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zoom RSS 米朝首脳の“退屈なゲーム”…墓場から蘇った遺骨ビジネス

<<   作成日時 : 2018/06/16 20:35   >>

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苔むした“遺骨ビジネス”が劇的な効果を生んだ。3代目が土壇場で投げたヤケ糞ボールが大統領のハートを直撃。そして「軍事演習=挑発行為」が米国の新たな公式見解となった。
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前説の壮言大語とは裏腹の貧相な成果。これが何かの冗談でなければ、きっと裏の合意があるに違いない…トランプ大統領と金正恩の初会談は、外交評論家らに疑心暗鬼を生じさせた。

「トランプ大統領は非核化への曖昧な約束を成功だとして売りつけようとするだろう」

米ワシントン・ポスト紙は専門家のコメントを引用した上で「へつらった」と酷評した。WSJやBBCも懐疑的な見方を示し、トランプ政権の天敵であるCNNは、平常運転で批判する。
▽初会談前の記念撮影6月12日(CNN)
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「これまでの北朝鮮の核問題に関する声明と比べても驚くほど弱い」

意外だったのは、南鮮メディアだ。文在寅の応援団と化した南鮮主要紙は、盲目的に“対話路線”を支持し、異議を挟まないと見込んでいたが、違った。朝鮮日報は社説で、こう断じる。

「目を疑うばかりの荒唐無稽さだ」
▽米朝首脳会談を封じる朝鮮日報6月13日(EPA)
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まさかのド直球だった。UN決議にも示されたCVID (完全かつ検証可能で不可逆的な廃棄・非核化)が“無効化”された時点で、お世辞にも成功とは言えないが、極左のハンギョレ新聞は手放しで歓迎する。
参照:ハンギョレ新聞社説6月13日『手を取り合った金正恩・トランプ「巨大な変化」が始まる』

誰が批判したかよりも、誰が絶賛したかで、真の評価を見極めることが出来る。UN事務総長やG7各国は概ね歓迎ムードだが、これは外交辞令に過ぎない。
▽米朝会談後にコメントする安倍首相6月12日(ロイター)
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「新たな歴史を創造するものだ」

中共外交部は6月12日夜、素早く歓迎の意を示した。頭越しの米朝接近に警戒感も滲ませるが、「歴史的」と連呼する朝鮮労働党系メディアと通じるものがある。そしてロシアも高評価を下す。
▽平壌地下鉄駅構内の壁新聞6月13日(AP)
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支那・ロシア・北朝鮮。旧6カ国協議のレッドチームが揃って「歴史的な会談」と讃えたのだ。金正恩にとって好都合な結果だったことは間違いない。

【今は骨壷がお買い得です】

「時間がなかったからだ。ここには1日しか居られない」

焦点のCVIDが合意文書に盛り込まれなかったことに対し、トランプ大統領はそう答えた。共同署名式に続いて開かれた単独会見。“偉業達成”の雰囲気は影もなく、言い訳がましい発言も目立った。

「自分は何も断念していない。25時間寝ていない」
▽単独会見に応じるトランプ大統領6月12日(AFP)
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記者団が容赦なく質問を浴びせる光景は、珍しくはない。それにぶっきら棒な口調で応戦することも日常的だ。ただし、トランプ大統領が自慢げに語った一言には慄然とせざる得なかった。

「土壇場でのリクエストだった。遺骨は戻ってくる。北朝鮮側は直ぐにも作業に着手するだろう」

POW(戦時捕虜)とMIA(行方不明兵士)の遺骨返還に関する問題だ。会談が終わる間際、北側が申し出たことに、トランプ大統領はいたく感激した模様である。
▽会見で自画自賛するトランプ大統領6月12日(AFP)
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共同声明の第4項目に掲げられた遺体収容。「約束」と「努力」を謳った3項目とは対照的に唯一具体的で、異彩を放つ。会談のラストシーンでトランプ大統領は手玉に取られたのだ。

朝鮮戦争で作戦遂行中に行方不明となった米国人兵士は8,000人を上回る。これらMIAの“捜索”は、休戦から43年が経った1996年に始まった。米朝枠組み合意を受け、北が打ち出した米国懐柔策である。
▽朝鮮半島北部に進軍する部隊’50年11月(AP)
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生存する兵士の帰還ではなく、遺体の探索と収容だ。北朝鮮が名付けた“捜索事業”は、期待された成果もなく、緩慢に続いた末、高濃縮ウラン問題の浮上で2005年に吹き飛ぶ。

米朝の緊張が高まる中、北朝鮮国内で作業に携わる米国人が人質になる恐れが高まったのだ。米国防総省の活動休止発表に対し、北朝鮮は返す刀で“調査・捜索団”の解体を絶叫する。
▽北朝鮮が宣伝する米兵遺骨探索事業’99年(file)
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参照:中央日報2005年6月2日『北「北朝鮮の米兵遺骨捜索団を解体」』

9年間の“捜索事業”で発見された遺体は200体余りで、その内、身元の確認ができのは約30人。当時、米国内では北の事業に拠出した巨額の費用が問題となった。

報道によれば、拠出金の総額は2800万ドル、日本円で30億円相当。作業員の日当に事業関連施設の設置など様々な名目で米国からカネを毟り取る…北朝鮮にとっては、旨味のあるビジネスだった。
▽米兵のものとされる埋葬骨’15年(AP)
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怒りの解体宣言から13年…米朝首脳会談の席で、骨をしゃぶる餓鬼が、再び墓場から蘇ったのだ。

【藁に縋った米大統領の喜劇】

トランプ大統領が言う土壇場(a very last-minute)とは、何時のことだったのか。6月12日の米朝シンガポール会談は、午前10時過ぎから2回に渡って行われた。

最初はトランプ大統領と金正恩が通訳だけを交えた1対1のテタテ(tête-à-tête)会談。続いてポンペオ国務長官やボルトン補佐官らを加えた拡大会合に移行する。
▽テタテに続く拡大会合の頭撮り6月12日(AFP)
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金正恩が“遺骨ビジネス”を切り出したのは、最後の最後、つまり拡大会合の閉幕直前だ。抽象的な3項目の合意しか得られなかったトランプ大統領は、即時実現可能の提案に飛び付いた…

この推測が当たっていれば、功を焦るトランプ大統領の心の隙を突いた金正恩の奇襲が、成功したことになる。ボルトンら側近が「前に3000万ドル近く払ってるだろ」と突っ込む時間的余裕もなかった。
▽平安北道にある“埋葬地”の発掘作業’15年(AP)
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米朝交渉史の専門家であり、登場人物でもあるボルトン補佐官は、北が遺骨を“出し入れ”してきた過去を知っている。最良のブレーキ役が居ながら、共同文書に盛り込むミスを犯した。

“調査団”の解体宣言後、北朝鮮が再び米兵遺骨で揺さぶりを掛けたのは、僅か2年後の2007年だった。ブッシュ政権末期の融和ムードに乗じ、発見された遺骨の返還を申し出た。
▽米国懐柔策の定番となる遺骨返還式’07年(AP)
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板門店で催された演出たっぷりの返還セレモニー。訪朝の旗振り役は、金正日の友人として知られるニューメキシコ州のリチャードソン知事。お手軽に使える北朝鮮の飼い犬である。

味を占めた北朝鮮は、我が国にも“遺骨ビジネス”を持ち掛ける。旗振り役は朝鮮労働党の生体ドローン・有田芳生。一時的だったが、北の壺売りとして暗躍した。
▽報ステの「日本人遺骨発掘」大特集H25年
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参照:H25年5月14日『謀略“北の壺売り”ヤラセ報道…熊の尾踏んだ有田芳生』

警戒すべき点は、1柱=200万円超という外道な取り引きにと同時に、プロパガンダとして悪用されることだ。日本人遺骨の“返還事業”では、メディアが各社が招かれ、ドキュメント番組が相次ぎ放映された。

冒涜的な遺骨ビジネスが、メディアによって「北朝鮮による人道的措置」に塗り替えられる…恐らく、米国でも「返還ショー」に絡んだ多彩なプログラムが放映されるに違いない。

【「演習=挑発」の新公式見解】

「グアムから6時間半ものフライトで、訓練後には再び長い時間をかけて戻る。それだけでも巨額の費用だ」

生中継をウォッチしていた文在寅は、トランプ発言に慌てることはなかった。南鮮国内では唐突な合同演習の中断宣言に衝撃が走ったと報じられるが、歴史的な大転換でも何でもない。
▽単独会見するトランプ大統領6月12日(AP)
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北朝鮮がナゾ遺骨を出し入れするように、米国もまた合同演習の凍結と再開を繰り返してきた。70年代半ばから続く「チーム・スピリット」が中止になったのは、1992年のことだ。

北朝鮮はIAEA(国際原子力機構)との核査察協定に調印する方針を表明。これを受けてチーム・スピリットは中止された。これにより、「南北非核化共同宣言」が出され、融和ムードが高まる。
▽復活した「チーム・スピリット」’93年3月(file)
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ところが、翌’93年、北朝鮮がIAEAの特別査察受け入れを拒否する。米国は米南合同演習を再開させ、北は「臨戦態勢突入」と宣伝。第1次核クライシスは天王山を迎えた。

寧辺サージカル・ストライクが秒読み段階と囁かれる中、カーターの電撃訪朝で事態は急転。華々しく復活したチーム・スピリットも再度中止が決定する。
▽恒例の会場周辺散歩シーン6月12日(AFP)
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非核化と合同演習中止の場当たり的な取り引きは、今回のシンガポール会談と似ている。だが、90年代の中止発表では共同声明を発出し、実務者協議で合意するなど真っ当な外交手順を踏んでいる。

6月12日に署名された共同声明文書に、軍事演習中止の記述は見当たらない。単独会見の席で、実にさらりとトランプ大統領の口から飛び出した。

「交渉が順調に進む最中で、戦争ゲームはしない。すぐ隣の国で軍事演習を行えば、挑発的と考えるのも当然だ」
▽ワーキングランチに望む米朝首脳ら6月12日(AP)
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軍事用語の「war game」は、コンピューターによる模擬演習を指す。しかし、トランプ大統領がフォール・イーグルなど大規模合同演習を念頭に置いて発言したことは明らかだった。

複数の専門家は、大統領が北朝鮮のプロパガンダ用語をそのまま使ったと指摘する。これまで米南は、演習が「防衛目的」であるとの立場を崩さず、北朝鮮は一貫して「戦争挑発行為」と主張してきた。
▽署名式を終えたドナルド&正恩6月12日(ロイター)
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朝と夕方では別の人。会談室から出てきたトランプ大統領は果たして本人なのか…北の宣伝・洗脳工作が成功し、前頭葉まで赤く染まった訳ではないにせよ、交渉としては米側は一方的に譲歩した格好だ。

この余りにも不均衡な取り引きに対し、北が大幅に譲ったウラ合意が存在するという見立ても成り立つ。だが、継続協議が決まった時点で、金正恩の希んだ時間稼ぎは達成している。
▽会見場で上映されるプロパガンダ映像6月12日(AFP)
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シンガポール会談に続く交渉の第2ラウンド、首脳の相互訪問。クライマックスは間延びして、いつまで待ってもエンドロールは始まらない。



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参考記事:
□AFP6月12日『米朝共同声明の全文』
□日経新聞(共同)6月12日『トランプ米大統領の12日の米朝首脳会談後の会見詳報』
□Vox6月12日『Read the full transcript of Trump’s North Korea summit press conference』
□J-CAST6月13日『トランプ「25時間寝てない」の不安 会談で冷静な判断できたのか』
□産経新聞6月12日『「あいまい」「ショーは終わり」「不可欠な一歩」独仏、EUなどの反応は…』
□毎日新聞6月13日『「へつらった」米紙が批判 ネットではトランプ氏称賛』
□日経新聞6月13日『米朝会談の評価二分 韓国保守紙は批判、革新は激賞』
□読売新聞6月13日『北の報道は「歴史的」表現を多用…米朝の初会談』
□BBC6月13日『米朝首脳会談 思わず二度見した6つの出来事』
□ニューズウィーク6月13日『まるで金正恩の代弁者だったトランプ 何より優先された会談の成功』
□ブルームバーグ6月13日『トランプ氏に成果あったのか、米朝会談後の次の段階不透明で懐疑論』
□中央日報6月13日『韓国専門家「トランプ氏、韓米訓練を罪悪視するような表現…衝撃的」』

□AFP2007年4月4日『米代表団が北朝鮮国内の米兵遺骨回収のため訪朝へ - 米国』
□AP通信2016年3月24日『US remains in N. Korea lost in political limbo』

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