国境を越えるウイグル人狩り…証言者が怯える非情の報復

鉄格子の扉と窓…潜入映像がウイグル強制収容所の実態を暴く。生還者の勇気ある告発が続く一方で生まれる新たな悲劇。恐るべき民族浄化の波が、周辺国にも打ち寄せる。
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「ウイグルがこの世に残るかどうか、この世がウイグルを残すか。我が民族を世界に残す為に、中国共産党に対して『NO』というひと声を上げて下さい」

イリハム・マハムティさんの渾身の叫びが、新宿に響いた。2月3日、都内で開かれたデモに、我が国で暮らす多くのウイグル人と日本人有志が参加。東トルキスタンの凄惨な現状を街頭で訴えた。

「中国は収容所の100万人のウイグル人を解放せよ」



拘束者数「100万人」は、昨年7月のデモの際も横断幕に刻まれていたが、当時と比べ一般層の認知度は格段に上がったのではないか。ただし今回は、大虐殺犠牲者の追悼がメーンだ。

「ウイグル人が行った平和的なデモは最後に虐殺に発展してしまった…」

1997年2月5日、東トルキスタン北部の小都市グルジャ中心部は、中共軍の無差別射撃で血に染まった。200人以上が虐殺され、約4,000人が拘束。処刑も相次いだ。



発端は、ウイグルの風習である地域の集まり「マシュラップ」の禁止令。禁則を破ったとして地域の指導者が逮捕される事態に至り、抗議活動が始まる。反発に対する中共側の回答は、銃弾だった。

グルジャの悲劇はウイグル人社会に強い衝撃を与えたが、大規模弾圧の序章に過ぎなかった。2009年7月のウルムチ大虐殺、そして絶望収容所の誕生…出発前の挨拶でイリハムさんは、こう述べた。

「22年が経って、もっと酷くなっているのがウイグルの現状です」
▽挨拶するイリハム代表2月3日(YouTube)
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楽観的な未来予測は外れ、「最悪」は随時更新される。中共の対応が飴と鞭ではなく、鞭と鞭であることはチベット現代史を省みれば判る。今後も国際社会は「22年間」と同様の沈黙を続けるのか?

【“最初の生還者”に非情な報復】

「地面に固定された鉄製の椅子に手足を鎖で縛られ、24時間、4日間、拷問を受けた」

“奇跡の生還者”は、淡々とした口調で語った。昨年11月、強制収容所に収監されていたオムル・ベカリさんが来日。会見で明かした収容所の実態は、陰惨なものだった。

「天井に両手と両足を広げた状態で、逆さまに吊るされました。冬は裸足にされ、氷の上に立たされて、冷たい水を掛けられる」
▽収監時の模様を実演するオムルさん11月23日(FNN)
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オムルさんは、拷問で殺された収監者を2人目撃したという。毎週、4~5人が監房から居なくなり、新しい収監者が入ってきたが、居なくなった者がどうなったのかは判らない…

大多数のウイグル人収監者と違い、オムルさんはやや特殊だ。東トルキスタン生まれだが、カザフ人とのハーフだったことから約10年前にカザフスタンに移住。旅行会社の副社長を務めていた。

「5人の武装警官が突然現れ、手を縛られたあと頭に黒い袋を被せられて車に押し込まれました」
▽来日会見後の独占インタビュー(NHK)
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2017年3月、東トルキスタン東部ピチャンの父親宅を訪ねた時の悪夢だ。収監は半年以上に及んだが、カザフスタン側で“失踪”が騒ぎとなり、外交官の働きかけもあって解放に至った。

そして昨年2月、国際メディアを通じて“死の監獄”を告発。「ただ一人の生還者」として注目を集めるが、新たな悲劇が待っていた。中共当局が告発の報復で家族を手当たり次第に拘束したのだ。

「全員が拘束され、80歳の父は収容所で亡くなりました」

カザフスタンに戻った今もオムルさんの安全は確保されていない。中共当局に雇われたと思しき者が「喋るな」と脅してきたこともあり、昼間であっても外出を控えていると言う。
▽涙ながらに語るオムルさん11月23日(FNN)
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オムルさんの初告発から数ヵ月後、秘密を知るもう1人の人物が意外な形で登場する。

【先鋭化するキルギス反中デモ】

昨年5月、カザフスタンで1人の女性が捕らわれた。容疑は不法入国。被告となったカザフ系支那人のサイラグル・サイベイさんは、公判で思いもよらない陳述を始める。

「当局は『施設』と言っているが、実態は山の中の監獄です」
▽出廷したサイベイさん’18年7月13日(AFP)
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東トルキスタンの幼稚園で働いていたサイベイさんは、’17年に転勤を命じられる。新たな勤務先は強制収容所だった。そこで彼女は収監者の洗脳に携わった他、極秘文書にも触れられる立場にあったという。

「あの『施設』について法廷で証言した私は、チャイナの国家機密を漏らしたことになります」

小さな法廷の大きな証言は、独公共放送ドイチェ・ヴェレなど海外メディアによって拡散された。ただし、どこの収容所から、どうやって脱出したのか…詳細不明な部分も多い。
▽以前の職場時代のサイベイさん(ワシントン・ポスト)
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サイベイさんは執行猶予付きの有罪判決を受けたが、最悪の強制送還は免れた。米の外交専門誌フォーリン・ポリシーによると、カザフスタン国内で送還に反対する世論が高まっていた為だという。

謎めいた解説である。国外で大きく報道されたとはいえ、カザフスタンで中共への不信感・警戒感が滲み出た送還反対論が噴出するだろうか? そんな疑問を氷解させる出来事がつい先日起きた。
▽キルギスで行われた大規模反中デモ1月17日(地元紙)
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東トルキスタンと接するキルギスで反中デモが頻発。1月17日に首都ビシケクで催された抗議活動は200人以上に膨れ上がり、警官隊との衝突で約20人が拘束される事態に発展した。
▽警官隊と対峙する反中デモ参加者1月17日(EPA)
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デモの背景には、支那人移民の大量流入が挙げられる、一部メディアは強制収容所の問題もあると指摘する。多くのキルギス系ムスリムが不当拘束され、収監されていることが判ってきたのだ。

昨年12月、夫が収容所送りになったキルギスの女性が仏AFPの取材に応じ、救出を訴えた。夫は東トルキスタン国内の支社に出張した際、中共当局に拘束され、収監されたまま既に1年以上が経つ。
▽夫の解放を訴えるキルギス女性12月8日(AFP)
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この涙の告発に先立ち、昨年11月末には家族が消息不明となった人々の合同会見がビシケクで開かれている。“失踪”した家族が収監されたことは確実だ。
▽収監者の家族による合同会見11月29日(AFP)
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ウイグル絶望監獄の存在は、隣接する中央アジア諸国に激しい動揺をもたらしつつある。それでも監獄の
壁は高く堅牢で、突破口を見出すには至らない。

【国境を越える“ウイグル人狩り”】

見た目に重く堅牢とわかる鉄格子付きの扉。檻房は廊下の奥まで何室も連なる。そして外を望む窓にも鉄柵が嵌め込まれている。これを“教育・研修施設”だと言い張るのが、中共指導部だ。
▽強制収容所の内部’18年8月(Bitter Winter)
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イタリアのWebサイト「Bitter Winter」が昨年11月、決定的なスクープを発表した。新たに建設された強制収容所の内部映像と写真である。

撮影日は8月。場所は奇しくも’97年に大虐殺が起きた悲劇の街グルジャだ。建設中で収監者の影はないが、監視モニターの稼働状況から、完成目前と見られる。



「部屋のすべての窓が、鉄格子と鉄条網により、厳重に塞がれている。『学習者』の食堂の窓も例外ではなく、収容されている者が逃げ出すのはほぼ不可能だ」
参照:Bitter Winter11月26日『最新の独占映像:新疆のウイグル族を対象にしたもう一つの「教育による改心」のための強制収容所の実態』

撮影者の安全に配慮して潜入したのは「記者」と表現するに留まり、手法は明かさない。それでも工事関係者等からの流出ではなく、対象を狙って撮影していることが窺える。
▽グルジャ強制収容所外壁の通用口(Bitter Winter)
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「Bitter Winter」は伊の社会学者マッシモ・イントロヴィーニャ氏が昨年5月に開設したサイトだ。各国の大手メディアが、このスクープ映像を借用しないのは知名度の低さだけが理由と信じたい。

遅ればせながら今年に入ってCNNもウイグル関連の独自情報を放映している。貴重な証言の採取ではあるが、中共提供のヤラセ映像をインサートする悪い癖は治らないようだ。
参照:CNN1月21日『Uyghur refugee tells of death and fear inside China's Xinjiang camps』
▽グルジャ収容所内のゲート(Bitter Winter)
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教育施設で楽しく合唱するウイグル人生徒…中共情報機関が案内する海外メディアご一行さまツアーで撮影されたプロパガンダ映像だが、そんなものは例え1秒でも垂れ流す必要はない。

中共指導部が主催したツアーには、外交官バージョンもあった。インドネシアやマレーシアなどイスラム圏の主要国に加え、カザフスタンやキルギスが含まれていたことが懸念される。
▽生還したカザフ女性は取材禁止に’18年7月(AFP)
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法廷で証言したカザフの女性は判決後、メディアとの接触を禁じられ、事実上の軟禁状態に置かれた。そして間もなく、東トルキスタン国内に暮らす姉妹の拘束が判明する。

またキルギスの外相は、自国民の大量収監疑惑についてコメントを拒む。背後にチラつく北京の影。経済援助を受ける周辺国の政権が、ウイグル難民の拘束・送還に協力する恐れもある。
▽逮捕者が続出したキルギス反中デモ1月17日(産経)
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中共がP5に居座る中でUNは何も出来ない。米議員が提起した弾圧実行者の個人制裁案も実現は不透明。現時点で可能な策は、国境を越える“ウイグル人狩り”に歯止めをかけることだ。

グルジャの悲劇から22年、ウルムチ大虐殺から10年…状況は悪化の一途を辿り、欧米やトルコ、そして我が国で暮らす在外ウイグル人が生命の危機に晒されている。



最後まで読んで頂き有り難うございます
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関連エントリ:
H27年7月15日『死地に送られたウイグル人…中共が“難民強奪”の暴挙』

参考動画:
YouTube「中国は収容所の100万人のウイグル人を解放しろ!」新宿駅南口に響くフリーウイグルの声2019.2.3日本ウイグル協会『グルジャ事件追悼デモ』※2
YouTube【2019年2月3日 新宿】グルジャ事件追悼デモ2019/2/3デモ前

参考記事:
□Bitter Winter11月15日『ウイグル族を対象とする強制収容所は「学校」なのか、刑務所なのか?写真や映像を含むBitter Winter独占リポート』
□FNN12月8日『8カ月鎖で縛られ続けた日々 中国“ウイグル強制収容所” 奇跡の生還者が衝撃の証言』
□NHK11月28日『BSワールドウォッチング:衝撃証言 ウイグル族“不当収容”の実態』
□AFP7月21日『中国が存在否定の「再教育キャンプ」、カザフの裁判で元職員が証言』
□大紀元’18年7月20日『新疆、カザフ族2500人収容中 再教育施設元職員が法廷で暴露』
□ニューズウィーク’18年8月27日『同胞の保護か中国への配慮か、板挟みになるカザフスタン』
□AFP12月21日『夫がウイグルの収容施設に、キルギス女性が涙の訴え 中国への圧力求める』
□産経新聞1月25日『キルギスで反中デモ相次ぐ「女性奪われた」との風聞広まる』
□AFP1月18日『キルギスで反中国デモ 経済的影響力の増大に抗議、21人逮捕』
□ロイター1月17日『Kyrgyz police disperse anti-Chinese rally』
□ブルームバーグ1月8日『「再教育収容所」と国連が見なす施設、中国が外交団に披露』

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