中・印の綱引きに加勢せよ…ビルマの遠い夜明け

中共は日中首脳会談で人道問題に“理解のポーズ”を示したが、国連では非人権大国として振る舞っている。弄ばれているのがビルマだ。その悩める国で続く中・印の綱引きを、見守っている手はない。
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2年ぶりに日中韓首脳会談が行われ、共同声明に初めて「人道上の懸念」として北朝鮮の拉致問題が盛り込まれた。

冬の欧州を歴訪していた安倍首相は、14日、常夏のフィリピン・セブ島に入った。翌15日の「東アジアサミット」が外遊の終着点となる。

14日には、市内のホテルで日中首脳会談も開かれた。儀礼的な3ヵ国会談よりもこの2国間会談がメーンだった。
▽写真:時事=AFP
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この席でも安倍首相が日本人拉致問題を取り上げたのに対し、温家宝は一歩踏み込んだ答えを返した。

「日本国民の関心は理解している。必要な協力は提供したい」

中共指導部が拉致問題で「協力」の姿勢を公式に示したのはこれが初めてだ。外務省によるとこれまでは「理解している」といった表現に留まり「協力」を明言したのは初のケースで「大きな進展」だとしている。

しかし、やはり中共の外交戦略は一筋縄ではいかない。温家宝はこの席で4月上旬か中旬に訪日する意向を明らかにした。

靖国神社の春の例大祭は4月21日から23日までだ。

完全に照準を絞っている。

温家宝の訪日は春季例大祭の直前か、当日になる可能性もある。日本政府が政治テーマとして避けているにも関わらず、中共は脅迫じみた訪日スケジュールを組んで来そうだ。

靖国神社を政治利用しているのはどっちなのか? 安倍首相の参拝を牽制する悪質な“靖国迎撃作戦”である。

中共は戦略として日本批判を弱めているが、本音は変わらない。それは拉致問題への「協力姿勢」でも同様である。

類例のない人権抑圧機構である中共が、人権について正常な認識を抱くことは永遠にない。

その実例がNYの国連安保理で示された。

【35年ぶり中ロが拒否権で共闘】

日中首脳会談が開かれたセブ島では、前日までASEAN首脳会議が開催されていた。

そこではASEAN共同体を5年前倒しして実現させる方針が打ち出された。難航も予想されるが大きく路線転換を図るものだ。

ASEANは発足当時から「全会一致」「内政不干渉」の立場を貫いていたが、ビルマ(ミャンマー)の民主化問題を巡り、やや機能不全に陥っている。常に域内の民主化問題が足枷になり、国際社会での重みも相対的に低下し続けているのだ。

周辺の大国であるインド・中共が経済的に台頭する中で存在感も薄れ始め、ASEANには大胆な改革が求められている。

ASEAN各国が議長声明の文言を最終調整している最中、NYから国連安保理で取り上げられていたビルマ(ミャンマー)人権決議案廃棄の報せが届いた。

中共とロシアが拒否権を発動して潰したのだ。
▽中ロが拒否権行使した安保理(日本時間13日未明)
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中ロが同時に拒否権を行使したのは1972年以来、実に35年ぶりだ。中共一国でも8年ぶりの発動である。

決議案はビルマ(ミャンマー)の政治犯を軍事政権が無条件で釈放する事など、人権状況の改善を要求したものだった。

これに対して中共は、人権問題が自国に飛び火することを恐れて拒否権を使ったのだった。

“悪しき前例”を作らせない為である。

人権問題はやはり中共の弱点だ。国際社会が人権を叫び、圧力を掛けて来ることを最も恐れている。今回も差し出された踏み絵を避けるしかなかった。

繰り返し述べている持論だが「人権・民主化・環境」の3点セットで、我が国は中共に激しいプレッシャーをかけていくべきである。その3点セットは、国内の老害サヨク・反日ファシストを追い詰めるにも有効だ。

その一方で中共がビルマ(ミャンマー)の擁護に走ったのは、単に人権問題を嫌った為ではなく、背景には資源絡みの実利を狙う下心も隠されている。

【資源パラノイアが狙う海への出口】

昨年末、中共はビルマに対し低利融資など約44億円の経済支援を表明。3000万ドルの債務免除も決定している。

この地域でも中共の目的は資源の獲得である。

ビルマには石油など豊富な資源が眠っているが、中共はアンダマン海の天然ガスに標的を定め、1500キロもの長大なパイプライン敷設計画を進めているようだ。完成すれば台湾有事で移送ルートが絶たれてもインド洋から直接エネルギーを運び込める。

中共からの支援額は既に、港湾整備や天然ガス開発などで4000億円を投じているとの見方もある。

まさに資源パラノイアだ。しかも、各先進国が人道問題で足踏みする隙をついての投資である。それはビルマ軍事政権の延命にも繋がるものだ。
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隣国であるインドもビルマへのエネルギー協力で合意するなど関係強化を進めているが、明らかに劣勢だ。

地図を見るとビルマはシナ・インドの2大国と国境を接しているのが分かる。中印が主導権争いが激突するエリアだ。

しかし、ビルマと国境を接するのは雲南省で、そこはごく最近まで漢民族の支配地域から遠かった。少数民族が多く暮らす山岳部で、歴史的に見てもビルマと支那が隣国であったという感覚はないだろう。

元々、ビルマは英国に支配・統治されていた関係でインドとの結びつきが大きい。以前、筆者は1ヵ月ほどビルマ国内を巡ったが、都市部にはインド系住民の姿が目に付き、インド風のお茶を出すチャイ屋も多かった。中華料理店も少なくないが…

【大東亜戦争の残り香漂うビルマ】

「ビルマ」という国名を使っているが、多少理由がある。ミャンマーという国名は軍事政権が改称したもので、民主化支持層は今もその国号を認めず、嫌っている。
▽亡命ビルマ人の抗議inインド(AFP)
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我が国では外務省がいち早くビルマ表記からミャンマーに改め、マスメディアも横並びで改称したが、海外メディアは旧来のBurmaをそのまま使用しているケースが多い。

日本人にとってはビルマという国号の方が親しいだろう。

漢字で緬甸。泰緬鉄道に残るのが頭文字の「緬」だ。

筆者の皮膚感覚からするとビルマは極端に親日的な国だった。

そこには大東亜戦争の偉大な影がある。最終的には残念な結果になるが、ビルマを支配していた英軍を駆逐して首都に入城した我が日本軍は熱狂的に迎えられた。

ビルマの真の独立は昭和18年8月1日だ。日独伊とタイが承認して、独立国家となった。

大東亜戦争の精華はビルマにこそ見られる。いずれ改めて書く機会があると思うが、ビルマの国父アウンサン将軍やネ・ウィン大統領は、日本軍が軍事訓練を行った「ビルマ30人の志士」のメンバーだ。

そのことから戦後も日緬は関係が深かった。経済発展した我が国は早くからビルマに経済支援を送り、水力発電所の建設などには莫大な投資を行った。

良好な関係が綻び始めたのが、89年の軍事政権の登場だった。民主化運動の指導者アウンサン・スーチー女史の拘束や政治犯の取り扱いをめぐって旧西側諸国とミャンマー軍事政権は常に対立し、関係修復は事実上不可能になった。
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かの地の国民にとっても非常に不幸な事態だ。

【日印で軍事政権を揺るがせ】

ビルマ(ミャンマー)は97年にASEANに正式加盟した。当時ASEANの大親分だったスハルトが「隣人を見殺しにはできない」と一喝して加盟が決定したという。

しかし、ASEAN諸国はその後もビルマの取り扱いに苦労し、常に首脳会議では人権問題が足枷になってきた。前述したように「内政不干渉」の原則があるからだ。

その一方で、東南アジアの専門家によると、関係国はビルマが民主化して発展することを望んでいないとも言う。

もとから資源にも人材にも恵まれているビルマが経済発展すると、やがてはこの地域のリーダーとなる可能性があるのだそうだ。

国際関係は複雑だ。ASEAN諸国にとっては、今のままビルマが二歩も三歩も遅れた国であることが望ましいのかも知れない。

だが、隙をついて中共が深く入り込んでしまった。その焦りが、今回セブ島で打ち出された「内政不干渉」の原則撤廃の新方針に結びついている。

「隣人を見殺し」にしない為に、もっと早くASEAN諸国は立ち上がるべきだった…

人権問題で立ち往生している場合ではない。

昨年秋、国連安保理で人権問題が提起された時、賛成に回った日本に対してミャンマー軍事政権は猛烈に反発した。

「日本は、第二次世界大戦中、ミャンマーを占領し、国民を残虐に扱った。ミャンマー人は寛大に日本人の罪を許したのに、日本はそれを無視し、アジアの国に救いの手をさしのべるのではなく、超大国に加担した」

名指しで痛烈に非難することは今までになかった。

戦時中に我が軍がかの地で残虐な云々というのは言い掛かりに過ぎず、そこには中共の入れ知恵が感じられる。

だが、一方でこの非難は「救いの手を差し伸べてくれ」と訴えかけているようにも読み取れる。

ならば是非とも我が国はビルマの人権問題に介入しようではないか。勿論、日本一国ではない。中印の綱引きを見守るだけではなく、「民主主義」という価値観を共有するインドに加勢するのだ。

しかも、それは地下の潜った反政府活動家に資金援助するといった裏工作であっても良い。インドを通じての間接支援である。戦後の日本が避けていたのは、そうした“謀略”とも言える外交戦術だ。

中共との戦いは、何も直接対決だけではなく、第三国を舞台にしてこそ繰り広げられるべきだろう。

21世紀、我が国がアジアで指導的な立場を保ちたいなら「清く正しい」外交だけでは立ち行かなくなるだろう。

中共が強める周辺国へ影響力を先回りして叩く。
悪の支配を許さない断固たる姿勢が必要なのだ。

アジアの盟主が日本であるこは100年も前から決まっている。

大東亜戦争に続き、再びビルマに夜明けをもたらすのも我が国であってほしい。


         〆

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この記事へのコメント

マルコおいちゃん
2007年01月15日 22:10
このビルマとラオスへのシナ人の移民流入が深刻化しているようです。それはシナの人口膨張という歴史的文明的な出来事が継続していることなのですが、ご指摘のようなインドとの綱引きを、人口の流出という卑劣なやり方でシナが実行しているのでしょう。ビルマの軍事政権にも同情すべき点があるので、民主陣営はあまり彼らを追い詰めずにシナから遠ざけるようにした方が長期的には各国の国益にかなうのではないでしょうか?民主主義絶対主義になってはいけません。民主とはあくまで相対的概念なのですから。
2007年01月15日 23:52
>マルコおいちゃん
ビルマの軍事政権は脆弱で北朝鮮とは比べようもありません。民主運動家の弾圧もそれほど陰惨ではないようで、仏教社会も力強く残っています。邪魔をしているのはスーチー女史にこだわり過ぎる欧米かも知れません。88年の民主化運動には英国による謀略の匂いが嗅ぎ取れます。もっと新しい形で民政移管のプロセスを探る方がベターでしょう。
駱駝
2007年01月16日 00:20
我が国から分捕った金で途上国を手なずける
シナは厄介だが見習うべきところもある。
わが国もシナが相手のときは奴らの十八番「でっち上げ」をしてでも対峙するようなしたたかさが必要だ。

なんといってもわが国には親中(シナ)心のある売国奴がノサバッテおることが一番の問題だ。

神谷晃良
2007年01月16日 00:48
しかし、中国人(漢民族)の周辺諸国の入植(民族浄化)って何とかなりませんかね?ウイグル自治区での漢民族の比率は、当初7パーセント(’50年)から40パーセント(’91年)超になり、とうとうウイグル自治区でも最多民族となってしまっています。チベットは、最近チベット鉄道が開通し、NHKが大々的にPRしていました。(中共のチベット制圧完了宣言?)チベット虐殺200万人弱、その現場指揮官を、最も長きに渡って務めたのが胡錦濤。奴等は、南太平洋まで進出しているみたいだし、例えは失礼かも知れ無いですが、地球規模での癌細胞みたいです。彼等は、先住民族を粛清しながら広がっているイメージが有ります。しかし、ミャンマー馴染みが無いですね。一昨年のスマトラ大地震での津波被害も、軍政下の報道規制で、詳しい被害が(世界に)知らされなかったのでは?アネモネさんは、訪れたと言われるが、何者?
2007年01月16日 01:08
>駱駝さま
中共と綱引きをする場合は、旧来の優等生外交では最初から太刀打ちできないでしょう。言葉は刺激的ですが謀略的な工作もあってしかるべき。ただ、その前にハイレベルの諜報機関が必要ですね。ついでに売国奴も掃除できます。

>神谷晃良さま
チベットはかなり危機的です。
漢民族の流入と民族浄化を同時に行っているので、正に悪性の癌細胞が増えるように他国を浸食していますね。
ビルマは90年代に旅行しましたが、実に良かった。首都ものんびり。それでも軍政が固定化したので賄賂太りの軍人が増えているそうで心配です。
ごんべえ
2007年01月16日 20:46
国連での中ロの拒否権発動は、正に価値観の違いを示すもの。彼らに対話で迫るのは、所詮無理な注文です。

ミャンマーよりもビルマの呼び名の方が良いですね。
今の軍事政権が日本非難をするのは捏造専門国シナの入れ知恵に違いない。例の「F機関」によれば、大東亜共栄の大御心のもと、日本軍がビルマ独立を目指すタキン党有志に軍事訓練を施し、またBIAを編成してビルマ国民の民族意識を覚醒させ、独立への道筋をつけたのでした。だから、ビルマは日本に感謝こそすれ非難する謂われはない。それが歴史の真実です。
一読者
2007年01月16日 21:31
アネモネさん更新早く!
うらら
2007年01月16日 22:00
いつも思うのですが、日本は中国から積極的に撤退して、市場経済の洗礼(不況)を中国にお見舞してやるべきです。

貧しいアジア諸国に中国がいかに日本から金を巻き上げたか成功例を示しているのですから、日本はその成功例を潰す必要があります。ドメストの宣伝ではありませんが、「元から絶たなきゃダメ」です。日本がアジアの開放を目指した大東亜戦争を逆手に取られるパターンは、アメリカが用意したシナリオで、そこをつかれると同盟国としては弁明しがたく、別の打撃(不況)を加えるのが適当だと思います。
2007年01月16日 22:01
>ごんべえ様
「ビルマ」という国号を懐かしむ方も多いようですね。素敵な国名です。ミャンマーの呼称は民主運動家が嫌っているので使いませんが、旧首都は現地読みではヤンゴーンの方が近いとか…複雑です。海南島の訓練とビルマ独立までの流れは感動的です。バー・モウ元首相の『ビルマの夜明け』が泣ける内容なんですが、手元になし…いつか紹介したいです。

>一読者さま
了解です。でも、東アジアサミット絡みなので内容は固いです。温家宝が因縁付けて来ないのでパンチ力不足w
2007年01月16日 22:09
>うらら様
中共を追い込むには通商問題や金融問題で可能な面もあるようです。米民主党はそういった策もケースバイケースでチラつかせるみたいですが、我が国の財界人にはそんな知恵もなく、いいようにあしらわれてますね。市場開放が民主化に結びつくなんて幻想です。
淡々
2007年01月18日 00:12
安倍氏とシラクとの会見を朝日は大統領は「日中が良好な関係を持つことはとても重要。首相が中国を訪問し、日中首脳会談が実現したことを高く評価している」と語ったhttp://www.asahi.com/international/update/0113/006.

同じ会見についてルモンドでは<ディネ、会談を終え、安倍氏を見送る際にシラクは「ミャンマーを除いたアセアン諸国によろしく伝えてください」>。(ソース消えてました)シラクもはっきり言うなと思わず笑ってしまいましたが。。。
会談内容はプレスリリースが配布されるか現場に居合わせた人に取材しか知りえないと思うのです。

どちらもシラクが語ったとしても何を記事にするかで記者、メディアの主張が理解できます。朝日は本当に分かりやすいというより媚中ぶりが露骨になってきました。メディアとしての使命を終えてると思います。

安倍氏の訪欧は日本でもっと評価されてしかるべきと思います。しかしNATOと協力関係を事実上のものとするには時間がかかりそうです。

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