令和元年のコンチェルト…弥栄こだまする奉祝列島

胸詰まる惜別の日から一夜、列島には弥栄がこだました。天壌無窮の神勅に則り、第126代天皇が御即位。新たな令和の御宇に新たな「道」が指し示される。
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改元で一躍脚光を浴びた福岡・太宰府市の坂本八幡宮では、未明から参拝者が列をつくった。大伴旅人の邸宅があったとされる「梅花の宴」の舞台。今や令和発祥の地としても尊ばれる。
▽参拝者で賑わう坂本八幡宮5月1日(産経)
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予期せぬ「初詣の賑わい」は、列島各地で同時発生した。元日、令和初日と僅か半年足らずの間に2回のハッピー・ニュー・イヤーが巡ってきた格好だ。これに紀元節を加えると3回である。

宣伝も呼び掛けもなく、いずれも自然現象的だった。覚醒した民族の魂、或いは集合的無意識による衝動と言えば大袈裟だが、メディアの取材が後手後手に回ったことは確かだ。
▽高千穂山頂の御即位奉祝5月1日(宮崎・高原町提供)
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服喪の期間と重ならない改元は久し振りで、果たして202年前はどうだったのだろうか。改元を盛大に祝った体験は誰一人としてなく、現代に生きる日本人が今後、経験することもない。

メディアの読みの甘さを笑うまい。あの静謐を極めた平成の始まりを知る者としては、津々浦々で催された奉祝行事に神輿の渡御、皇居前に駆け付けた国民の多さに恐れ入り、そして感動した。
▽皇居前で御即位祝う人々5月1日(産経)
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名状し難い不思議な感覚。厳粛な御即位の儀式と、それを寿ぐ国民を無理に分かつ必要はなく、合わせ鏡のようにして浮かび上がるものが、日本の国柄ではないのだろうか。

「課題は色々あるけれど、今日は御目出度うと祝いましょう」

登壇した長谷川三千子教授は朗らかに、そう語った。実に合点のいく言葉だ。5月2日、在京の憂国の士諸兄が主催した御即位奉祝式典に参加した。
▽式典に続く御即位奉祝行進5月2日(撮影筆者)
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宮城遥拝と国歌斉唱と聖寿万歳。報道特番などを眺めつつ、なんとなく令和フィーバーに乗り遅れた感はあったが、この3つを実行に移したことで、やっと臣民の1人になれた気がした。

【赫奕たる太陽の帝の束帯】

山桜の花の天冠を被り、十二単を纏った舞姫が優雅に踊る。伊勢神宮で5月1日、御即位を祝う神宮独自の歌舞「萬代舞(よろづよまい)」が披露された。正に平安絵巻の世界だ。
▽4人の舞姫による雅やかな「萬代舞」5月1日(毎日)
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平成と令和の御宇を繋ぐ2日間、いにしえの世が鮮やかに蘇った。心地よいタイムトリップ感。私たち日本人が遥かな昔から連続した時間の中に生きていることを思い起こさせる。

平成最後の日、御譲位の儀式は、宮中三殿・賢所で始まった。「黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)」をお召しになられた陛下が、賢所の回廊を静かに進まれる。
▽「賢所大前の儀」に臨まれる4月30日(代表)
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黄櫨染御袍は、平安時代から伝わる最重要儀式の束帯。茶褐色にも見えるシックな色合いは、中天にかかる太陽を表す。この色は、帝以外が身に纏うことを許されない禁色だ。

笏(しゃく)を携えられた陛下が賢所の御簾を潜られ、御譲位の儀に臨むことを天照大御神に告げられる。拝礼の際の「御告文」は大和言葉だという。
▽「賢所大前の儀」を終えられる4月30日(代表)
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続いて、歴代天皇とご皇族方を祀る「皇霊殿」、八百万の神を祀る「神殿」を廻られ、同じ「御告文」を読み上げられた。三種の神器を新帝に嗣ぐことを報せる特異な性質を持つ神事である。

この神事に先立ち4月18日、両陛下におかれては三重・伊勢神宮に行幸遊ばされた。御譲位を前にした「神宮親謁の儀」で、御在位中最後の地方行幸啓となった。
▽「神宮親謁の儀」4月18日(伊勢志摩経済)
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陛下の隣には恭しく袱紗を持つ侍従の姿があった。草薙神剣と八尺瓊勾玉が随行する「剣璽御動座」だ。式年遷宮後の御親謁以来、5年ぶりとなり、平成年間で御動座は計4回に及んだ。

「支えてくれた国民に、心から感謝します」
▽最後となるお言葉4月30日(代表)
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最後のお言葉は重く、どこか切ない旋律を伴っていた。案上に置かれた剣璽も重々しい。万感の想いを胸に、私たちの平成の御宇が暮れ行く。

「明日から始まる新しい令和の時代が、平和で実り多くあることを、皇后と共に心から願い、ここに我が国と世界の人々の安寧と幸せを祈ります」

【「宜しく爾皇孫、就いて治せ」】

再び、草薙神剣と八尺瓊勾玉が案上に据えられる。御譲位の儀式から約17時間余り後、新帝の御即位に伴う「剣璽等承継の儀」が始まった。御即位とはまた別の意味を持つ「践祚」の瞬間だ。

昨日と同様、全局一斉の生中継。神器のお目見えする儀式である。違和感を覚える向きもあるだろうが、神器継承を巡って紛糾した南北朝時代の反省もある。
▽「剣璽等承継の儀」に臨まれる5月1日(代表)
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「この身に負った重責を思うと粛然たる思いがします」

今上陛下より賜る初めてのお言葉。黒一色だった平成元年の「即位後朝見の儀」とは全く趣きが異なった。今回「奉答」という素晴らしい用語は喪われたが、辛うじて「朝見」は生き残った。
▽「即位後朝見の儀」でのお言葉5月1日(代表)
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皇后陛下は純白のローブデコルテを召され、ティアラも輝かしい。これは数ある中でも「第1ティアラ」と称されるもので、昭憲皇太后から代々受け継がれる。その歴史も既に130年余りに及ぶ。

ちなみに59歳での御即位は、ハッキリとした記録が残る飛鳥時代から数えて史上2番目の高齢だという。平安絵巻などと喜ぶのも早計で、比較の対象は飛鳥時代にまで遡る。
▽赤坂御所から皇居に向かわれる5月1日(時事)
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伊勢神宮の舞歌は「剣璽等承継の儀」に合わせて始まり、また各地の神社では「践祚の儀」が執り行われた模様だ。その日、列島は目に見えない聖なるネットワークで強く結ばれたのではないか。

御即位の儀式を終えられた今上陛下は、お住いの赤坂御所に戻られた。践祚に伴い、東宮御所は赤坂御所に改められ、吹上御所は吹上仙洞御所と称される。お住いの“交換”は、まだ先だ。
▽御所に戻る車両には天皇旗が翻る5月1日(共同)
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草薙神剣と八尺瓊勾玉も当面、赤坂御所に安置される。この二種の神器は、これまで御所寝室に近い「剣璽の間」にあり、宮中・賢所の八咫鏡とやや離れることになった。

不安定な期間にも思えるが、御即位関連のメーンは、大嘗祭だ。メディアが注目する「即位礼正殿の儀」ではない。最も重要な神事は秘儀中の秘儀で唯一、大祀とされる大嘗祭で11月に営まれる。

【未来を指し示した「古の道」】

「私がかの地で何を見、何を考えたのか少しでも理解していただければ幸いである」(序文より)

令和の新たな御宇を迎え、1冊の本を繙く。タイトルは『テムズとともに』。著者名には「徳仁親王」とある。27年前に今上陛下が上梓された御著書だ。
▽副題は「英国の二年間」(撮影筆者)
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発行元は学習院総務部で、裏表紙には「創立125周年記念」の文字。当初は関係者向けの贈呈用だったが、ご成婚を機に一般に販売されたとも聞く。手元の1冊は奥付けに第四刷と記される。

今上陛下の御著作は今年4月にご講演をまとめた『水運史から世界の水へ』が出版されたが、こちらの御著作は入手困難な状態が続く。大手からの再販が待ち望まれるところだ。
▽先月発行された『水運史から世界の水へ』(NHK出版)
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「これからの二年間を過ごす異国の空気は、どんよりとした曇り空の下で夏とはいえ意外に冷たい」(前掲書1頁)

『テムズとともに』は、若き日の今上陛下の英・オックスフォード大学ご留学記で、当地での2年間4ヵ月の生活が描かれている。時期は昭和58年から60年。80年代の英国という点も興味深い。
▽オックスフォード大の御学友と’83年(時事)
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「私にとって生涯最初で最後のディスコであったかも知れない」(同102頁)

ドレス・コードで1軒目を入店拒否されたエピソード、洗濯とアイロンがけ奮闘記といった数々の失敗談も語られる。日本人観光客と街中でバッタリ出くわされた際の小咄などは、その中でも白眉だ。

ご留学中、今上陛下は英国のほか欧州各国の王室と交流を持たれた。皇太子時代の上皇陛下のご歴訪に合わせてベルギーに招かれたのを始め、スペインやノルウェー、オランダ王室とご関係を深められる。
▽オランダ国王即位式にて各国王室と’13年(ロイター)
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センシティブな政治問題には触れられないが、一方で、ご自身の研究の原点については体験を交えて語られる。初等科の折、陛下は散策中の赤坂御用地で「奥州街道」趾の標識を発見される。

「古地図や専門家の意見などにより、実は鎌倉時代の街道が御用地内を通っていたことが分かり、この時は本当に興奮した」(同150頁)

陛下は学習院大文学部の史学科に進まれ、中世瀬戸内海の交通を研究される。これが英国でのテムズ川水運史の研究に結実し、後年の「UN水と衛生に関する諮問委員会」名誉総裁ご就任に繋がる。
▽UNSGAB閉会式に御臨席’15年(時事)
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「外に出たくともままならない私の立場では、たとえ赤坂御用地の中を歩くにしても、道を通ることにより、今までまったく知らない世界に旅立つことができたわけである」(同150頁)

広い敷地の片隅で古い道の趾を見つけたことから始まった…美しい物語のプロローグであるかのようだ。「道」に夢を膨らませた皇御孫は、第126代天皇に御即位され、新たな道を切り拓かれる。
▽14万人規模となった御即位一般参賀5月4日(産経)
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そして私たち臣民も「令和の道」を共に歩む。


 〆
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※謹んで、聖上の御著書を引用させて戴きました。弥栄

参考記事:
□FNN4月19日『陛下 伊勢神宮へ退位をご報告 “神聖な場所”ではどのような儀式が行われたのか?』
□共同通信5月1日『神楽で即位祝う 伊勢神宮でみやびに 三重』
□BBC4月30日『【写真で見る】 天皇退位、宮中祭祀から「おことば」まで』
□産経新聞4月30日『【動画】天皇陛下、退位礼正殿の儀へ 午後5時すぎ最後のお言葉』
□時事通信5月1日『退位・即位儀式 平成に幕、令和時代へ』
□産経新聞5月4日『【動画】陛下、一般参賀でお言葉 「平和と発展」願われる』

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年金問題、安倍、自助努力
2019年06月21日 21:07
【安倍外交の成果】
ロシア:30回以上会って3000億円貢いだ結果、「北方領土」という言葉は使用禁止となり領土問題は棚上げとなる、
北朝鮮:圧力圧力と言い続けた結果、「ミサイル」という言葉は使用禁止となり「飛翔体」と表現。金委員長には「会う」のでなく「お目にかかる」と言わされる。
カナダ:バラマキ外交の努力が実を結び、カナダで中国人と思われる

#ナチス礼賛で話題の高須克弥さんが、映画の空母いぶきに激怒「安倍首相が下痢野郎という設定は許せない 事実だから、なおさらだ」
#安倍総理が恫喝「加計学園の認可と補助金、早くしろよ!」www.hokade.jp 自民 安倍 佐伯伸之 竹田力 懲戒請求 山口県警OB 余命時事 若杉良作 ファーウェイ

#松本人志「丸山穂高議員は不良品」
#大量コピペ発覚後、コピペ問題に関してはダンマリを決め込んでいる作者、編集者、監修者
#日本国紀 #幻冬舎 #新井浩文 #百田尚樹 #見城徹 #江崎道朗 #久野潤 #上島嘉郎 #谷田川惣 #有本香 #殉愛の真実 #殉愛
#年金問題で追及された安倍、財政審意見書から「将来の年金給付水準の低下」「自助努力を促す」との文言を削除するよう命令

 [神奈川・外村和隆・東京大学大学院]

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