臨検に海上警備行動を発令…北朝鮮船追撃の切り札

周辺事態法の適用は野党とカルトの妨害で見送られる公算が強まってきた。そこで浮上してきたのが切り札「海上警備行動」だ。かつて工作船を取り逃がしたこの法令が役に立つのだろうか…
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【特措法も周辺事態法もNG必至】

安保理の1718号決議を受けて、政府が法整備に取りかかるものと信じていたが、野党や公明党の強い反対で「周辺事態」の認定は見送られる可能性が高まってきた。
当の防衛庁も周辺事態法の適用に難色を示している。

結局、わが国は米豪軍が主体となる臨検では後方支援に徹することになりそうだ。それもエネルギーと食糧の補給など兵站の確保がメーンで、アラート区域には極力接近しない方向で、話が進んでいるように見受けられる。

もちろん兵站の確保は戦場において重要だ。貶める意図はない。

こうした政府の方針は、米国の意向を反映させたもののようだ。

20日に米国のシーファー駐日大使と久間防衛庁長官が会談した際、米国の方針が改めて示されたという。

「米国はキューバ危機のような海上封鎖を想定しない。各国が情報を共有し、大量破壊兵器の移転を防ぐ事を目的としている」(産經新聞10月21日)

米政府が想定しているのはPSI(大量破壊兵器拡散防止構想)の枠組みだという。ブッシュの肝いりで始まったのがPSIだ。妥当な線だが、やはり米国は腰が引けている。

北朝鮮との決戦で米軍が策定した作戦行動の中には、CUBA LITEと呼ばれる海上封鎖作戦も含まれていた。作戦の詳細は不明だが、キューバ危機の際にケネディが決断したあの歴史的な海上封鎖を小規模にしたものだと伝えられる。

わが国も米国も中共も、北の核実験強行が予想より早かった為に対応策がまとまらず、後手後手に廻った感があった。

そこで、北朝鮮が2回目の核実験を行わない限り、いったん様子見が続く可能性が高い。

今週になって緊迫度は、かなり低くなったと見られる。

日本政府も新法制定に辿り着くまでの厄介な議論を先送りするだろう。
その中、新たな対処法として浮上しているのが「海上警備行動」だ。

それはどのようなものか?

【工作船をみすみす取り逃がした】

まず臨検に絡んだ政府の方針と具体的な対処法を確認しておこう。(参考:産経新聞 21日)

▼領海及び周辺海域で海保の巡視船による警戒活動を強化

▼海自の護衛艦、P3C哨戒機が船舶の航行を監視

▼不審な活動の確認後、海保・米軍等に情報提供

▼不審船が逃走した場合、護衛艦が追尾

▼停止命令を拒否した場合に海上警備行動を発令

長い長い道のりである。

過去に海上警備行動が発動されたケースは2回。

1:能登沖不審船事件(99年3月)
2:シナ原潜領海侵犯事件(04年11月)

意外に思われるかも知れないが、初の船体射撃が行われた奄美沖の工作船自沈事件では海上警備行動は発動されていない。海保の隊員が負傷した後に正当防衛射撃を行った。

参考になるのは、同じ北朝鮮による能登沖工作船事件だ。

どのようにして海上警備行動が発令されたか、ドキュメント風に追ってみよう。

実にスリリングだ。

■3月21日午後10時
島根県の防衛庁美保通信所が能登沖の不審電波を傍受

■22日早朝
海自八戸基地からP3C対潜哨戒機が発進

■同午後3時
舞鶴基地から護衛艦「はるな」「あぶくま」イージス護衛艦「みょうこう」が緊急出動

■23日午前6時42分
P3Cが佐渡島沖西18キロの海域に不審船を発見

■同 午前9時25分  P3Cは能登沖東46キロの海域でも別の不審船を発見

■同 午前11時
「はるな」が能登沖の不審船を視認
船腹には「第2大和丸」の文字
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   (海保撮影:第2大和丸)
海自はこの時点で海保に連絡する。海上警備行動の発令がない限り、海自が不審船に接触することは出来ない。

■同 午前11時30分
9管本部のヘリが「第2大和丸」を視認

■同 午後0時10分
「はるな」が別の1隻を視認    船腹には「第1大西丸」の文字

■同 午後0時半頃
本物の「第2大和丸」が兵庫沖で操業中と判明  偽装船と確認

9管本部は巡視船「ちくぜん」はじめ新潟・直江津などから巡視船を急行させる

■同 午後1時18分
海保の航空機が「第2大和丸」に停船命令

■同 午後2時
「第1大西丸」に停船命令

2隻とも命令を無視。11ノットで北へ航行

■同 午後6時半
海保の巡視船「ちくぜん」が「第2大和丸」に2.2キロまで接近

周囲にはイージス艦「みょうこう」海保の大型巡視船「はまゆき」

「ちくぜん」は国際漁業法に基づく立入検査を求め、国際信号機や音響信号を用い停船を命令

■同 午後7時過ぎ 
「第2大和丸」は急に加速し28ノットで逃走開始

■同 午後7時半
9管の岩田登本部長が威嚇射撃を指示

威嚇射撃指令は昭和28年以来、46年ぶりの決断だった。

■同 午後8時
「ちくぜん」が20㍉機関砲を連射

■同 午後8時31分
別海域で大型巡視艇「なおづき」が「第1大西丸」に対し断続的に威嚇射撃

■同 午後9時過ぎ
最高速18ノットの巡視船「さど」は追跡断念 

他の大型巡視艇も高速の追跡に耐えられず、帰還命令が下される

■同 午後9時12分
「ちくぜん」のレーダーから「第2大和丸」消失

海保に代わり高速で追跡していたのは海自の護衛艦だった。
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    (海保提供:艦名不明)

■同 午後11時47分
「第1大西丸」が一時停船 
(この停船は今でも謎だという)

…そして遂に!

■24日午前0時50分
初の海上警備行動を発令

■同 午前1時19分
「第2大和丸」に対し、イージス艦「みょうこう」が5インチ砲による警告射撃開始 

■同 午前1時32分  
「第1大西丸」に対し、護衛艦「はるな」が警告射撃開始

■同 午前2時24分  
「みょうこう」が射撃停止

■同 午前3時12分  
「第2大和丸」の周囲にP3Cが150キロ対潜爆弾4発を投下

■同 午後3時20分  
「第2大和丸」はADIZ(防空識別圏)を通過   捕獲できず

■同 午前4時1分  
「第1大西丸」の周囲にP3Cが対潜爆弾4発を投下
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  (海保撮影:偽装「第1大西丸」)

■同 午前4時20分  
「はるな」が スクリュー停止のを意図し、長さ350mのナイロン網を投擲、失敗

■同 午前5時41分  
再度、P3Cが対潜爆弾4発投下

■同 午前6時6分  
「第1大西丸」がADIZ通過

■25日早朝   
防衛庁は不審船2隻の北朝鮮・清津入港を確認

【海自は手を出せないのか…】

なぜ、北朝鮮の工作船が余裕で逃げ切ったのか?

答えは簡単だ。

海上警備行動で海自に許されているのは、警察行動だからだ。北朝鮮の工作船は始めから威嚇射撃を受けても、船体への直接攻撃がないことを知っていた。

海上警備行動は、自衛隊法93条に規定される警察官職務執行法第7条に準拠している。

簡単に言えば、警察行動しか取れないのだ。
当たり前だが、軍隊と自衛隊の大きな壁がここにある。

法律的な解釈を退けて判りやすく説明するとこうだ。

▼警察行動=対象の保全、確保
▽軍事行動=対象の無効化(破壊含む)

憲法9条が諸悪の根源である。この軍事行動が認められていない国家は我が国だけと言って良い。

最早、絶望的だ。

自衛官の命よりも憲法の経文が大切にされているのだ。

先のエントリでは「北朝鮮特措法」の制定を力説したが、そこでも同じ問題が発生してくる。

我が国はPSIのコアグループとして構想を推進してきたが、それも国内法の範囲と規定されている。

恐らく、海上警備行動の発令にあたっては、閣議決定、内閣総理大臣の承認というタイムロスが問題視されるだろう。しかし、ドキュメントにあったように追跡をスタートしてから警告射撃に至るまでには、ある程度の時間がかかるため、その点はクリアーされると考えられる。

問題は職務規程の一点にある。

これは防衛出動に際しても同様だ。対象(敵)の破壊活動は正当防衛が認められて初めて可能となる。

北朝鮮の工作船を取り逃がした海自は今でも悔しい思いに駆られているだろう。結局、わが国は再三、北朝鮮に嘲笑されても何一つ変わらなかった。

多くの過激な保守派論客が叫ぶように「日本は一発喰らわなければ何も出来ない」のだ。

* * *
また絶望的で厭世観の漂うエントリになってしまったが、極論を提示してみよう。

ものスゴい裏技があるのだ。

それは…

自衛隊のクーデターによる即時憲法の停止だ。
議会も憲法も裁判所も一時ストップ。
三権は軍(自衛隊)に移譲される。

北朝鮮にミサイルを撃たれると判明したら、自衛隊員は蹶起せよ。

憲法より大切なものは国民の命と国土だ。

******************
【side story】
今回はPSIの実像を語ってみようと考えていたが、ドキュメントを書いているうちに、方向が歪み始めて、何が言いたかったのかも忘れた!失礼。
筆者は軍事系には弱いのだが、イージス艦とかが登場すると何故か興奮してしまう。

ドキュメントは尊敬する高世仁さんの『追跡!北朝鮮工作船』(小学館文庫)を全面的に参考にして時系列で再構築したもの。

この本は2000年の春に出版されたものだが、当時のマスコミ(TV・新聞)は不審船が120%北朝鮮の船であることを知っていても、「北朝鮮の工作船」とは表現できなかった。
朝鮮総連からの圧力が原因だ。
隔世の感がある。

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