トランプ節が止んだ瞬間…拉致被害者奪還の黒ばむ栄光

皇居の雅な佇まいに感銘を受けたトランプ大統領。上機嫌の初訪日だったが一瞬、表情が翳る。半島有事の際、拉致被害者をどう救い出すのか…それは我が国が長年放置してきた問題でもあった。
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天皇陛下・皇后陛下におかれては11月6日、皇居・御所にて来日中の米トランプ大統領夫妻と御引見された。正門を抜けて参内した大統領の車列は30台に及んだ。
▽御所に向かう大統領の車列11月6日(産経)
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「陛下は全ての国民から深く慕われていると伺っており、その陛下と今回、お目に掛かれて大変、光栄です」

トランプ大統領は、そう奏上した。これに対し、天皇陛下は感謝のお言葉を述べられた。御引見は約20分。テキサス銃乱射事件に哀悼の意を表されたシーンを除き、終始、穏やかな雰囲気で行われた。
▽大統領夫妻との御引見11月6日(代表)
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天皇陛下は、日米両国の戦争の歴史とその後の友好関係についてお言葉を述べられた。またペリー来航による開国の歴史に触れられると、トランプ大統領は熱心に耳を傾けていたという。

不敬ながら好事家の注目は、天皇陛下に迎えられた際のお辞儀の角度だった。平成21年にオバマ前大統領が記録した「90度」と比較してどうなるのか…測定の結果は「ゼロ度」だった。
▽大統領夫妻をお出迎え11月6日(代表)
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欧米スタイルである。オバマの深いお辞儀は日本国民に感銘を与えたが、米国内では批判も上がり、局地的な論争にも発展。平成26年の再来日時、オバマは封印せざるを得なかった。

一方、10月31日に参内した比ドュテルテ大統領は「45度」超えを記録。天皇陛下におかれてはお気になされないと斟酌しつつも、米比大統領の“参内対決”はドゥテルテ大統領に軍配が上がった。
▽謁見するドゥテルテ大統領夫妻10月31日(FNN)
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「とても美しく、大変居心地が良い所ですね」

御引見でトランプ大統領は御所を絶賛した。建築物に造詣が深く、興味を惹かれた模様だが、先立って来日した娘のイバンカ大統領補佐官も、サプライズ散策で見上げた皇居についてコメントしている。

「畏敬の念を覚えた」
▽二重橋前のイバンカ補佐官11月4日(インスタ)
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率直な感想だ。トランプ父娘は今回の訪日で大和文化に触れる機会は少なかったが、我が国が保つ文化・伝統の真髄に接したことは間違えない。
▽迎賓館で鯉に餌やりする両首脳11月6日(AFP)
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そして、来日中のイバンカ補佐官の胸には、ある時、ブルーリボンが飾られていた。象徴的である。トランプ父娘の連続来日は、拉致事件に再び眩いスポットライトが当てられる機会となった。

【父の隣で衝撃受けた息子と娘】

「ご夫人と共に熱心に聞いて下さった。罪なく連れ去られた者が助けを求めている現実を知って貰い、一刻も早く、必ず帰って来られるようにして欲しい」
▽面会後に会見する横田さんら11月6日(産経)
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面会後、記者会見に臨んだ横田早紀江さんは、そう語った。拉致被害者家族16人とトランプ大統領の面会は、11月6日午後2時過ぎから、約30分に渡って行われた。

「大統領は、八重子が幼い子供を残したまま拉致されたという事実にショックを受けていた」

田口八重子さんの兄で家族会代表の飯塚繁雄さんは、トランプ大統領が厳しい表情で話に聞き入っていたと明かす。面会した際、家族の胸元には拉致被害者の顔写真があった。
▽家族らと面会するトランプ大統領11月6日(ロイター)
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「大統領が、平和で明るかった頃の私たち家族の写真を自ら手に取って眺めていたのが印象的でした」

横田めぐみさんの弟・拓也さんによると面会は、それぞれと会話を交わす形式で行われ、トランプ大統領は1人1人と握手したという。拓也さんは今回の面会を実現させた功労者である。
▽米で会見する横田拓也さんら9月13日(共同)
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横田拓也さんは9月中旬、拉致議連メンバーらと共にワシントンD.Cを訪問した。大統領とはすれ違いになったが、これが大きな影響を与えたとホワイトハウス高官は指摘する。

「米政府高官がワシントンを訪れた家族と面会し、その時に聞いた話を大統領に伝えた所、強い関心を示し、心を揺さぶられていた」

家族会の地道な活動が直後のトランプUN演説に繋がり、訪日時の面会を実現させた。同時に、影の立役者となったのが安倍首相だ。昨年11月の初会談で、拉致事件について言及した。
▽就任前の安倍・トランプ会談’16年11月(内閣広報)
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この時、会談に同席したのが就任前のイバンカ補佐官だった。拉致事件の説明に対し、父親よりも娘が大きな衝撃を受けていたとも言われる。このエピソードは政治家・安倍晋三の出発と似ている。

【対面から“対話”の苦い記憶】

昭和63年、有本恵子さんの消息を伝える手紙が届く。上京した両親は、安倍晋太郎幹事長を訪ね、娘が拉致された経緯などを説明。隣で話を聞き、強い衝撃を受けたのが、秘書時代の若き安倍晋三だった。

「愛する人を奪われ40年間苦しんできた人達が、今でも苦しんでいることを世界中の皆さんに知って欲しい。トランプ大統領や世界の人々と協力し、拉致問題の解決のために全力を尽くしていく」
▽面会会場で挨拶する安倍首相11月6日(代表)
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拉致被害者家族らとの面会で安倍首相は、そう挨拶した。今年11月15日は、横田めぐみさん拉致事件発生から40年となる。引き裂かれた家族にとって、余りにも長い歳月だ。

「ずいぶん昔に拉致された方も大勢いる。家族の方々から悲しい話をたくさん聞いた。北朝鮮によって拉致された被害者達は、語学の勉強の他、様々な目的で日本から拉致された。とんでもない行為だ」
▽面会の印象語るトランプ大統領11月6日(代表)
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力強い言葉だが、一方で主権国家が自国民の大量拉致を長い期間解決できないことに対し、怪訝に思う側面もあるのではないか…また被害者家族も期待と不安が入り混じる。

「当時は若く希望もあったが、今は疲弊しきっている」

横田早紀江さんは面会前、そう漏らしていた。家族会と米大統領の面会は、ブッシュ時代の2006年に初めて行われた。「最も心を動かされた面会」と大統領は語った。
▽ブッシュ大統領との面会’06年(AP)
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しかし、ブッシュ政権は金正日との取引に応じ、北朝鮮をテロ支援国家指定からも除外した。続くオバマ大統領も面会に応じたが、北対応に大きな変化はなかった。何度も煮え湯を飲まされてきたのである。

歴代政権の対北政策を根本から否定するトランプ大統領であっても、同じ詐欺に引っ掛からないという保障は何処にもない。これまでとの違いは、家族ではなく被害者本人が面会に加わったことだ。
▽会見する曽我ひとみさんと飯塚繁雄さん(産経)
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「一緒に拉致されて39年、(母は)まだ日本にいません。一日も早く、笑顔の母親を見たい」

曽我ひとみさんは、トランプ大統領にそう訴えた。拉致被害者自身が、米国はもちろん外国首脳と対面したケースは過去にない。曽我ひとみさんの決意の参加は、米国の反転・ステップ後退を躊躇させる。
▽ブルーリボン着用のイバンカ補佐官
内外のメディアは特に注目しなかったが、平壌は意味の重大さに気付き、嫌な匂いとして嗅ぎ取ったことだろう。

【中共軍“丸投げ”の耐え難き恥辱】

「日本の多くの人々が、本当に私がUN演説で致被害者に触れたことを嬉しく思ってくれました」

日米首脳会談後の共同記者会見でもトランプ大統領は、繰り返し拉致事件に言及した。その中の1回は、北朝鮮に残された拉致被害者の救出に質問が及んだ時だった。
▽日米首脳会談後の共同会見11月6日(代表)
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仮に米国が軍事攻撃に踏み切った場合の拉致被害者救出について、どう考えているのか? 核心をつく直球の質問。それに対するトランプ大統領の回答は抽象的だった。

「もし金正恩委員長がその人達を返してくれるということになったら、それは多くの特別なことの始まりになると思います」

拉致被害者を取引に使うことを避ける意図があった模様だが、歯切れが悪かった。トランプ節が止んだ瞬間だった。元より拉致被害者・特定失踪者の救出は、我が国に突きつけられた深刻なテーマだ。
▽栄誉礼を受けるトランプ大統領11月6日(産経)
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事態は切迫し、最悪に近い状況に向かっている。朝鮮有事勃発後、救出作戦に従事する部隊は、米海兵隊とは限らない。北部一帯には中共軍が雪崩を打って侵攻する。

国境を突破した中共軍が拉致被害者救出に成功した場合、習近平指導部は徹底的に政治利用を図る。帰国の際は経由地の北京で記者会見が開かれ、作戦に関わった部隊長は英雄扱いされる。
▽旧瀋陽軍区の中共軍陸戦隊7月(共同)
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被害者生還は大きな喜びだ。しかし、中共軍が救い出したという屈辱的な事実は長年に渡り、多くの日本国民を悩ませ、苦しめるだろう。本来、名誉を授かるべき自衛隊員の無念は、計り知れない。

海自や陸自の精鋭は、奪還作戦を遂行し、成功に導く練度と覚悟を持ち合わせている。ただ、作戦実行の根拠となる法体系がないのだ。全ては憲法9条に帰結する。
▽横田基地で日米将兵を前に演説11月5日(産経)
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憲法改正の手続きは恐らく間に合わず、問題の性質上、特措法で対処できる次元のものではない。また、在外邦人の救出を可能にした改正自衛隊法は、派遣先の政府の同意を必要とする。

拉致事件続発から約40年、金正日の自供から15年。自ら奪還する策を講じず、我が国は北朝鮮に“お願い”するだった。そして緊張が高まった今春に至っても、焦眉のテーマに浮上することはなかった。
▽国会でモリカケ追及宣言する野党11月6日(時事)
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秋の特別国会でも年明けの通常国会でも議論は交わされないだろう。無関心で無責任、愚鈍な戦後日本の姿そのままだ。一部の国民は眠り惚け、国会議員もメディアも狸寝入りを決め込む。

同じ刻、拉致被害者や特定失踪者は凍土の共和国で、祖国より来たる同胞に救い出され、家族の元に還る未来を夢に描いている。



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関連エントリ:
4月18日エントリ『拉致被害者奪還作戦の夢幻…半島有事で絶望する国家』

参考記事:
□アゴラ11月7日『横田基地トランプ演説で自衛隊を“隠した”NHK』
□産経新聞11月6日『【日米首脳共同会見・詳報】トランプ大統領「北朝鮮の脅威は看過できない。戦略的忍耐の時代は終わった」安倍晋三首相「全ての選択肢がテーブルの上にあるとの立場を支持する」』
□産経新聞11月6日『拉致被害者家族が面談「尽力」の約束に高まる期待』
□時事通信11月6日『曽我さん、早紀江さんと面会=拉致問題「解決する」-米大統領』
□NHK11月4日『トランプ大統領と拉致被害者家族の面会 “心揺さぶられ実現“』(魚拓)
□時事通信11月6日『トランプ氏「大変光栄」=天皇、皇后両陛下と会見-皇居』
□産経新聞11月6日『天皇、皇后両陛下、米大統領夫妻とご会見 ペリー来航による開国の歴史も話題に』
□産経新聞11月6日『トランプ大統領、お辞儀なし 右腕2回軽くたたいて別れ惜しむ「御所は陛下が設計?」の質問も』
□AFP’09年11月17日『オバマ大統領による天皇陛下へのお辞儀、米国で論争』

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この記事へのコメント

2017年11月09日 00:09
こんばんは。
憲法9条などという、非現実的な空想主義の塊は一刻も早く「現実的な条文へと改革」すべきです。

憲法9条は平和の象徴ではなく、現実逃避の象徴でしかありません。

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