21日、香港北部の地下鉄駅で帰宅する抗議者らが白いTシャツを着た集団に取り囲まれ、リンチを受ける事件が発生した。襲撃犯は、犯罪組織「三合会」の構成員だった。

地下鉄職員は直ちに警察に通報したが、到着は大幅に遅れ、構成員は通り掛かった妊婦まで手にかけるなど暴虐の限りを尽くした。一部では警官隊が白Tシャツ集団を見逃す場面も目撃されている。
▽帰宅するデモ参加者襲うカウンター勢7月21日(FNN)
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「中国共産党が何かをする際に不都合と考えた場合、自らの代わりにギャングたちを用いる」

香港政治に詳しい専門家は、そう語る。2014年の雨傘運動最盛期にもデモ隊をカウンター集団が襲撃。「三合会」の構成員約20人が逮捕された。

中共が予備段階でチンピラ共を使い、市民を威圧する手法はウルムチ大虐殺の前後でも見られた。因みに代々木がこれを真似て市街地に投入したのが、しばき隊である。帰宅時を狙うスタイルも同じだ。
▽地下鉄駅に集結した「三合会」構成員7月(ロイター)
ロイター元朗駅で襲撃事件を起こした後、たむろする白シャツ集団(7月22日).jpg

だが地元マフィアを使った襲撃は、序章に過ぎなかった。香港警察は更に巧妙な手段で、デモ隊を内部から引き裂く作戦に出る。衝撃の時事実が判明したのは流血惨事と同じ8月11日夜だった。

デモ隊のユニフォームでもある黒Tシャツを身に纏い、黄色いヘルメットを被った若者が、警官と一緒にデモ参加者を取り押さえる…異様な光景がカメラの前で繰り広げられた。



デモ隊に紛れ込んだ「変装警官」だった。また別のカメラは、機動隊と共に黒Tシャツの男たちが制圧現場に向かうシーンを捕らえていた。警官がデモ参加者に変装し、出動する。決定的な証拠だ。

「デモ参加者に扮した警察官を動員した」
▽会見する香港警察幹部8月12日(新唐人TV)
8月12日会見する新唐人TV.png

動かぬ証拠を突き付けられた香港警察幹部は8月12日の記者会見で、事実関係を認めた。シビル(私服警官)が紛れ込むのではなく、抗議者に仮装して、内側から拘束・排除に加わるのだ。

「万人接機(みんなで飛行機を迎えよう)」

穏やかなスローガンを掲げ、観光客らに香港の危機を伝えようと始まった国際空港の座り込みもムードが一変。抗議の輪の中に敵が潜んでいる疑いが高まったのである。
▽香港国際空港での座り込み抗議8月12日(時事)
じじ812香港国際空港で抗議の座り込み.jpg

そして事件は起こるべくして起きた。

【中共秘密警察の記者役一発芸】

香港国際空港内の座り込み抗議は、8月9日から3日間限定で始まった。しかし、11日夜に起きたビーンバッグ弾惨事や変装警官の露見で、継続が決定する。

座り込み抗議の参加者急増を受け、空港側は12日夕方以降の全便欠航を打ち出す。翌朝に一部業務が再開されたものの、欠航が相次ぎ、機能は事実上のマヒ状態と伝えられた。
▽空港内に突入する警官隊8月13日(BBC)
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警官隊が突入したのは13日深夜だった。理由は「負傷した旅行者の救出」だった。全便欠航の最中で空港を訪れた旅行者が、抗議者に襲われて怪我をしたと言うのだ。

警官隊が突入する直前、負傷したとする3人が本土出身の支那人で、うち2人がIDカードから深圳市公安局に属する警官であることが判明する。黒いシャツを着て、抗議者に紛れ込んでいたのだ。
▽抗議者に偽装した中共公安8月13日(Twitter)
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変装警官の潜入を強く警戒していた抗議者は、空港内をうろつく不審な3人を発見。問い詰めた末、相手が激しく抵抗したことから、揉み合いになった。

1人は荷物を置いて逃走。もう1人は、駆け付けた香港警察に保護され、病院に運ばれたという。残る1人の不審者は、中共の機関紙「環球時報」の記者を自称する男だった。

「私は香港警察を支持する。さあ、私を殴ってもいいよ」
▽抗議者を挑発する記者役の支那人8月13日(Twitter)
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結束バンドで拘束された男がカメラの前で叫ぶ姿は、国際メディアでも大きく報じられた。我が国のTV各局も、女性の右眼被弾は1秒も紹介しないが、この男の不自然な絶叫は垂れ流す。

そして中共の宣伝機関は14日未明から、絶叫映像を使い回し、大規模なプロパガンダ報道を開始。香港の抗議者を「テロリスト」と位置付ける印象操作である。
▽出発ロビーでの座り込み抗議8月13日(AP)
13日、香港国際空港の出発ロビーで再開された抗議の座り込み(AP).jpg

ところが翌日までにプロパガンダ報道は沈静化し、間もなくプッツリ途絶える。米RFAが8月15日、この男が中共情報機関のエージェントである可能性をスクープしたのだ。

自称「環球時報」記者が持っていた身分証に書かれた住所が答えがあった。北京市海淀区万寿路のアドレスは、中共国家安全部の職員寮と一致した。
▽空港で拘束された中共秘密警察メンバー8月13日(大紀元)
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CCTVなど中共宣伝機関の職員がスパイであることは珍しくもないが、この男の場合は秘密警察のエージェントと見られる。海外メディアでの拡散まで工作の一環だったのだ。

そして香港人だけではなく、中共の公安もデモ抗議者に変装し、浸透している…最も危険な便衣兵の出現に「反送中デモ」の参加者は危機感を募らせる。

【中共装甲車「待機」の情報戦】

「平静に行動し、安全に努めるべきだ」

トランプ大統領は8月13日、ツイッターで香港情勢に触れた。中共当局が“鎮圧”を示唆する動きを表面化させたことに反応した格好だが、言葉は軽く、警告の段階には至っていない。

習近平政権は香港に隣接する深圳に武装警察の装甲車数百台を派遣、12日には宣伝機関を通じて大々的に伝えた。デモンストレーションであったとしても大掛かりだ。
▽深圳スタジアムに集結する武警車両8月15日(AFP)
AFP815スタジアムに集結した中国人民武装警察の輸送車や装甲車.jpeg

「スタジアムから香港まで10分しか掛からない」

中共軍東部戦区は、脅し以外の何物でもない表現を繰り返す。更に「対テロ」を標榜する訓練動画を立て続けに公開し、出撃態勢が整っていることを強調する。

武力をチラつかせて民衆を萎縮させる共産主義的な古い手口。虚仮威しに過ぎないが、香港人の受け止め方を様々だろう。抗議の規模が小さくなる一方で、先鋭化する恐れもある。
▽米衛星が捕捉した武装警察車両8月12日(AP)
武装警察部隊の車両を捉えた衛星写真=12日撮影、AP.jpg

6月の時点で筆者は「天安門の再現はない」と断言したが、不安視する声は高まるばかりだ。福島香織さんら有力な支那ウォッチャーも「現段階で可能性はゼロと言い難い」と指摘する。

「中央政府は動乱を迅速に平定できる十分な手段と強大な力を有している」

中共指導部直轄の香港マカオ事務弁公室トップは8月7日、禁断とも言える用語を口にした。「動乱平定」は、六四天安門大屠殺で中共が大義名分にしたものだ。
▽公の場で異例の発言する弁公室トップ8月7日(共同)
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また空港で起きた秘密警察エージェントの絶叫芝居を受け、同室は「テロに近い行為」と非難。林鄭月娥による抗議者の「暴徒認定」に続き、徐々に“危険なピース”が揃ってきた。

香港基本法に従って中共軍が進駐する条件は、外国勢力による武力行使に限らない。香港行政府が管理できない騒乱が発生した場合、要請を受ける形で軍は出動できる。
▽深圳に展開する武装警察部隊8月16日(AFP)
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「米国の人々は、天安門で中国の人民が自由と民主主義を求めて声を上げ、’89年に武力で鎮圧されたことを覚えている」

トランプ大統領とは対照的に、ボルトン補佐官は強い言葉で警告を発した。しかし同時に、中共指導部は武力鎮圧が、党にとって“軽傷”だったことを覚えている。
▽日本語等で訴える空港内の抗議者8月12日(AFP)
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香港返還は六四大屠殺の僅か8年後だ。凄惨な記憶が残る中、英国も他の先進国も忘れた振りをして返還を祝った。香港人を危機に陥れる深刻なボタンの掛け違いは、その時に始まっていたのだ。



最後まで読んで頂き有り難うございます
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参照:
□Hong Kong Free Press HP

参考記事:
□JB Press8月15日『国際空港大混乱で香港に迫る軍隊出動のXデー』
□大紀元8月16日『〈香港デモ〉殴られた記者は工作員の可能性、中国当局 突然報道を沈静化』
□大紀元8月15日『中国本土メディア記者「私を殴れ」と香港デモ参加者を挑発』
□大紀元8月14日『「中国公安警察」か 香港デモ抗議者、不審な中国人男性と衝突』
□ニューズウィーク8月16日『変装香港デモ隊が暴力を煽る――テロ指定をしたい北京』
□日経新聞8月14日『香港デモ隊の記者暴行「テロに近い行為」 中国が非難』
□BuzzFeed8月14日『「目には目を」香港空港を埋め尽くすデモ隊 写真から伝わる緊張感』
□大紀元8月12日『【写真】香港市民の抗議10週目、警察隊の武力行使で血だらけの若者 衝突が激化』
□日経新聞8月7日『中国政府、香港デモをけん制 「動乱なら座視せず」』
□産経新聞8月16日『トランプ氏が香港情勢めぐり習氏と電話会談へ ボルトン氏「米国民は天安門事件を覚えている」』
□BBC7月23日『 【解説】 香港の駅襲撃、関与疑われる「三合会」とは? 香港政府とのつながりは』

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