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zoom RSS 間延びした米朝会談第二幕…南北分断国家の喜劇

<<   作成日時 : 2019/02/21 00:57   >>

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米朝首脳の第2ラウンドは鳴り物なしで静かに開幕する。開催地のベトナムは、かつて北朝鮮と共闘した血盟の友好国。だが、分断国家として歩んだ両国の歴史には決定的な違いがあった。
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「炎と怒り…最初はとても困難な対話だった」

トランプ大統領は2月15日、国家非常事態宣言に伴う緊急会見で北朝鮮問題についても言及。感想レベルの発言だが、繰り返し触れた。因みに「炎と怒り」は話題になった反トランプ本のタイトルである。

「私が(核の)ボタンは機能していると言った時、人々からクレイジーだと言われました。でも今は良好な関係です。私は彼(金正恩)が大好きで、彼も私のことが大好きです」
▽記者会見するトランプ大統領2月15日(AP)
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当人が言うには相思相愛で、ラブラブなんだそうだ。嘘くさい。この会見はノーベル賞推薦話が注目され、対北関連は雑魚扱いだったが、安倍首相から貰ったとする「美しい手紙」で、ふと思い出した。

「彼(金正恩)は私に美しい手紙を書いてくれた。こんなことを言っても許してくれるだろうか…私達は恋に落ちたのだ」

昨年の9月末、支持者を前にした集会での軽口だが、聞く方が小っ恥ずかしい程にラブラブ(死語)である。そして恋に落ちた割には随分長いこと会っていないような気がする。
▽シンガポールで散歩する米朝首脳’18年6月(ロイター)
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「美しい手紙」とは昨年9月上旬にトランプ大統領に送った親書だ。第2回米朝首脳会談の実施を求める内容で、ホワイトハウスの報道官は歓迎し、こう語っていた。

「非常に友好的で前向きだった。我々も首脳会談の開催を望んでおり、既に調整の段階に入っている」

シンガポール会談から約3ヵ月、米中間選挙の前に2回目の会談が開かれると予想されていた。しかし何の音沙汰なく、11月が過ぎて年も暮れ、新年を迎えた。
▽新年会見でラブコール送る3代目(KCNA)
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恋に落ちた後の微妙な距離感は、シリアスな局面が生じた為ではない。水面下でタフな極秘交渉があったのなら逆に期待も出来るが、実態は恐らく、米国にとって「無為の数カ月」が過ぎただけだ。

この辺りの事情については、2回目の会談日程をズバリ的中させた“予言者”が解き明かしている。

【「非核化1年以内」の伝言ゲーム】

「年明けの早いうち…1月もしくは2月」

昨年12月上旬、第2回米朝首脳会談の開催日について、そう占った人物がいた。ジョン・ボルトン大統領補佐官だ。“予言者”と言っても決定権を持つ当事者に近い。
▽ベネズエラ問題で会見するボルトン補佐官1月(AFP)
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ブレない対北専門家として6カ国協議でも異彩を放ったボルトン補佐官は、トランプ政権で唯一、辛口の発言を続けてきた。会談日程を言い当てた会合でも、金正恩への牽制を忘れなかった。

「北朝鮮は今のところ約束を果たしていない」

果たしていない約束とは何か? これに関してもボルトン補佐官が具体的に説明している。昨年夏、報道番組に出演した際、金正恩が「1年以内の非核化」に合意していたことを明かしたのだ。
▽記者団に追われるボルトン補佐官1月(AFP)
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ただし、これは米朝シンガポール会談での合意事項ではなく、1回目の南北首脳会談で約束したものだった。つまり期限は今年の4月27日。絶対に間に合わないと断言できる。

シンガポールで対面したトランプ大統領が念を押して有効回答を得たのか否かも不明。そして、最大の成果を文在寅が隠蔽した理由も解らない。ボルトン補佐官によると文在寅は、こう呼び掛けたという。

「非核化を迅速に進めれば、日本や韓国から経済支援や投資が見込める。1年以内に非核化をしよう」
▽板門店の第1回金正恩・文在寅会談’18年4月(代表)
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日本政府による“経済協力”はベースプランにあるとしても、日系民間企業の投資には何の根拠があるのか…他国任せの無責任な発言だが、それに対して金正恩は「はい」と答えたとされる。

伝聞の伝聞。質の悪い伝言ゲームのようで、金正恩が本当に同意したのか怪しい。文在寅が適当な嘘を吐いた可能性も捨てきれないが、米国サイドは言質を取ったものとして交渉に臨む。
▽金正恩を歓待する文在寅’18年4月(代表)
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「北朝鮮が非核化実現に向けて具体的な取り組みに着手することへの期待を明確に伝える」

抽象的なトランプ発言に続き、ペンス副大統領も歯切れが悪い。会談の成果に関するハードルは下がり、悪手である「対話の為の対話」に陥っている印象は否めない。まさに北朝鮮の術中である。

【忘れられた弾道ミサイル基地群】

米朝首脳会談の第2ラウンド決定を受け、米国のシンクタンクCSISは北の極秘ミサイル基地を新たに特定、公表した。基地施設はDMZの北250qの山岳部にあり、IRBM「ムスダン」が配備されている。

CSISは先月も、北朝鮮中部・新五里(シノリ)にあるノドンが配備された基地の存在を指摘。昨年11月に暴露した13ヵ所と合わせ、15の非公表基地が稼働中である実態が浮き彫りになった。
▽稼働が確認されたムスダン配備基地(CSIS)
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参照:CSIS11月12日『Undeclared North Korea: The Sakkanmol Missile Operating Base』

シンガポール会談で金正恩はミサイル実験場の破棄を約束したが、これまで東倉里・西海衛星発射場の解体作業が確認されただけだ。CSISの報告書は会談を前に、こう警告する。

「一部施設の破棄で合意し場合、それは未公表の基地による脅威を覆い隠すことになりかねない」
▽ソウルに最も近い北の極秘ミサイル基地(産経)
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シンガポール会談の共同声明でも、板門店宣言でも弾道ミサイルに関する合意は1行もない。「完全な非核化」すら曖昧になる中、北のミサイル施設が議題に上がらず、残存する可能性が極めて高い。

金正恩は老朽化した寧辺核施設と西海衛星発射場の廃棄で逃げ切る算段だ。米査察チームの現場検証も、クリントン時代の金倉里ご案内ツアーの再現となるだろう。

参照:H30年5月17日エントリ『金正恩の憂鬱な曲芸飛行…“極東のリビア”が泣き喚く』

「No more rockets going up.No more missiles going up.No more testing of nuclear.(もうロケットやミサイルの発射もないし、核実験もない)」
▽記者会見で強調するトランプ大統領2月15日(AP)
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トランプ大統領は会見で、首脳会談以降の成果を強調したが、北各地に点在するミサイル基地は稼働中だ。また高濃縮ウランの製造を含む核弾頭の量産も続く。

北朝鮮の術中に嵌った格好だ。金正恩の狙いは当初から対話を引き延ばし、相手の動きを封じることだった。進展は不要にして不都合。薄っぺらな過去3回の南北首脳会談を振り返るまでもないだろう。
▽パレードがメーンだった文在寅訪朝’18年9月(代表)
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2回目の米朝首脳会談も激しい応酬は見られず、次の“デート”の約束がメーンとなる。焦点はぼやけ、「歴史的な」「運命の」といった飾り文句が踊った前回の会談と比べ、メディアの関心も驚くほど低い。

その中で唯一興味を惹かれるのは、開催地にベトナムが選ばれたことだ。

【終わりなき分断国家の喜劇】

2月27日から始まる米朝会談を前に、ベトナムの副首相兼外相が平壌を訪問。続いて金正恩の雑用掛が開催地のハノイに入り、関係施設のチェックを入念に行った。
▽ハノイのホテルに入る雑用係2月16日(共同)
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「再会談の場所は北朝鮮と同じ社会主義国で米朝双方が大使館を置くベトナム」(毎日新聞)

北ベトナムは1950年に北朝鮮と国交を樹立し、金日成が度々訪越するなど結び付きは深い。ベトナム戦争では北朝鮮が空軍部隊を派遣、多くの戦死者を出した。
▽訪越した金日成迎えるホー・チ・ミン(file)
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恐らく内外のメディアはベトナムと北朝鮮の互いに似通った歴史を紹介するだろう。地球上に残された数少ない共産国家でもある。だが、両国には決定的な違いがある。

大東亜戦争の終結を経て南北分断国家となったベトナムは、激戦を勝ち抜いた北が、南の政権を打倒して統一を成し遂げた。米仏を武力で駆逐し、自らの手で民族分断にピリオドを打ったのだ。
▽南大統領府に突入する北の戦車隊’75年(AP)
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20世紀に生まれた他の分断国家とも異なる。東独や南イエメンは旧ソ連の衛星国。単純化すれば、宗主国の経済破綻でスポンサーを失った挙げ句、それぞれ西独・北イエメンに吸収される形で姿を消した。

南北朝鮮も南北ベトナムと同様に交戦し、多数の犠牲者を出した。半島の南端・北端にまで達する占領合戦を経験しつつも、再び分断状態となったのは、米支露の思惑が絡んでいたが、問題はその後だ。

「祖国統一を一日千秋の思いで渇望している全同胞の一致した念願に符合すると確信しつつ、この合意事項を誠実に履行することを全民族の前に厳粛に約束する」
▽南鮮特使を歓迎する金日成’72年(file)
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「歴史的な和解」と讃えられた南北共同声明の一節である。採択は1972年。時期はベトナム戦争の真っ最中
で、米軍が撤退を視野に入れ始めた頃だ。それから半世紀が過ぎようとしている。

南北朝鮮は、小規模な衝突こそあっても全面戦争には至らず、対立と融和を50年近くも繰り返す。米支露
参戦による第3次世界大戦勃発を避ける為に「自制した」といった歴史解説は方便だ。
▽撃沈された南鮮海軍コルベット引き揚げ’10年(聯合)
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ホー・チ・ミンは「南の解放」を有言実行したが、金一族の言う「南の解放」は国内向けのスローガンに過ぎない。権力基盤を固めることが目的で、最優先事項は金王朝の維持である。

それは南も変わらない。乱暴に言えば、共に軍事政権だった時代、南北いずれかの為政者が、自らの地位と権力を投げ捨てれば、速やかな無血統一が可能だった。
▽朝鮮式マスゲーム朴正煕バージョン’73年
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南の赤化統一を策謀する文在寅も例に漏れない。大統領の座にしがみ付き、任期中に官僚・司法・大手メディアの上層を親北派に差し替える程度だ。国家を差し出す気などサラサラない。

50年続く「対立と融和」の茶番劇に、周辺国は翻弄されてきた。タチが悪いのは、寒いコメディを演じている間、大国が南北に大きな関心を払うと知っていることだ。
▽白頭山観光を楽しむ南北の首領’18年9月(代表)
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文在寅も金正恩も、南北急接近で米支が慌てる姿を楽しんでいるかのように見える。「構ってくれ」と喚く駄々っ子は、朝鮮戦争の後から少しも成長していない。




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参照:
□ホワイトハウスHP2月15日『Remarks by President Trump on the National Security and Humanitarian Crisis on our Southern Border』

参考記事:
□ブルームバーグ2月20日『北朝鮮、米との首脳会談で寧辺施設解体に応じる可能性−重要度低下で』
□産経新聞1月23日『北朝鮮に未公表のノドン基地 日本の大半を射程』
□日経新聞2月17日『北朝鮮、秘密ミサイル施設が続々 米シンクタンク』
□産経新聞2月16日『北朝鮮に未公表の中距離弾道ミサイル基地 米研究所公表 沖縄やグアム射程』
□産経新聞H30年11月15日『北朝鮮非公表のミサイル基地 山間部に地下施設』

□CNN’18年12月5日『ボルトン補佐官、「北朝鮮は約束果たしていない」 2度目の首脳会談に期待』
□日経新聞’18年8月20日『北朝鮮、1年内の非核化に同意 米補佐官が明かす』
□読売新聞H30年9月11日『金正恩氏、トランプ氏に2回目の首脳会談を提案』
□産経新聞(共同)H30年9月30日『金正恩氏と「恋に落ちた」トランプ氏』

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