民主党征伐のTPP国会…議論すら阻む情報隠蔽
「交渉の中で、国益を最大限追及することは当然のことであり、国益に合致するよう全力を尽くして交渉に臨むべきものであると考えております」
野田佳彦は短い答弁の中で、不似合いな「国益」という言葉を2度も使った。10月31日の衆院代表質問。質問に立った谷垣総裁は、TPP問題について、こう主張した。
「政府が情報を提供しない為、国民的議論が全く熟していません。極めて稚拙な取り運びとなっている」
▼代表質問する谷垣総裁10月31日(産経)
自民党執行部も明確な態度を示していないが、これが現状では「結論」に近い。推進か、反対か…その際、判断する材料に乏しいことがTPP議論の最も重要な問題だ。
TPP推進派は、交渉に参加しなければ詳しい情報が得られないと言う。一方の反対派は、交渉のテーブルに加われば、降りることは許されないと言う。堂々巡りの平行線。議論を闘わせる土台すらない。
▼代表質問聞く野田佳彦10月31日(産経)
しかし、最初から論理破綻しているのは、やはり推進派だろう。詳細な情報がない中で推し進めることは、無謀である。いわゆる、めくら判。他人が書いた供述調書に署名して裁判に臨むかのようだ。
「9月16日に外務省を通じて受け取っていた」
厚労相の小宮山洋子は10月27日、薬価の決定方法がTPP交渉のテーマになる可能性を認めた。薬価基準制度の見直しは、公的医療保険の根幹を揺るがす。
これまで民主党政権は「公的医療保険制度は対象外」と説明していたが、完全な嘘だった。情報を隠していただけではなく、国民を欺いていたのだ。それでも小宮山は翌日の定例会見で、こう開き直った
「制度の在り方そのものが議論の対象になっていないという趣旨なので、今まで説明してきたことと齟齬はない」
参照:厚労省HP10月28日『小宮山大臣閣議後記者会見概要』
▼参院復興委の小宮山10月6日(産経)
TPPの金融サービス分野には含まれていないと強弁するが、意図的に情報を隠蔽したのだ。本来なら、野党とメディアを巻き込んだ即時辞任論に発展しかねない大きな問題である。
同時に小宮山による情報統制は、政府が一定の情報を得ながらも野田内閣が握り潰している実態を明らかにした。これでは、不都合な事実を隠しているのではないか、と国民が疑心暗鬼に陥るのも当然だ。
民主党内からも批判が噴出しているが、一部反対派議員も「不都合な事実」を隠している。
【日米FTA賛成 TPP反対の分裂症】
「農協がTPP反対を喚いて走っている」「信念か宗教的関心か知らないが、合意形成させないことを自己目的化している」
仙谷由人は10月29日の講演で、JAを気違い呼ばわりし、更に党内の反対派を糾弾した。この発言に対し、党内反対派の急先鋒・山田正彦前農水相は、仙谷の政調会長代行辞任を強く要求した。
経済連携PT総会を舞台にした民主党内の対立は先鋭化する一方だ。一部メディアは党内反対派の切り崩しが進んでいると報じるが、実際、PTでの意見集約は11月7日に先送りとなった。
▼仙谷の辞任求める山田前農水相ら(産経)
山田前農水相が会長を務める民主党の「TPPを慎重に考える会」には約190人の所属議員が名を連ねている。この数は、民主党国会議員の半数に迫り、正に党内2分の状態だ。
だが、奇妙でもある。あの売国政権が誕生した2年前の総選挙で、民主党はマニフェストに日米FTA締結を打ち出した。確かにTPPは2国間FTAと異なり、制度面にまで踏み込むなど“自由度”が高い。
それでも、日米FTAを選挙公約に掲げて当選した議員が、この期に及んでTPPに猛反対する様子は、滑稽だ。まず初めに「日米FTA賛成、TPP反対」の論旨を明確に語る必要がある。
▼民主党マニフェスト2009「外交」
民主党がマニフェストに日米FTAを盛り込んだのは、突然だった。一部の候補者も寝耳に水の事態。農業関係者から反発の声が上がり、慌てた民主党は「締結」を「交渉促進」に置き替えて選挙戦に臨んだ。
参照: 民主党マニフェストPDF(改訂版)
朝令暮改の選挙対策も詐欺政党ならではだが、当時の民主党執行部の意思は明確に日米FTA締結だった。これと同時に打ち出したのが、約1兆円規模の農家への戸別所得補償だったのである。
10月21日に国会内で開かれた「総決起集会」では、鳩山由紀夫も反対の声を上げた。しかし、ルーピーこそ日米FTA締結を謳ったマニフェスト作成の最高責任者だ。
▼総決起集会に参加する鳩山10月21日(産経)
また民主党内のTPP反対・慎重派の多くが、菅政権時代に「マニフェストの履行」を強く訴えた議員と重なる。党内分裂どころか、支離滅裂な状態。政党の体をなしていない。
そして、僅か2年前の民主党マニフェストについて“忘れたふり”をしているのが、既存メディアだ。
【最初のトリック報道は1年前】
「内閣府は25日、TPPに日本が参加した場合には、実質GDPが0.54%(金額ベースで2.7兆円)押し上げられるとの試算を公表した」
TPP参加で2.7兆円アップ…メディアがこぞって報じた数字が10年間の累算だったことがネット上で批判を浴びた。信じ難い捏造だ。このトリック報道で、反対論に舵を切った国民も多いだろう。
▼JAの反TPP大規模集会10月26日(ロイター)
元のデータを調べようと内閣府のHPを探ったが、関連資料は公表されいなかった。内閣府が資料を配ったのではなく、民主党のPTで内閣府の政務官が口頭説明したのだという。
近年稀な大誤報である。そもそも民主党が国会を無視し、党内の非公開部会でTPP議論を進めていることが問題なのだが、内容をリークする民主党反対派にも原因がある。
▼報道陣を追い払う鉢呂11月2日(ANN)
「試算通りなら経済効果はGDPの0.54%に過ぎない。余りにも小さ過ぎる」
反対派の参加議員は、そう語っていた。通常、GDPを10年単位で説明することはない。記者が勘違いするのも頷けるのだが、そこにTPP問題に対するメディアの偏向体質が見え隠れしていた。
反対派が鋭く指摘するように、内閣府は昨年も同様の発表していた。TPP参加で実質GDPが、0.48%~0.65%(2.4兆~3.2兆円)の増加となるとした試算だ。
参照:国家戦略室HP22年10月27日『包括的経済連携に関する 検討状況(PDF)』
その後、この数字が10年間の累算だったことが、試算をまとめた本人の説明で明らかになる。唯一、累算であることを見出しに記した朝日新聞は、過去のトラブルを認識していた模様だ。
反面、累算を明示しなかった大半のメディアは、過去の問題を知らなかったか、意図的に省いたことになる。報道機関として失格だ。そして菅政権によるデータ詐欺が、異常な事態をもたらす結果となった。
▼JAによる昨年11月の抗議集会(JA)
上記の詐欺データが公表された直後、主要紙が一斉にTPP推進論を社説に取り上げたのだ。朝日新聞も褒められたものではない。当時の社説では「10年間の累積」を省き、こう唱えていた。
「内閣府は、TPPに参加すればGDPが3兆円押し上げられると試算した。その数字の妥当性はともかく、FTAが貿易拡大と経済成長に役立つという効用は過去の例からも明らかだといえよう」
参照:社説比較くん22年10月26日~28日
横浜APEC開幕を前に、首相官邸がTPP参加へ前のめりになっていた時期だ。その頃から党内に異論はあったが、主要紙は推進論で横並びとなった。この現象が、TPP問題最大のミステリーである。
【TPP解散の覚悟はあるか】
民主党政権批判では歯に衣着せぬ産経新聞も、TPP問題では当初から推進派だった。その論旨は、日米同盟の補強と中共牽制。安全保障を絡め、一部の保守層をストレートに刺激する主張だ。
野田政権下でTPP関連の情報隠蔽が明らかになる中、産経としては追及を行いたい所だろうが、既に手遅れ。社説は結論なのだ。主張を揺るがす事実が新たに見つかっても、覆すことは出来ない。
▼都内で開かれた反TPP集会&デモ(AFP)
昨年10月の時点で、主要紙がTPP参加支持で一色になることは決まっていた。問題は支持を打ち出した背景だ。当時、政府側は交渉参加国と接触して具体的な内容を調査すると説明していた。
各メディアが、政府を上回る詳細な情報を持っていたことは有り得ない。中身を精査せず、いきなり賛成したのだ。通商問題では、過去に例のないケース。ウルグアイ・ラウンド当時とは隔世の感がある。
「情報提供に努め、できるだけ早期に結論を出したい」
▼参院で答弁する野田佳彦11月2日(時事)
11月2日の参院代表質問でも野田佳彦は、コピペ答弁を繰り返した。APEC開幕直前の10日か11日に会見を開き、TPP交渉参加を宣言するとの観測が強まっている。
しかも、輿石が恫喝していた通り、党としての最終決定は政府・三役会議が行う見通しだ。議論が続いたPTはガス抜きの場に過ぎなかった。相変わらず民主党政権の政策決定プロセスは、途上国以下だ。
▼三役決断を宣言する輿石10月29日(NHK)
APECで野田が交渉参加を宣言した後、恐らく民主党内の反対派は徐々に尻窄みになるだろう。大半が信念のないヘタレ集団だ。国会承認の段階で反旗を翻し、離党するような議員は少数に限られる。
野党が斬り込むチャンスは今だ。年明けでは遅過ぎる。政府・与党の情報隠蔽を執拗に国会で追及し、一気に政局化させるのが、正攻法だ。内閣不信任案を早期に提出すれば、民主党の混乱は加速する。
大紛糾のTPP国会、あるいはTPP解散も決して不可能ではない。TPP不参加による日米関係の悪化を懸念する声もあるが、日米同盟は本筋の防衛面で強化を図れば良い。
▼役員会に臨む自民執行部11月1日(産経)
民主党政権は、身勝手な普天間騒動で日米関係を最悪の状態に追いやった。米国との関係を重視するなら、民主党を国政から排除するのが先だ。
民主党政権は発足後、まともな外交交渉を行った経験がなく、1人のタフ・ネゴシエーターもいない。党内のPTでさえ、意見集約が出来なかったのだ。対米交渉での完敗は目に見えている。
焦点は、自民党の現執行部に覚悟があるか否かだ。
〆
最後まで読んで頂き有り難うございます
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【Side story】
話題の論壇誌『JAPANISM』の第4号が発売されました。巻頭グラビアを飾るのは、三国士議員の拘束事件直後に竹島・鬱陵島に向かった山本皓一カメラマンの最新ショット。スリリングな上陸リポートも貴重です。稲田朋美議員は、城内実議員との対談に登場。野田政権を徹底糾弾しています。
今号の総力特集は「中国・コリアに蹂躙される日本社会」。都内で勃発した“新異国街戦争”など社会の裏面から中共の情報戦、そしてCX韓流問題まで網羅。そして尖閣ビデオの一般公開1年にあわせ、一色正春さんのロング・インタビューも掲載。興味深いテーマが並んでいます。
エントリ参考記事:
■日経新聞10月25日『TPP参加「GDP2.7兆円押し上げ」 内閣府が試算 外務省は交渉9カ国の参加目的説明資料』
↓(産経は29日に“訂正”記事)
■産経新聞10月29日『「10年で2.7兆円」の経済効果は小さすぎ? TPPの政府試算に波紋』
↓(野田は詐欺数値で正面突破…読売も加担)
■読売新聞11月2日『TPP参加なら効果は2・7兆円超…野田首相』















この記事へのコメント
・・・自民党は、「TPP参加に反対する決議」を出しているはずですが。
ソース:http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/114222.html
既知の事でしたらご容赦を。
TPPに参加すればアジアの成長を取り込めて云々、というのは現状を見る限り幻想でしかありません。
何せ交渉参加国のメンバーを除いてみるとアメリカ以外に内需が大きい国がありません。
オバマはTPPによって輸出を倍増し、雇用を増大させることを国是としていますから、輸出先として好ましい市場を持つ国を引きずり込まなくてはなりません。
それが日本です。TPP交渉に参加するということは、巨大な罠に真正面から飛び込んでいくようなものです。
そのようなおろかな行為を行う現状ではありません。まずは国内の復興・復旧および売国奴の一斉追放が最優先課題です。
以前こちらでコメントをさせていただいていた者です。
内部暴露サイトウィキリークスにも、今回のTTPはアジアとりわけ日本の経済価値を奪いとることが主目的であることが書かれてます。
国内外とも整合性を欠く素人の政治にアメリカも確変を狙っているかのようです。今後も更新を楽しみにしてます。