米朝“裏取引”が行われた?…ヒル次官補の不可解な足跡

突然、発表された「6カ国協議」再開の報せ。北京を極秘訪問していた北朝鮮の金桂冠はヒル米次官補に何を語ったのか?推論に推論を重ねて米朝“裏取引”の中味を探る。
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日本時間31日午後9時過ぎ、衝撃的なニュースが飛び込んできた。

まず中共外交部が「米中朝3国の代表者は近く都合の良い時期に6カ国協議を再開することで合意」と発表。

続いて午後10時過ぎ、北京で米ヒル国務次官補が会見し「11月か12月に再開できる」と年内に協議が開かれる見通しを語った。

またヒル次官補は「北朝鮮は復帰条件を付けなかった」として無条件復帰を受け入れたとも述べている。つまり金融制裁解除の裏取引はしていない、という意味だ。

6カ国協議が再開されたとしても、金正日が振り上げた拳を素直に下ろすかどうか、不透明だ。

しかし、今回の米中の発表で明らかになったことがある。
それは、何の前触れもなしに米朝の3代表が北京に足を運び、中共の武大偉をホストに非公式会合を行ったという事実である。

一部報道によれば31日の会合は、7時間の長さに及び、米朝の2国間の直接交渉も一定時間行われた模様だ。

▼北京時間の午前中…米中2国間協議
▼3カ国代表が出席し昼食会
▼午後…米朝2国間協議
▼最後に…米中朝の3カ国会合

注目するのは、午後に開かれた米朝の直接交渉だ。

この時に決定的な極秘事項が取りまとめられたと見る。ズバリ、この席で米朝は重大な取引を行ったのだ。

【ヒル次官補ナゾの香港入り】

ヒル国務次官補と金桂冠は、いつから北京に入っていたのか?

それが最初に浮かんだ疑問だ。

一週間ほど前、ヒル次官補が突然のように香港を訪問したことが謎を呼んでいたのだ。

以下は外務省HPにある事務次官会見録だ。
日付は10月23日の午後5時
**********
(問)ヒル国務次官補が香港等に行かれているのですが、そちらの話などは報告が入っていますでしょうか。

(事務次官)何も聞いていません。

(問)今回のヒル国務次官補の香港訪問の狙いというのは。

(事務次官)聞いていません。
**********
これは質問した記者が、ヒルの香港訪問が謎で、何の情報もなく、慌てていたことを物語っている。

一方で、谷内事務次官が額面通り何も知らなかったとは考えられない。

仮に、この時点で米国から何の情報も受け取っていなかったとしたら、次の6カ国協議で我が国の完全な外交敗北が決定する。

そうは思いたくない…というのが理屈ではなく心情だ。

ヒル次官補は、10月21日に香港に入り、23日に出国している。

この時、香港には北朝鮮籍の「カンナム1号」が停船し、香港当局から検査を受けていたがシロだった。
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また、米軍が追跡していた北朝鮮籍の不審船も香港に向かっていたが、船首を返し、香港に寄港する見込みはなくなっていた。

ヒルが香港で会っていたのは、米領事館関係者と香港当局者で、金融制裁の効果と現状をめぐる説明を受けたとされている。

わざわざ国務次官補が足を運ぶ必要があるだろうか?

更に、ヒル次官補は25日にはフィジーに飛び、太平洋島嶼国会議に出席している。

ここで行われた記者会見で奇妙な発言をしてるのだ。

【米中の極秘協議が行われた?】

記者団に対してヒル次官補は、米中関係はこれまでにないほど緊密になっている…との認識を示す。
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そして
「究極的に真価が問われるのは、北朝鮮を交渉の席に復帰させ、核計画を放棄させることができるかどうかだ」
と表明しているのだ。

6カ国協議復帰で究極的な真価?

おかしい…

ブッシュ政権は金融制裁を含め北朝鮮に対してはほぼ圧力一本で臨んできた。安保理の1718号決議も制裁強化がメーンで協議復帰を促す文句は飾りに過ぎなかった。米国は6カ国協議の無意味さを嘲笑していたのだ。

ハズレることを期待しつつ予測すると、22日頃に香港で中共の高官と接触したヒルは、米国の協議復帰と本格的な米朝2国間交渉を受け入れたのではないか…

中共の古くさい外交ルールに、交渉では同格の担当者同士が顔を付き合わせるという鉄則がある。

その為に大使館関係者では役不足で、ヒルが直々香港にお出ましし、米中協議を行ったのでないか?

では、米国が譲歩したのは一体何か…

【金正日を釣上げた餌】

まず、金桂冠が平壌から駆けつけるほど、北朝鮮にとって嬉しい知らせだったと推理できる。
米朝とも中共のメンツを立てる為に今さら協議に出席したりはしない。

金正日が飛びつく3種類の「エサ」

★エネルギー援助再開
★金融制裁解除
★体制保証

まず、核開発停止の見返りであるエネルギー供与は、第4回6カ国協議の共同声明で記されたものだ。協議再開となれば、この最終的なコミュニケをベースにして話し合いが進められる。

しかし、前提は核開発放棄だ。30年来の核開発を捨てるとなれば人民軍幹部が黙っていないだろう。軽水炉と核兵器では取引が成立しない。

次に、金融制裁は1718号決議を読むとWMD絡みの疑いが晴れた場合にはケースバイケースで解除できることになっている。手持ちの資金に窮している金正日にとっては最も食いつきたいエサだ。

一部の識者は、軍幹部に手渡す現金や高級品がなくなった為に、金正日の権威と信頼が失墜していると指摘する。

その通りだろう。今や北の軍幹部は国家の威信より目先のカネが大切だ。仮に金正日が造反を恐れ、クーデターの予感に震えているれば、その可能性はある。
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最後に体制保証。

これは北朝鮮が一貫して主張している魂の叫びだ。その割には、実際に何なのか、誰も理解していない。

一般的には「金王朝の存続」だが、金正日を正統な国家元首と国際社会が認めようが認めまいが、無関係だ。
途上国にはいくらでも正統性を欠く独裁者がいる。
内政に関して他国が口をはさむ所ではない。

ここは土井高子に尋ねてみよう。

3年前に土井はシンポジウムで「体制保証をせよ」と声高に叫んだ。

「侵されるかもしれない、侵すかもしれないというままでは対話は難しい」

判り易い。
なるほど、米国が決して武力行使に踏み切らない…ということか。

しかし武力行使しないという結論ありきなら、そもそも外交は成立しない。それは交渉ではなく、単に「意見調整」と言う。
陰にでも体制保証を打ち出せば、その時、米国の負けが確定する。

ただし…

「臨検すれども交戦せず」
という密約ならば、米国にとっても好ましいように思える。

無難な北朝鮮籍の船舶だけを大々的に臨検して、お茶を濁す。全部がヤラセで、怪しいブツは出てこないと始めから知ったうえで検査するのだ。

それで米中朝3国のメンツは保たれるだろう。

さて…ホントのところはどうなのか、蓋を開けてみなければ判らない。

ひとつ言えるのは、6カ国協議再開に道筋がついたことで、11月7日の米中間選挙でブッシュ共和党への風当たりは弱くなった。

そんな打算も働いていたのではないか。

我が国はどうすべきか?

ない知恵を絞って改めて考えてみよう。かなり真剣で、深刻だ…

                                     〆
***********************
【side sotry】
最後まで読んで頂き、有り難うございます。
冒頭に記しましたが、このようなエントリは推論に推論を重ねて論評する悪い例です。

筆者は、我が国の頭越しに米中朝が密約を交わすことを非常に恐れてきましたが、今回は、日本だけ蚊帳の外に置かれた感がどうも否めません。

北朝鮮対応での主張は、前にも宣言しましたが「日本の単独武力行使」です。暴論承知ですが…

今後、より注意深く、識者の観測を見ていきたいと思っています。

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